2017年09月06日

まんじりともしない夜を過ごす。
ベッドの中でじっと目を閉じていると眠りがやってきそうになるが、その瞬間に身体が熱くなり、気づけば汗だくになっている。
僕の腕には点滴の注射針が刺さっている。見上げればぶら下がった透明のパックから僕の腕へとチューブがつながれている。お料理をしなくても栄養補給はできるというわけだ。

盲腸、虫垂炎とはいったい何が原因でなるものなのだろうか。
昔どこかの本で読んだことがあるが、盲腸とは鶏などにおける「砂肝」にあたる器官なのだそうだ。
鳥は餌を食べるときに一緒に砂も食べてしまう。当然砂は固く消化できないから、砂肝がそれをすりつぶしてから体外に排出する。
かつては人にも砂肝があったが、食生活が向上し砂などを口にすることがなくなったからその器官は使われなくなった。それが盲腸だというのである。

つまりはその器官=盲腸に砂のようなものがたまってしまって炎症を起こすのが虫垂炎なのだろうか。
あまり笑えない話である。
僕はお料理を作るのが好きで、わりと自慢げにSNSなどにその写真をアップしたりする。その料理になにか問題があったとするとシャレにならない。
しかも2度目の入院ともなると、あまりおおっぴらに人にいうわけにも行かない。

※ネットで調べてみると盲腸の原因は、ウイルスの侵入、心的ストレス、生活習慣の乱れ、風邪や胃腸炎からの発展が考えられると書いてありました。僕は衛生面など結構気を使いながら料理を作っているから、日々の料理に問題があるわけではないようです。また、盲腸の原因については憶測の域を出ておらず、明確ではないとのこと。

そもそも1度目に発症した時になぜさっさと切除してくれなかったのだろうかと、病院の対応を不満に思う。
それに今泊まっている部屋は4人部屋で、いわゆる大部屋と呼ばれる6人部屋より幾分広くて快適なのだが、その分費用が上乗せされる。僕が望んで4人部屋を選んだわけではなく、たんに6人部屋がいっぱいなのでそちらに入ることになったのだが、病院の都合で上乗せされた費用を僕が支払うというのもなんとなく納得がいかない。

なかなか眠れない状態でもんもんと考えていると嫌なことばかり思いつくものである。
我ながら性格が悪いと思う。
くよくよしてもしょうがないとわかってはいるのだが、お腹は痛いし未来は見えない。

朝が来て、他の患者さんたちはご飯を食べている。
僕は栄養を腕から取っているのでご飯はない。
持って来た村上春樹の小説を読もう。
「騎士団長殺し」
ところでこの小説のタイトルは口に出して言う時、どこにアクセントをつければよいのだろう。
難しい問題だ。



2017年09月05日

紹介状を書いてもらったら、その足で大きな病院へと向かった。
もちろん自転車でだ。
腹膜炎の人が自転車で病院に行くというのもおかしな話だとは思ったが、それくらい動くことはできるのだ。なんだか自分の行動が滑稽で少し笑ってしまう。

先生は別れ際にもまた「ごめんね。」といっていた。
謝る必要などないのだ。先生はよくやってくれた。これは誤診ではない。だから謝る必要などないのだ。

受付に紹介状を提出し、外科の待合室で座って自分の番を待つ。
受付の女性は、
「あら、立井さん、お久しぶりです。」
となんだか再会を喜んでくれているかのような表情でいう。
同じように待っている人たちの顔に見覚えはないが、行き交うお医者さんの中には見覚えのある顔がちらりほらりといる。時には僕の顔を見て会釈してくれるお医者さんもいる。
常連みたいな感じで困ってしまうが、なんだか「戻ってきました」というほっこりとした気持ちがないでもない。久しぶりのライブハウスに行ったら僕のことを覚えてくれていた時のように。

大病院ではやたらと待たされるのが定石だが、紹介状が効いていたのか案外早く名前を呼ばれた。
診察室に入ると、若い女性のお医者さんが座っていた。
僕は彼女の顔に見覚えがあった。
前回(去年です)診察を受けたとき、珍しい症状だからと主治医ではないが僕の様子を見に来ていた人だ。
「前回の主治医から受け継いで、今回は私が担当させていただきます。」
と彼女はいった。

