流星都市

音楽と言葉と心の風景と。

Shinjuku

6時のターミナルで振り向いたきみは
板に付いた紺色のスーツ
今でも気まぐれに街をゆくぼくは
変わらないよ ああ あの頃のままさ

去りゆく若い時間をひとり止めているようで
うらやましいやつだよと初めて笑ってくれた

For yourself For yourself
そらさないでおくれその瞳を
人は自分を生きてゆくのだから

ネクタイ少しゆるめ寂しげなきみが
馴染みの店に腰すえる夜は
陽焼けした両足を投げ出してぼくも
サイモン&ガーファンクル ああ 久しぶりに聴く

人生のひと節まだ卒業したくないぼくと
他愛ない夢なんかとっくに切り捨てたきみ

For myself For myself
幸せの形にこだわらずに
人は自分を生きてゆくのだから

作詞:呉田軽穂 作曲:呉田軽穂


J-WAVEのホームページでオンエア楽曲を調べたところ、確かに今朝の午前4時17分にかかっていたのですね、ブレッド&バターの『あの頃のまま』。
寝るときにイヤフォンでラジオを聴くのが習慣、というかクセで、たぶん今朝も4時頃に一度目を覚まし、ラジオのスイッチを入れたのだと思います。夢うつつの中、この曲のイントロが流れてきたとたん、頭が覚醒し、ブレッド&バターの歌に聞き入ってしまいました。

昔からこの曲を聞くたび、自分は「ぼく」なのか「きみ」なのか、考えることがありました。

今でも気まぐれに街をゆく「ぼく」
去りゆく若い時間をひとり止めている「ぼく」
陽焼けした両足を投げ出す「ぼく」
人生のひと節をまだ卒業したくない「ぼく」

紺色のスーツを着た「きみ」
ネクタイを少しゆるめて寂しげな「きみ」
馴染みの店でサイモン&ガーファンクルを聴く「きみ」
そして、他愛ない夢なんかとっくに切り捨てた「きみ」


今日思ったことは、若い時間を止めている「ぼく」の哀しさということでした。
夕方6時の渋谷駅や新宿駅の地下で、紺色のスーツを着た「きみ」に出会った「ぼく」は、夜遅く、湘南か千葉か、海沿いの家に戻った後、ひとり、「これからどうする・・・・・・」と、夜の水平線を見ながら考えたのかな、等々想像してしまいました。

若かった頃は、そんなことを思いもしませんでしたが、この年になって(何と今年度がリタイアメントです)、自分や、まわりの人たちの来し方行く末について、実感を持っていろいろと考えるようになったのは、まあ良いことなのでありましょう。しかしながら、考えはじめるのがすでに遅かったとも言えるわけで、やはり自分は「ぼく」だったのかなと思います。

他愛ない夢なんかとっくに切り捨てたきみ

このフレーズに心をわしづかみにされました。日曜日の午後にこんなに長く文章を書くことになろうとは思ってもいませんでした。そもそも「きみ」であったなら、13年間もだらだらとブログを書き続けるようなことはしてこなかったでしょう(笑)

桜
このブログには「読んだ本読みたい本」というカテゴリーがあり、今までどんな本を読んできたのだろうと振り返ってみました。本はたくさん読んでいますが、ページをめくる手、あるいはタブレットの画面をスワイプする手が止まらない本というのはそう多くはなく、読み終えてぜひブログに感想を書いておきたいと思う本はさらにわずかです。下が、僕がここ10年ぐらいに読んだ本のベスト5、あるいはこれに武田百合子『富士日記』を加えてベスト6です。

・村上春樹『海辺のカフカ』
・サフォン『風の影』
・デュマ『モンテ・クリスト伯』
・ウィンズロウ『犬の力』
・恩田陸『蜜蜂と遠雷』


また、すごい本と出会いました。

『悪童日記』(あくどうにっき、仏: Le Grand Cahier)は、1986年に刊行されたアゴタ・クリストフの小説で、作者のデビュー作。戦時下の混乱を生きる双子の少年の姿を、彼らがノートに書き付けた作文という形式で、即物的な文体を用いて描いている。続編に当たる作品として『ふたりの証拠』(1988年)、『第三の嘘』(1991年)がある。(ウィキペディアより引用)

