ぴおブック覚え書き

読んだ本のレビュー、文学に関すること等を気ままに綴ります。

別ブログに書いた読書レビュー(音楽関係本)のリンク集・第2弾。
小説関連の本、フィクションのみ、著者名も記します。
さすが8月、夏休み。読み応えのある本ばかり、けっこう読んでいました。

『音楽に生きる ダニエル・バレンボイム自伝』1993年刊

『ストラディヴァリとグァルネリ ヴァイオリン千年の夢』2017年間刊

『近衛秀麿―日本のオーケストラをつくった男』2006年刊

『諏訪根自子 美貌のヴァイオリニスト その劇的生涯 1920-2012』2013年刊

須賀しのぶ『また、桜の国で』2016年刊

エティエンヌ・バリリエ『ピアニスト』2013年刊

川上未映子、村上春樹 『みみずくは黄昏に飛びたつ』2017年刊

前回投稿の『ボーダーライン』、ちょっと投稿仕様が変わっていますが、
これには理由があります。この仕様、
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書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

の書式なんです。
上記サイト運営の方からのお誘いを受けて、こちらに登録したのが、つい先日の8月1日のこと。
(こちらでも、ハンドルネームPIOで活動中)

以来、新たに読んだ本、当ブログ&旧ブログ(ココログ)の方に書きためていた本もあわせて、夏休みを利用してシコシコとアップしているところでして、このコミュニティでの投稿にも慣れてきました。

20日間で40冊のレビューをアップし、
500ポイント以上獲得して、4級から1級までレベルアップ…って、
つくづく物好きのわが身です。

で、試しに上記コミュニティと同じ書式で書いてみたのが『ボーダーライン』ってわけです。
でも、まったく同じっていうのも、実は問題あるかも……なので、これからどんな風にアップしていくかは、また考えてみます。(8/21追記)
とりあえず、書籍レビューサイトのご紹介ということで。

あ、音楽関係の本については、これまで同様、メインブログの
ぴおピアノ雑記帳
のほうで、記事にするかも。その辺は臨機応変に行きたいと思います。

真保裕一『ボーダーライン』 集英社文庫 2002年

信販会社の調査員・日系人のサムが、凶悪事件に挑む小説。キーとなるのは米墨国境。でも捕り物劇より、上司、恋人、依頼者らとの人間関係のほうが読ませます。題名は「一線を越える」人間の暗喩でもあるかと。
)最高は5つ
注:試しに、書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」と同じ書式で書いてみました。
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集英社文庫の「ナツイチ2017」という読書案内中の一冊です。
真保裕一というと、『ホワイトアウト』『繋がれた明日』『ダイスをころがせ!』あたりを読みましたが、展開のスピード感、テーマの持つ社会性、登場人物たちの連帯感などが身上だと思います。
本作もその流れに乗る作品です。

著者初の本格的ハードボイルド小説!というのがウリだったみたいで、確かに冒頭から拳銃が登場しますし、人はどんどん死にますし、主人公サムも銃弾浴びますし、物語の終盤では自らバリバリぶっ放したりもします。

でも、読み終えたあとに心に残るのは、そういったアクション・シーンではなく、サムの上司・関口、警察内でサムに協力するダニエル、サムの調査対象サニーの父親、なぜか家を出てしまった恋人、などなどとの人間ドラマ。

そして、実はこの小説、「生まれながらの人非人、人としてのボーダーラインを超えた悪魔が我が子だったらどうするか」がテーマであったりします。サムの調査対象・笑顔で人を殺す若者サニーが、まさに悪魔なのです。

スピード感でワーッと読ませてしまい、その後でじわじわ考えさせるような小説だと感じました。

今野敏 集英社刊 2015年(2017年文庫化)

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集英社文庫の「ナツイチ2017」に掲載されているというので、興味を持って読んでみました。
今野敏といえば、ハラハラドキドキの警察小説を度々読んでいますが、
(たとえばこれ→『隠蔽操作』
本作は、趣をまったく異にするものでした。

青春小説、どまんなか、です。

タイトルそのままに、入寮してきた高校1年生の生活を描くこと、寮を自分の居場所を感じるまでになっていく過程を追うことがテーマなのかなあ、と思います。

一応は、
~寮の屋上から飛び降り自殺したとされる2年生の死の真相は?~
~前年も同じ形で死を選んだ先輩との関連は?~
という謎はあるのですが、こちらは実に単純です。
それより、真相にたどりつくため、その先輩の交際相手の女子高生に会う手続きのほうが丁寧に描かれたりしています。

