明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、うちの学校では冬休みに自分で学習内容を決めて、取り組んでくる冬休みノートというものがあるのですが。うちの学年のある子が書いた課題にあまりに感動したので、それをシェアしたいと思います。


そのある子と言うのは、2011年にスウェーデンの現地校から転入してきた子で、これまで数年間向こうの学校で教育を受けてきている子でした。

ちなみにスウェーデンの面積は日本よりやや広く、日本全土に北海道をもう一つ足した程度で、面積の割りに人口が少なく人口は日本の約1/12だそうです。GDPとしては愛知県と同じくらい。ただ、一人当たりGDPは世界8位で19位の日本の1,4倍くらいあります。また、この日本の都道府県と同じくらいのGDPを持つ国をしめした地図が面白いので、まだ見た事のない方はぜひ!


うちの学校の場合、冬休みノートに多くの子が取り組んでくるのが、漢字や計算ドリルの復習だったり、日記だったり、作文だったり、読書の記録だったりするんですが。その子が取り組んできたのは、意見文でした。
意見分のテーマは保護者が考えて書いてあり、そこにその子の意見が英語で書いてあったんですが、それが課題、意見ともに非常に秀逸だったのです。

そこで、そのテーマはこんな感じですと言うのを3つほど紹介したいと思います。


1つ目。

「週末を友達と過ごすことの良い面と悪い面について、あなたの経験をもとにあなたの考えを書いてください。」

どうでしょうか?あなたはどう思いますか??

これ、良い面についてだけだったら日本でも良く見るかと思うのですが。良い面だけでなく、悪い面にも目を向けさせているところが素晴らしいなと思いました。よく、ヨーロッパの学校では反対側の立場にも立たせて、その立場から物事を見つめる練習をするという話を聞きますが、まさにこの事だなと思いました。

この経験って大事ですよね。日本の今のニュース原発問題にしてもTPP問題にしても、物事にはどんなものにも良い面と悪い面があるわけで、それを比較しながらどちらを選択するかという経験に迫られる事って本当にたくさんあると思います。ですが、日本人はそこがすごく苦手であるのを感じています。これ、どうして苦手なのかなと考えてみたら、日本の学校教育の責任は大きいだろうと思います。

今、学校現場で働いていて感じるのが、反対側の面にまで深く目を向けさせずに、一方向だけを見て進んでしまっていたところがあるなという事です。たとえば、国語の討論の単元での教科書にしても、自分の意見をしっかりと持たせる、相手の意見に耳を傾けさせる、という作業は多々出てくるのですが。あえて反対側の立場にたって意見を考えると言う場面はそこまで強く設定されていません。

これだとこの課題に取り組んできた事に比べ、どうしても反対側の立場が弱いままで終わってしまうのでしょう。これからの時代を生きていく上でも、反対側の視点からも見つめさせる。その視点を持ったうえで意見をもつ。という流れは自分のクラスでも取り入れていきたいなと思いました。


2つ目。

「東北大震災の復興に向けて、日本が取り組む必要があると思う事を3つ、どうしてその取り組みが必要なのか理由とともに書いてください」

思うわず、うっとしてしまうようなこの課題。大人が書いても難しいですよね。でも、これも素敵な課題だなと思いました。震災から10ヶ月が過ぎた今も、まだまだ同じ国で困っているたくさんいるわけで。小さい頃から社会への問題意識と、解決策を考えさせていきたいという保護者のメッセージをこの課題から感じました。大人の問題だと割り切らずに、社会への関心と参画意識を高めるような課題も組み込んでいきたいなと思いました。


そして3つ目。

「あなたは日本から惑星αへの平和の大使として派遣されることになりました。そこで、大使として向こうに持っていく道具を3つ選んでもらいます。3つ道具を選び、なぜその道具が必要なのか長官を説得するための手紙を書いてください」


どうでしょう。どれもこれもあまり日本の学校では見ないものではないでしょうか。ちなみに、皆さんだったら何と答えますか??

おそらく、この課題、現地の学校でこのような課題に取り組んで来た経験から、保護者の方が設定したのだと思うのですが。

この課題を読んだ時に浮かんだのが、以前、「もしドラ」の作者、岩崎夏海さんの「教育について」 というエントリでした。(ちなみにこのエントリ、乙武さんと橋下さんに教育観についての岩崎さんの意見が書かれているのですが、非常に興味深いので、まだの方はぜひ)

このエントリで、大阪府基本条例についての考えにある部分がこれに当たるのではないかなと考えたので、引用します。
 
将来のグローバル社会においては、「競争力」はむしろ優位性の低い能力となり、変わって「協調性」が重要とされるようになるだろう。だから、これからの教育に必要なのは協調性を発揮、創造していけるような発想力や胆力、あるいは実行力を養っていくことである。理念とすべきはそこなのに、橋下さんの考えはまだそこに至っていない。
 

日本からの平和の大使として、違う星と対話をする。この課題の設定の仕方がまさに、「これからの時代は協調性を発揮、創造していける」と言われているその部分に当てはまるのを感じました。

ちなみに、その子の答えが以下のものです。

まずは「惑星αと英語の翻訳機」 絶対にコミュニケーションが必要だから。
そして、「日本の食糧の種」    向こうの星が貧しい状態にあるかもしれないし、食糧を増やしていく事は必要だから。
最後に、「ビデオなどの科学技術がつまった装置」 お互いの科学技術があれば、お互いにより豊かな生活が実現できるようになるから。 

と言った内容のものでした。どうでしょう。みなさんはこの答えを読んでどう感じますか。私は12歳にして、その場面をイメージし、そこから必要な事を論理的に考えられる思考力と、互いに協力し、繁栄していこうというその心に感動しました。もちろん、全て英語で書かれてあります。


これからの課題から僕が感じたのは、

1、答えの無い問題について自分の考えを持たせたいという事。
2、物事を多様な視点から捉えさせ、論理的に考えさせたいと言う事。
3、相手と共存し、互いに繁栄していく方法を考えさせたいという事。


という保護者のメッセージでした。もしかしたら、このメッセージは保護者だけでなく、スウェーデンの学校が子どもに期待しているものなのかもしれません。 北欧の国は、これまでの日本のように内需だけでは生活していけないので、必然的に外国、つまり異文化と積極的に交流し、円滑な関係を作っていく事が必要不可欠です。 この様な課題が自然に生まれてきてもおかしくないなと思いました。

もし、あの子が向こうの学校でこのようなメッセージが詰まった課題に取り組み、そこで学習してきたからこうなっているのだとすれば、スウェーデンの学校から学べることは本当にたくさんあると思いました。きっとその環境から育ってきた子たちはこれから彼らが生きていくグローバル社会においても大きく力を発揮していくのではないでしょうか。

今現在、日本は大変に難しい位置にいます。橋下知事が言うように、世界との競争はさらに一層厳しいものになっていくでしょう。そのような中で、他国から出てくる次の世代と日本の子どもたちが円滑に取り組んでいくためにも、大人たちが子どもたちのために適切な課題を設定してくことが重要だと思います。

そして、これからの日本に必要な教育はまさにあの子の冬休みノートに描かれているような課題だなと感じました。まだまだ向こうの学校の様子を詳しく知っている訳ではないので、ぜひ今後も調べていきたいと思います。

微力ながら、自分の力で少しでも力になれたら良いなと、そんな事をあの子の冬休みノートを見ながら思いました。

と言うわけで、最後までお読みくださってどうもありがとうございました。