ひととおりの診察を受け、院内の各箇所を回る。
採血し、CTスキャンを受け、レントゲンと心電図をとり、再び待合室に戻る。

名前を呼ばれ再び診察室に入ると、先生は軽く息を漏らしながら、
「やはり入院することになります。」
と残念そうにいった。
「自宅で療養するという方法はなさそうですか。」
と僕は一応聞いてみる。
できれば入院など、したくはないのだ。

「CTの結果が来ていますが、前回よりも状況はひどいです。絶食して点滴と抗生物質で腹膜に開いた穴が塞がるまで待たなければならない。自宅で療養するのは難しいですね。」

「今すぐ手術をするという手もありますが、腹膜が腫れて化膿しているので周辺の血管などを巻き込んでいます。即手術となるとそれらの癒着をほどく必要があるので、かなり難しいものになるでしょう。抗生物質で腫れが引くのを待って、それから手術した方が立井さんにとっても安全だと思われます。」

「なるほど…」
と僕はいい、絶句してしまう。
まさか再発するとはね。
再入院という事実がなかなかうまく受け止められない。

先生は気の毒そうな顔で僕を見ている。
うん、逡巡していても仕方がない。物事はなるようにしかならないのだ。

「わかりました。」
と僕は先生の顔を見ていい、診察室を出る。
入院に必要な手続きを済ませ、自転車に乗っていったん帰宅。
着替えなどの準備をし、気のおけない人にハナの世話をお願いする。
前回はきっちり10日間入院した。今回はどのくらいになるだろう。
わからないことにあれこれ悩んでいても仕方がないが、少しクヨクヨしてしまう。

タクシーに乗り病院に戻る。
担当の看護師さんにいざなわれて病室へと移動。
普段病院なんてかかりもしないのに、いざやってくると入院になるなんて我ながら極端なのだ。

そのようにして、僕の入院生活は始まるのであった。

体温計を見て、
「まずいな。」
と僕はいった。
デジタルの表示は「39.4」の数字を示している。
昔の体温計はたしか目盛りが39.4までしかなかった。
それ以上熱が上がったらもう保証はできませんという意味だと聞いたことがある。
さすがに顔が火照るし頭がぼーっとする。
むろん腹は痛い。

多少無理をしてヨーグルトとバナナのお洒落朝食を食べて薬を飲む。
薬は5日分貰っているので、あと2日分残っている。

ベッドに横たわる。さて、どうするか。
考えているうちに時間はどんどん過ぎていく。
何度も熱を計ってみるが下がる徴候はないようだ。

おもむろに病院に電話してみる。
受付の女性が「午前中の診察は終わりました」と僕に告げる。
そうですか、と電話を切りかけた時、院長先生が電話口に出た。
「これから外に診療に出かけなきゃならないんだけど、戻ったらすぐに連絡する。それまで待っていられますか。」
と彼はいう。待つも何もこれまで何日間もずっと我慢して来たのだ。数時間くらいなら余裕で待てる。

お昼を過ぎた頃、先生から電話がかかって来た。
僕は自転車で病院に行く。
昼の時間帯で休診中だったので受付はひっそりと暗く、誰もいなかった。
「こんにちは。」
僕は気後れしながらも声をかけてみる。
すると奥の診察室から先生が出て来て、無言で「こちらに来なさい」という仕草をした。
先生はまだ白衣さえ着ていなかった。
本当に診療から帰ったばかりなのだろう。グレーのコットンパンツから白いシャツがはみ出していた。

早速僕は台に寝かされる。
先生は僕のお腹に器具を当てながら画面を見ている。
「うーん、、、こりゃまずいなぁ。」
とゆっくりいいながら僕の顔を見た。

「腹膜炎が再発しているようだ。前回診察した時にはさほど徴候がなかったけど、今見ると明らかに腫れ上がっている。うーんまいったなぁ。」
ということは単なる胃腸炎ではなかったということか。

「前回入院した病院にもう一度紹介状を書くから、これからすぐに行ってください。大丈夫?行けるかい。」
先生は苦虫をかみつぶしたような顔を隠しながら僕にそういう。
おそらく先日の診察で症状を見抜けなかったことを悔いているのだろう。
「また入院することになりますかね?」
と僕は先生に聞いてみる。
「わからない。通院ですませられればいいんだけどね。しかしそれはあちらの病院が判断することだ。僕にできるのはここまでだ。」