登場する人物に幸せな人はなく、皆、己の運命を受け止めて、生きていくか、壊れていくか、死んでいくか、どれかです。こういう風に書くと、ヘビーデューティーな小説を想像するでしょうが、それが、そうでなくて、まるで児童文学のように、もしかすると小学生でも読めるのではないかと勘違いしてしまうぐらい、平明達意の文で書かれています。
『悪童日記』と『ふたりの証拠』を読み、今は『第三の嘘』の冒頭です。Amazonで『悪童日記』の映画を見られることを発見しましたが、こちらは、『第三の嘘』を読み終えるまで見ないことにします。
バラ

(写真は、川越の桜と東京ミッドタウンのバラです。今年の春の記憶として。)

草間彌生02
チケットを買うのに並び、展覧会場に入場するのにまた並び、こんなに混んでいるとは思いませんでした。でも、展覧会場というよりもパーティー会場のようで、これはこれでとても良いなと思いました。

草間彌生04
展覧会のはじめに、草間さんの「草間彌生から世界のみなさんへ」というメッセージが掲げられています。これが素晴らしかったので、印象に残った部分を引用させてもらいます。

多くの若い人やこれからの新しい世界をつくっていく方々が何か精神的な悩み、そして人生に対する悩み、そういったものがあった時に、私の生きてきた道のりや、私が唱えてきた世界観や思想を乗り越え、皆で偉大なる世界をつくられていくことこそが絶大なる私の希望であります。それを心より願っております。

さあ、闘いは無限だ
もっと独創的な作品をたくさんつくりたい
その事を考える眠れない夜
創作の思いは未来の神秘への憧れだった
私は前衛芸術家として宇宙の果てまでも闘いたい
倒れてしまうまで

これまで私の芸術の発展に力を貸してくださった多くのみなさまに心からありがとうと申し上げます。

前衛芸術家 草間彌生


草間さんと同じ時期、オノ・ヨーコさんもニューヨークを拠点として活動していたはず。二人の接点というのはあったのでしょうか・・・・・・。

上野の東京都美術館で開催中のティツィアーノ展へ行って来ました。
先週のNHKのEテレ『日曜美術館』で特集されていたので、混雑しているかと思いきや、そうでもなくて、ゆっくりイタリア・ルネッサンスのマスターピース群を鑑賞してくる事ができました。
ティツィアーノ フローラ

本展は、ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノを中心に、黄金期を築いた多様な芸術家たちの絵画をとおして、ヴェネツィア・ルネサンス美術の特徴とその魅力を紹介します。
(東京都美術館公式HPより)


東京都美術館で、ヴェネツィア派のさまざまな画家たちの作品を見て回って思ったのは、ティツィアーノの「一人勝ち」ということでした。他のヴェネツィア派の画家と比べて、ティツィアーノは、表現の技量が傑出しています。
フィレンツェのウフィツィ美術館から来ている『フローラ』、ナポリのカポディモンテ美術館から来ている『ダナエ』『マグダラのマリア』『教皇パウルス3世の肖像』の4点は大傑作です。混雑してないとは言え、これらの絵の前には大勢の人が集まっていました。
ティツィアーノ ダナエ
特に、若い裸婦の上に金貨が降り注ぐ『ダナエ』にはノックアウトされました。こういう絵を見ると、心穏やかになり元気になります。
(もっとも、ヴェネツィアを訪れたミケランジェロは、このダナエを見て、大変美しいが、残念なことに素描ができていないと指摘したそうです。ミケランジェロに文句を言われては、ティツィアーノも返す言葉がなかったことでしょう。)

東京都美術館は、ティツィアーノ展の次にブリューゲルの『バベルの塔』が控えています。ここの企画展は目が離せません。

僕らの学生時代は、ユーミンの『SURF&SNOW』だったり、ホイチョイ・プロダクションの『私をスキーに連れてって』だったりしたわけですが、僕はスキーにもテニスにも縁が無く、女の子にも縁が無く、春休みや夏休みは、似たような友達と、くり返し京都や奈良へ出かけました。京都も奈良もしばらく行っていないので、もう分からなくなっているかもしれませんが、地図を見なくても大体の場所は歩き回ることができる・・・・・・、と思います。

春日大社千年の至宝展
春日大社は奈良市内観光の定番中の定番。近鉄奈良駅から興福寺国宝館を見て、一の鳥居をくぐり春日大社を参詣、若草山を右手に見ながら二月堂、三月堂を廻り、大仏殿から戒壇院に抜けるルートが好きです。

