マーヒーな日常

2020年11月05日

迷子 その2

70mって言ったら1〜2分で来るだろう

道は一本だ 5分経った

まだ来ない····何やってんだ 来た道を戻ったがどこかに立ち寄ってるのでもない 最後に2人の頭を見留めた地点まで来た所で立ち食い喫茶の店員と立ち食いしてる客に2人の外人を見なかったか聞いてみたらつい今通ったと2人で覚えていたから確かにここを通ったんた····でもいない

横道を確かめながら商店まで戻ってまた座った

おかしい····どうしてだ····曲がり道はなかった ボクは困ってしまった 帰り道がわかんねぇからだ

多分迷う いや迷うわけには行かないぞ これまでも帰り道がわからなくなったことあったじゃないか あの時はウィリアムと散々歩き尽くしてケータイの地図アプリに出発地点を印つけておく事を学んだ

印はなかった(忘れてるぅ)

まぁまぁケータイあるしWi-Fiスポットのショッピングモールも先にあるのを知ってるからとりあえずモールまで行くことにしてすっかり暗い夜7時のアルビールを1人探検モードで歩き始める

1時間さらに歩いて2/3地点のモールからミスター(カターブ)に連絡することにした ウィリアムもダリオもまだ歩いてるから連絡はつかない カターブにはぐれてしまったので住所を送ってくれと頼んだ だが返信がない 30分待って来た返事は気をつけて帰ってこいだけ(バカ)

バカはこの状況が分かってないようだった 自力でも他力でも帰れなくなってるということを(言葉の壁と情報不足) ボクはもう一度位置情報を送ってほしいと頼んだがもう30分待っても返事は帰ってこなかった

完全にナメられてるな よし1人で帰ってやろうじゃないか こんな事もあるんじゃないかと日頃から景色に注意して目印のような建物がいくつか頭に入ってる

しかし真っ暗で目印はわからず気がついたらもう夜の11時 何だか随分外れの方にいる気がするー
·
タクシーを捕まえても行き先も言葉もわからない その上で運転手に食い下がりカターブの番号に電話してもらっても一向に繋がらない

どーいうことだ

帰りは明日にして眠れる場所を見つけたほうがいいかも···

もう疲れた 多分20㌔は歩いてる 車も通らないし人なんかいない

だが問題は外では寝ちゃいけない寒さだ

夜道をトボトボ歩きながら たかだか目視で確認できたボクとウィリアム達との距離の間に何があったのか考えていた


つづく

旅人とは道に迷うものなり
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photon_5d at 00:48|PermalinkComments(0)

2020年11月04日

迷子 その1

ソラーンの実家を早朝に発ちミスターカターブの住む首都アルビール郊外の賃貸住宅に着いたときミスターは部屋を 特にキッチン回りをリフォームするのだと言ってボクたちを巻き込み君たちを今回呼んだのはこれがしたかったからと嬉しそうだった

旅行者を無料で家に泊めるアプリを活用して改装工事を手伝わせるとは天才だ

片づけ終わるとイスラム教の1日の終わりの祈りが始まっていて近くのモスクへ案内されたが物凄い人数が出てくるところで氾濫した河川のような流れに押し出されて見学どころではなかった

その日の夜カターブはボクらを旧市街の一角に連れ出してくれた何するでもなく小一時間歩いたが賑わう首都アルビールによく言われるようなイラクのイメージとは違って全く危険な匂いはしないなので翌日工事の続きをしたあとでウィリアムと2人夜まで遊んで帰ってきたらもう一人の旅行者がカウチサーフィンアプリ経由で泊まりに来て知り合い次の日も街の中心部へ3人で繰り出すこととなった

彼が天才その2で少し触れたイタリア人のダリオだ 30歳でウィリアムと年も近く あっという間に意気投合している様子を離れて見ていると1人旅が始まる方向に進んで一段加速していっている気配を感じ取った

