2010年01月30日
[10] 13日の金曜日 (10/1/30)
13日の金曜日は不吉であると昔から迷信的に言われていますが
(というか迷信ですが)、13日の金曜が不吉か否かを科学的に云々する
というより、13日は金曜日になりやすいかどうか見てみよう。
十何年かほど前、ある本で、グレゴリオ暦では13日は金曜日になりやすい、
と読んだことがあったのですが、ヒマなことを調べる人もいるものだと思いつつ、
今ならパソコンを使って簡単に調べることができます。
1年は365日ですが、4年に一度の閏年は366日なのは誰でも良く知って
いること。ただ、西暦年が4で割り切れる年は基本的に閏年ですが、全部が
そうではありません。4で割り切れる年が全て閏年なのはユリウス暦の
置閏法(ちじゅんほう)ですが、これだと、閏年を置きすぎてしまって、だんだん
季節と暦がずれてしまうことが知られていて、どれだけ補正すればいいかと
いうと、4年に1回(つまり400年に100回)を、400年に97回まで減らせばいい。
ただ、単に400年に97回といっても、それだとやりにくいので、
●西暦年が400で割り切れる年は閏年とする。
●400で割り切れない年は、100で割り切れれば平年とする。
●100でも割り切れない年は、4で割り切れれば閏年とする。
これで、400年に97回だけ閏年にすることができます。
400年の日数は、
365×400+97=146097
ですが、これは偶然にも、7で割り切れます。
146097÷7=20871 (余り0)
ということは、グレゴリオ暦は“曜日も含めて”400年ごとに同じカレンダーになる
というわけです。
ですから、13日は金曜日になりやすいかどうかは、400年分だけ調べればよい。
これをExcelで行うには次のようにします。
(1) A2セルに「2000」と書き、このセルをA401セルまで下に拡張する。
(必要に応じてCTRLキーを押して、1ずつ増えるようにする)
A401セルは「2399」になっているはず。
(2) B1セルに「1」と書き、このセルをM1セルまで右に拡張する。
(必要に応じてCTRLキーを押して、1ずつ増えるようにする)
M1セルは「12」になっているはず。
(3) B2セルに「=weekday(date($A2,B$1,13))」と書く。
値は「5」になるはず。これはデフォルト表記で「木曜日」を意味します。
(4) このB2セルを、まずM2セルまで右に拡張する。
次に、B2:M2まで横に12個分選択して、これを下にB401:M401まで
拡張する。最後のM401セルの値は「2」になっているはず。
(5) B403セルに「=countif($B$2:$M$401,B1)」と書く。
値は「687」になるはず。
(6) このB403セルを、H403まで右に7つ分拡張する(7つだけでいい)。
こうやると、403行目には、
687 685 685 687 684 688 684
という7つの数値が並ぶと思います。これは、400年間に4800回ある
13日が、日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日になる
回数を表しています。
ということは、13日が金曜日になる回数は、688回で一番多い。
一番少ないのは木曜と土曜の684回。わずか4回の差ですが、確かに
13日が金曜日になる確率が一番高いようです。
Excelでこの操作をするのは、おそらく1分か2分程度でしょう。
昔は「ヒマなことを調べる人もいるものだ」と思ったことが、わずか1、2分で
調べられるわけですが、「わざわざそんなことをExcelで調べようと思う人」も
やっぱりヒマ人かも知れません。
(Excelで1、2分で済むのは、Excelに日付を曜日にする関数があるからで、
それが無ければ自分で日数を加算して曜日を算出していかなければなりませんが)
ちなみに、13日の金曜日は、1年に必ず1回は訪れますが、最大でも年3回まで。
4回以上にはなりません。グレゴリオ暦の周期の400年で、13日の金曜日が
1回しかないのは172年、2回あるのは172年、3回あるのは56年となります。
閏年判定は、コンピュータ・プログラミングの例題としてよく使われます。
変数 year が閏年のときに1(真)を、それ以外で0(偽)を返すソースとして
C言語の場合、
year%4==0 && (year%100!=0 || year%400==0)
といった例が Wikipedia などに見られますが、C言語なら