小説手法として「なるほど~」と思ったのは、
亡くなった先輩二人の苗字だけがカタカナで「アサイ」「シマダ」と明記されていること。
最初はなぜ??と思ったのですが、この二人の事情が会話の中で説明されると、このカタカナ書きのおかげで、わかりやすく読めるのです。
こんな工夫のおかげもあって、とにかくサクサク読める、軽い本でした。
再読することはないでしょう。

野沢 尚 著  初出は2000年4月~2001年1月、『小説すばる』。
単行本化が2001年集英社、文庫化(集英社文庫)が2004年。
そう、15年以上前に出た本です。

官僚を輩出する有名国立大学構内の、学生自治寮取り壊しを巡るストーリー。
1980年代に、大学構内ではないまでも、同じように国立大学の学生自治寮に住んでいたわたくし、当小説のモデルだったであろう東大駒場寮のことも知らないわけではなく、のっけから親近感。。。

題名のボヤージュとは、Voyage…出航 旅立ち(さりげなく内扉裏に記載)。
学生たちに立ち退きを命じ、寮取り壊しを実行に移そうとする大学側が送り込んできたのは、寮の自治に一票を投じる権利を持つ舎監、ガタイの良い40代男性、名倉憲太朗。
この舎監・名倉が、
65年前に制定された「弦巻寮。入寮規則」を根拠に、寮の規律を強化するとともに、
「私の仕事は、寮生の安全を守ることです」
という言葉そのものの行動をとります。
危機に立ち向かう彼の立ち居振る舞いなどは、さすがTVドラマ脚本家の作!という臨場感です。

そして、主人公の坂下薫平。
おどおどしていた医学部1年生が、名倉の影響を受け、寮生たちの人間関係の中で揉まれ、恋愛相手も得て、成長していく物語でもあります。
薫平とともに、弦巻寮の寮生たちが実に個性的かつ生き生きと描かれます。
その経緯は

第1章 断絶
第2章 前途
第3章 狂歌
第4章 親愛
第5章 籠城
第6章 聖夜

という章立てからも類推できるとおり。
学生たちの会話がテンポよく、最後のクライマックスまで、するすると一気に読んでしまいました。
世相も取り込んだ、直球の青春小説。

「銀行が世間の逆風にさらされ、金融ビッグバンで余った銀行員がはじかれるご時勢とはいえ、大手都銀の新卒採用というのは最高のステイタスなのだ。」
という記述や、「パソコン通信」などの語彙に時代の差を感じはしますが、
生き生きと躍動している若者たちの姿は、今も色あせないと感じました。

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岩木一麻著  宝島社 2017年

区立図書館で人気の本のようなので、予約してしてみました。
よく内容を確かめず、題名から新書のような本を予想していたところ、大違い。 
ミステリー大賞を取った、娯楽小説でした。

 うーん。
ちょっとご都合主義が鼻に付く感じで、個人的にはあまり高い評価はつけられません。
社会的に影響力の大きい、高い地位にある金持ちと、
不遇な境遇で頑張って生きている、市井の弱者。
二つのカテゴリーに属する人々を、癌を手段として、正しく動かそうとする
そんな意図を持った人々と、
その動きを嗅ぎつけ、解明しようとする元同級生たちの物語です。
同級生たちは生き生きと動いて共感できるのですが、
物語の核を担う「先生」という人物像がよく理解できないままに終わってしまいました。
私がニブイのかもしれませんが。。。


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別ブログに書いた読書レビューのリンクを貼っておきます。
音楽関係の本です。

風のジャクリーヌ

ジャクリーヌ・デュ・プレ

バイエル原典探訪

日本人とショパン 洋楽導入期のピアノ音楽

『ピアニストたちの祝祭』より
 「進化するフジ子ヘミング」「闘う音楽家、ダニエル・バレンボイム


2011年刊行の文庫本(角川文庫)。
恩田陸の著作を読むなら、まずはコレ!……というおすすめをwebで見て読んでみました。
なるほど、引き込まれて、あっという間に読んでしまいましたが、
ううむ。同じくらいあっという間に、ストーリーも忘れてしまうかも。。。
かなり軽いノリです。

