きょうは手持ちの書籍を紹介したいと思います東村山ですこんばんは。
私は基本的に戦車モデラーですが昔1/700ウォーターラインの軍艦プラモデルを何隻か仕上げてまして艦船模型にもイロイロと興味があります。でもって過去にこんな本を買いました。
ポーランドの艦船モデラー、ヤヌス・シコルスキー氏の自作模型の写真集です。
ヤヌス・シコルスキー氏は冷戦時代から日本軍艦艇の模型をスクラッチビルドしていたという奇特なモデラーさんでして1/1000で凄い作品を作っている。
これで1/1000というのだから驚きです、撮影はピンホールカメラだそうです。昔の共産主義国ポーランドでは良いカメラやレンズの入手は困難だったのでしょう、ピンホールカメラは構造が単純で深い被写界深度が得られる(奥行きのある撮影対象にピントが合う)のですな、器用な人だからカメラも自作かもしれません。
製作を解説したイラストも載っていますが真似出来る気がしない…
コチラは日本のモデラーによる写真集
内山睦雄氏はもっぱら木材と紙で作っているらしいです。
コチラも凄い迫力、スケールは大きくなってますがやはり真似出来る気がしません。
作業風景の写真とかワクワクするよね。
とまあ模型の世界もイロイロ有るんだなぁ、と思っていた訳ですよ。
そんなある日神田神保町の文華堂書店でこの本を見つけまして
まあ、文華堂書店と言う店名を覚えたのも最近なんですけどね、長い間「軍事関係の良さげな書籍が一杯あるアノ店」という認識だった。レシートに店名が入って無いし
それはともかく昭和50年(1975年)に出版されたモデルアート社のこの本は「世界の艦船」という雑誌のバックナンバーで広告見て以来ずっと欲しかった本でして
こんな写真が載ってたりする
凄いなぁもう。随分と昔の作品なんですが、こういうのを見ると果たして模型製作の技術というものは時代と共に進歩しているのか疑問に思えてきます。
もちろんヤヌス・シコルスキー氏のような極小名人芸と違ってある程度大型の模型なんですが、大きければ作れるのか?といえばそうでもないでしょ。もはや技術とかスキルとかそういうレベルでは無い、一種執念じみた物がないとこういう模型は作れない気がする。表面の微妙な凸凹具合がリアル感を強調していて見ていて恐ろしい程です。
この時ついでに買ったのがコレ、多分同じ人が文華堂書店に売りに来た気がする。
状態は良くないですが、こちらは昭和36年(1951年)の模型製作ノウハウ本です。
中はこんな感じ
まあ、正直そんなに詳しい内容ではない。あくまでも「そこそこ」の模型を作る為のノウハウ書ですが「模型とラジオ」を子供の頃耽読していた私としてはこういう本はワクワクするんです。
というか昔の本はイラストが満載である意味今の本より豪華だね、分かり易いかどうかは別として。
さらにこの本も同時に買った、これも同じ売却主だろうか?
戦前、と言うか戦時中(昭和16年=1941年)に出版された模型製作の本。出版社は戦後に「子供の科学」を出版していた誠文堂新光社。
結構キレイな写真が載ってたりする。
「あー、船体の曲線の作図はこうやってするのか」と思ったり
貨物船とかの甲板に設置されているウィンチの解説がある、こういうのは軍艦模型の本にはあんまり無いなぁ、と思ったり。
これは木材と紙で作るゴム動力の模型船の図面です。
船体喫水線下の表面積を求めたり、そこから船体の水流抵抗値や速度を計算式で推測したりと基礎の造船工学的な記事が載っています。コレを読んだ子供たちが将来立派な造船技師になれるようにという思いをこめたのでしょうか?それとも戦時下に趣味の模型製作の本を出すのも気が引けるので実用的な記事を入れたのでしょうか?