春日大社千年の至宝展2
“春日大社では「式年造替(しきねんぞうたい)」と呼ばれる社殿の建て替えや修繕が約20年に一度行われ、平成28年(2016)には60回目を迎えます。本展は、この大きな節目に、春日大社に伝来し、社外ではめったに拝観することのかなわない貴重な古神宝の数々とともに、春日の神々への祈りが込められた選りすぐりの名品を、かつてない規模で展観するものです。”
特別展『春日大社 千年の至宝』公式HPより(http://kasuga2017.jp/)


東京国立博物館
奈良へ行っても、なかなか見ることが出来ない春日大社の宝物群を、東京上野で、このようにまとめて見ることが出来るというのは、実に有り難いことであります。
京都の『一澤帆布』にネットで注文した黒のショルダーバッグ(これも有り難い時代になりました。昔、ここの鞄が欲しければ、知恩院のそばの実店舗まで行かなくてはなりませんでした。京都へ行くたびに、『一澤帆布』の鞄が一つ、また一つと増えていきました。お家騒動のことは残念でしたが、今回購入したバッグは、昔と同じクオリティーで安心しました。あ、13年前に、こんな記事を書いていました。)をぶら下げ、立春の上野が奈良公園に思えました。

恩田陸さんは、学生時代、早稲田大学ハイ・ソサエティー・オーケストラに所属していました。
去年のハイソの60周年記念コンサートのパンフに、恩田さんは、『ハイソ生活と作家生活』というエッセイを寄せられています。その中で、恩田さんは、「私はアルトサックスだったが全くの初心者。ジャズも大学に入ってから聴き始めたので、カウント・ベイシーも知らなかった。」と書いていらっしゃいます。入部してから一年以上、恩田さんは、ひたすらロングトーンとスケール練習に明け暮れ、「ある日突然、『なるほど、これがアルトサックスの音か』とストンと腑に落ちた日が来て、そういう音が出た。」そうであります。
恩田さんは、その後、ハイソで初の管楽器の女性レギュラー・メンバーに選ばれます。泣く子も黙る当時のハイソですからね。これは、恩田さんの演奏能力が、決して下手ではなかった、いや、相当程度高かったことの証明ではないでしょうか。どこかに音源とか残っていないものでしょうか・・・・・・。

チョコレートコスモス蜜蜂と遠雷『蜜蜂と遠雷』は、本を読むことのドキドキ感を久々味わった作品です。電車の乗り継ぎでホームのベンチに座り、電車が来て行ってしまったことにも気付かず、ひたすらスマホの画面をスワイプして文字を追っていました。『チョコレートコスモス』は、毎晩、仕事から帰ってきて、夕食後、タブレットで読み続けました。今は、名作と評判の高い『夜のピクニック』と、エッセイ集の『小説以外』を読んでいます。恩田さんの直木賞受賞は、全く妥当であろうと思います。

言の葉の庭
Huluで新海誠監督の「言の葉の庭」を見て、とても良いと思いました。
情景描写の素晴らしさ!
新宿駅から新宿三丁目に向かう通りであったり、バルト9裏手の御苑入口であったり、自分に身近な風景が丹念に描かれ、その場所に感情移入することで、主人公たちの心象風景が自分の中にも浮かび上がってきます。

君の名は。四谷三丁目
秋のお彼岸に、四谷の須賀神社の参道階段に、若い人たちがたくさん集まっているのを見ました。「ああ、“君の名は。”だ・・・・・・」ぜひ、映画を見てみたいと思いました。

君の名は。
「君の名は。」には、須賀神社の他にも、国立新美術館、新宿駅南口、四ツ谷駅前など、このブログで何度も取り上げている場所が登場します。三葉さんが暮らす糸守町は架空の場所ですが、瀧くんのリアル・ワールドの東京と、パラレル・ワールドの糸守町の対比が、二人の断層となり、交感となり、ストーリーを奥深いものにしています。
去年、上映館で見た映画の中で、一番良かったかもしれません。

というわけで、新しい年を迎え、皆様にはお元気でお過ごしのことと推察いたします。2004年7月から書き始めたこのブログも13年目を迎えました。今年も、その時々で興味を持ったことを、ぼつぼつと書いていきます。変わらぬごひいきのほど、よろしくお願いいたします。

