dragon_dentist
 NHK-BSで今月18日と25日の2回に分けて放送されたアニメ。
庵野秀明のスタジオカラーの制作による作品で、監督は鶴巻和哉、原作・脚本:舞城王太郎。主役の野ノ子を先日「幸福の科学」に出家すると言って電撃引退してワイドショーを騒がせた清水富美加が演じている事でも話題になった。

 戦争をしている時代。第2次大戦くらいの時代だろうか。国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米歯医者の野ノ子は、ある朝龍の歯の上に出現した敵国の少年兵を見つける。少年の名はベル。龍の歯から出てきたものは龍の歯医者にならなければならないという掟から、歯医者としての修業をすることになったベルを指導する野ノ子。そんなある日龍の歯から最強の虫歯菌「天狗虫」が出現。激しい戦いの末折れた龍の歯ごと地上に落ちた野ノ子とベルだったが・・・

 ・・・とストーリーを紹介してもさっぱり伝わらないだろうなあ。とにかく極めて独特の世界観のアニメだ。

 この話のミソは、龍の歯医者は自分の『来る際(死ぬ場面)』を見ているという事だ。採用試験として龍の歯の中に入り、自分の死のシーンを見せられ、それを受け入れた者だけが歯医者になれるのだ。野ノ子も自分が敵兵に撃ち殺されるシーンを見ている。一方ベルは既に死んでいる。青年将校だったベルは部下の傭兵部隊に裏切られて殺されていたのだ。
 この二人が出会い、龍の歯の落下事件にかかわることで、運命が変わっていく。ベルは歯医者たちが自分たちの『来る際』=『死』を受け入れていることが理解できない。歯医者の一人、柴名もそうだった。野ノ子は彼女が起こした反乱と、「黄泉がえり」のベルの介入によって『来る際』の呪縛から解き放たれる・・・
という解釈で見てたんだけど、それはこの物語がこれで完結なら、という事になる。よく見ると野ノ子の『来る際』の映像は今回のストーリーとは明らかに違うシチュエーションだ。という事は続編があるのかな。
 続編があるのならまだまだ野ノ子は自分が見た『来る際』に縛られていることになるのだが、さて。

 全体に宗教的、それも神道のイメージが強く漂っている作品で、それでいてエロやらグロやらいろんな普通に放送していいのかというような描写もあり、そのあたりの振幅の広さはさすが庵野の息のかかった作品だなあと。
 あと問題は後編の冒頭の現代のシーン。このシーンでは旅客機が龍と並走する形で飛んでいるんだけど、明らかに第二次大戦くらいの時代背景の本編とは違う時代。なぜこのシーンが置かれたのかもかなり謎。

 話題の清水富美加は声優初挑戦という事だがなかなか自然に演じていた。正直初めてTVで見た時からかわいいけど目が死んでる印象があって好きな女優さんではなかったし、ほとんど彼女の女優としての仕事に触れていないのだが、ここで声だけ聴く限り演技はなかなかのものだったようだ。
 作画は安定してきれいなのだが、ベルが「両親は小さい時に死んだ」と語る時の野ノ子の表情に違和感があるのと、悟堂が柴名を詰問するシーンで後ろにいるキャラがかなりぞんざいに描かれていたのが気になった。

 実はこの作品、数年前に「日本アニメーター見本市」というサイトで7分の短編として発表された同名の作品がもとになっている。そっちは公開当初に見ているのだが、龍の歯の形とか言った設定や、なにより野ノ子のキャラがかなり違っている。その辺も見比べると面白いかも。