!(year%4)-!(year%100)+!(year%400)
でもOKです。
(論理演算子 ! が、引数が0なら1を、引数が0以外なら0を返すことを利用)
ところで、昔々の人は、毎年決まって洪水が起こる周期(つまり1年のサイクル)が
だいたい365日であることは把握していましたが、平均的には365日ではなく
1/4日くらい長いことも何となく知っていて、つまり「1年365日」だと
4年に1日くらい季節のほうが遅れていくことは知っていて、ここから
4年に1回、1年を366日にするという置閏法のユリウス暦が出来たと
されています。
長らくそれでも良かったわけですが、ニケーア宗教会議(西暦325年)のとき
3月21日頃だった春分の日が、1200年ほど経った16世紀には3月11日まで
ずれてしまっていました。春分の日は、天体観測で決めることができるので、
これは「4年に1回閏年を置く」という置き方のほうに問題があり、閏年を
置きすぎていたということ。春分の日がずれるというのは、せっかく1年を
季節のサイクルに合わせたいのに、1200年で10日、3600年で約1ヶ月、
季節が狂ってしまうことを意味します。そこまでほったらかしにしなくとも、
当時のキリスト教にはもっと大事なことがあって、復活祭(Easter)の日取り、
これをきっちりと決める必要がありました。復活祭は、磔の刑に遭ったイエスが
その3日目(=2日後)に復活したという宗教的なことがらを祝う最も大事な
お祭りの1つです。当時は春分の日の後の最初の満月の次の日曜日と
決められていたわけですが、肝心の春分の日のほうがずれていってしまって
いいものか・・・
そんなわけで1582年、教皇グレゴリウス13世(Gregorius XIII)は、次のように
しました。
●3月11日までずれた春分の日をニケーア宗教会議の時の3月21日に
戻すため、10日はしょる。
●今後、同じようにずれてしまわないよう(閏年を置き過ぎないよう)、
400年に3回分、閏年をやめる。
それで、ユリウス暦の1582年10月4日(木)の翌日を1582年10月15日(金)
とし、グレゴリオ暦は始まりました。
グレゴリウス13世は、日付は10日飛ばしたけれども、どうして曜日のほうは
続きにしたのでしょうね。皮肉にも、ここで曜日を飛ばさなかったことが、
13日が金曜日になりやすくなることにつながりました。もし、曜日も10日分
飛ばしていれば、つまり、1582年10月15日を月曜日にしていれば、
13日は月曜日になる確率が一番高かったはずで、金曜日になるのは
400年間に4800回ある13日のうち685回、ほぼ平均通りだったのですが。
日付のほうは、春分の日を3月21日にすべく気を払ったのかも知れませんが、
曜日のほうは、安息日が7日ごとに訪れるほうを重視したのかも知れません。
ところで先ほど、ニケーア宗教会議を西暦325年と書きましたが、実は、
ニケーア宗教会議のときにはその年が西暦325年かどうかは知られて
いませんでした。
というのは、西暦は、エクシグウス(D. Exiguus)が、532年で一巡する復活祭の
日取りとイエス復活がユダヤ教の「ニサン月(1月)の14日」とされていること、
イエスがそのとき満30歳だったという伝承に基づき、逆算して、エクシグウスが
それを算出した年がイエス誕生から525年目である(=西暦525年)、と
はじき出したわけで、それまで「イエス誕生から何年目」という勘定自体が
存在しなかったから。だから、ニケーア宗教会議が西暦325年というのも、
遡ったら325年にあたる、というだけに過ぎません。
もう1つ。
『ハムレット』で有名なイギリスの作家シェークスピア(W. Shakespear)は
1616年4月23日没。また、『ドン・キホーテ』で有名なスペインの作家
セルバンテス(M. de Cervantes Saavedra)も、1616年4月23日没。
でも、セルバンテスのほうが10日早く亡くなっています。どうしたことかというと、
スペインはグレゴリオ暦が1582年に始まるのと同時にグレゴリオ暦を
採用していたわけですが、イギリスは遅れて1752年になってようやく
採用したので、シェークスピアが亡くなった1616年4月23日はユリウス暦。
グレゴリオ暦で言うと1616年5月3日でした。セルバンテスが亡くなった
1616年4月23日はもちろんグレゴリオ暦での日付なので、セルバンテスの
ほうが10日早く亡くなっていたわけです。
─── pierres blanches.
