2017年09月09日

朝6時、全館放送が流れる。
「おはようございます。本日は9月9日土曜日です。今日もよろしくお願いします。」
放送と共に部屋に灯りがつく。今日という日が始まる合図だ。
僕は相変わらず寝られないでいるから、本を読みながら放送を聞いている。
そしておもむろにベッドから抜け出す。

一日の始まりの合図の後、職員出入り口のロックが解除される。
僕は点滴のスタンドをゴロゴロと転がしながら外へと出る。
病院の前にはわりと広い駐車場があり、その向こう側にはちょっとした庭園風の広場がある。
何があるわけでもないが、そこを軽く散歩するのがいつの間にか日課のようになった。
朝の風はひんやりとして心地よい。
病院内は常に空調が効いていて心地よさをキープしているが、人工的なエアコンの空気は時に胸が詰まるように感じることがある。ましてや周りは病人ばかりである(僕もだけれど)時にはひとりでふらりと外をぶらつきたくなるのである。

そういえば昨日から6人の大部屋に移動になった。料金的に追加を払うことはなくなったが、はやりスペースは狭く、すぐ横には別の患者さんがいるので、なかなか心休まらない。まあ、仮の宿だから文句はないのだが。ああ、早く退院したい。

陽の光を浴びながら光合成しているような気持ちになる。
腹は痛いが気分はよろしい。
さてと病室へ戻るか。

ベッドに戻ると看護師さんたちが僕を待ちかまえていた。
「もう、どこに行ってたの?抗生剤を入れますからね。あとで先生も来ますからもう少しここにいてくださいね。」
と苦笑しながら言う。

ところで、病院内では「iPhone」を使うことができる。
かつては電波や電磁波の影響などを考慮して携帯電話の使用制限がかかっていたそうだが、最近の研究でさほど影響がないことがわかったらしく、わりとどこでも使えるのである。
ただしWi-Fiは通じていない。ケータイが使えるからといってそれほど気が利いているというわけでもないらしい。
週末は図書室が閉まっている。借りて来た本はあらかた読んでしまった。でも「iPhone」があれば暇を持て余すことはない。
まったく便利な世の中なのだ。

退院したらまず何を食べようかなとか、お洒落なヘリンボーンジャケットが欲しいなぁとか、上野では深海魚にまつわる特別展をやっているのかと、見るともなくネットサーフィンなどしていると、主治医の先生が登場。

「どう?」
と彼女は心配そうにいう。
「うーん、状況はあまり変わってないかも。」
と僕は寝転がったままでいう。
「そうか…」
と先生は指を口元に当てて何かを思案している。

前回入院した時はお腹がとても激しく痛くて喋るのも辛いほどであったが、今回は2度目でもあるせいか痛みも緩慢なのである。だから自転車で病院まで来れたのだけど、悪い意味で僕の身体は痛みに「慣れて」しまっているのかもしれない。だから薬を投与してもあまり効かず、なかなか治らないのかもしれない。なにしろお腹が痛いことは痛いのだが、それをあまり苦痛にも思わなくなって来た。しかし、痛いということは炎症が改善されていないということだ。つまりこのままでは飯も食えないし退院もできない。

「わかりました。」
と先生はきっぱりとした口調でいった。
「次の分から少し強い抗生剤に切り替えます。それで状況を見てみましょう。ただし、気持ち悪くなったり、身体に異変があるようならすぐにいってください。いい?」

僕は先生の目を見て頷いた。
先生も少し目を見開いた後、静かに頷いた。

イヤホンをして音楽を聴く。
ジェファーソンエアプレイン、モンキーズ、ビーチボーイズ。60年代の生々しくも夢みがちな音楽。
僕が表現したいのは一体なんなんだろう?
神様はいったいどこにいるのだろうか。

AbemaTVというアプリがある。
独自の番組をやっているインディーズテレビ局みたいな感じのアプリなのだが、夜「ドラえもん」の映画を放映していたのでなつかしく思い見てみた。
ドラえもんの声が大原のぶ代さんで、おじさん世代の僕にとっては非常にしっくりくる安心の声なのであった。もちろん今の声優さんも嫌いじゃないけどね。
映画の内容もとても面白かったです。

少しずつまぶたが重くなって来た。
なんだかうまく眠れるかもしれない。
薬を強くしたせいかな。


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