紹介状を書いてもらう間、僕は薄暗いロビーに座って待っていた。
「今、あちらの病院に連絡して対応を依頼している。返事が来るまで少し時間があるから、痛いだろうけどもう少しだけ待ってください。」
先生はそういったあと、ひとこと付け足した。

「ごめんね。」
と。

その言葉にはおそらくいろんな意味が込められているのだろう。
僕は、
「大丈夫です。」
とできるだけ毅然とした顔を保っていった。

僕はこの先生のことが嫌いではない。




2017年09月04日

朝早く目覚めて近所のスーパーに行った。
このスーパーは最近できたばかりなのだが、6時から開店しているので便利だ。
うどんとささ身肉、豆腐と温泉たまご、茶碗蒸し、バナナ、ヨーグルト、それから水を買った。
とにかく消化によいものを摂取するのがよいだろう。
律儀に薬を飲んでいるが、腹痛はおさまらず、熱も下がらない。

胃腸炎なのだからとにかく水をたくさん飲んで、悪い菌をすっかり出してしまうのがよい。
あまりたくさん食べずに身体の中を循環させるのがいいように思える。
しかし不思議なことに吐き気もなければ便意もないのである。
本来胃腸炎といえば下痢や吐き気をともなうと、ネットなどにも書かれているが、僕にはそれがない。
ただし、便意や吐き気がない胃腸炎というのもしっかりあるとのこと。
なんにしてもインプットすれば自然にアウトプットするはずだ。

家に帰ったらまずは経口補水液を作ってみる。
体調を崩してからこれまで僕はポカリスエットを水やお湯で薄めて飲んでいた。
そのまま飲むと病んだ身体には強すぎるので、少し薄めた方がよいと聞いたことがある。
しかし、ポカリを薄めると果汁の苦みが強調されてあまりおいしくない。
それであれば自分で果汁の入っていないポカリもどきを作ってしまえばいいと思った。

水2リットルに砂糖を大さじ9(結構な量だ)と塩を小さじ1ほど溶かし入れる。
ペットボトルをよく振って混ざったらできあがり。
グラスに注いで飲んでみると、なんというか鼻の粘膜にくっついてくるような独特の甘みがある。
特別旨くはないが、なんとなく身体にいいような気はする。
なにより「自分で作った」というのがいいのだ。

勢いにまかせてうどんを茹でた。
冷蔵庫にあった山芋をすり鉢ですりおろし、茹でたほうれん草とささ身肉を一緒にトッピングした(うちの冷蔵庫にはいろんなものが入っている)
うどんは小学校の給食のような味がした。麺をこれでもかというほどやわらかく煮たせいだ。
でもなんとなくお腹には優しいような気がしたし、味自体はとてもおいしかった。

食べ終わったら経口補水液で薬を飲む。
熱を計ると38度前後をいったりきたりしているが、腹が痛いからか熱が出ているという自覚があまりない。だからどこかに遊びに行きたくてしょうがない。
でも歩く時はいまだに振動が腹に響くので前傾姿勢になってしまう。
やはり寝転がっている他にやることはないのである。

ハナは僕の枕元で静かにしている。
そういえばハナがお出かけした日以来、気温はぐっと下がりとても涼しくなった。
まだ9月も始まったばかりだというのに、いきなり本格的な秋が来たような気候である。
だからハナも玄関で寝転ぶのをやめて、僕の近くにいるのだ。

昼になったのでバナナをちいさく切って、ヨーグルトに混ぜて食べてみた。
こんなお洒落なものを食べたのなんて、いったいいつ振りだろうか。
まあおしゃれといっても何の飾りもなければ、なんの細工もしていなので、味はバナナとプレーンヨーグルトそのものなのである。でもなんだかお洒落においしい。

経口捕水液で薬を飲む。
ベッドに横になり、とりとめのない夢を見る。

夜は湯豆腐と茶碗蒸しを食べよう。
ああ、僕はじっとしていることができなくて、少し眠ったらすぐに起き上がり料理の仕込みをしたり、楽器を弾いたりしている。
だから治らないのだろうか。

昏々ととりとめのない夢を見る。

静かに転がっていると、お腹の痛みは少しずつ移動しているように思われる。
胃が痛くなったり、その下の腸のあたりが痛くなったり、横腹(腎臓や肝臓があるあたりか)が痛くなったりする。
しかし、腹の力を抜いてその鈍痛に耐えていると、やがて右の下腹に固定される。
そこはおそらく盲腸があるあたりだ。
なんとなく、嫌な予感がする。


