「田中一村展」われ、天啓を得たり!

 奥田元宋・小由女美術館の「田中一村展」会場にて
R3田中一村展A




























長らく絵を描き続けていると、「天啓を得る」という瞬間がある。

去る4月22日、広島県三次市「奥田元宋・小由女美術館」で「田中
一村展」を見たときの衝撃は正にそうであった。

近年、田中一村に対する評価が高まり、注目されていることを知っ
てはいたが、作品を見る機会はなかった。

ゴールデンウイークに予定していた私の個展が、コロナ禍の影響で
突然中止となり、茫然自失、傷心の痛手を慰めるために訪れた同美
術館で、77点の代表作を見ることができた喜び。大げさだが「天、
我を見捨てず!」の心境であった。

田中一村は1908年(明治41年)、現在の栃木県栃木市に生まれた。
若い頃から南画に才能を発揮し神童と謳われたが、その後の絵画人
生は決して平坦なものではなかった。

東京美術学校をわずか2ヵ月で中退、青龍社展や日展、院展に発表
の場を求めたが落選続きと何度も挫折を味わい、西日本遍歴の末、
たどり着いたのが日本の最南端・奄美大島であった。

この地に永住することになろうとは、本人でさえ思ってもいなかっ
たようだが、長年憧れていた景観を目の当たりにし、自然美の虜と
なり、離れられなくなった。

画家にとって、自分の好きなモチーフに囲まれ、来る日も来る日も
描き続けられる幸せは何物にも代えがたい。中央画壇とのしがらみ
から解き放たれた一村は、南海の自然や動植物を大胆に構成した鮮
烈な作風を追い求め、独自の画境を極めていった。

 田中一村展の展示作品(展覧会フライヤー)
R3田中一村






























今回の回顧展は、同美術館の開館15周年記念展として、「田中一村
展・奄美へとつづく道」というタイトルを掲げ、3月26日~5月5
日まで開催された。

本展では、栃木・東京における南画家としての初期から、模索を続
けた千葉時代、そして南海の風物を主題とした鮮烈な作風が花開い
た奄美時代、と3つの章に分けて展示されている。

三時代、いずれの作品にも作家独自の感性、真実を見通し表現する
技術力、筆致の力強さがあふれているが、一村の画境は奄美大島の
作品に至って一変した。

南国の風景、植物や小動物の生命力に富んだ輝きを、精密な写実と
装飾性とを調和させた独自の技法により表現している。「南の琳派」
と称賛される所以である。

本ブログの冒頭、「天啓を得た」と大声を上げたが、私の進むべき
道は正に一村にありと悟ったからだ。

徹底的に写実を描いて写実にとどまらず、内面を描写する。
細部を疎かにせず愛情込めて描き、以って大いなる宇宙を表現する。
色彩は精神の発露、極限まで純化して彩色し、画面に心地よい緊張
感をもたらす。
事物を描いて空間を表現する。余白こそ画境の高さを示す。

以上の境地を目指して、心もとない歩みを続けるべしと発心したが、
さて、どうなることやら。

 生前の田中一村(「別冊太陽」より転載)
R3田中一村肖像





























 田中一村の代表作「アダンの海辺」(別冊太陽より)
R3田中一村アダン
























































 田中一村の代表作2「不喰芋と蘇鉄」(同上)
R3田中一村くわずいも










































 

個展消滅! 夢幻の如くなり

 傘寿・愛媛県教育文化賞受賞記念個展目録
個展目録1





































「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」
                  幸若舞「敦盛」の一節

私の書架に津本陽の小説「下天は夢か」3巻が飾られて久しい。
織田信長の一代記で、私の愛読書だ。信長は冒頭の言葉を愛し、大
事に臨み「敦盛」を謡い舞ったことは夙に有名で、小説でも随所に
登場する。

