出会いこそ宝物

2022年05月22日

あんみつ 前編

テッサロニキには2泊した ここは首都アテネの次にでかい街でまた別なギリシャを体験することができた

勢力的に坂道を登り景色を探し歩き中心地を縫うように昼夜歩き回ったら思ったより物騒だったんだ 

移民の黒人グループに鞄を狙われたり白昼道の真ん中で取っ組み合いが勃発しジセのチャリも数分停めただけでなくなるんだからもう首都のアテネは完全に行かないぜ

かつては豊かで人々の心はさぞ美しかったことだろう 美しい自然 豊富な資源 そこで特別神様に好かれてた人達が住んでいて上品で知的で古代の知識を受け繋いでまだ熱烈に人々がこの宇宙の始まりについて語ってた時代に思いを巡らせテッサロニキを離れた

20㌔歩いた辺りで大きな黒い塊が道路の真ん中にあるのが見える その距離100mだ

近づくと真黒な犬で強そうで襲って来ないように祈る頃(ギリシャの犬達は非友好的)ボクは彼女の瞳があんまり何かを訴えてるから思わず立ち止まり手を伸ばしこっちにおいでと呼んだ

黒犬はお尻を上げて軽やかに四弾みで近づき鼻先をボクの指先につけるフォーマルな挨拶をきちんと済ませたあとで そのまま足の間まで体を食い込ませて寂しかったぁと泣いた

オオカミみたいなカッコイイ犬をヨシヨシとなだめて脇に荷物をおろした ここで休憩しよう オマエずいぶんクサイな····

人間に慣れてるからこの辺で飼われてる犬に違いない····

といったところで辺りには農地が地平線まで広がって民家が遥か遠くにポツポツ見えるところの農道の真ん中だ(どこだよ)

この国で吠えなかった犬は君くらいだ 礼儀正しく賢さが滲み出てる名犬はボクが腰掛けている所から20m先の草むらでスフィンクスみたいな格好で休んでいた いや休んでいるというよりも待機してるんだ 子供のボクを魅了していたテレビ名犬シリーズのラッシーとかカールが見せてくれていた待機のポーズをボクは思い出していた

首輪がないけど彼女は間違いなく長い間人間と生活してきちんとした訓練をされてる そんな犬がどうしてこんなところで困っているのかさっぱりだった 

ボクが再び歩き出すと彼女も立ち上がって歩き始めた

どうやら行くところが無くてボクが舞い降りた天使で助けてくれると思ってるみたいだった

つづく

ボクも行く所ないんだけど
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2020年03月27日

アリーとアラジンとアベ

初日はアリーとアラジンとその友達2人と知り合った 
2日目はアラジンがまたアリーと一緒に帰宅してディヤルバクル名物鳥のレバー焼きを食べに連れて行ってくれてその後アリーの自家用車でアラジンが住む新市街のアパートの近くのカフェに茶を飲みに行くことになった トルコでは1日何度もお茶を飲む習慣がある 特に食後のお茶は絶対だ

わざわざ車で15分かかるカフェに行ったのはそこにアラジンの彼女とその女友達が日本とオーストラリアからの珍客に会いたがって待っているからでその夜も3人の女の子と知り合い仲良くなった

そのうちの1人が随分英語が上手で病院の麻酔科に勤めていて勤務時間も朝だったり夜だったりと休みも変則的で丁度明日は休みだから朝ごはんを一緒に食べましょうということになってその日から彼女は休みの日になるとスーパーで買ってきた材料を持ってボク達のいるアリーのアパートへ代わる代わる違う友達を連れて来るようになった

彼女の名前はギュシャン 訊くとアリーもボク達と同じ日に知り合ったというのだからちょっとビックリだ でもクルド人がみんな家族のように親しみと信頼で支え合って生きてるなら当たり前 アリーも ボク達を受け入れてくれたのと同じように仕事中で不在の家で昨日あったばかりの女の子が自宅で料理してボク達と楽しく過ごしていることに何の心配もしてない むしろボク達と街を歩いているだけで沢山の人が声を掛けてくるようになったと嬉しそうに言った

アラジンも年はアリーより若いがクルドの古き良き伝統文化を家族代々引き継いで引き渡す役目を負っている事を重々自覚しているような男だ 滞在中のボク等を何度も彼の住む新市街の地上7階のアパートに招いてくれて 気心の知れた友達に混じって豪華な食卓を共有させてくれた

友達は日毎に増えた そんな中でアラジンとアリーの二人だけがボクを呼ぶ時必ず敬称をつける アラジンの彼女のハスレットもボクを呼び捨てない 必ず名前の後にアベをつけるからボクはこの三人だけからケイシーアベと呼ばれる あっケイシーっていうのはボクのなまえのカセイが英語発音でなまって変化したセカンドネームだ