グレゴリオ暦は1582年10月15日に始まったので、400年後にあたる
1982年10月15日に、初めて400年の1サイクルが終わって2サイクル目に
入りました。今年は2010年ですから、まだ2サイクル目に入って28年しか
経っていません。今年のカレンダーは1610年のカレンダーと全く同じですし、
今日2010年1月30日が土曜日なので、1610年1月30日も土曜日でした。
よく、万年カレンダーとか、何万年分かカレンダーを暗記している、といった
人もいるようですが、事実上、400年分覚えていれば大丈夫。
(というか迷信ですが)、13日の金曜が不吉か否かを科学的に云々する
というより、13日は金曜日になりやすいかどうか見てみよう。
十何年かほど前、ある本で、グレゴリオ暦では13日は金曜日になりやすい、
と読んだことがあったのですが、ヒマなことを調べる人もいるものだと思いつつ、
今ならパソコンを使って簡単に調べることができます。
1年は365日ですが、4年に一度の閏年は366日なのは誰でも良く知って
いること。ただ、西暦年が4で割り切れる年は基本的に閏年ですが、全部が
そうではありません。4で割り切れる年が全て閏年なのはユリウス暦の
置閏法(ちじゅんほう)ですが、これだと、閏年を置きすぎてしまって、だんだん
季節と暦がずれてしまうことが知られていて、どれだけ補正すればいいかと
いうと、4年に1回(つまり400年に100回)を、400年に97回まで減らせばいい。
ただ、単に400年に97回といっても、それだとやりにくいので、
●西暦年が400で割り切れる年は閏年とする。
●400で割り切れない年は、100で割り切れれば平年とする。
●100でも割り切れない年は、4で割り切れれば閏年とする。
これで、400年に97回だけ閏年にすることができます。
400年の日数は、
365×400+97=146097
ですが、これは偶然にも、7で割り切れます。
146097÷7=20871 (余り0)
ということは、グレゴリオ暦は“曜日も含めて”400年ごとに同じカレンダーになる
というわけです。
ですから、13日は金曜日になりやすいかどうかは、400年分だけ調べればよい。
これをExcelで行うには次のようにします。
(1) A2セルに「2000」と書き、このセルをA401セルまで下に拡張する。
(必要に応じてCTRLキーを押して、1ずつ増えるようにする)
A401セルは「2399」になっているはず。
(2) B1セルに「1」と書き、このセルをM1セルまで右に拡張する。
(必要に応じてCTRLキーを押して、1ずつ増えるようにする)
M1セルは「12」になっているはず。
(3) B2セルに「=weekday(date($A2,B$1,13))」と書く。
値は「5」になるはず。これはデフォルト表記で「木曜日」を意味します。
(4) このB2セルを、まずM2セルまで右に拡張する。
次に、B2:M2まで横に12個分選択して、これを下にB401:M401まで
拡張する。最後のM401セルの値は「2」になっているはず。
(5) B403セルに「=countif($B$2:$M$401,B1)」と書く。
値は「687」になるはず。
(6) このB403セルを、H403まで右に7つ分拡張する(7つだけでいい)。
こうやると、403行目には、
687 685 685 687 684 688 684
という7つの数値が並ぶと思います。これは、400年間に4800回ある
13日が、日曜日、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日になる
回数を表しています。
ということは、13日が金曜日になる回数は、688回で一番多い。
一番少ないのは木曜と土曜の684回。わずか4回の差ですが、確かに
13日が金曜日になる確率が一番高いようです。
Excelでこの操作をするのは、おそらく1分か2分程度でしょう。
昔は「ヒマなことを調べる人もいるものだ」と思ったことが、わずか1、2分で
調べられるわけですが、「わざわざそんなことをExcelで調べようと思う人」も
やっぱりヒマ人かも知れません。
(Excelで1、2分で済むのは、Excelに日付を曜日にする関数があるからで、
それが無ければ自分で日数を加算して曜日を算出していかなければなりませんが)
ちなみに、13日の金曜日は、1年に必ず1回は訪れますが、最大でも年3回まで。
4回以上にはなりません。グレゴリオ暦の周期の400年で、13日の金曜日が
1回しかないのは172年、2回あるのは172年、3回あるのは56年となります。
閏年判定は、コンピュータ・プログラミングの例題としてよく使われます。
変数 year が閏年のときに1(真)を、それ以外で0(偽)を返すソースとして
C言語の場合、
year%4==0 && (year%100!=0 || year%400==0)
といった例が Wikipedia などに見られますが、C言語なら
!(year%4)-!(year%100)+!(year%400)
