2011年04月22日

私は飯田市生まれ飯田市育ちで今は飯田市在住ではないけれど飯田市で働いている。

人生の半分は東京在住だったけど、2009年の秋頃から、中央リニア計画が具体化するにつれて、ふるさとのことが気がかりになっていった。今南信に居を移しているのには、そんな気がかりも作用していたような気がします。

さて、中央リニア計画では、諏訪のあたりを迂回するルートも議論の俎上に上がっていて、長野県内ではあれこれローカルな立場の違いがあったわけだけど、南アルプスを貫く直進のCルートでほぼ決まりということで、飯田市周辺では中央リニア飯田駅がもう出来ると決まったような雰囲気で話がなされている。

飯田ローカルじゃない見方からすれば、Cルートと決まっただけで、飯田市の中に駅を作ると決まったわけじゃない。長野県内に計画される中間駅の名前が「中央リニア飯田駅」と決まったわけではないわけです。

それで、飯田市は公式見解として「中央リニアの駅を現飯田駅に併設すべき」と主張している。長野県にかかわりの無い人にとってはどうでも良いことかもしれないけど、リニア計画と下伊那の関わりについて、地元に最近帰ってきた立場から見えてきたこと、考えたことについて、現時点での感想をまとめてみたいと思います。


※2009年の関連する話題から「中央リニア新幹線Cルート確定



飯田市は市をあげてリニア推進を進めていて、市役所には担当部署もある。

◎リニア推進対策室
http://www.city.iida.lg.jp/iidasypher/www/section/detail.jsp?id=4376

それで、リニア中間駅に対する飯田市の公式見解は次のような感じ。
 
 さらに、リニア中央新幹線のメリットを活かすには、地域外の人に飯田下伊那地域に来てもらう視点も重要です。地域外の人に来てもらうためには、戦略的な地域づくり(略)や駅からのアクセス(飯田下伊那・長野県・三遠南信地域を考慮した高速道路からのアクセス、既存鉄道乗り換え利便性、(略)などを考慮することが必要となります。
(略)以上のようなことから総合的に判断しますと、地域にとって「造るべき場所」としては現飯田駅併設が最もふさわしいと考えます。

  http://www.city.iida.lg.jp/iidasypher/www/info/detail.jsp?id=6919


そういう立場から開催された2011年2月27日のシンポジウムで質疑応答がなされたとき、飯田市内だけど中心市街地から外れていて、合併前の町だったころの結束がまだ残っている鼎在住のある方から、飯田駅併設への反対意見が出されたことがある。

※関連ツイッターまとめ「飯田と中央リニア、2月27日


飯田駅併設に対する反対論について、飯田になじみの無い人に話をする意味も無いのかもしれないけど、まあちょっと地図を見ていただきましょう。

大きな地図で見る

地図では南北が縦なわけですが、飯田駅の辺り、飯田線は南西から北東に向けて走っています。東側に元飯田町、江戸時代には飯田城の「城下町」であった飯田市の中心市街地があります。

ここにまっすぐ東西にリニア線を走らせると、現飯田市街地をつぶすことになるじゃないか、今ある住宅地への影響も大きいではないか、というのが反対論の趣旨です。

飯田市の見解としては、飯田駅周辺はまっすぐ東西にではなく、少しS字カーブして飯田線に沿わせるようにすればいい、リニア駅用の敷地も確保できるはずだ、というものです。地元のとある地域での説明会に出かけて、市役所のリニア担当の人が「飯田駅併設のためにリニア路線をS字カーブさせるのは不可能ではない」と言っているのを聞いたときには、非現実的だと思いましたが、地図を見てみると、この微妙な傾き具合、まっすぐ東西というのとそんなには違わないでしょうと考えるのもわかる気がします。

しかし、飯田駅に併設するためだけに、飯田中心市街地を避けて中央リニア路線をたとえわずかであってもカーブさせるということに、県外の人がどれだけ合意してくれるのか、なかなか難しいものがありそうです。

それで、長野県の中でも北部、中部と南信では見解が異なるし、長野県の南にある伊那谷の北半分(上伊那)と南半分の下伊那でも、立場が異なります。上伊那にある伊那市は、諏訪市と一緒に、Bルートを推進していたという話もあるわけで。

