中山道

2012年07月13日

木曽街道(旧中山道)を行く 完結

2011年4月30日(土) 晴れのち雨

南木曽駅で 人生二度目となる野宿を敢行したおやじ
まだ明けきらない早朝の4時30分に出て行った

ガタガタする物音で一瞬目を覚ましたが辺りはまだ暗く
寝袋のホカホカした温もりにもうしばらく包まれていたいボクは
完全に目を覚ますことができなかった

5時を少し過ぎたところで今度は新聞配達のオートバイのエンジン音で起こされた
出発せよと言わんばかりの排気音が遠ざかる
もうすっかり明るくなったので
起き上がっておやじのいたその場所をみると
寝るために向い合せにしたベンチがそのままだ

全くいい年して後片付けもできないおやじだとため息をつくボク

細かい事をいうようだけど 自分で自分の始末をつけられない奴は嫌いだ
なぜならそういう人間の多くは他人のせいにして
決して自分が悪いとは考えないからだ

自分で都合よく眠るために動かしたベンチを
どうして元通りにできないのだろう

立つ鳥跡を濁さずとは 飛び立つ水鳥が 水を濁さずに飛び去るところから
後始末は見苦しくないように きちんとすべきだという意味の鳥からの教えだ

鳥でさえきちんとできることがどうして人間にできないのだ

こんな風に自然や生き物が示してくれている
正しい行いというものが周りには沢山ある
ボク達人間は自然から学ぶべきことが沢山沢山ある気がする

人間こそがこの生物界の頂点にいると思っているから後片付けができないのだ
と決めつけて ボクはおやじの代わりにベンチを元通りにする

一晩泊めてもらった感謝の気持ちのかけらもないのかよ
ブツブツブツブツ‥‥もしかして山にゴミなんか捨ててないだろうな
‥‥ブツブツ

しかし一通りブツブツ言うと
結局おやじもそういう当たり前のことを注意してくれる人に
巡り合えなかったというか いなかったというか
いたとしても聞く耳を持たないさびしい人間なのだと
どこかで憐れむボクが生まれる

道に平気でゴミを捨てるやつも 煙草の吸殻を
排水溝に隠すように落とし込むやつも
カップラーメンの残り汁を川に流すやつも
電車の中で長々と電話する女子高生も
股を広げて2人分の席を独占するチンピラも
夜中に改造車で騒音まき散らす愚連隊も
気に入らないというだけですぐに物に当たる会社員も
一日一回誰かに文句を言わないと気が済まない更年期のご婦人も
映画館で帽子を脱がない兄ちゃんも
(帽子を脱いでくれないとすぐ後ろの観客はスクリーンが見えにくくなる)

誰にも注意されないさびしい人達で
自分は完全に一人で生きていると自信を持っている人達だ

彼らは人間が作った文明社会のコンクリートジャングルで生産され
本来握り合っていた手と手の温もりが
いつしか離れて冷たくなった底なし沼のような
ポケットに隔てられて存続している
 
そんな彼らの住む世界は
とっても小さくて広がりのない閉鎖された絶海の孤島だ

もしもそこに 同じような考えを持った気心の通った仲間がいれば
孤島は広く大きくなり そこにいる限り人生は楽しい
もっと沢山の人と同じ考えを共有するほど楽しくなる 
だから人は普通を目指すのだ
普通というのは沢山の人が賛成し受け入れられる大陸のことをいう

だがおやじの住む世界は孤独の孤島だった 他人に向けて 外に向かって気を遣い
思いやることのなかった人生は すなわち奪われっぱなしの人生だった事を
意味しているに違いないのだ

たった数センチ先に存在しているあべこべの世界では
正しかった事が間違っていて間違っていた事が正しい

そんな世界が見えない壁の向こうで星の数ほど存在しているのは
つないでいた手と手がいつか離れてしまったからなのだろう

彼らはもしかしたら冷たくなった片方の手を振りかざして
握り返してくれる誰かを求めていて ちょっぴりその手の出し方が
乱暴になっているだけなのかもしれないな‥‥

旅人っていうのは そういういくつもの世界を渡り歩くことの出来て
接着剤のような特殊能力を持った人間なのだとおもう

お金をためて色んな外国へ出かけても
何一つ学ぶことの出来ない旅もあれば
例え外国に出かけるお金がなくたって 大事なことを学べる深い心の旅もある
そしておそらく全ては初めからその手に握られている
そのことを知った時から本当の旅が始まるのかもしれない
だから人はもっと旅をしなければならない 本当の旅‥‥インナージャーニーへ
同時にアウターへ スリップしながらトリップしようじゃないか
バランスよくね とヨーガの境地へ向かう10日目
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SLのある公園 南木曽駅からすぐ近く
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妻籠宿 日本で最初に江戸末期の宿場町の復元と保存を行った場所なのだそうだ    
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まるで江戸時代にタイムスリップしたみたい          
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妻籠宿の次の大妻宿 ここからどんどん家並みが古くなっていくよう
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この辺りは江戸の昔から何にも変わっていない田んぼ道だ 
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次第に観光客も増え始める大妻宿
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古道を通って滝が二つ 左が男滝(おたき)で 右のちょろっとしたのが女滝(めたき)
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クマよけの鐘もあるくらい山ん中だ
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頭に椿の花を乗っけて さわやかな香りをすりつける
前回風呂に入ったのはコインシャワー以来か‥‥
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馬篭峠の頂上からの眺め 海抜801mのところ
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木曽路最後の馬篭宿は沢山の人で賑わっていた
そうかゴールデンウィークだからか‥‥

