人間模様

2023年03月16日

ラストギリシャ 後編

地図アプリって便利だ

おじさんが旅を駆け出した頃はこんなんじゃなかったぜ

地図や情報はアナログで重たくてそんなのを沢山抱えて歩き回ってた 若いから出来た 若いってはずかしい

年月を経て経験して科学技術も進歩して冒険が拡がった

そしてボクはどこだかよくわかんない斜面を登り小高い場所から家並みを確認し地図と照らしても村っぽいから歩いて行ってみようとしてる 目算で5㌔メートル 手ぶらだからちょろいなんて気分はノッてる

小さな村の広場に来たら日曜なのに食料品店が開いてた 物売りの人達もチラホラ道端で商品を広げている それに広場の中にも沢山人がいてなんかやってる

それはお祭りだった しかもキリスト教圏では重要で有名なお祭りの復活祭ってやつだった ちゃんとした音楽隊が演奏して村人が飲んで食べて踊ってた

荷物になるから買い込みは後回しにして近づいたら歓迎された

いつかこの国の事を懐かしむ時一番に思い出すのはヒッチハイクの難しさでボクがそこに存在していないような様子で走り去る冷たい人々で でもここではご馳走を振る舞いダンスに誘いお酒を注いでくれて言葉なんて通じなくても心を開いてもてなしてくれる人がいてボクはこの双方の振り幅を懐かしむんだろう

飲み食いしてるうち英語を話す男と出会ったその恋人の女性は日本のアニメオタクで彼らはボクにことさら好意を持って接してくれて話し込んでるうちに厚かましいお願いをしたら快諾してもらえた

そして約2時間の滞在の後でその村を後にした

山を下るボクの手には村人が持たせてくれた今晩の食べ物があり赤紫色に塗られたお祭りを象徴する卵があり少しの乾燥大麻があった

楽しくなりそうなギリシャの最後の夜が冷たい風を吹かせて近づいていた


つづく


願うそして叶える
 ↓

放浪記ランキング

photon_5d at 16:04|PermalinkComments(0)

2021年10月01日

青信号

テオはサマーペンションの経営者でそこはなかなか素敵な海辺の民宿だった

白壁がギリシャっぽい 海岸沿いだけにオリーブやレモンぶどうなんかの栽培が盛んで周りは殆ど畑の中に個人の夏用別宅がポツりあるだけ

車は殆ど通らない県道も海岸に沿っていてテオの民宿は県道と海の間に建っていた 海から建物の間に芝生の庭と収穫済みのオリーブの木が20本ほど生えていてこの辺のオリーブの樹齢は100年以上のものがザラでそうなると味もうんと違うんだと教えてくれるテオに連れられて庭を歩いてる

眺めは良いし静かで今はシーズンオフだから気に入ったら好きなだけいていいと言うんだ随分親切だなぁ

48歳のテオはボクと年が近いからか勝手に親近感が湧いた 彼は結婚しないで自由に旅行を楽しんでいるボクの選択は正しいと言う 奥さんもお母さんも子供もあれが欲しいこれが欲しいと言うばかりで働いても働いても金は手のひらをすり抜けてく この家でボロボロの穴だらけの服を着ているのは自分だけだと言いながらも家族への愛が溢れてこぼれているのがみえみえだった

じゃあこれも何かの縁と一晩泊まることに決めたボクにテオは外でテントを張って眠るのは寒いだろうと納屋を提供してくれた

納屋と言っても砂浜近くのオープンデッキ横にドリンクを提供するため造られた小さなバーキッチンといった場所だ 中には冷蔵庫も食器類もコーヒーマシーンもお酒もあり会計をするためのレジもあった 客室のベッドは使えないがシャワーとトイレはそこを使って構わないと鍵をくれて これがオレにできる精一杯の譲歩だと言った その晩は食事に招かれ奥さんの手料理をお腹一杯食べて温かいシャワーを浴びれて雨風を凌げる部屋で就寝出来た

つづく

とりあえず一日
 ↓

放浪記ランキング

photon_5d at 08:13|PermalinkComments(0)

2021年09月29日

失って得るモノ 後編

この日の天候は快晴で日差しが強かった

元の路上生活に戻って全身は黒く焼けトルコで蓄えた脂肪も落ち荷物の重さにも幾分慣れ始めていたが背中や肩の痛みには慣れず道は果てしなく遠く10㌔歩いたところで側道の田舎道に崩れるように避難して木陰で休むことにしたハァハァ

ダリオも確かギリシャに入った頃じゃなかったか····そうだ次の町であいつに連絡してみよう 上手く行けばあいつにアレクサンドロポリのホテルに寄ってもらってボクのナイフを持ってどこかで合流できればわざわざ戻る必要もなくなる····あいつがまだアレクサンドロポリの手前かあの町にいればの話だけど

そう思ったら何だか急いで町まで行かないとという気になって立ち上がり国道に戻った途端そこに車が

停まって声を掛けてきた
運転手「ようどこにいくんだ?」
ボク「パラリアオフリニオウまで行こうとしてるんだけどあとどのくらいだろうか?」
運転手「う~んまだ15㌔以上はあるな」
ボク「(ウソーん 地図で見たら20㌔で半分は歩いたと思ったのに)少しでいいからまっすぐ行くのなら乗せてくれないかな」
運転手「いいけど4㌔くらいしか進まないぜ」
ボク「構わないよ」