2017年09月03日

胃腸炎なのだからとおかゆなどを食べて、薬を飲んで、あとはひたすら眠る。
寄せては返す波のように、断続的な痛みがやってくる。
それはいったいどこからか。
海からか、山からか、はたまた宇宙からか。
わからない。

ひとついえることは、幸いなことにしばらくリハもなければライブもない。
ただひたすらベッドで寝ていればよい。

でも本当はどこかに行きたかった。
せっかく時間があるのだから。
動物園とか、水族館とか、どこでもいい。
楽しいところへ。
または、孤独に考え事をしたかった。
音楽について。真面目に。
しかし断続的な痛みが意識を分断する。むろん歩くのはままならない。

そしてベッドで寝ていればいいといっても眠りはなかなかやってこない。

頭の中は忍者やら野球選手やらロボットやらドラゴンやらが出演していてごちゃごちゃしている。
眠りに至る前の混沌とした状態。
せめてストーリーはハッピーエンドにして欲しいものだが、薬のバッドフィルターがかかっているのか、やたらと困難が押し寄せて来て、僕はベッドの上で無駄な汗をかく。

おもむろに体温計で体温を測ってみた。
37度を超えていた。
野球選手は実は忍者でロボットと協力してドラゴンを倒すのだ。
そしてリーグ優勝を果たしたあかつきにはドラゴンに乗って勇者の剣を手に入れるのだ。
荒唐無稽も甚だしい。

冷蔵庫の中にキャベツとウインナーがあったので、ポトフを作った。
じゃがいもとたまねぎも剥いた。
ポトフは煮物だからじっくり時間をかけた方がいいと勝手に思っていたが、あまり時間をかけ過ぎるとキャベツの苦みが出るし、じゃがいもは溶けてドロドロになるしあまりいいことがない。
20分程度さっと煮るのがちょうどよいようである。
あたたかく、やさしいお味。

薬を飲んで再びベッドに横たわる。
眠いわけではないのだけど、それ以外にできることがない。
せめて幸せな夢を見たいものである。


2017年09月02日

腹が、痛い。
朝からあまり快適とはいえないのである。
なんたって腹が痛いのだから。
しかし人間の偉いところは原因がなんとなくわかっていると開き直れるところなのである。
「痛んだレタスを食べました。」
ザッツオール。
得体の知れない痛みに比べたらなんと明快なことか。

腹をかばい前傾姿勢になりながら、僕は自転車に乗る。
我が愛しき自転車「クッキークリーム号」は6段変則なので、軽い1段とかにすれば腹が痛くても快適にペダルを漕げるのである。ザッツオール。まったく問題ない。

以前お世話になった病院に行く。
前回同様、清潔で感じのよい院内。これでインコか金魚でもいれば完璧なんだけどなと思う。

久しぶりに先生に再会する。
「今回は多分食中毒的な感じだと思います。」
といおうとしたが、黙っておいた。
診察するのは僕ではなくお医者さんなのだ。
ベッドに横たわり、お腹にローションのようなものをぬられ、なめらかな「すりこぎ」のようなものをお腹に当てて先生は診察する。
「前回の大腸カメラはどうだった?」

去年の暮れ、僕は腹膜炎穿孔というまれな病気で入院した。
簡単にいうと盲腸(虫垂炎)がひどくなり腹膜炎になり、それがさらにひどくなり穴が空いてしまったのだ。一昔前であれば死んでしまう病気である。
結果からいうと死なずになんとか生き延びたわけだが、その時に最初に診てもらったのがこのお医者さんなのである。
この医院では手に負えないということで大病院に紹介状を書いてもらい、そちらで入院した。途中までは逐一状況を報告していたが、退院してからは特に連絡をとっていなかった。

通常であれば盲腸は切除して終わりなのだが、僕の場合は盲腸が爆発しているだけでなく、周りの血管や、腎臓から膀胱に至る管なんかを巻き込んで腫れ、化膿していたから、ひたすら抗生物質を投与して切除することなく治療を終えた。なにしろ盲腸は爆発しているのだから切除する部分は数パーセントしかないのだ。