334
遠くに見えるは美濃の国 ようやく信濃脱出
335
さよなら木曽路 楽しかったっす
336
振り返ったらこんな坂道を下ってきてたまだまだ伊勢神宮は遠い


つづく


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2012年06月25日

木曽街道(旧中山道)を行く 3

木曽路(街道)とはもちろん中山道の事である
中山道は江戸から京都を結んでいる重要な街道の一つだ

この江戸から京都を結ぶ中山道には 69次の宿場町があるのだけど そのうち木曽の11宿の
風土や景観が美しく 昔からインパクトを与えて 街道全体を象徴してきた
それゆえ中山道といえば木曽路 木曽路と言ったら中山道となっているのだ 
木曽路は今なおその美しさを留めて旅人の心に残る自然溢れる街道なのだ

ボクもまたそんな木曽路の真っ只中を歩いている 春の麗らかな日差しの下
2011年4月の終わりの中山道はそりゃもう何から何まで素晴らしいものだった・・・

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昔から浮世絵や歌に出てくる小野の滝(左)
水のおいしい荻原付近の景色(右)

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須原宿 中山道39番目の宿場

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水水舟(みずぶね)といって木をくりぬいて水汲み場にしている 須原宿は舟の里と呼ばれるくらい沢山ある

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こんな看板も沢山あり 橋場辺りは ザ・木曽路というにふさわしい自然の
美しい色鮮やかな所

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長野県下諏訪から 愛知県名古屋まで歩いた中山道木曽路の中で
ボクが一番美しいと思った場所 写真じゃわかりにくいけどココ
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魚釣りまくりの子 この日は魚の放流日で そこらじゅう親子で魚釣りをしている
光景がみられた


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変わらずにあり続けてほしい景色
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天長院というお寺のすぐ近くで振り返った景色

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人家の水汲み場で涼しげに泳ぐニジマス
多分これは生けすで このニジマスは今晩のおかずなかもしれない
・・・うまそうだ

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なんという穏やかな風景だろう・・・ってしみじみ思う 世界に誇れる日本

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JR野尻駅からダムに向かって歩くと人懐っこい牛に出会える

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ダム 読書ダムと書いて よみかきダムと読むらしい


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名前も知らない橋だけど吊り橋ってなんかいい・・・ 
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金知屋(かなちや)付近の木曽川
300
桃介橋近くにかかるこいのぼり

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桃介橋 橋の向こうは発電所で この橋は資材運搬用に架けられた 
桃介(ももすけ)は 当時発電所の社長を務めていた福沢桃介の名前からとった
福沢桃介は一万円札の福沢諭吉の婿養子に当たる人だそうだ

夕方6時なんとかボクはJR南木曽(なぎそ)駅についた 今日も駅で野宿する
・・・もう寒くて駅以外に眠れる場所なんてありゃしないのだ
前の晩も駅で野宿だった A駅で起きた不思議な体験がボクをまた不安にさせるのだけど・・・


つづく

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2012年06月05日

木曽街道(旧中山道)をゆく 2

219













 
あれ?雪か

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ちがうぜウサギだぜ しかも野ウサギじゃなくてペットだったぜ

朝7時頃 木曽ならかわ道の駅を出発した 寒いけど朝から晴れて気持ちがいい
気持ちがいいから体もスムーズ

そうやってボクの左手は 早打ちガンマンのように 腰にぶら下げたデジカメを引き抜き
ウサギを狙ってパシャリとシャッターを押し つい話しかけもする

そしたらこのウサギは朝の散歩中だったという訳だ
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こいつを腰にぶら下げてサッと引き抜く
 意外と気に入ってるカメラケース1500円也




木曽路っていうのは国道19号(中山道)に合流したり離れたりしながら続いていく旧中山道のこと

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江戸時代に盛んだった木曽漆器 毎年漆器祭りが開催される頃 ここいらも沢山の人でにぎわう
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趣のある中学校と校庭
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ならいじゅくと読む 木曽路の中でも有名な宿場 何が有名かって?
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訪れたくなるような風情あるたたずまいだから 昔から多くの旅人で栄えていた
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遠くにちらりと見えるは 旧中山道木曽路の難所と言われた鳥居峠
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宿屋が千軒並んでいたという伝説の奈良井宿
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鳥居峠にアタック!標高は1197mだって。チョロイチョロイ


