分子行動生理学 公式ブログ

研究室の日々の記録、研究内容、神経生理学の講義・実習、日々の雑感などを発信していきます。ブログは管理人のあくまでも個人的な意見であり、私の所属研究室や大学の意向ではありません。

研究者としてどのような人材がもとめられているのか

研究をやって生活していくためには、なんらかのポジションをゲットしないとなりませんし、できれば承継ポストが欲しいとだれでも思うことでしょう。応募する側からしたらどのような条件が求められると考えているヒトが多いでしょうか?おそらく、名のあるIFの高いジャーナルに乗った論文があるとか、たくさん論文を出して研究費もゲットしている、など研究能力が最も重視されると考えている方が多いでしょう。それでは、採用する側から考えたとき、どのような人材を求めているでしょうか?もちろん、研究室によって考え方は大幅に異なるとは思います。しかし、研究業績があることは、必要条件ではありますが、決して十分条件ではありません。あるレベルをクリアしていれば、むしろ求められるのは、Good natured personであることが一番大切です。妙に研究業績にこだわる人はむしろ危険とみなされるかもしれません。自分の利益を最優先して、チームワークを乱す可能性があるからです。生命科学の研究は、多くの人との共同作業であり、社会組織のメンバーとして、他者に気を遣うことが出来て、ヒトのために動くことが出来る、ほうれんそうをきちんとできる、と言ったことがもっとも重要なのです。加えて、特定の技術に長けた人を探していることも多いのです。「僕は人一倍研究業績があるのに、採用されなかった。あの大学のあの研究室はおかしい」などと思う前にそういう実情があることも考えておくべきです。以前、Googleは極めて能力が高い人しか採用しない方針でしたが、いまではやはりGood natured personであることを最も重視していると聞きました。それが一番会社組織としてのパフォーマンスを上げることにつながるからにほかなりません。分野は違えど、生命科学の研究室でも同じようなことが言えると思います。

日本の科学研究

日本の科学研究レベルの凋落が話題になってから、もうずいぶん経ちます。最近も2018年から2020年の上位論文数で、世界12位に落ちたという話題がありました。たしかにかつて、アメリカについで、2位の地位にあった国ですから、凋落は明らかですし、先進国の中で日本だけが論文数横ばいで、諸外国にどんどん抜かれているのは事実です。その理由として、研究者の裁量による自由な研究を支える研究費が減少、競争的資金等の獲得競争が熾烈化、若手研究者の雇用・研究環境の劣化、巨額研究費が一部の有名研究者に集まり、すそ野が無くなっている、などとよく議論されています。
事実だとは思いますが、日本って、科学研究だけがダメになっているわけではないんですよね。この20年、経済成長がとまり、日本人の平均収入は2000年以前からずっと横ばいでアメリカの半分、お隣の韓国よりも安い状況です。かつて世界の優良企業のベスト10の中に日本の企業が8社くらい入っていましたが、いまはトヨタ1社だけ。半導体分野ではかつて日本製の独壇場でしたが、いまやアメリカ、韓国、台湾に席巻されています。
「ジャパン・アズ・ナンバー1」とされてアメリカで日本を見習え、などと言われていた時期がありましたが、いまや日本製の魅力的なものなどなくなりつつあり、アメリカでアメリカ製の日本車が売られてはいるものの、ヨーロッパでも日本車を見ることは少なくなりました。ゲームの分野でももはや、日本のアドバンテージはなく、唯一、アニメが残っているくらいですが、やがてCGとAIによる作画にシフトしていくにつれ、アドバンテージはなくなるでしょう。
 話を元に戻すと、日本の科学研究レベルは、凋落してはいますが、それは日本全体のことであり、決して科学研究だけが取り残されているわけではないということです。世界12位なら頑張っている方なのではないでしょうか。もはや日本は先進国としてとらえる必要がないように思います。われわれ研究者にできることは限られていますが、その制限のなかで出来るだけのことをやるだけです。

研究室内での過ごし方

研究者として、あるいは、研究者をめざすにはどうしたらよいのか?ということを質問されることがありますので、それについて書いてみます。

研究者に必要な資質や覚悟はたくさんありますが、今日は、そのうちどのように研究室で過ごすべきなのか、についてです。
これはあくまでも私個人の見解ですが、生命系の研究者としてもっとも大切なのは、理論的な思考力でも、我慢強さでも、勤勉さでもありません。何より大切なのは「コミュニケーション能力」だと思います。現在、ウェットな実験をするのであれば、一人で何かまとまった仕事を完成させることは非常に難しいと思います。何をするにもmultidisciplinaryな研究内容が求められ、それを効率よくまとめるとなれば、大勢のラボメンバーとの共同作業とならざるをえません。この点でチームプレイが求められ、ラボ内でコミュニケーションを円滑にしていかなければ大いに研究の進展は妨げられます。
最近は、オンラインのコミュニケーションが盛んになったためなのか、ラボ内でface-to-faceのディスカッションをする光景が以前よりずっと少なくなって、モニターを見つめているヒトが多い印象なのですが、これも時代の流れでしょうか。そうであれば、様々なオンラインツールを使ってでも常にラボのメンバーやPIとコミュニケーションをとっておくことが絶対に必須です。
「私はヒトと関わるのが苦手だから黙々と研究ができる研究者を目指したい」なんて考えているヒトがいたら即考えを改めたほうがよいです。
コミュニケーションをとることは、ラボ内で自分の立場を明示する、という点でも大きな意味を持ちます。なんらかの主導権をとり、PIに自分の能力や実験結果をアピールすることは絶対に必要です。自分の仕事を論文化してもらうには、研究結果そのものも大切ですが、それをPIにアピールしていかなければおぼつかないからです。ラボ内のミーティングでもどんどん積極的に発言して自分の存在をアピールしましょう。黙って隅っこに居て忘れられてしまう、なんてのは最悪です。
万が一PIと折り合いが悪いのであればさっさとほかのラボに行った方がよいでしょう。
時間は限られています。いまは若手重視であり、若いうちになんらかの成果を出し、しかるべきポジションをゲットしない限り、目指す道は茨の道になると思います。