「大腸カメラですか?問題なかったようです。なんだかやたらと時間はかかりましたけど。なにしろ若い人が担当したおかげでなかなか奥の方まで入っていかなくてですね。とにかくケツばかりが痛かったです。」

僕は深刻な話を面白おかしく披露したつもりだったが、先生はひとつも笑わずにいう。

「時間の問題じゃないんだよ。ケイシツについてはなにも言ってなかったかい?」

「ケイシツ?それについては何も聞いていません。盲腸周りに腫瘍がないかを調べるためと聞きました
けど。そしてそれはなかったそうです。」

先生は「すりこぎ」で僕のお腹をぐりぐりとまさぐり、画面を見ながら、
「うん。ひとつは腫瘍の有無を確認するというのもあるね。ケイシツというのはね。大腸の脇にお部屋のような小さな「たまり」ができることをいうんですよ。60代を過ぎてくるとできやすくなる。それは出口のないお部屋だから場合によっては盲腸と同じような症状をきたすことがある。多分それの有無をチェックするために大腸カメラをやったんじゃないかな。」

「はあ」
と僕は言う。
果たして「ケイシツ」とはどのような漢字を当てるのだろうか。しかし、くだらない質問をすると先生に一笑に付されるような気がするので、ただ深く呼吸をしてお腹をぐりぐりされるのに耐えている。

「はい、終わり。」
ローションのようなものを拭き取り、僕は先生と向かい合って座る。
「小腸に随分水がたまっています。胃腸炎の症状に酷似している。なにかまずいものでも食べたかい?」
と先生はいう。
「心当たりはあります。食あたりに近い感じですか?」
と僕はいう。
「断定はできないけど、その疑いは強いね。盲腸あたりに腫れは認められないようだから、前回の症状の再発ではなさそうだ。お薬を出しましょう。仮に盲腸が炎症を起こしていたとしても、胃腸炎の処方と盲腸の初期の処方は同じ薬なんだよ。だから安心するといいよ。」
と先生はニヤリとしながらいった。
僕はこの先生の笑顔が結構好きだ。

お礼をいって病院をあとにした。
あとは薬を飲めばお腹も落ち着くだろう。

前回はお腹が痛くなってから随分長い間我慢していたが、今回はさっさと病院にやってきたから、そう大事にはならなそうな気がする。
なんとなく自分の迅速な対応に満足してみたりする。
そう考えたらお腹をかばわずとも背筋を伸ばして家に帰れそうなものだ。
いや、まだ薬を飲んだわけではないので腹は痛いままなのだ。

お腹をかばいながら帰宅。
少し眠ろう。

2017年09月01日

先日ライブの日。
お腹が空いているような気がしたのでサンドウィッチを買った。
しかし、買った瞬間にお腹が満たされたような気がしたので食べずにカバンに入れたままライブをやった。
それから数日経って今日。
ふとカバンを開けたらまるで魔法みたいにサンドウィッチが入っていた。
ハムとレタスとチーズのサンドウィッチ。
タイミングがよいことに僕はお腹が空いていた。
サンドウィッチの賞味期限を見てみると当然のように切れていたが、なに、かまうことはない。
賞味期限とは「おいしく食べられる期限」のことであって消費期限ではないし、消費期限は人に決められなくても自分で決めればいいのだ。

外側のフィルムをほどいて中のそれをつまみ、一口頬張る。
うん、うまいことはうまいが、レタスが酸っぱい。
この酸味は調味料によるものではないとすぐにわかる。単純に痛んでいるのだ。
なにしろライブ当日は結構暑かったし、そのあともろくに冷蔵もせずカバンの中に入れっぱなしであった。
しかし、なにはともあれ、僕はお腹が空いていた。
少々痛んでいようが、吐き出してしまうほどまずいわけではないのだから、問題はないのだ。
パクパクパクと結局僕はサンドウィッチを食べきった。
ごちそうさま。

そしたら数時間後、僕のお腹はじりじりと音を立てるように痛み始める。
まあ、そりゃそうかもな。

医者に「心当たりはありますか?」と尋ねられたら、心当たりはありまくりだ。
我慢したら痛みは去るかなとも思ったが、去年入院した経験からあまり我慢しない方がいいと思った。
明日病院に行ってみよう。


2017年08月31日

眼が覚めると陽が傾いていて、一体今日は何日で今は早朝なのか夕暮れなのか、わけがわからない状態で時計を睨んでいた。
実際は昼過ぎから数時間うたた寝した程度だったが、熟睡したのか少々眠りすぎた時のようにだるい。