ダリオの話は哲学じみて旅も長く学んだ事も多いのだろうがボクをどこか退屈にさせた特にダリオは大声で全身で話しながら自分を曲げずに突き通すラテンの血がタップリの男で体の周りからは燃え盛ってる炎が見えるくらいで 怒りや攻撃の炎で それを頭で理論的にコントロールするために何だか色んなトレーニングや学習を積んだような話を涼しい顔でしてくるのだけどボクに言わせればかなり導火線が短くなってる爆弾だったから専ら会話はウィリアムにさせて3人でいる時のボクは彼らと少し距離を置いて歩いていた
クルドアルビール
アルビール旧市街の普通のおじさん

カターブの家まで歩くと3時間ありボクたちはまだ1時間の所で ひとり後ろを歩いていたけどあんまり2人がゆっくり歩いてるから自然と先頭になりふと振り返ったら夕暮れの人混みの中で2人の頭が70m後ろに見えた

ちょうど商店があったので水を買い段差の所に腰を下ろし待つことにした


つづく

押すまでまつ
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photon_5d at 17:28|PermalinkComments(0)

2020年03月23日

母性愛 後編

ウイリアム「もしかして水道水に手を出しているんじゃないか」
タカシ「はい だめなんですか?」
ウイリアム「だめだよそんなことしたら絶対お腹壊すに決まってるじゃないか うがいもダメ 日本じゃないんだよここは
タカシ「何が原因なのかよくわからなかったんですでも今言われてわかりました 水道水だったんですね····
ボク「えそうなのボクのお腹なんともないけど」
ウイリアム「え飲んでるのかお前?」
ボク「大丈夫だ今のところ
ウイリアム「まぁお前は別モノだ
タカシ「教えてくれてありがとうございました

ウイリアムはそんなタカシにボク達の旅の話をして 要するにもっと節約できるヒッチハイクやカウチサーフィンがあることを熱く語ってから今ボクらが世話になっているアリーに話して泊めてもらえるか訊いてやると言った タカシは一応感謝してはいたが知らない人の車に乗って移動し知らない人の家に泊まるなんて考えはないしそんな旅をするつもりなど端からないことはすぐにわかった タカシは下手すりゃボクらにでさえ警戒心を持っている 初めて会う人話す人は彼にしてみれば危険な大冒険の入口なのだ 

ボクはほっておこうと思ったがウイリアムは連絡先を渡して何かあったら連絡するように全力で力になると心配してボクにも渡すように推してきた 店を出てボク達はお金を引き出しに行くと言ったらやり方を教えてほしいとついてきた ウイリアムは今にもタカシを抱きしめんばかりの気持ち一杯の声で オータカシかわいそうな子といって別れてからも数日間は母犬が我が子を探す時のような声で竹下通りを歩く時はタカシを探しながら タカシ タカシー どこにいるのと声を上げた

ボクはタカシから連絡が来ない事は予想していた ボクらは扉を全開放しているけどタカシは違う あの子は旅をしているんじゃなく彼女に会うためだけに嫌いな飛行機に乗り3ヶ月ホテルに泊まりかかる食費や必要経費を計算してやってきただけ その計画から外れる事は絶対にやらない
ボク「おいウイリアム お前が世話焼きなのはわかるがタカシだってお前と同じ年の大人だ それにボク達とは旅の仕方も違うし彼女に会うためだけに来てるんだ」
ウイリアム「だってお前あの格好見たろ ミッキーマウスだぞ どこから見ても子供で悪者の格好の的だ 誰だってあんな子供がボーっと道歩いてたらひったくれると思うじゃないか」

確かに27歳の男はミッキーマウスのトレーナーを着た子供のようだった でもタカシは彼女に会いたいその気持ちだけでここまで来たんだ
彼にしたら大冒険に違いない その大冒険に飛び出した勇気は大いにあると思う

つづく

さぁ勇気をだして
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photon_5d at 21:45|PermalinkComments(0)

母性愛 中編

気が付きゃディヤルバクルのアリーの家に来て2週間が過ぎてる

ここ迄10日ここで14日だから···もうすぐ1ヶ月経つ てことはもうすぐウイリアムのイランビザのカウントが始まる これからイラクに入り1ヶ月は旅することになるだろうにあと何日世話になろうかなんて話は全くしてない