「人の世の50年間は、天界の時間と比べると夢幻のように儚いもの
だ」というほどの意味。最近なぜか、この一節を思い出して仕方が
ない。

実は、私の10年ぶりの個展「傘寿・愛媛県教育文化賞受賞記念展」
が突然中止になった。柄にもなく無常観に打ちひしがれ、落ち込ん
でいるせいかも知れない。

同展は、4月27日~5月9日の間、新居浜市美術館(あかがねミュ
ージアム)にて開催する予定であった。準備万端整い、展示作業を
残すのみとなっていたが、愛媛県のコロナ禍は深刻さを増し、美術
館の閉館が決まったため、個展も夢幻 の如く消えてしまった。

 出品作品紹介。「山の発電所(端出場)」(F80号・1967年)
山の発電所


































今回の個展は「天・地・人 時よ、麗し」というタイトルを付けた。

私の画業65年間を振り返ると、奇しくも10年ごとに重大な転機が訪
れ、果敢にチャレンジして乗り切り、ひたすら前進し、気がつけば
80歳、傘寿を迎えていた。

この記念すべき年に、愛媛県教育文化賞を受賞することができた。
これひとえに、陰になり日向になり応援してくださった友人・知人・
家族のおかげであると思い、タイトルに感謝の気持ちを込めて開催
することを決めた。

私は、事を成すに当たって「天・地・人」を判断の基準としている。
すなわち、天の恵みを実感した今、私を育み慈しんでいただいた故
郷の美術館において、多くの人の支援を受けている今こそ機は熟し
たり、と早合点したのが浅はかであった。

新型コロナウイルスという強敵の存在を軽視していた。コロナ禍の
深刻な事態には危惧を感じていたが、まさか県内の美術館がすべて
休館になろうとは予想だにしなかった。

それにも増して、急遽実施を決めたため、散逸している作品の収集、
展示スペースの確保、案内状の配布等、すべての面において準備不
足であったことは致命的だ。

最後の頼りは、グループどんぐり会員の後方支援であったが、折悪
しく多くの会員がケガ・病気・業務の都合等で支障ができ、準備態
勢が整わなかったことは、返す返すも残念。

すなわち、今回は天の時、地の利、人の和、すべての条件が整って
いないのを見誤り強行した、すべては私の不明の致すところである。

 日展入選作「四阪島・風の日」(P100号・1983年)
四阪島風の日



















 インドの女神を描いた「摩耶の春」(S80号・2013年)
麻耶の春


























それにしても心残りは、私の作品の変遷を見てもらえなかったこと
だ。

個展のタイトルを「天・地・人 時よ、麗し」とした理由はもう一つ
ある。作品の移り変わりを、この言葉で表していることを知ってほ
しかった。

私のモチーフは年代ごとに変化している。

20代 始まりは別子銅山     一水会展初入選 
30代 四阪島に魅せられて    四阪島展開催(にいはま大丸)
40代 瀬戸の島々を巡る     瀬戸内の島展開催(県美術館)
50代 日本全国スケッチの旅   北海道・富士山・信州・大山
60代 なぜかインドの女神    インド取材旅行(3回)
70代 日本回帰 天空に遊ぶ   菩薩・天女・古事記・万葉集
80代 目指すは霊峰石鎚三十六景 葛飾北斎に挑戦

ご覧いただければお分かりのように、天地人すべてが私のモチーフ
である。最近は時空を越えて自由気ままに遊んでいる。名実ともに
遊行期を生きている。

今回は、美術愛好者のみなさんにご迷惑をおかけしたが、捲土重来、
いつの日か進化した秋山を見ていただきたいとは年寄りのカラ元気
か?! 

 日本回帰の記念作「雲上菩薩と天女」(F100号・2018年)
雲上菩薩と天女





















 最新作「霊峰石鎚」(F100号・2021年)
霊峰石鎚










































 










 

「どんぐり」R3年新春の暁に始動

 令和3年、活動開始。グループどんぐり(西条生涯学習館)
R2西条全員◎
















私が主宰するグループどんぐりは、令和3年の年明けを待ちかねて、
コロナ禍にも負けず、厳寒にもめげず、会員一同うち揃って活動を
開始した。

西条教室は1月6日(水)、新居浜教室は8日(金)にそれぞれ開
講。70歳を超える高齢者が多いにもかかわらず元気そのもの。描き
初めのモチーフ「梅の木と正月玩具」と真剣に取り組んだ。