まあ、ともかく昔の模型事情が伺えて面白い。もう3.4年経ちますかね、これらの本を買ってから。
で、今年に入ってから同じく文華堂書店で入手したのがコレ
「艦船模型の制作と研究 妙高クラス」です。
不二美術模型出版部による妙高クラスの工作本です。昭和51年(1976年)の本でとうじ4800円でした。コレは5500円で購入、少々傷んでますが随分の掘り出し物です私としては。この本も「世界の艦船」のバックナンバーに広告が載ってまして欲しかった本です。
中身はプラモデル(ニチモ1/500)の改良工作記事と、木材やケント紙を使った大型フルスクラッチ模型の工作方法の記事でして、言うまでも無く後者が非常に興味深い。
木材を積層して船体を作ってます。図面から作った冶具を当てたりして
船体の喫水線を正確に塗り分ける為の大きな冶具を作ったり
真鍮材からスクリューを作ったり。
「スゲー、スクリューって自作出来るんだ!」と思ったり。
まあ、そんなこんなで大型精密模型の作り方が詳しく載っている「読むキット」みたいな本なのですよ。
出版元の不二美術模型という会社は船舶模型を作る企業でして、船舶模型と言っても趣味で作るような物ではなくて造船会社が船のオーナーに贈呈するための模型を作ったりする会社ですから「趣味人の為の楽しい模型」というよりは「マジなビジネスの為のガチな模型」を作るメーカーでして、つまりそういう模型製作の為の技術がキッチリ書かれている、らしい。
後日、軍学堂というわりと新しい古本屋さんでコレも買いました
「軍艦の模型 基礎から実技まで」
昭和46年(1971年)だから上の本より少し前の出版ですな。当時の値段が3500円、コレは9000円で購入。プレ値といえばプレ値ですが当時と今の物価水準を比べると「まあ、仕方ない」かな。
中身はというと
だいたいこんな具合。詳しいといえば詳しいのですが、ひとつの船を始まりから終わりまで製作する手引きというよりは個々の部分の製作技法を羅列した感じです。
付録に付いてきた防空駆逐艦秋月の図面
なんというか、大型軍艦模型の自作を学ぶには上で挙げた「妙高クラス」の本をとりあえず作ってみて、細かい部分の工作の参考として「軍艦の模型」模型を読むという風にすれば「最強」かと思います。
「軍艦の模型」には資料集めの方法とかも書いてあるのですが、
「困ったときには文華堂書店」みたいな事が書いてあります。あそこは昔から「その筋」の人たちのメッカだったのですな。
とまあ、こういう具合に「模型の世界」と言っても広うござんすよ。
最近では「模型」というとプラスチックモデルという事になりまして、模型雑誌もほぼそういう物しか取り扱ってない。こういうノウハウ本を探すとなると古本で探すしか無くて非常に苦労する、というか偶然的な出会いが要る。
なんでそうなのか考えてみれば、大型艦船模型のスクラッチビルドをする人は素材と工具と図面と資料しか買わない訳で、要するに「模型業界」に金を落とさない。
だからまあ、模型雑誌も隠している訳では無いだろうが、模型雑誌を読んでいるだけではこういう情報に接する機会はほぼゼロという訳。
しかしまあ、なんというかプラモデル界から見れば随分と異質な世界です。私が子供の頃はオヤジ達は「プラモデルなんぞ子供だましのオモチャ」みたいな言い方をしていましたが、つまりはこういう世界が存在していたという事ですな。
こういう自作船舶模型の世界というのは「マニアック」とか「ディープ」とかいう言葉では言い表せない気がする。プラモデラーの進化形というよりは、元々の生い立ちからして違うのでは無かろうか。
私が想像するこのような模型製作者というのは、戦前の生まれで実際に大日本帝国海軍の軍艦を間近で目撃した事があり、軍艦好きが高じて模型製作に手を染め、戦後になってから詳しい図面や資料写真が利用できるようになって精密艦艇模型を作るようになった。もしくはそういう人間と接触が有った若い世代とかそういう人達がプラモデルでない素材から真剣に作った軍艦模型の製作者になるのではないかという気がする。