お茶を飲んでふぅと一服。
そういえば今日は月末だ。
今日までに支払いを済ませないとまずいやつが一件あったな。
封筒差しから書類を一枚抜き取り内容を眺めると、やはり期限は今日までだ。

こういうのは思った時にすぐ行かないと、後回しにして結局行けなくなったり、忘れてたりというのはよくあることなのだ。なんにしても期限は今日までだし。

というわけでとりもなおさず財布と書類だけ持って出発。
ハナさんに挨拶しようかと思ったが、玄関のところにいなかった。
あれ?どこいった?

近所のセブンイレブンが改装工事に入るということで昨日一時的に閉店した。
一時的にとはいっても建物ごと建て替えるそうなので、次の開店は3ヶ月後だそうである。便利に利用させてもらっていたユーザーにとっては気が遠くなる年月である。
しかたなくセブンの前をスタスタと通り過ぎて、別のコンビニへ。
しかし、と思う。
ハナはどこで寝てたんだろう?
てっきり玄関だとばかり思っていたが(夏場はそこが涼しいらしい)出かける時いなかった。
なんとなく不安を抱えながらコンビニで支払いを済ます。
帰り道、僕の足取りは少し早くなる。
暑い日が続くから、僕は家にいる時、玄関を少しばかり開けっぱなしにしていた。壊れた小さなギターアンプを捨てるつもりで玄関に置いておいたのだが、これをつっかえ棒的に使うと15cmばかり隙間が開くから、部屋に風が入って来て心地よいのだ。
ハナはいつもそのたもとで眠っているわけだが、アンプを乗り越えて外に出たことは今まで一度もない。アンプの高さは30cm程度あり、年をとったハナがそれを乗り越えるのはおそらく億劫だから外には出ないだろうとたかをくくっていた。
むろん、僕が外出している今はドアを閉じている。しかし、僕が眠っている間に彼女がアンプを乗り越えたとしたらどうだろう。

家に辿り着き、玄関のドアを開ける。いつもならすぐ足元にいるはずのハナがいない。
「ハナ、ハナ」
と何度か声に出して彼女を呼んでみるが、部屋の中にいる気配はない。
一応ベッドの下だとか、ドラムの荷物が積んである場所だとか、浴室なんかを見回ってみるが、やはり彼女の姿はどこにも見当たらなかった。

間違いない。彼女は家出したのだ。
僕はもう一度靴を履いて家を出る。
右に行けば交通量の多い大きな道だ。左は住宅街へと続く細い道。
ハナが出かけるとするならば左に行くに違いないだろう。
もちろん、家の周りはくまなく探索した。しかし残念ながらこのあたりにはいないようだ。
僕は住宅街への道をゆっくりと歩き出す。

僕にとってそちら側にはほとんど用がないから、近所とはいえほとんど印象がない。
歩きながら左右を見回してみる。
東京は大都会だというが、こうして見てみると、雑多な薮や古い家屋などがところどころに見受けられる。僕は姿勢を低くしてみたり、また塀の向こう側を見通すために背伸びしたりしながらハナの姿を探す。すでに暗くなっているから、民家の軒下などはiPhoneのライトをオンにして照らしてみたりもする。
ハナはどこにもいない。
最初のうちは「不審者に思われたらやだなぁ」とか「『うちの猫知りませんか』とかビラを作んなきゃいけないのかなぁ」とか、体裁を気にしていたが、段々それどころではなくなってきた。

そもそも、ハナはなんで家出したのだろうか。
「ちょっと遊びに出ただけだよ。お腹がすいたら戻ってくるさ」という気持ちはあるにはあったが、彼女はちゃんと我が家に戻って来れるのだろうかと不安になる。
高齢なのでそんなに遠くに行くことはあるまいとは思うが、ハナはとても小さい。ちょっとした軒先に入ってしまったら僕にはもうみつけられない。そうなると彼女が無事に帰ってくるのを待つしかないのである。
しかし今の住所に引っ越してからというもの自発的に外に出たことがないハナは、我が家の位置をきちんと覚えているだろうか。

