◎前回までのあらすじ
2011年4月、灼熱のシンガポール。三十痔を目前とした俺に再度ふりかかった、肛門の痛み。俺は、チャイナタウンの一角にある薬局を訪れていた。
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若はげ、水虫などの薬の横に、威風堂々と並ぶ痔の薬たち。
そのパッケージに目を走らせると効能が記されている。 
中国語は読めないが、漢字の並びから、効能が、血の流れをよくし、痛みを抑え、炎症を止めるらしいことが想像できた。 

「いぼ痔に違いない」 
俺の中では確信に変わっていった。
今回の症状 = i) 肛門の周囲に腫瘍があり、ii)出血はなく、iii)あな痔の完治手術は受けている =いぼ痔。 そんな俺にはうっ血を排除する効能をうたう飲み薬が最適であろう。
俺は並ぶパッケージから一番うっ血によさそうなものを購入すると、帰路についた。
(ちなみに、出血する場合は、切れ痔か、大腸のもっと大きな問題である場合が多いらしい。「うぁ、あな痔って大変なんだね。俺は血が出るだけだからよかった」と言っているあなた、今すぐ荷物をまとめて肛門科へ行ってください)
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プロフェッショナルなマーケターとして、常に100%パフォームするために、体をメンテナンスすることは当然だ。
筋トレとか、有酸素運動とか、加圧トレーニングなんて古い。
時間がないなんて言い訳、言語道断。

「アナルを整える」
ビジネスパーソンならこれに尽きる。
これこそが勝利をたぐり寄せる秘訣だと、俺は経験則から知っていた。

家に帰るとさっそく薬をあける。
薬自体は、サプリメントのオメガ3のような形状、小指の第一関節くらいの大きさ、色は漆黒だ。
一日三回、食後に飲むらしい。その日から、俺の仕事かばんに、痔の薬がジョインすることとなった。

朝、ヨーグルトとバナナと一緒に、痔の薬。
昼、ウェンディーズのベイクドポテトと一緒に、痔の薬。
夜、ホーカーズ(屋台)のパッタイと一緒に、痔の薬。

「やると言ったらやる」
ただひたすらに俺は痔の薬を食後に飲む。
薬のパッケージには大々的に「痔」と書いてあるので、ビタミン剤の容器に移して持ち歩き、飲む。
知り合いに「それ何?」って聞かれたら、「サ、サプリメントに決まってるだろ~」とへらへら笑いながら、飲む。

そんな日が5日ほど続き、俺はオフィス19階のトレイの一室に籠ると、恐る恐る肛門を調べてみてみることにした。
痔の患者にとっては常識であるのだが、iPod Classis、iPod Touchの裏側は、鏡面仕上げになっているので肛門を調べるのに最適である。しかも手鏡と違って、トイレに持ち込んでも怪しまれないのでベストパートナーだ。(Nanoだと小さいから非常に高いテクニックが求められる)
俺はiPodの鏡面仕上げの向こうに信じられない光景を発見した。

「赤いマスカットが消えてないよ」

俺は慌てながらも、息を整え、指をスライドインさせる。

!!大きくなっているよ」

これは、2009年と全く同じ悪循環のループ。 自分で治そうとして、さらに深刻な状況を招いてしまった。

「俺たちは…何もかも…何もかも遅すぎたんだ」
kibayashi_3


俺は中学生のころお世話になった、キバヤシさんのセリフを口に出さずにはいられなかった。
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シンガポール中心部から電車で10分ほどにある、Novena。
そこにある、会社の19階のオフィスで俺は途方にくれていた。

第二次世界大戦、ガダルカナル島、ブーゲンビル島で敗戦を喫した日本は、戦力の逐次投入→リソースで常に不利→状況悪化、という悪循環に陥っていた。
リソースで上回る場合の波状攻撃と違い、逐次投入では、さらにリソースのギャップが大きくなり、原状回復すら困難になる。
俺はまさにこのトラップにはまったといえる。マッサージ、処方箋なしの薬。 まさに、戦略論の教科書から逸脱したアクションであった。

間違いに気づいたら潔くそれを認め、アクションを取るべき。
善は急げ、だ。

2009年のドアラ事件から(第1部 9話 「結果こそがすべて」参照)、痔の話を英語で伝えることの困難さが身に染みていた俺は、当時私が属するヘアケアの日本人リーダー的存在の加納さん(仮名)へと相談することにした。

彼をハドルルーム(少人数の会議室)に誘い、俺はコンクルージョンファーストで切り出した。
「加納さん、痔になりました。 一緒にごはん言ったときに飲んでいたのはサプリメントでなくて痔の薬だったんです。なんかいい病院知りませんか?」
加納さんは健康体そのもの、痔とは無縁。だが俺は藁をもつかむ思いだった。
そんな俺に対して、加納さんは思いがけない言葉をかけたんだ。

「おぉ、ほんまかぁ。 せやったら、people's park complex(チャイナタウンにあるショッピングセンター)によさそうな痔の病院あんねん。 紹介したろうか?」

持つべきものは先輩・メンターである。今まで公私ともに何度も助けてもらい、その見識の高さ、人としての器の大きさから尊敬を集める、加納さんであるが、痔でも助けてもらうとは。

俺は何度も頭を下げると、病院の場所を詳細にメモした。

その時、俺は気づくべきだったんだ。

加納さんの瞳に不思議な光が灯っていたのを。

好奇心っていう光が、ね。
(来週に続く)
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今週のQ&A
今週も訪問ありがとうございます。 いよいよシンガポール編でも病院への一歩を歩みだしました。 シンガポールにいる方はチャイナタウンに思いを馳せながら、日本にいる方はそんなシンガポールの痔の息吹を感じ取っていただいたら幸いです。

今週は質問ではなく、読者の方に教えていただいたもの、最近私が知ったことを紹介します。

1) シートン法の図解について
何度かチャレンジしたものの、なかなかわかりづらいシートン法の図解。
やっぱり、本当に理解いただくためには、痔になって、皆さんにも当事者になっていただくのが一番いいのでは?と思っていたのですが、「団地妻」さんからサイトを紹介いただきました。
「よくわかる大腸肛門科」のシートン法のページです。
http://daichoukoumon.com/zirounosyuzyutusetonhou.html
このサイトがすごいポイントは三つあります。
●トップページに行っていただくとわかるのですが、ものすごい数の術法がイラストで載っています。
●それも、二つの視点からのイラストになっているので、脳内で3D化された患部がいきいきと蘇ります。
●さらに、私の出身地 千葉県柏市に在籍されているようです。さすが、千葉の渋谷こと、柏ですね。丸井ありますし。
というわけで、正確に肛門の病気、手術を知りたい方は是非ご覧ください。

2) 古代中国の痔についてです。
古代中国から神医と崇められてきた、伝説の医者「華佗」。かの三国志の主役の一人、曹操の頭痛を治したことや、数々の伝説エピソードがその生涯を彩っています。
そんな華佗、麻沸散という麻酔薬を使い外科手術をしたといわれいているのですが、どうやら麻沸散は痔の手術にも使われたようです。華岡青洲から1600年ほど前に既に麻酔は痔に使った華佗。乱世にありながらも、整えるべきものをちゃんと整える、さすがの一言です。

では、今週も素晴らしい一週間を。

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