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鳥居峠の途中でうまい水をタダで飲む この瞬間がたまらない(写真左)

山頂のクマよけの鐘を突くボク(写真右) 鳥居峠は鳥居だけに鳥のさえずりが途絶えない
活気と温かみのある山に感じられた
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下り始めた鳥居峠 向こうに見えるは木祖村 木曽とは違うこの字に
なんだか感動する 木を崇め 木と共に生きてきたという思いの伝わる
字じゃないか

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36番目の宮ノ越宿 木曽義仲ゆかりの地
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樹齢800年の大先輩ケヤキさんと並んで じゃなかったかぶってチーズ ここは
旗挙八幡宮(はたあげはちまんぐう) 木曽義仲が平家追討のために旗揚げした
場所 あんまり興味ないけどこのケヤキにだけは惹かれた ケヤキ先輩は若か
りし頃 義仲の平家追討の旗挙げをこの場所で見ていたのだろうか・・・

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木曽川
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雨と晴れの真ん中に立った瞬間
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木曽福島関所跡
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昔ながらの宿場と現代の宿場が融合する福島宿
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一見時代劇のセットのようだが オシャレなレストランやカフェだ
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どこも かしこもきれいに整備された福島宿はちょっぴり大人の匂いがした
264
ツバメもさぞかし住み心地のいいおうちを見つけたもんだ・・・

 
つづく

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photon_5d at 17:48|PermalinkComments(0)

2012年05月30日

木曽街道(旧中山道)をゆく 1

2011年4月27日晴→雨

この日ボクは 人生で初めてコインシャワーというものを体験した
よく話に聞いていたのは狭くて汚いとか すぐ時間が来てお湯が止っちゃうから急いで洗って流せ的なアドバイス

そのアドバイスが今日生かされる
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想像と違って広いし綺麗なコインシャワー 200円で7分システム

東京を経って7日目 体を洗いたいけどお風呂に入るために歩いているのではないお風呂に入るために歩くとなると 探すだけの余計な体力と時間を消費するから通り道にあるのが最も望ましい

甲州街道をひたすら歩いて下諏訪まで来ると中山道と合流する 岡谷市から塩尻市にかけての中山道は峠道になっていてぐんぐん登って見下ろすと諏訪湖なんか一望できる しかしここらに体を洗う場所はない

ボクは遺伝的に体臭がキツくない 多少汗をかいてもにおわなーいけど体のベトベト感には敏感だった

塩尻駅近くの中山道沿いは わりかし賑やかだがここらにもない 辺りがすっかりさびしくなって半ば諦めかけたその時 オートレスト木曽路が
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7日目のボクの欲望をすべて満たしてくれたアメリカンなオートレスト

ラーメン ゲーセン コインランドリー 自販機 そしてコインシャワーを常設するオートレストが国道沿いとは神の啓示 ココでボクはコインシャワー初体験を試みた 何事も経験だ

コインシャワーは思った以上に快適で時間も長くよく話に聞くような石鹸を流し切れずに時間が来てお湯が止るような事態には陥らなかった しかし世間にはもっと不衛生なコインシャワーもあることを忘れてはならない

洗濯も済ませた14時頃 オートレスト木曽路に一礼をして歩き出す
50分くらい歩くと 見えてきた本山宿
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辺りには数件の民家だけ 地元のおばあちゃんが珍しそうにボクを見る
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すっかり田舎の中山道 東京から32番目の宿場町だそうだ

降り出しそうな空の下を歩き続ける 目指していたのは安心して眠れる場所だ
どこでもいい トイレのある公園なんか最高だけど雨降りそうだから屋根の下じゃないと····バス停の待合室みたいなのがあればいいけど····
やっぱり水場が欲しい····そういえばお腹減ってきた····
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これより南木曽路と書いてある石碑

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ここから木曽路が始まるぞ

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木曽川じゃなくて奈良井川 木曽路に入ったのに木曽川はもっと南にある木祖村の鉢盛山を水源として名古屋まで注いでいくとのこと
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いたる所美味い水が飲み放題の水場

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両部鳥居だ 一番上のちょっと反り返っている部分は笠木(かさき)という 
鳥居は神明鳥居と明神鳥居の二種類に大体分かれているがこいつは神社とお寺の合体版のようなもの
鳥居の形だけから色んなメッセージを読み取ることができる


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にえかわじゅくと読む 33番目の宿場

この辺りから雨が降り始めた やっぱり今夜の理想的なねぐらを見つけるのは
かなり難しいかと トボトボしながらさらに1時間半歩いたらありました

最高の場所が

木曽ならかわという道の駅 しかも隣はコンビニ こんな山の中に最高のオアシス
日暮れ前に到着できたのもラッキー

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寒かったけどよく寝れた


つづく

全ては神の手の内なのか
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