バラナシ

2018年01月16日

モリタ

グルジーの所に行ったのは ボクがバラナシに到着してから4日目のことだった
ボクはひょっとしたら グルジーと会って何を話そうか考えていたのかもしれない

緊張していた昼の2時頃だった グルジーは只今昼寝中だった
店番していたワイフにまた来ますと 言伝てその日は行かなかった

5日目の夕方にボクはついにグルジーと12年振りの再会をした
グルジーは ボクを誰かと勘違いしていたみたいでガッカリしているようだった

それはある意味インパクトのあるリアクションだった
この12年でグルジーも数えきれない旅行者と交流したに違いない それはわかるが
その中でグルジーに再会を切望させる ほどのジャパン代表選手がいたとは
これは驚きだ‥‥

ただものじゃぁねえな‥‥

直感的にそう思ったんだ 
どうやらその男とグルジーが知り合ったのは今から5年位前のこと‥‥
そうか‥‥そいつはおじさんにギリギリできちんと手相を観てもらう事のできた奴なのだぁ

おじさんの話を聞くとどうもそうらしい
しかも自宅に招いて何度も食事を振る舞い 寝泊りさせたほどの仲良しこよしときた

ますますただ者じゃぁねぇなぁ‥‥一体二人の間に何があったのだ(ジェラシー)

なんて所でおじさん 棚から一冊の本を取り出し言った
モリタだ ジャパニーズモリタだ 彼が出した本だ

ボクはそれを手に取り あぁこの人インドに取材で来て本を出版した人なのか‥‥
って思いながら目次を見るのだけど 全然インドのイの字も書いてないじゃないか

ますますただ者じゃない ボクの思考の上を行く思考だ‥‥(ジェラシーアゲイン)

ボクはおじさんにこの人何しにバラナシに来ていたのかって聞いてみた

おじさんは言った
何にもしてない そこの宿に泊まって何度も買い物に来て仲良くなった
そしてモリタはこの本をくれた

パラパラめくった最後のページに封筒が挟んであって 中から写真が出てきた

この人がモリタか?とおじさんに訊くと
そうだと答える おじさんずっと写真が挟んであったことに気が付かないで
今 とても驚いている

そこには仲睦まじく写る女性と男性 男の方がモリタだ
‥‥どっかでみたことある顔だ‥‥そうだYOU TUBEの
‥‥ボクの好きな番組やりすぎ都市伝説の人じゃない?

そうだ観たことある‥‥へぇ‥‥モリタさん‥‥さすがテレビに出る人はちがう‥‥
只者ではないと思ったボクの感覚は正しかった‥‥
あ 初めまして最近ブログタイトル
カセイのせかい 改め みんなのせかいに させてもらったカセイです

なんて モリタさんの写真に自己紹介してると横でおじさんが

モリタと連絡を取ってくれ ワシが会いたがっていると伝えてくれ
と言いだした

なんで来ないんだ?あいつの知り合いだと名乗る日本人はゴマンと来たが
モリタはどこだ?なぜ来ないんだ?

そんなことボクに言われてもさぁ‥‥

モリタは有名人だから忙しいのだ
だがおじさんの気持ちはよくわかった 必ずボクが伝える

モリタさん 至急インドに来てくださいおじさんがとても会いたがっています
BlogPaint
モリタに念力を飛ばしているグルジー

つづく


きっと届く
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2018年01月10日

ティワリおじさん

ボクはおじさんのことを親しみと尊敬を込めて
グルジーと呼んでいる 偉大な指導者という意味合いの
敬称で ここバラナシ町で生まれた 敬称であり職業らしい

本当はスゴイ先生の事なのだろうけど
ボクの場合は 小学生が担任の先生を愛称で呼ぶような
感覚だ(みちこせんせぇ~みたいな)
IMG_4130
遠くの橋を歩いて渡り 川の対岸へ来てみた

実際グルジーっていうのは地域住民にとってまさにそういう存在で
子供から ヨボヨボのじいちゃんばぁちゃんまでみんなに慕われ
尊敬され 頼りになる存在で日常で繰り広げられる小さな悩みから大きな問題 
病気怪我 学校の宿題から道徳とか思いやりとか 正しく健やかな人間形成の助力者と
位置付けられている

とにかく何でも知っていて 病院より警察より困った時はまずグルジーへ
という地域に密着したどえらい先生がグルジーなのだ
そういう資質を持った限定された血統を継承しながら
このバラナシには沢山のグルジーがいるんだそうだ
おじさんもその中の1人に過ぎないが
占星術や手相鑑定に秀でているグルジーは おじさんがブッチギリらしい
IMG_4133
対岸にはかつての王国を象徴する宮殿があった

