2017年09月13日

目が覚めてすでに食事が待ち遠しい。
たった一日規則正しくご飯を食べただけで、すでにご飯を中心に時間が回り始めた。
面白いものである。

というわけで朝ごはんはミートオムレツと蕪のサラダ、麩と玉ねぎのみそ汁、牛乳。
今までわりと食べ応えのあるメニューばかりで、僕はモクモクとよく噛んで食べていたのだが、今日のメニューはツルリとしていてさほどモクモクしないうちから喉を滑り落ちていく。
まだご飯が五分粥だから、しっかりと噛む料理がないとなんというか食べ応えがなく寂しいのである。
まあ、作ってもらっているのだから文句は言えないのだけれどね。

看護師さんがやって来て体温と血圧を計測する。
うん、体調に問題はない。
「そういえば、立井さん明日外出されるんですって?」
と看護師さんが僕に聞いてくる。
おう、そういえばそうだった。
明日のお昼はブロークンTVのリハーサルが行われる。
入院中リハは何度かあったが、お休みをいただいていた。
しかし、本番直前のリハーサルは是非とも参加しなければと思っていたのである。
「なにか大事な用事でもあるんですか?」
と看護師さんが興味深そうに聞いてくるので、
「実は音楽をやってまして、明日はバンドのリハーサルがあるのです。」
と告げると、看護師さんは心底驚いたような顔をして、
「えー!すごい!パートはどこですか?!もしかしてボーカル?!」
と、すでに僕のファンのような顔つきでキャーキャーしている。
「ドラムですよ。」
というと、
「すごーい!なんていうバンドですか?」
と聞かれた。ここでミスチルとか奥田民生とかスピッツとかいうとすごいことになるんだろうなと思いながら、
「ブロークンTVというバンドです。」
というと、
「へぇ!ちょっと調べてみますね。」
と依然キャーキャー感は損なわれないまま嬉しそうに去って行った。

たしか、ここは東京だよなと思う。
結構有名なミュージシャンなんてその辺にたくさんいて、彼らもまた体調を崩してこの病院にかかることもあるだろうに、まるで地方の病院で入院しているかのようにキャーキャーされると、なんだか不思議な気分になってくる。
もちろん悪い気はしないね(笑)
しかし、看護師さんに「是非ライブ来てくださいよ。」とか、うまく宣伝することができない自分が少し歯がゆい。僕って昔からそういうのがほんとに苦手なのだ。
そういうのって潔癖性の名残りなのかしらん。

次のブロークンTVのライブは、ベースでリーダーのユカリちゃんが所用で出演することができず、元ステンレスのケンパチさんが急遽参加することになった。つまり、ケンパチさんにとっては初のライブであり、すくなくとも一度はリハで手合わせしておきたいところなのである。

しかし外出すると、その日の僕の身体のデータが取れないから入院が長引く場合もある。(前回入院した時はライブのために外出したから退院が数日遅くなった)
それでもリハはやっておきたいよなと思っていたら、主治医の先生が登場。

「顔色もいいし元気そうだね。」
「おかげ様で。もういつでも退院できそうな勢いですよ。ひまでしょうがないしね。」
僕がそういうと先生はウンウンと頷き、にこりとしていった。
「ご飯もしっかり食べているようだし、もう問題なさそうだから退院しましょう。そうねえ、明後日の15日なんてどうかしら。」
えっ!と僕はびっくりする。
まだ五分粥しか食べられないから、それが普通のご飯になって、体調的に問題なければ退院するとして、もう少し時間がかかるかなぁと思っていたのだ。僕はなんだか夢でも見ているみたいにぼんやりとした顔で先生を見ていたが、突然正気に戻って、
「します!退院します!」
といった。
先生はアハハと笑って、
「退院する前にもう一度血液検査をしましょう。その結果で決めようか。そろそろ普通の食事が食べたいでしょう」
といった。

そしてバンドのメンバーと相談して明日のリハはお休みさせてもらうことにした。
「なあに、当日リハーサルに入れば問題ないよ。」
とみんなはいってくれた。

いやーやっと退院生活ともお別れできる。
なんだかんだいってやっぱり暇だからなぁ。

お昼ごはんは鶏肉のすき焼きとキャベツのお浸し、サツマイモの煮物と杏仁豆腐。
サツマイモをお粥にいれると、芋粥になっておいしい。
素朴な味がなかなかよい。
モクモクと食べる。

さて、退院の日取りが具体的になると俄然忙しくなって来た。
そう、読書である。
カートヴォネガットの小説は比較的ボリュームがあるので、退院するまでには是非読破したい。
他にも渡辺淳一だとか、金原ひとみだとか、釣りキチ三平の続きとか、美味しんぼとかたくさん借りていたけれど、入院生活のラストを飾るのはカートヴォネガットでいいだろう。

風呂に入って身体を隅々まで洗い、談話室に行って小説を読む。
いつもと同じように過ごしているが、なんだか心がウキウキしていることを感じる。
庭を散歩してお花の写真などを撮ってみる。
我ながらウキウキしているなぁ。

カートヴォネガットの「猫のゆりかご」はなんとも奇想天外なお話で、ある意味無茶苦茶なスラップスティックストーリーなのだが、文章の隅々にニヤリとさせられる気の聞いた表現が仕込まれており、ぐいぐいと読ませる。とても面白い。のめり込んで読んでいるうちに日は暮れていくのである。

夜ご飯は鱸の塩焼き、ほうれん草のお浸し、春雨サラダ、はんぺんのすまし汁。
そろそろご飯が五分粥を卒業するかと思っていたが、まだ五分粥だった。
まあ、その辺は慣れたもので、「これはお米のスープなのだ」と割り切って完食。

消灯したらiPhoneでアニメを見る。
「寄生獣」
人気のマンガで本の方は何度も読んでいるが、アニメは現代風にリメイクしてあってそれも面白い。

まぶたが重くなっていく感覚を感じながら、まもなく意識のスイッチを切ろう。
おやすみなさい。




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