もしかしたら、僕のことが気に入らないのだろうか。
我が家で過ごすのに嫌気がさして家出したのだろうか。

そういえば、猫というのは自分の死期を悟るとふらりとどこかに身を隠してしまうという話を聞いたことがある。僕の心臓の音は早鐘のように大きくなる。

陽はどんどん暮れていく。周りの景色はインディゴブルーの一色に塗り籠められていく。
今日、ハナをみつけられなくて、帰って来なかったら本当にどうすればよいのか。
のほほんとドアを開けて眠っていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。まさかこんな深刻な事態になるとは思ってもみなかった。
ああ、ハナ、無事でいてくれ。

数十メートル歩いたら道は右に折れ曲がる。
一体僕はどこまで探索すればよいのだろうか。ハナの習性を頭の中でトレースしてみたところで、こんなことは初めてなので、まったく見当もつかない。
とりあえず路地を右に曲がってみた。

まがったとたん向こう側から自転車に二人乗りしている若いカップルがこちら側にやってきた。
そして、後ろに乗っていた女の子が、
「あ、猫!かわいい!」
といった。
ハッと彼女が指差す方を見ると、道の端っこにお腹をぺたっとくっつけてねそべっている茶白の小さな猫がいた。
猫は見るものすべてが美しく恐ろしいといった感じできょろきょろと目を動かしながら、その場にぺったりと動かないでいた。

僕は唇をゆるめながらひとつため息をついた。

そしてその小さな猫に近寄って一言声をかけた。
「もしかして、ハナさんですか?」
ハナは、僕の方を見ると、鼻にシワを寄せていった。
「迎えにくるのが遅いわよ。もうお腹がすいた。」

僕が彼女を抱き上げると彼女は僕にしがみついてきた。
「まったく。勝手に外に出ちゃだめだよ。心配するから。」
と僕はいった。
彼女はなにもいわなかった。僕の歩く振動に合わせてふんふんと僕の首筋に息を吹きかけるだけだった。

部屋に戻るとハナは何もなかったかのようにウーンと伸びをして、僕にご飯をねだった。
そして、ご飯を食べて水をたっぷり飲んだらいつものように玄関で寝そべって惰眠をむさぼり始めた。
その顔はなんだか誇らしげに笑っているようにも見えた。

「まったく」

と僕は苦笑しながらいった。




2016年01月15日

今日はブロークンTVのリハーサル。
タマちゃんの体調は回復し本日メンバーが全員揃う。
やはり5人メンバーが揃うとなんだか安心するね。

というわけで来週のライブのための練習です。
新曲も含めてガンガン曲を演奏していくが、慣れた曲に関してはすでにフレーズ的にもできあがっているので、僕は新たな可能性を探すために違うフレーズを叩いてみたりする。
乗ってくると多少実験的ともいえるフレーズを混ぜてみたりする。うーん楽しい。

実は僕はそのようにして新しいフレーズやテクニックを練習しているようなところがある。
当然頭で考えたフレーズが実際にできないこともあるから、それは曲と曲の間で練習する。
その曲で使わないフレーズだったとしてもかまいやしない。別の曲でそのフレーズが採用されることもあるからだ。(しかし複雑なフレーズなどは何年も使えないでいるものもあるけど)

とにかくじゃんじゃん曲を演奏して本番への気運を高めていく。
メンバーもみんな盛り上がっておりました。

IMG_8239



2016年01月14日

毎日寒いけれど、スーパーには足繁く通います。
おいしいものを食べるのが大好きですが、それには自分で作った方が早いもんね。
というわけで今年もミキッチンは絶好調ですよ。

IMG_8139正月の玉子焼き。
今年はおせち料理的なものはなにも作らなかったんだけど、雰囲気はそれらしくやりたいとかね。







IMG_8135明太子と三つ葉。
これも正月。
完全に手抜きではありますがこういうのが妙にうまいのです。





IMG_8105新春パスタはジェノベーゼ風から。
バジルのさわやかさとナッツの香ばしさ、そしてパルメザンチーズのコク。
しょっぱなからなかなかの傑作を作っちゃいました。







IMG_8146インド的な料理も作ってみたり。
クミン、ターメリック、コリアンダー、ガラムマサラなどのスパイスを混ぜ込んで刺激的な香り。








IMG_8222まぐろ納豆。
納豆ってとてもおいしい。
最近はひきわり納豆がブームです。
料理に合わせるならくせがないのでとてもいい。




いやあ、料理って楽しいねぇ。