というのもその昔 おじさんがまだイケイケだった頃‥‥
おじさんの地域には占星術や手相を操るグルジーがいた
でもそのグルジーはお金の請求はしっかりするくせに
的外れなことをいうんで 住民からクレームが出始めていた
それでおじさんは ある日そのグルジーのところへ出向いて
自分の手を差し出してどうしたらいいか観てもらいたいとお願いした

そしたらいうことがあんまり出鱈目なもんだから
業を煮やしておじさんそのグルジーの
手相を鑑定し始めた言うんだ(でたっ鑑定返し!ってやつだ)

そしてその(インチキくさい)グルジーの過去を全部言い当て
伸びた鼻っ柱をポッキリと‥‥折っちゃったんだな
それ以来おじさんの地域に手相鑑定や占星術を操るグルジーは
近寄らなくなったという
IMG_4129
宮殿の反対側の方がキレイだった 独特の建築様式はどこかペルシャちっくで
明らかに中東方面からやってきた民族がここまで文化や宗教を広げてきた事を
想像させる カースト制度も彼らによってのものだろう‥‥色んな想像が膨らむ
さすがインドだ 世界をひっくり返せるパワーを感じる

おじさんの手相鑑定が単なる占いではない ことの1つとして
決して金銭を要求しない所を強調させてもらいたい
もちろん本当のグルジーっていうのは どんな相談にも
明確かつ的確に助言し 人々の迷いを払うことを至上にした仕事で
対価は発生しないのが当たり前
と 言ってしまえばそうなのだがそうしたグルジーは
もう過去の遺物になりつつある

最近のグルジー(称号)は まるで大学の博士号みたいに
政府認定の然るべき機関で取得できるようにもなっているそうだ
つまり体裁の良い一つの就職口がひらけたということだが
どうなんだろう‥‥個人的には薄っぺらい感じもする

そんなグルジーが増える中の最後のグルジー(ラストグルジー)
それがボクが慕うグルジーでおじさんなのだ
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対岸をしばらく歩いてお寺についた よく見ると人の頭骨が神様の
首に飾られてある カーリーという女神様だった


おじさんはグルジーの全てを 父親から学んだ
おじさんのお父さんも 物凄い力を持った人だったらしい‥‥
その教えの中には 決して金銭を要求しない
そして いつもどんな時も人々の幸せだけを考えて力を使うことだったようだ

だからおじさんはカースト制度の一番上に位置しながら
自分で自分の生活費を賄うため 商売をやってる(気がする)
細々ではあるけど おじさんの望んだ暮らしがありそれが人生であるのだ
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対岸を歩いていたら丁度彼らも対岸に戻るとのこと 対岸に干した洗濯物を
回収しに来たラウンドリーボートの陽気で気のいい若者達


そのおじさんも2012年から ちゃんと他人の手相を観るのは封印したと言った
店の本棚に並べてあった全ての関係書物と感謝の手紙もその時一緒に片づけたんだそうだ

ちゃんと他人の手相を観るということは自分の知識とか感覚とかを 常にベストの
状態にしてなければ ならないそうで誤れば危険な道具になり替わるからという

一人の未来を簡単に狂わせうるという意味での危険で たった一本の細かい線を
見過ごしたり 意味の取り違いをしたら全部が狂って
間違ったことに気づけない結果に至るのだそうだ そんなことになったら
おじさんが築き上げたこれまでの信用もなくしかねない
そこまで心配したかどうかはわからないけど 何だか寂しそうに語ってくれた

手相が観れなくなってしまった事への寂しさ
それもモチロンなのだろうけど
自分が急激に老いに向かっていく寂しさだ
歯が老い 目が老い 毛が抜けて 関節が痛み出して 寒さが堪えるようになり
物忘れが始まり 色んなものと別れていく寂しさだ
怖くはない ただちょっと寂しいんだ

あれから12年経ったおじさんは確実に年を取っていて
かつておじさんの中にあった膨大な知識が
少しずつ薄れていってるのをおじさんは自覚している
肉体的にも精神的にもおじさんは人生の黄昏期にいて
おそらく‥‥おじさんは自分があとどのくらいこの世界で
グルジーとして生きられるのか知っているのだ

それでもおじさんは毎日相談にやってくる地元の人達のため
神様に祈り 平和と調和のために力を使う
例え特殊な能力を封印したとしても おじさんがグルジーであることは
これからも変わりないもの 

同じ星の隔たりの中で 同じ時代を生きながら 偶然か必然かあの日
おじさんと出会い 12年の歳月を経て再会できたことはボクの人生の宝だ
おじさんと出会い おじさんを知ってる人なら みんなそう思ってる

おじさんは占い師じゃないし予言者でもない
未来も運命も信じない ただおじさんは出会った全ての人達の
健やかな人生を祈ってる そして出会った全ての人が持つ
他人を思いやる心を呼び起こしているだけなのだ
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虎の威を借るヤギ


つづく

おじさんはもう誰の手相も観ません
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photon_5d at 20:09|PermalinkComments(0)