でもOKです。
(論理演算子 ! が、引数が0なら1を、引数が0以外なら0を返すことを利用)
ところで、昔々の人は、毎年決まって洪水が起こる周期(つまり1年のサイクル)が
だいたい365日であることは把握していましたが、平均的には365日ではなく
1/4日くらい長いことも何となく知っていて、つまり「1年365日」だと
4年に1日くらい季節のほうが遅れていくことは知っていて、ここから
4年に1回、1年を366日にするという置閏法のユリウス暦が出来たと
されています。
長らくそれでも良かったわけですが、ニケーア宗教会議(西暦325年)のとき
3月21日頃だった春分の日が、1200年ほど経った16世紀には3月11日まで
ずれてしまっていました。春分の日は、天体観測で決めることができるので、
これは「4年に1回閏年を置く」という置き方のほうに問題があり、閏年を
置きすぎていたということ。春分の日がずれるというのは、せっかく1年を
季節のサイクルに合わせたいのに、1200年で10日、3600年で約1ヶ月、
季節が狂ってしまうことを意味します。そこまでほったらかしにしなくとも、
当時のキリスト教にはもっと大事なことがあって、復活祭(Easter)の日取り、
これをきっちりと決める必要がありました。復活祭は、磔の刑に遭ったイエスが
その3日目(=2日後)に復活したという宗教的なことがらを祝う最も大事な
お祭りの1つです。当時は春分の日の後の最初の満月の次の日曜日と
決められていたわけですが、肝心の春分の日のほうがずれていってしまって
いいものか・・・
そんなわけで1582年、教皇グレゴリウス13世(Gregorius XIII)は、次のように
しました。
●3月11日までずれた春分の日をニケーア宗教会議の時の3月21日に
戻すため、10日はしょる。
●今後、同じようにずれてしまわないよう(閏年を置き過ぎないよう)、
400年に3回分、閏年をやめる。
それで、ユリウス暦の1582年10月4日(木)の翌日を1582年10月15日(金)
とし、グレゴリオ暦は始まりました。
グレゴリウス13世は、日付は10日飛ばしたけれども、どうして曜日のほうは
続きにしたのでしょうね。皮肉にも、ここで曜日を飛ばさなかったことが、
13日が金曜日になりやすくなることにつながりました。もし、曜日も10日分
飛ばしていれば、つまり、1582年10月15日を月曜日にしていれば、
13日は月曜日になる確率が一番高かったはずで、金曜日になるのは
400年間に4800回ある13日のうち685回、ほぼ平均通りだったのですが。
日付のほうは、春分の日を3月21日にすべく気を払ったのかも知れませんが、
曜日のほうは、安息日が7日ごとに訪れるほうを重視したのかも知れません。
ところで先ほど、ニケーア宗教会議を西暦325年と書きましたが、実は、
ニケーア宗教会議のときにはその年が西暦325年かどうかは知られて
いませんでした。
というのは、西暦は、エクシグウス(D. Exiguus)が、532年で一巡する復活祭の
日取りとイエス復活がユダヤ教の「ニサン月(1月)の14日」とされていること、
イエスがそのとき満30歳だったという伝承に基づき、逆算して、エクシグウスが
それを算出した年がイエス誕生から525年目である(=西暦525年)、と
はじき出したわけで、それまで「イエス誕生から何年目」という勘定自体が
存在しなかったから。だから、ニケーア宗教会議が西暦325年というのも、
遡ったら325年にあたる、というだけに過ぎません。
もう1つ。
『ハムレット』で有名なイギリスの作家シェークスピア(W. Shakespear)は
1616年4月23日没。また、『ドン・キホーテ』で有名なスペインの作家
セルバンテス(M. de Cervantes Saavedra)も、1616年4月23日没。
でも、セルバンテスのほうが10日早く亡くなっています。どうしたことかというと、
スペインはグレゴリオ暦が1582年に始まるのと同時にグレゴリオ暦を
採用していたわけですが、イギリスは遅れて1752年になってようやく
採用したので、シェークスピアが亡くなった1616年4月23日はユリウス暦。
グレゴリオ暦で言うと1616年5月3日でした。セルバンテスが亡くなった
1616年4月23日はもちろんグレゴリオ暦での日付なので、セルバンテスの
ほうが10日早く亡くなっていたわけです。
─── pierres blanches.
グレゴリオ暦は1582年10月15日に始まったので、400年後にあたる
1982年10月15日に、初めて400年の1サイクルが終わって2サイクル目に
入りました。今年は2010年ですから、まだ2サイクル目に入って28年しか
経っていません。今年のカレンダーは1610年のカレンダーと全く同じですし、
今日2010年1月30日が土曜日なので、1610年1月30日も土曜日でした。
よく、万年カレンダーとか、何万年分かカレンダーを暗記している、といった
人もいるようですが、事実上、400年分覚えていれば大丈夫。