運転手は英語ペラペラのギリシャ人で名前はテオ オーストラリアで生まれ15歳までシドニーに住んでいたからだった

テオは車の中でボクが何をしてるのか尋ねてきたから変換アダプターの話をしたら今日は日曜日だから店は閉まっているよと言ったあと自分家でお茶でも飲んでけと誘ってくるので行ってもいいよと軽く返事をしたことからボクのギリシャの旅が大きく変わることになるけどこの時はまだ知らない


つづく

流されるのが旅の極意なり
 ↓

徒歩の旅ランキング

photon_5d at 11:42|PermalinkComments(0)

2021年05月29日

正義

なんで泣くのか知らないが女はすぐ泣いた そうあれは悔し泣きだ···

女はリビングを禁煙ルーム仕上げただけではもの足りず路上喫煙とポイ捨てについてもうるさくなった 異常なタバコ嫌いで近くにいるだけで寿命が縮まると考えている 

ポイ捨ては確かに悪いからしないけど女はボクの携帯灰皿に見下したような視線を送り毒だと毒を吐いた(お前にとってはな)

そしてポイ捨てだと注意された所で寝耳に水だし誰だってイラッとする勧告をうけてアリーと女は外出すると必ず言い合ってた

ある時ボクは女に尋ねた お前は何に怒ってるんだ?と

正しい事を主張して誰も理解しない事に対しての怒りでとにかくタバコ嫌いで当然環境に悪いプラスチックのゴミで何一つ良いことないというのが女の考えだった(もっともだ)

ある日3人で旧市街の壁を登って歩いてる内に女の靴がぬかるみに入って汚れたことがあって
そのまま商店街を歩いて一件の茶屋の店先のベンチを見つけた女は座って靴を脱ぎ泥をそこに落としてスッキリした顔で戻ってきたから

ボクは店主がキレイにしてる店先に犬のウンチみたくなってる泥の塊を指して

タバコはダメであれはいいのか?地球を汚すことはダメで一軒の茶屋の店先を汚すことはお前の中で許されているのか?
と意地悪気味で言ってしまった

そしたらこれには隣のアリーも全くだと同意したもんだから女はものすごい顔で片付ければいいんでしょうがって

その目は真っ赤でボロボロ涙をこぼしてた

結局女は目先の自己満のために正義を振りかざして詰め寄られて泣く女だった
別に地球の事も未来の人類の住みやすい世界も考えてなくてただ単に自分が嫌いなものがすぐ近くで見えてしまうのが嫌いなのだ その結果人類こそ地球の害毒だと滅亡願望思考を完成させてしまってもいた 


つづく

実はボクも同じ考えだった
 ↓

放浪記ランキング


photon_5d at 22:32|PermalinkComments(0)

2021年05月22日

かみあわない思いやり

女がアリーのアパートに来ることが決まったその週の夜にアリーは掃除機を買ってきて彼女の部屋にするため現在物置になってる部屋を掃除し始めた それは3日かかった 最初はボクもアリーも喜んでいたし極めて友好的でもてなしていたつもり 吸引力が足りないと二人で交換しに電気屋に戻って新しいカーペットも買って彼女のためにウサギの靴型スリッパもアリーが選んで揃えた

それで最後に出た言葉がいじめるからだとはどーいうことだ

名前も年齢も知らないから女と呼ぶ 2週間いたといったけどその内の1週間はモハメッドの住むバットマンにいたから実際一緒に過ごした日はそんなに長くないから名前も年齢も知らなくて当然(か?)
アリーの彼女のアイスンにあった時と同じように第一印象のイメージから少しずつ行動をともにしていく中で女の人生が勝手に創られてそれは泥だんごみたいなエネルギーになった

1円も使わず放浪を続けて他人の施しで生活して2週間温かい布団で眠って毎日おいしいオレの手料理を食って映画見ていつの間にかリビングを禁煙室にしてオレとアリーをベランダ族にして最後はヒッチハイクポイントまでアリーの車で送って下ろしてオレがヒッチハイクを手伝って捕まえて送り出して本人はイジメるっていう理由でシャーのいるスレイマニアにむけて旅立つエネルギーで最後まで独りだった

長い旅生活が当たり前になって感動か麻痺してもいた

そしてこれはネガティブになってる人の典型的特徴として周りが見えてなさ過ぎだった(自分の事でイッパイ×2)

だから彼女にしてみたらイジメにあったくらいの精神的苦痛を味わったのかもしれないが2年も独りで旅してる女だからこそ厳しくした 

いい大人があんまり現実離れした夢の中にいるからちょっと怒った

旅人同士旅の中だからこそだ

初めて女がオレたちに向かってウワンウワン泣いた話をしよう どんな女か実際起きた出来事をあげればわかりやすいはずだ でもそれは次回た


つづく

旅人の心得その1
 ↓

放浪記ランキング

photon_5d at 14:00|PermalinkComments(0)