研究室選びについて

お久ぶりです。
前の大学に居た頃は、大学院生になってくれる人が慢性的に不足しており、マンパワーは学部の学生さんに依存しなくてはならないくらい深刻に不足していました。しかし、現在、うちの研究室の大学院生は10人を超え、ラボ全体でも30人近い人が所属しています。また、毎週のように研究室の見学希望者や、入学希望者が全世界からメールをくれる状態になっています。
そこで今日は研究室選びについて書いてみます。

ほとんどの学生さんは、ラボのホームページなどを見て「研究内容に興味をもった」などと言ってきてくれます。それは大変うれしいことだと思います。しかし、ラボ選びで本当に大切なポイントはそこではないと思います。何を基準に選ぶべきか・・・
大げさに言えば、最初に入るラボは一生の方向性を決めてしまう可能性を秘めているので、慎重に選ぶべきです。私からアドバイスするのは以下の4点です。
1.研究費が潤沢であること。
2.継続的に研究成果(論文)を出版していること。
3.PIの人格がまともであること。
4.ラボが大きすぎないこと。
これらを満たしたうえで、できるだけ自分の興味のあることをやっているラボを選べばよいでしょう。
1は、説明するまでもなく、研究費がなければ、研究はできません。そうなると成果も出ないからさらに研究費が獲得できなくなる、という悪循環に陥ります。
2も説明するまでもありません。論文が継続的に出ていない、ということは研究室の活動になんらかの問題があるということになります。また、そうなると今の日本の研究費のシステムでは研究費を獲得することが困難になります。1と2は密接に関連しています。
3も大切です。いくらアクティブなラボでもPIがパワハラ人間だったら精神的に追い詰められ、まともな研究生活を送ることはできませんし、研究者として将来歩む道も狭められてしまうでしょう。
4に関してはわかりにくい部分もあるかもしれませんが、論文を出すため、成果を発表するため、あるいは、ポジションをゲットするためには、結局最後はPIの力が必要になります。そうなると研究室の中でどれだけ自分の存在感をアピールして、自分の研究をプロモートしてもらえるかということが問題になります。大きな研究室では、他のメンバーはある意味自分のライバルになります。ライバルがいくらいても自分は負けない、という強い自身があれば、いいですが、そうでないのであれば、なるべく自分がラボの主導権を握れるようなサイズ感のラボを選択するのがよいでしょう。
このように研究室はドライな視点で、ビジネスライクに選択するのがよいです。
興味がある研究テーマかどうか、など、今の自分の知識だけで判定してもあまり意味はありません。
いろいろなことを学んでいけば、アクティビティの高いラボでやっている研究はどれもやがて興味を持てるようになるはずです。

うちのラボはといえば、1−2は、まあまあ合格点として、4に関してはやや大きくなりすぎた感がありますね。3に関して述べるのはやめておきます。

どうやって調べるかって疑問に思う人いると思いますが、1は、科研費に関してはhttps://kaken.nii.ac.jp/ja/
などで、PIの名前を検索すれば出てくるし、
https://research-er.jp/search/researchers
などもありますね。
研究成果はラボのホームページやPubmedなどで調べれば簡単にわかります。
3に関しては、実際にPIと話してみるのも大切です。「こいつと話すのは苦手」みたいに思ったらやめておいた方がいいでしょう。それだけではわからない部分も多いので、ラボに所属する学生さんと話してみたりするのが大切です。彼らが大学院生生活に満足していそうであるか、本音の部分を聞き出せるとよいですね。

自分で考えよう

お久しぶりです。緊急事態宣言が開けてかなり経ちますが、いまだ世界は新型コロナウィルス感染症の話題で持ちきりです。テレビやマスコミは、危ない、危ないと煽っていますが、緊急事態宣言のころと今の状況は全く異なります。現在、インターネットを通してさまざまなデータが手に入ります。それを見て自分で判断することが出来る時代なのです。マスコミがこう言っているから、偉い先生がこう言っているからといってそれをそのままうのみにするのではなく、自分なりにデータを見て考えるべきでしょう。感染症や医学の専門家は、必ず「危ない、家にいろ・・・」としかいいません。そういう同調をしているのが一番立場的に安全だからです。感染症や医学の専門家はほとんど、医療や医学の立場からしかものを見ていません。日本では新型コロナウィルス感染症による死亡数は100万人あたり7.9人。インフルエンザの死亡数の1/3であり、死亡者の平均年齢は79.5歳です。本当に必要以上に恐れ、経済をズタズタにし、人々の自由を奪い、若者の学習の機会を大きく損なうだけの恐怖の対象なのでしょうか?
街中では、新型コロナではなく、人々や社会のコロナに対する過剰反応で生活を破壊された人がたくさんいます。もちろん、羽目を外していいと言っているのではありません。医療崩壊を防ぐ必要もありますし、節度ある行動は必要だと思います。人々の心に巣くってしまった内向きの抑圧された感情や、過剰な同調圧力をみると、そろそろすこしもう一度いろいろなことを考える必要があると思います。これも個人の意見ですから消化せずに取り入れるのはよくありません。8月に入ってからの感染者数(PCR検査陽性者数)や、重症者数、死亡数だけでも検索してみてみてください。他人の意見に左右されることなく、論文のレビュワーのようにデータを客観的にとらえて、自分なりの解釈をする必要があると思います。
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