などと思いつつ、いつか私もやってみたいなぁ等と考えたり。
ではまた
私は基本的に戦車モデラーですが昔1/700ウォーターラインの軍艦プラモデルを何隻か仕上げてまして艦船模型にもイロイロと興味があります。でもって過去にこんな本を買いました。
ポーランドの艦船モデラー、ヤヌス・シコルスキー氏の自作模型の写真集です。
ヤヌス・シコルスキー氏は冷戦時代から日本軍艦艇の模型をスクラッチビルドしていたという奇特なモデラーさんでして1/1000で凄い作品を作っている。
これで1/1000というのだから驚きです、撮影はピンホールカメラだそうです。昔の共産主義国ポーランドでは良いカメラやレンズの入手は困難だったのでしょう、ピンホールカメラは構造が単純で深い被写界深度が得られる(奥行きのある撮影対象にピントが合う)のですな、器用な人だからカメラも自作かもしれません。
製作を解説したイラストも載っていますが真似出来る気がしない…
コチラは日本のモデラーによる写真集
内山睦雄氏はもっぱら木材と紙で作っているらしいです。
コチラも凄い迫力、スケールは大きくなってますがやはり真似出来る気がしません。
作業風景の写真とかワクワクするよね。
とまあ模型の世界もイロイロ有るんだなぁ、と思っていた訳ですよ。
そんなある日神田神保町の文華堂書店でこの本を見つけまして
まあ、文華堂書店と言う店名を覚えたのも最近なんですけどね、長い間「軍事関係の良さげな書籍が一杯あるアノ店」という認識だった。レシートに店名が入って無いし
それはともかく昭和50年(1975年)に出版されたモデルアート社のこの本は「世界の艦船」という雑誌のバックナンバーで広告見て以来ずっと欲しかった本でして
こんな写真が載ってたりする
凄いなぁもう。随分と昔の作品なんですが、こういうのを見ると果たして模型製作の技術というものは時代と共に進歩しているのか疑問に思えてきます。
もちろんヤヌス・シコルスキー氏のような極小名人芸と違ってある程度大型の模型なんですが、大きければ作れるのか?といえばそうでもないでしょ。もはや技術とかスキルとかそういうレベルでは無い、一種執念じみた物がないとこういう模型は作れない気がする。表面の微妙な凸凹具合がリアル感を強調していて見ていて恐ろしい程です。
この時ついでに買ったのがコレ、多分同じ人が文華堂書店に売りに来た気がする。
状態は良くないですが、こちらは昭和36年(1951年)の模型製作ノウハウ本です。
中はこんな感じ
まあ、正直そんなに詳しい内容ではない。あくまでも「そこそこ」の模型を作る為のノウハウ書ですが「模型とラジオ」を子供の頃耽読していた私としてはこういう本はワクワクするんです。
というか昔の本はイラストが満載である意味今の本より豪華だね、分かり易いかどうかは別として。
さらにこの本も同時に買った、これも同じ売却主だろうか?
戦前、と言うか戦時中(昭和16年=1941年)に出版された模型製作の本。出版社は戦後に「子供の科学」を出版していた誠文堂新光社。
結構キレイな写真が載ってたりする。
「あー、船体の曲線の作図はこうやってするのか」と思ったり
貨物船とかの甲板に設置されているウィンチの解説がある、こういうのは軍艦模型の本にはあんまり無いなぁ、と思ったり。
これは木材と紙で作るゴム動力の模型船の図面です。
船体喫水線下の表面積を求めたり、そこから船体の水流抵抗値や速度を計算式で推測したりと基礎の造船工学的な記事が載っています。コレを読んだ子供たちが将来立派な造船技師になれるようにという思いをこめたのでしょうか?それとも戦時下に趣味の模型製作の本を出すのも気が引けるので実用的な記事を入れたのでしょうか?