ボクたちはスッカリ腰を落ち着けてしまった

何しろアリーの家(アパート)は竹下通りみたいなオシャレな店の並ぶストリート沿いにあって5階からエレベーターを使って降りて扉を開けてすぐ右に8m歩いてアパートの玄関を開けてすぐ右の3段ほどのステップを下って8m歩けば竹下通りと言う便利の良さだ城壁に囲われている旧市街まで歩いても15分 ボクらは新市街とは別の旧新市街と呼ばれるエリアにいる
店という店がひしめいていて通りには新鮮な野菜市場が広がってとにかくモノで一杯だ

ボク達結構歩き尽くしこの2週間で大体の地理は把握した 遊んでくれる友達も沢山できた そして今じゃアリーの仕事中のボク達は部屋の掃除と換気をしてボクが朝ごはんを作ってウイリアムは音楽かけて歌って踊ってご飯食べて後片付けして外に茶を飲みに行く そこでバックギャモン(トルコ名タウラ)に興じるのが日課みたいなものになっていた

そんなある日ボクらの遊んでいるカフェに一人の男が入って来た それを最初に見つけたウイリアムが言った
「おいあいつ日本人じゃないか」
えーどこどこ男はスルリとボクらの席を通り過ぎ奥のテーブル席にちょこんと座って茶を頼んだその顔を遠目から見たボクは言った
「いやあの人は韓国人だ(間違いない)

男の顔はあどけなく色白で光の加減で若干髪の毛が赤く見えてクセのある巻き毛で 服装も持ち物のカバンも日本人の典型的なスタイルからズレている まぁオーストラリア人にはこの違いはわかるまいと鼻であしらうと手の中でサイコロをカラカラさせながら奴は男に向かってコンニチハと声をかけた 男は反応した

なぁにぃぃっそんなバカな····ビックリしたが声をかけたからには話をしようと男を同席させる

彼の名前はタカシ 27歳 ってことはウイリアムと同い年 聞くと母親が韓国人 父親が日本人のハーフでタカシ自身は日本で育ったということだからボクの見立ては完全な間違いではなかったがウイリアムは勝ち誇ってる

ウイリアムはタカシに興味津々だった 彼の醸し出す雰囲気がウイリアムの母性愛をまたしても目覚めさせたようだったそれはタカシが英語を話せなくて 一人の海外旅行も初めてというのが起因していると思う

母親の故郷韓国へは行ったことがあるらしいがその時以来飛行機が苦手ということを知った そのタカシがトルコに3ヶ月間滞在予定でやってきてすでに1ヶ月いるというのだからウイリアムが食いつかないわけがない しかもおよそ観光地とは程遠いこのディヤルバクルだけが目的だ こんなとこへ(とは失礼だ)何しに来たのか訊くとタカシは彼女に会いに来たと答えた

ディヤルバクル出身の彼女とは日本で出会ったそうだ 母親が日本語クラスで生徒を持っていてその中の生徒だった彼女と知り合い恋に落ちこうしてわざわざトルコまで嫌いな飛行機に乗ってやってきて厳しいイスラム教の家庭で育った彼女の家族からは1週間に2度か3度合うことが許してもらえて その日を楽しみに3ヶ月ホテル暮らしをするという 今日は会えない日でここのところお腹の調子も悪くお茶を飲んだらホテルに帰ってボーッとするだけというのだ ウイリアムの母性愛がメラメラしていた

つづく

情熱と冷静の間で押せ
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photon_5d at 14:58|PermalinkComments(0)

2019年07月11日

その11 優しさ

なるほどおじさんは経営者と直接話をさせようとして案内していたのか····しかもおじさんの家は彼女の家の隣だから都合もいい それにしてもこの広い野原全部彼女のものとは····

キャンプ地にしようというアイデアとクゥオロの町で見かけたあのチラシはかつてここを訪れこの野原でキャンプした外国人旅行者によるものだったが今は寒いので閉鎖している状態とのこと 秋口とはいえ山の頂上は冬の気温 
誰もテントで寝ようなんて考えない ウィリアムのバカたれのアイデアでこんな寒い所まで来ちまったが付いてきてしまったボクもバカたれだ 標高2000mと分かっていながらこの寒さまで考えが回らなかった····