マンガ「ガラスの仮面」のストーリーに触発されて……という著作のようですが、
話の筋は、かなり違います。言われなければ、気づかなかったかもしれません。
いわゆる「天才」の少女、生まれながらの女優(でも本人は気づいていない)が、
さまざまなオーディションに参加し(でも本人が立身出世を熱望しているわけではない)、
認められていく過程を描きます。

芸術もの、若者の成長物語、という点では
直木賞受賞作の『蜜蜂と遠雷』のほうが、はるかにレベルが高いと思います。
はからずも、恩田陸自身の小説家としての成長を見たような気がしました。

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1991年に書下ろしで刊行され、
翌1992年に第45回日本推理作家協会賞の長編部門を受賞した作品。
たしか、そのころに一度読んでいるはずですが、完全に忘却の彼方。
今回、たまたま授業で扱った読解問題の出典になっていたというご縁で、再び手にとりました。

超能力者がテーマということで、
そういう方面のお話は避ける傾向のある私ですが、この作品は、抵抗感なく入り込むことができました。
そして、宮部みゆきのその後の展開の「種」のようなものがあちこちに読み取れるという点からも、面白く読めました。

主人公、高坂昭吾は雑誌記者。いわば出版関係者。
彼が心の傷として抱える小枝子は、「お蚕ぐるみ」で育てられたお嬢さん。
→この関係を極端化すれば、「名もなき毒」に始まる杉村三郎シリーズ原型?
マンホールの蓋を開ける……
平凡な日常に潜む「悪意のない」、でも正真正銘の悪事を描くと言う手法も。

高坂の心の傷を知る職場の人たちの人間関係、いいなあと思いました。
そして、そういう人間関係をまったく持たない人、振り捨ててしまう人がいることにも思いを馳せました。

「ことによると、我々は本当に、自分のなかに一頭の龍を飼っているのかもしれません。底知れない力を秘めた、不可思議な姿の龍をね。それは眠っていたり、起きていたり、暴れていたり、病んでいたりする。」

本書の中ではごく端役の老刑事の言葉です。
私の中の龍は、明らかに病んでいるなあと思うこの頃。
この後の刑事が言うように、その龍が私を守ってくれるとはとても思えません。。。
その一方で、
人間関係を捨てる者の中にも、眠れる龍…今後の可能性…は存在するのかなあとも思いました。

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講談社現代新書 2387 (2016年9月刊行)
木村草太著 国谷裕子対談『憲法という希望』

憲法は「希望」なんだ、ということが、すっと胸に落ちる。
そんな、大変読みやすい啓発本でした。

◆論理立てが肝
夫婦別姓訴訟の主張が却下されたのは、男女差別を軸に訴えていたから。
(そもそも姓の変更は強制されていない…嫌なら婚姻しなければよい)
(そもそも男女の区別はない…男性の姓に合わせろとは言っていない)
→「そもそも区別が存在しないので違憲ではない」と門前払いの結果に。
もし、
「同姓になることを許容するカップル」と「同姓になることを許容しないカップル」との間の不平等を軸に訴えていたならば、少なくとも門前払いは避けられた。
→「家族法は夫婦同姓を推奨し、そうでないカップルを排除しようとしている」という主張は、
「いかなるライフスタイルを選ぶかは個人の自由であって、国家が介入してはいけない」という個人の尊重の理念に反する

つまり、こうした「理論」をどう立てるかが重要なのですね。
「困っています」と訴えて同情をひくだけでは、法律上は何も解決しないわけです。
凄腕の弁護士というのも、論理の立て方が上手な弁護士を指すのでしょう。納得!

◆権力は暴走する
歴史的にみると、権力の暴走を止めるために法律が生まれてきた、ということ。

筆者は、辺野古への米軍基地設置について
「本来であれば、憲法41条および92条により、米軍基地の新設には根拠となる法律が必要」なのに、現実では「閣議決定と日米間の合意を根拠とするのみで、具体的な根拠法が存在しない」ことを指摘し、国側の反論を待ったところ、
安全保障は国の事務だから国が決める、法律の制定も不要 という回答が来たとのこと。
つまり、
内閣が「ここに基地を造る」と閣議決定して、アメリカと合意ができれば、そこに基地を造ってよい
と政府は本気で考えている。

権力者が自ら進んで人権を守り、権力分立を進めていくとは期待できない。
憲法を守らせるのは、究極的には私たち国民。
権力者が不当なことをしていたら、「それは許されない」と声を上げなくては。

具体例をともなう記述に、大変納得させられました。

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