2017年09月15日

おうちまでは歩いて帰ることにした。
20分くらいの道のり。具合が悪いわけじゃないし、何かに追い立てられているわけでもないから久しぶりに長く歩くのも楽しい。
途中スーパーに寄って切り干し大根と高野豆腐を買った。これは病院食の影響。
退院してまず何を食べようかと、鼻息も荒くネットで調べていたりもしたのだが、お店には行かず自分のお家で食べることにした。
食材を見ていてはっと気づいたが、すでに秋が到来しているのだ。あやうく病室の中でやり過ごすところだった。
僕が点滴につながれて汗をかきながら病室のベッドで無理して眠っている間、看護師さんたちは仕事終わりで友達だとか彼氏だとかと秋の味覚を楽しんでいたのかもしれない。そう考えると少し腹が立つ。我ながら性格が悪い(苦笑)
とりあえず秋刀魚を買った。お寿司とか天ぷらとかステーキを食べにいくという選択肢もあったが、なんとなくおうちでゆっくりしたい気分なのだ。

10日ぶりにドアを開けると、玄関のところで愛しのハナは眠っていた。
僕が抱き上げると、眩しいものでも見るように僕の顔を仰いだ後、ふうと息をついて腕の中におさまった。
「ハナ久しぶり。久しぶりすぎて僕の顔を忘れちゃったかな。」
「忘れた忘れた。いいからちょっと降ろしてくれない?わたし今眠ってたのよ。わかるでしょ。」
あいかわらずなのである。
たまらずぎゅうと抱きしめると、ハナはギュウと息を漏らした。

とりあえずハナちゃんを降ろして、荷物を片付け、お料理開始。
いやー料理って楽しいなぁ。

できたのはちょうどお昼時。作ったのは秋刀魚の塩焼き、切り干し大根と高野豆腐の煮物、それにちらし寿司(ごはんに具を混ぜるやつ。いただきものです)
我ながら上々のできあがり。10日間のブランクを感じさせないのである。
その証拠にハナが秋刀魚欲しさに僕の膝元で足を揃えていい子にしている。
おいしい料理はまず香りがいいのですよ。と自画自賛。

退院してみたものの、今日は別に何かがある日というわけでもない。
せっかく元気になったというのになんだかもったいないのである。
というわけで、またもや玄関で眠っているハナをまたいで外に散歩に出てみることにした。

あたりまえだが、待ちゆく人たちはみんな健康そうだ。さっきまでは不健康な人たちばかりと生活を共にしていたと思うと少し不思議な気分になる。

本屋さんに入ってみる。読もう読もうと思っていたのに買っていなかった村上春樹の本をみつけたので一気に3冊購入した。入院したことでなぜか読書熱が一気にあがったらしい。

そういえば、と思う。
入院中にいくつか食にまつわる雑誌を買ったが、いずれもお料理を小皿に盛り付けるスタイルを推奨しており、見ているうちに欲しくなってしまったのだった。うちには小皿がたくさんあるけれど、もっとスタイリッシュなのが欲しい。
いつも行くお気に入りのお店に寄ってお皿を見てみる。
うーん、美しい。お皿というのはどうしてこうも僕の心を揺さぶるのだろうか。20代の頃九州でツアーをやった時、気に入ったお皿を発見して大事に持って帰ってきたりもしたもんな(今でも大事に使っています)
ほっくりした気分で眺めていると、店員さんが、
「よかったら手に取ってご覧になってくださいね。」
とにこやかにいう。
僕は小さく会釈してまたお皿に目を移す。
黒織部の小皿が実に楽しい。しかしこのガチャガチャした模様の感じを生かす料理とはいったいなんなのだ。まさにセンスを問われる皿だ。難しい。難しいぞ。

眉間にシワを寄せて考えていると、いつのまにか店員さんはカウンターから出て僕の横にいた。
「なにかお探しですか?」
「いや、えーと、ちょっと小皿がほしいなとか思いまして。」
「そうですか。その織部焼きもとてもいいものですよね。かわいらしくて、素敵じゃありません?」
「ええ、とても素敵です。ただ、いろいろ見ていると小皿だけじゃなくて他のお皿にも気が移ってしまってですね。悩んでいるところです。」
「例えば?例えばどのお皿が気になりますか?」
そのようにはしゃいでいう店員さんは多分僕より年上なのだが、小さくてなんだか可愛らしい感じの人なのである。ただし、おそらくただ店員をやっているというだけでなく、陶芸に対して深い愛情を持っている人なのだろう(店長さん、あるいは店主なのかもしれない)普通のおばさんという感じではない。身体のどこかから感性という名のアンテナが飛び出しているような感じだ。

「この角皿も素敵だし、それにこのお皿は白いバージョンもあるんですね。」
と僕はいう。その独特な形のお皿は以前ここで買ったのだが、僕は黒を持っていた。多分僕が買った時には白はなかったと思う。
すると、店員さんの頬が少し赤らみ、少女のようなキラキラした目で僕にいった。
「このお皿!とてもいいですよね。形といい大きさといい、深さも厚みもとてもいい。どんなお料理にでも合いますし、すごくお勧めですよ。実は私も何枚か持ってるんです。」
多分、セールストークなどではなく、本心からその皿を誉めているのだろう。
「実は前にここでこのお皿をいただいたんですよ。とても重宝してます。」
僕がそういうと、彼女は顔の前で手を合わせて、
「まあ、そうだったんですか。ありがとうございます。」
と嬉しそうにいった。
ひとしきりふたりで件の皿を誉め称えた後(笑)別の皿へと目を移す。
気の効いた小皿を見てまわるが、いまいちこれを買おうというものはなかったが、店員さんはひとつひとつの器について生産された場所や作った人などを丁寧に教えてくれた(最初に説明されたお皿ほどの情熱はなかったかもしれないが)
見ていると小皿ではないが、薄いグリーンの角皿がやけに気になってくる。
「これもとてもいいですね。」
と僕がいうと、
「そう、これもとてもお勧めですよ。もちろん私も持ってます。」
どうやら僕と店員さんは食器の趣味が合うらしい(笑)
そこそこの値段がしたが、自分の退院祝いということで購入することにした。
支払いをする時、そういえばと店員さんはポイントカードを作ってくれた。
えらくたくさんスタンプを押してくれるので、なぜかと尋ねたら「以前お買い上げいただいた分も押しておきました。」と笑った。







この記事へのコメント

1. Posted by shinochi   2017年10月07日 21:50
退院おめでとうございます❗️
というか、既に退院されていたのでしたが…。
私がその病院のナースであれば、退院をお祝いすると同時に寂しくなるでしょうに(笑)
何はともあれ、退院されて良かったです。
入院前のように、音楽や料理、日々の出来事など、ブログ楽しみにしてます。
お体お大事に。
2. Posted by ちあき   2017年10月10日 14:24
お誕生日おめでとうございます(*^^*)

ブログ更新嬉しいーと、読みに来たら入院されてたと知り驚きました。
無事に退院されて何よりです。
新たな1年、素晴らしい年になりますように。
3. Posted by shinochi   2017年10月10日 20:26
同じ記事に2回もコメント失礼します。
お誕生日おめでとうございます❗️
これからの1年、体調崩されませんように、お体お大事にしてください。
4. Posted by みきや   2017年10月10日 22:29
shinochiさん>ありがとうございます。心静かにひとりで誕生日を過ごしております。ブログ更新しますね。
5. Posted by みきや   2017年10月10日 22:32
ちあきさん>ありがとうございます。日々の暮らしなんてちっぽけなものだと思ってましたが、積み重ねが大事なのですね。精進します。

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