Rogue One01
CMでも予告編でも流れていますので、ネタバレにはならないと思いますが、フェリシティ・ジョーンズ演じるジン・アーソが、出撃前に気合いを入れる、
「May the force be with us.」
にやられました。

考えてみると、「May the force be with you.」って、ヨーダに一番似合うような、結構上から目線の言葉ではないですか。そうでなくて、「us」としているところに、仲間と共に敵に立ち向かうジンの覚悟、そして「新たなる希望」がうまく表現されています。

フェリシティ・ジョーンズは、「インフェルノ」にも出ています。2006年にオックスフォード大学を卒業。ヒュー・グラント、エマ・ワトソンもオックスフォードですね。向こうの俳優さんはすごいよね。

(今日ようやくTOHOシネマズの「シネマイレージ・カード」をゲットしました。はじめから申し込んでおけば、今日の「ローグ・ワン」は、無料であったかもしれません・・・・・・)

この世界の片隅に
いつものTOHOシネマズで、「この世界の片隅に」の初回上映を鑑賞。
エンドロールが終わり、場内の照明が付くまで席を立てなかった映画は久しぶりでした。他のお客さんたちも、映画の余韻をそっと抱えるように、少し下を向きながら、無口にシアターの出口へ向かって歩いて行きました。

約12年前、このブログで、こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」(双葉社)を取り上げたことがあります。

「Amazon でもみんなが大絶賛です。でも、すみません、私はぴんと来ませんでした。これは、たぶん、作品の問題ではなく、私の感性が鈍っている所為なのだろうと思います。」

今回、「この世界の片隅に」を、素直に感動して見ることができたことに感謝です。
「君の名は。」と同じく、アニメーションというメディアの可能性を、改めて思い知った次第です。

「すずさん」の声を演じた、能年玲奈(のん)さん。
竹島ルイさんという方が、「いい映画と出会えるWebマガジン/フィルマガ」というブログに、

かつて能年玲奈という名前で一世を風靡し、お茶の間のアイドルとなった”のん”が、その後事務所独立騒動のゴタゴタで表舞台から去ることになってしまったことについては、詳しく語らない。(中略)
しかしだからこそ、クラウドファンディングで産み落とされたこの小さな作品に、彼女が出演することができたともいえる。メジャーの舞台でスター街道を走り続けていたら、このような僥倖は生まれなかっただろう。


と書いていらっしゃいます。本当にその通りであるなと思いました。

ウィーン美術史美術館
ハプスブルク家の歴代皇帝たちが蒐集した膨大な数の美術品を所蔵し、今年で創立125周年を迎えたウィーン美術史美術館。収蔵作品は、クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオ、ベラスケスなどの名画から絢爛豪華な美術工芸品まで多種多彩。なかでも傑作「バベルの塔」をはじめとしたブリューゲル・コレクションは世界最多を誇る。
創立120年の節目に取り掛かった大規模な改装工事に2年以上にわたり密着した製作陣は、豪奢な天井画や壁画などまるで宮殿のような豪華な装飾とともに、美術品の収蔵庫、修復作業場、閉館後の館内や会議室など、ふだん見ることのできない美術館の姿を虚飾のないカメラでとらえていく。”偉大なる美術館”の裏側とそこで働く人々の姿を丁寧に描いた、芸術の世界をたっぷりと堪能できるドキュメンタリー映画である。
(「グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状」公式HPより)


有楽町イトシア
有楽町のイトシア4階、ヒューマントラストシネマ有楽町へ行ってきました。
このジャンルでは、フレデリック・ワイズマン監督の「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」、ウケ・ホーンダイク監督の「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」という佳作があります。これらの映画のDVD、Amazonでは、未だに3,000円前後で販売されていて、価格が下がる気配がありません。それならば、上映館で1,800円払って見た方が良いかなと思った次第です。

グレート・ミュージアム
改装工事の始まりから大統領を迎えてのオープニング・セレモニーまで、音楽なし、ナレーションなし、映画は淡々と進行します。
僕的には、もう少し、ブリューゲル、クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオなどの絵画作品の紹介があればよかったのですが、すっと眠気に誘われながら、目を開けると、自分が美術館の展示室にいるような、不思議な感覚が心地よかったです。

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