息子の隣に腰をおろすと、
「おれ、大人になったら、車買おうかなー」と呟いた。
我が家は、運転できる人間がいない。正確に言えば安心して運転できる人間がいない。

エンジンが入る。
「ストップ、ザ、シーズンン、イン〜〜〜♪♪♪」息子の鼻唄が始まる。
目の前に出された息子の両腕は、くるくるとハンドルを切る。「やっぱドライブとか良いよねー」なんて言いながら。



うんうん、私はね、突然、夜中に思い立って箱根に行きたいのー、でね、朝一番の箱根神社の空気を胸一杯に吸い込むのー、でねでね、芦ノ湖の水面にただぼーっと目をやり、富士山とか見えちゃったら、もう、最高なのーー、、、、

「早く免許とってね!
ふふふ、なんかドライブしてるみたいだね!」と、二人で並んで座るソファーをぽんぽんと、叩いた。

「はい、着きました。3000えんです」

ええーー!!助手席じゃなかったのーー!タクシーかいっ!!