アベって日本の総理大臣と同じだけど発音はアにアクセントがある 意味はさんとか様というところだろう

ウイリアムの奴は年長者につける敬称だからってことで何だかボクをおじいちゃん扱いするようにアベを変に強調して冷やかし口調でボクを呼ぶからそれはカウントしない まぁ確かに50歳でやつの母ちゃんより歳上だからしょうがないけど

アリーもアラジンも彼女のハスレットも本当に敬って気持ちがこもっていてその響きは距離も壁もなく正直心地よいな

ウイリアムはガキだから敬称はないけど兄弟のように冗談を言い合ったり 深夜遅くまで映画を見たりお酒を飲みながらイデオロギーを論じ合って何だかずっと昔から一緒だったクラスメイトみたいでボク達はアリーと過ごす中でクルドの社会に馴染むうちにスッカリ旅立ちを忘れてしまったんだな

3人で大きなショッピングモールへ食材を買物にいっても1円も払わせてくれないアリーに何かしたくて家の掃除や洗濯をし帰宅時間に合わせて料理をしアリーの帰りを待つ毎日だ

アリーはボクの作る料理をとても喜んでくれてウイリアムはなんで今まで料理しなかったと怒りながらムシャムシャ頬張る 食後はお茶を飲み一服しながらリビングのテレビ画面からYouTubeで音楽をかけたり映画を観るとあっという間にその日が終わる 次の日はクルド音楽 その次の日は日本が誇る歌手をボクが選んでみんなで歌う(ローマ字歌詞訳つきだから)


アリーはボクが滞在する間に尾崎豊や夏川りみさんの歌を口ずさむようになったそうして時はまたたく間に過ぎた

つづく

アリーは超親日派
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photon_5d at 10:12|PermalinkComments(0)

2020年03月24日

クルド人の心

アリーと出会ったのは2週間前 夕暮れ迫るディヤルバクルの旧新市街に長髪を後ろで束ねふくよかなヒゲをたくわえ身奇麗な服装で現れた ファッション雑誌の中から出て来たような身なりの良さは他のどのクルド人の服装とも違って欧米紳士のセンスの良さが光って第一印象として強く残っている その日アリーは緊張していたのか会社の同僚と迎えてくれてアラジンだと紹介してくれた 2人ともエンジニアでトゥルクテレコム(日本でいったらNTT Docomoか)という会社で働いていると教えてくれた 

アリーの家に入った時の初日のことはよく覚えている 部屋は冷え冷えとして吐く息が白かった だいぶ標高が下がったがココでもまだ700m近くあり 話じゃこれからもっと寒くなるし雪も降るしマイナスになることもよくあるという それでいて夏は軽く40度を超えてくるそうだ 

アパートは広いリビングルームにベランダにキッチン そして部屋が3つ その内の一部屋は物置になっていた 1人で暮らすには広いアパートだ 彼はボクとウイリアムそれぞれに部屋を提供してくれてボクはアリーの書斎を使うことになったのだけどそれじゃ君はどこで寝るんだというボクの質問に笑顔で言った
「私はどこででも眠れるし実際殆どリビングで過ごしているから遠慮せず使ってくれて構わない」
部屋は畳6畳ほどの広さで勉強机がありクローゼットには服が沢山しまってあった
ボク「ボクがココを使うと君の日常生活に支障がでるだろう 全然問題なくウイリアムと共有できるよ」
アリー「何も心配しなくていいんだ いつまでだっていてくれていい モハメッドは君達の事を頼むと言った 彼は私にとって実の兄のような存在だ その彼が信頼する君達を送ってよこした 私はかけねなしで君達を信頼するし旅人をもてなすのは私達の文化で伝統だ」

クルド人は他者を敬い年長者を敬い互いに助け合う心を持っている 特にアリーにはそれを強く感じた 困った時本当に助けになるのは友達だと知っていた そしてこの日から1ヶ月に及ぶ共同生活が始まった


つづく

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photon_5d at 18:51|PermalinkComments(0)

2020年02月14日

満月にほえろ! 前編

雨雲の間から日がさし始めた午前10時ボク達はガスステーションで朝御飯を頂いてから車を捕まえてバットマンと言うコウモリ男(BATMAN)と同じ綴りの街に入った 

賑やかでモダンな街には若者が多くファッショナブルだがココも歴史が古く30㌔先の隣村ハッサンキーフにはおよそ12000年前の石器時代に人間が生活していた岩窟住居跡があるという ボクたちはそこでキャンプするためにやって来たが今夜は部屋を提供してくれるトルコ航空地上勤務の男と待ち合わせていて会えたのは夜の11時近くだった 男の名前はモハメッド 確か33歳と言ってたか····随分白髪が多くて彼の人知れない苦労を垣間見た気がした それで出会った日の事はよく覚えている 仕事終わりで駆けつけたモハメッドはスーツ姿で一流企業役員の貫禄を滲ませていて身なりの汚い放浪者を快く受け入れてくれる心の大きさに何だか酷く恐縮したことを
 