まあ、ともかく昔の模型事情が伺えて面白い。もう3.4年経ちますかね、これらの本を買ってから。
で、今年に入ってから同じく文華堂書店で入手したのがコレ
「艦船模型の制作と研究 妙高クラス」です。
不二美術模型出版部による妙高クラスの工作本です。昭和51年(1976年)の本でとうじ4800円でした。コレは5500円で購入、少々傷んでますが随分の掘り出し物です私としては。この本も「世界の艦船」のバックナンバーに広告が載ってまして欲しかった本です。
中身はプラモデル(ニチモ1/500)の改良工作記事と、木材やケント紙を使った大型フルスクラッチ模型の工作方法の記事でして、言うまでも無く後者が非常に興味深い。
木材を積層して船体を作ってます。図面から作った冶具を当てたりして
船体の喫水線を正確に塗り分ける為の大きな冶具を作ったり
真鍮材からスクリューを作ったり。
「スゲー、スクリューって自作出来るんだ!」と思ったり。
まあ、そんなこんなで大型精密模型の作り方が詳しく載っている「読むキット」みたいな本なのですよ。
出版元の不二美術模型という会社は船舶模型を作る企業でして、船舶模型と言っても趣味で作るような物ではなくて造船会社が船のオーナーに贈呈するための模型を作ったりする会社ですから「趣味人の為の楽しい模型」というよりは「マジなビジネスの為のガチな模型」を作るメーカーでして、つまりそういう模型製作の為の技術がキッチリ書かれている、らしい。
後日、軍学堂というわりと新しい古本屋さんでコレも買いました
「軍艦の模型 基礎から実技まで」
昭和46年(1971年)だから上の本より少し前の出版ですな。当時の値段が3500円、コレは9000円で購入。プレ値といえばプレ値ですが当時と今の物価水準を比べると「まあ、仕方ない」かな。
中身はというと
だいたいこんな具合。詳しいといえば詳しいのですが、ひとつの船を始まりから終わりまで製作する手引きというよりは個々の部分の製作技法を羅列した感じです。
付録に付いてきた防空駆逐艦秋月の図面
なんというか、大型軍艦模型の自作を学ぶには上で挙げた「妙高クラス」の本をとりあえず作ってみて、細かい部分の工作の参考として「軍艦の模型」模型を読むという風にすれば「最強」かと思います。
「軍艦の模型」には資料集めの方法とかも書いてあるのですが、
「困ったときには文華堂書店」みたいな事が書いてあります。あそこは昔から「その筋」の人たちのメッカだったのですな。
とまあ、こういう具合に「模型の世界」と言っても広うござんすよ。
最近では「模型」というとプラスチックモデルという事になりまして、模型雑誌もほぼそういう物しか取り扱ってない。こういうノウハウ本を探すとなると古本で探すしか無くて非常に苦労する、というか偶然的な出会いが要る。
なんでそうなのか考えてみれば、大型艦船模型のスクラッチビルドをする人は素材と工具と図面と資料しか買わない訳で、要するに「模型業界」に金を落とさない。
だからまあ、模型雑誌も隠している訳では無いだろうが、模型雑誌を読んでいるだけではこういう情報に接する機会はほぼゼロという訳。
しかしまあ、なんというかプラモデル界から見れば随分と異質な世界です。私が子供の頃はオヤジ達は「プラモデルなんぞ子供だましのオモチャ」みたいな言い方をしていましたが、つまりはこういう世界が存在していたという事ですな。
こういう自作船舶模型の世界というのは「マニアック」とか「ディープ」とかいう言葉では言い表せない気がする。プラモデラーの進化形というよりは、元々の生い立ちからして違うのでは無かろうか。
私が想像するこのような模型製作者というのは、戦前の生まれで実際に大日本帝国海軍の軍艦を間近で目撃した事があり、軍艦好きが高じて模型製作に手を染め、戦後になってから詳しい図面や資料写真が利用できるようになって精密艦艇模型を作るようになった。もしくはそういう人間と接触が有った若い世代とかそういう人達がプラモデルでない素材から真剣に作った軍艦模型の製作者になるのではないかという気がする。
などと思いつつ、いつか私もやってみたいなぁ等と考えたり。
ではまた