「あなた達本当にココでテントを張って寝るつもりなの」と彼女はあきれた様子で尋ねた 
ウィリアムはたき火が出来るならどうってことはないよとほざいていたがボクも彼女と同じ意見だった しかしもうここまで来たからには他に道はなし····
その後で寝るのも焚火も構わないけどとにかく家にいらっしゃいとボク達を招いてくれたんだ 
何も食べ物を持っていないのを知ってご飯を食べさせてくれるという 
断る理由もないままトボトボ家まで付いてきてしまった 

彼女の名前はハトゥナ 現在母親と2人暮らしで家は夏の間ゲストハウスにしているらしいのだが冬季は父親も町に出稼ぎに行っているので客人は基本泊めないようにしているとのこと 女の人2人きりとなれば当然の用心だ
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無農薬のオーガニックリンゴは特大の大きさでトンデモナイエネルギッシュな味だった

温かいストーブの部屋に次々と料理が運ばれてくる チーズやブドウから作られる保存食などハトゥナの母親の手作りでどれも優しく体を元気にする味がしたボク達は申し訳ない気持ちの中でありがたく頂き感謝して外に出ようとしたのだけど彼女とお母さんはそんなボク達に部屋を提供すると言い出した最初は断っていたのだ 

ボクもウィリアムも女の人が2人で住む家に厚かましくも一晩泊まるなんてとんでもないと 
彼女も最初は警戒して家には泊められないと話していたしそれは当然だと承知して食べたら外へ出るつもりだったけど危険人物じゃなさそうだと判断したのか
客間のベッドで寝るようにと強く勧めてくれたそれでもウィリアムはベッドが消耗するとでも思っているのかじゃぁ床で寝かせてもらいますと低調子の気配りをしている 
結局ベッドを使う事になったのだけどそれはボクがハトゥナに「じゃぁ遠慮なく」と甘えてベッドに潜り込んだからだ奴はボクに向かって中指を突き立てるような顔をしていたけどボクにはハトゥナとお母さんの気持ちが本心からだと分かっている 

この家全体に心地の良いエネルギーが満ちているしそれは彼女と母親が発して
満たしているものだ グッスリ眠った

翌日朝食まで用意してもらってお土産にを持たせてくれた 
荷物をまとめながらウィリアムが言う
「オレ達本当にラッキーだったな でもこんなにしてもらってラッキーで済ませて出ていくのは心苦しい」
何が言いたいのかと訊くと手紙を添えて少しのお金を置いて行きたいと言う 
そんなつもりでボク達を泊めてくれたわけじゃないぜって言いかけて
その優しさ奥に一杯の愛情で育てたおふくろさんが頭をよぎった 

ウィリアムの母親は彼が旅をすると言った時一週間に一度は必ず連絡するよう約束を求めたという それは絶対に危ない場所には行かないように 無茶はしないように 知らない人について行かないように クリスマスまでにはちゃんと帰ってくるようにと強くお願いして旅することを許した心配性の母親だ 

時々奴がおふくろさんと電話で話しているのを聞いたことがある
まるで友達か恋人相手に話をしているのを聞く度お母さんへの深い愛情が伝わってきてボクはそれを聞きながら深い安らぎを覚えるのだ ボクがいつしかどこかに置き忘れてしまってもう探さなくても大丈夫と思いながら多分ボクはそれを見つけて取り戻したいと思っているもの
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翌朝のキャンプ地からの眺め 遠くにクゥオロ村が見える

そんな事を考えながらボクは知らない彼の母親に心配しなくてもウィリアムの面倒は責任をって見ますよと誓い 感謝の手紙と少額のお金を部屋のテーブルの上に花瓶で隠すように抑えて出発した
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一晩お世話になったハトゥナのおうち

つづく

世界中の母に愛をこめて
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photon_5d at 16:58|PermalinkComments(0)