新春恒例の石鎚スケッチは、天候の都合で1週間遅れて31日(日)
に実施。10名が集まって、西条市の加茂川河口から石鎚山を望み、
寒さに震えながら筆を走らせた。

真冬の屋外スケッチは身体に応えるが、現場主義は私のスタイル、
参加者は文句も言わず付いてくる。冷たい風に身を委ね、「空気を
描く気概を持て!」 と叱咤激励しながら、約5時間頑張った。

 西条生涯学習館にて「グループどんぐり絵画展」を開催

R3西条小品展2






































続いて、グループどんぐり絵画展を2月2日(火)~19日(金)の
間、西条生涯学習館にて開催している。

当会の会員数は現在26名、多士済々、層も厚くなった。愛媛県美術
会員4名、準会員3名、県展出品者19名、中央展出品者4名、美大
卒業者7名(経歴重複あり)と、かなりレベルも上がった。さらに、
前途有望な新人5名が加わり、新風を吹き込んでいる。

今回は、そのうち19名が、油絵・水彩画・デザイン合せて32点を出
品している。小品展と銘打っているが、20~30号の作品が10点近く
揃って、かなり見ごたえがある。

以下、出品者および作品を紹介する。

私は、「茜さす(額田王)」(30号)と「光望・石鎚」(10号)を
出品。特に新作石鎚の、心象風景ともいえる斬新?な描写を見てい
ただきたい。

副会長 福島和幸「モネの庭」(30号)、「石鎚神社参道」(8号)
の水彩画2点を出品。一昨年の秋季県展で会員優賞を受賞するなど
進境著しい。巧みな構成力、色彩の冴えと深みに注目。

幹事長 安達和幸 「玉津漁港」(30号)、「晩秋の山門」(8号)
努力の人。会員の中で最も多く制作している成果が実って、描写力
は当会随一。筆が躍動している。

美術会会員 矢野秀明は手作りの画材で薔薇を描いて、装飾性豊か
な独特の境地に達している。美術会新会員の山中宗男は、長年「サ
ザレ鉱山」に愛情を注ぎ円熟の境地。

スリーグレイセス・3人の活躍も見逃せない。

最高齢の則包秀子「ノウゼンカズラ」(30号)は昨年新居浜市展で
教育委員会賞を受賞した記念の作品を出品。森実寿子は、県展で特
選3回、推奨2回受賞し、来年は会員推挙が約束されている実力者
で、絵に掛ける執念は半端ない。越智サエコは女性会員のまとめ役。
様々な古木に愛情を注ぎ連作を重ね、熟練の技を見せる。

デザインの安野 緑は、長年のブランクから抜け出て意欲満々。美
大卒の技術とセンスはさすが。今後に期待。星加祥子は色彩の魔術
師。近年「野間馬」の連作で新境地を拓き、ファンも多い。

近藤俊徳は東予のマチスと称され、点描による平面描写と純度の高
い色彩は魅力的。久保 守は水平線の魅力に採りつかれ、広々とし
た海景描写に情熱を注ぐ。

福島英治は独特の感性と表現力を持ち、将来性に富む。最近クラゲ
に魅かれ、異次元の空間を浮遊している。千葉真一は水彩画で心境
著しく、優しい筆致で事物の深奥に迫る。原田 優は、男性会員の
最年少。デッサン力抜群、人物画を得意とし、祖父や母親を描いた
水彩画を出品している。


新人の活躍も見逃せない。松本ひろ子の伸びやかな表現力、松本均
の納得いくまで描き続ける根性、鳥井智恵の天性の色彩感覚、武蔵
野美大卒の城戸直子の可能性に期待している。

美術愛好者のみなさん、ぜひ会場にて会員たちの力作をご覧くださ
い。

 どんぐり展の会場。左から安達・秋山(2点)・福島の作品

R3秋山・福島・安達














 写真左から則包・星加・山中の出品作
R3星加・則包・山中 










 







 写真左から、千葉・越智の作品
DSC00630


















 新会員・城戸、久しぶりに復帰した安野の作品
R3安野・城戸













 新人の3名、左から松本均・鳥井・松本ひろ子の作品
R3鳥井・松本2



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