冷たい雨が朝からずっと降り続いていてついさっきまで激しい雷雨だった 予定では7時か8時頃に会う約束だったが飛行機の遅延によるクレームの対応に追われてこの時間まで帰ることができなかったと説明しながら そこには揺るがない彼の自信がみなぎっていた事を 

その自信はクルド人でありながら掴み取った確固たる地位と安定した日々の生活からくるものだと思う
航空機の縮尺モデルが飾ってあって壁の時計は翼のタービンを型どった会社の記念品だと教えてくれた 彼はトルコ人として生きているクルド人だった 生きるためにトルコの教育を受けてトルコ人にならなければならないとはどんな心境だろう クルドの風習や言葉や文化は胸の奥にしまって 或いは忘れてイスラムの教えの中でトルコ国を支えていく彼らの気持ちを感じ取ろうとしてもボクにはまだ想像できなかった

つづく

もっと知りたいクルディスタン
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photon_5d at 21:06|PermalinkComments(0)

2019年06月20日

その1 終わりの始まり ジョージア再入国編

2018年10月8日ボク達はジョージアに戻ろうとしていた 
宴は夜通し続き翌朝出発直前まで呑み続けそのワインをお土産に各人1本ずつ
(500mlペットボトル)とママ手作りのキマーリというピリ辛ソース
(500mlペットボトル)持たせてくれた
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末娘を手なづけるローマンは子供の扱いが上手だった

キマーリっていうのはコーカサス地方特産の見た目は辛そうに見えて味わい深い辛いのが
苦手なボクでも美味しく頂けちゃうソースで パンに塗ってもサラダのドレッシングにしても
目玉焼きにつけても相性抜群のソース
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国境にたなびくアブハジア国旗
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アブハジアの国境 乗せてくれた運転手と


そいつと一緒にアブハジアの国境を越えたが3人とも酔っぱらっていた 
ウィルとローマンはしょっちゅう立ち止まってアブハジアとジョージアを繋ぐ
橋の上でなにやら言い合いしていて それを遠目で眺めながら一人おかしくて笑っているボク 
多分昨日の事を引きずって掘り返しているのだろう

ウィリアムはローマンの事をいい奴だが喋り過ぎだと必ず付けたして言う 
毎回カチンとさせる一言をローマンが言うからだ でも短い間でボク達はチームとなって
時に言いたいことを言い合い喜びを分かち合った
しかし残念だがそれも今日までだ

ジョージア側の国境からヒッチハイクを始めたが車が捕まらないので道端に座り込んで
2人がまたワインを飲みだし道路の向こうの電柱に小石を投げて遊んでる どうやら
当てた方が勝ちみたい

そして1人道路に立って手を挙げるボクに「捕まえろケーシー」ってゴロゴロしながら叫ぶだけ
なんだ 全く外人はテキトーだ

車を停めたらミニバスだったけど酔っぱらってるウィリアムが強引に話をつけて
タダでズグディディ街まで戻ってくることが出来た 時刻はすでに夕方の4時で寝床を
確保するためにも早いとこ車を捕まえたいのに2人とも腹が減ったと言ってサンドイッチ屋
で休憩して全然慌てる様子がない

ローマンの予定は今日中にクタイシというここから100㌔以上離れた街の空港で一泊する予定
明日来る友達を出迎えるため一晩空港内で過ごすそうだ
ボクとウィリアムはこの先イラクまで一緒に旅することが決まってるので
ここからは捕まえた車の行先次第で分かれる場所というか道が決まる そう思ったら
ちょっぴり寂しくなった 別れはいつだってちょっぴり寂しい 仲良くなっただけに‥‥

きっと2人も同じ気持ちなのだろう だからグダグダしているのだ ボクなんかよりもっと
話をして解りあったんだから‥‥

それで5時からようやくヒッチハイクを始めて2時間後にクタイシまで行くという車を
捕まえることが出来た これでローマンは大丈夫 ボク達はバトゥミに向かうから
分かれ道は1時間走った先のセナァキという町の外れとなった 

車がセナァキの分岐点に到着した時辺りはすっかり暗く8時を過ぎていた 
その瞬間はそれほど特別なものではなく何だかちょっと夜遊びをして3人とも終電に
間に合う時間に駅で別れるような感覚だった じゃぁまた今度っていうくらいの軽い
あいさつで抱き合うだけ でも本当にすぐに会えるような深いつながりを感じた

きっとまた会うのだろう 時々連絡を取り合ってふとした偶然で世界のどこかの
町で待ち合わせして再会する ボク達はそんな風にして別れて出会う旅人なのだから

つづく

お金は家に置いたまま
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photon_5d at 16:25|PermalinkComments(0)