さて、長野県内の地方紙としては最大手である「信濃毎日新聞」は次のように報道していました。

JR東海が2027年東京-名古屋間の開業を目指すリニア中央新幹線計画で、同社などが想定する県内通過地点の概要が27日、分かった。(略)JR東海が「1県1駅」としている県内中間駅は、飯田市街地より北側の郊外でJR飯田線と交差する付近に設置される方向だ。地元の南信州広域連合などが市街地の飯田駅併設を希望している一方、Cルートで整備された場合、中間駅を上伊那地方に近づけた方が県全体の利便性が高まる-との見方もあり、JRや地域間での大きな調整課題になりそうだ。

http://www.shinmai.co.jp/kensei/2010/10/post-226.html

この「27日、分かった」という記事の書き方、情報の出所が明記されておらず、他のソースではここまではっきりJR東海の長野県内中間駅についての発言を語っているものは確認できていないのですが、何らかの仕方で、JR東海関係者の意向を反映した報道なのでしょう(ぶっちゃけて言えば、信毎がこう報じた背後には、長野県内世論に対するJR東海の意向が働いている気がしないでもない)。

※長野県内の中間駅について、JR東海の公式見解を伝える報道には、次のような記者会見への言及があるけど、上に引いた信毎の記事が伝える「27日わかった」というものとは微妙に違うみたい。
http://www.47news.jp/news/2010/10/post_20101022112915.html
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20101023/1287836623
JR東海がリニア中間駅の飯田市以北への設置を示唆:南信州新聞 2011年 1月 6日
(2011年4月25日追記)

上の信毎の記事で触れられている通り、「現飯田駅に併設」という方針で長野県内の利害が調整できるかどうか、課題は大きいと言わざるを得ないです。これは、建設費用の負担に関しても、県の予算をどれだけ振り分けられるかということをめぐって、ポイントになる点だと思われます。

長野県が県としては中信を通るルートが良いと主張してきたことからも、飯田駅併設より、飯田の北部、下伊那と上伊那の真ん中辺りに駅が出来たほうが良いという意見が中信から出るだろうことは予想できるわけですが、上掲の記事は、信濃毎日新聞が本社を長野と松本においていることからも予想されるように、長野県の北部(北信)、と中部(中信)の意向を反映した記事になっていると思われます。

そうした県内利害を考えた場合、下伊那としては、結果として飯田市の北の郊外に決まったとしても、飯田は譲歩したというポーズを示せるわけですから、飯田の利害に沿った建設地へと話を決める上では始めは飯田駅併設を唱えておいた方が良い、というような判断もあるのかもしれないなあと思います。まあ全くの憶測ですが。

もちろん、飯田市の担当者や利害関係者で、飯田駅併設を本気で主張している人も複数居るのでしょうが、他の場所を主張すると角が立つから、とりあえず飯田駅併設と言っておけばいい、という建前的な賛同や容認も多いのだろうなと思います。

まあ、下伊那の立場からすれば、現飯田駅以外に地域の中心となる場所があげられないというのもわかる話で、得もあれば損もある、いろいろ利害がからむリニア中間駅の場所をはっきり示すのに、飯田駅以外では下伊那の利害がまとまらないだろうなと想像できます。

現飯田駅併設というのは、飯田の街の魅力を高めるものかというと、個人的には大いに疑問です。
きっと、リニア中間駅の周りには、タワーマンションがいくつか林立して、ショッピングモールができて、それで終わりではないだろうか。下伊那らしさは、逆に奪われるのではないかと危惧します。

だいたい、リニア新幹線から飯田線への乗り換え需要ってそんなにあるとも思えない。くねくねのろのろ走るのが飯田線のいいところなんだから、リニア計画が実現したとして、中間駅で下車したら、小一時間お茶でもして気分を落ち着けてから、ちょっと町でもぶらついて、飯田線ののろのろ具合を楽しむという観光コースになればいいんじゃないか。そのためには、現飯田駅への併設というのは、外来の飯田線利用者にとっての利便にかなうとは必ずしもいえないと思います。
飯田市街からの徒歩圏内、ないし、バスやタクシーですぐに行ける範囲に中間駅ができれば、飯田の中心市街地としても、十分メリットがあるのではないか。むしろその方が、市街地の少し鄙びた魅力が十分生かされるかもしれない。そう思うわけです。

また、下伊那地域の飯田線沿線住民は、飯田線の駅に行くにも自家用車を利用しないと行けない人がほとんどでしょうから、結局、中央リニアを利用するとしたら、リニア駅に直接車で行くことになると思います。

そうすると、大量の自動車が効率よく駐車したり下車したりできるスペースが必要で、飯田駅併設プランというのは、そういう自家用車からの乗り換えニーズを十分考慮したものとは思えないですね。

現状、下伊那地域に設置する計画が決まるらしいリニア中間駅(繰り返しますが、飯田駅と名前が決まったわけではないのでこういうまわりくどい言い方をします)をめぐって、こういった議論が十分なされているとは思えない。市政の利害に関連しつつ、トップダウンで方針が決まっているだけのように思える。地元の人の話を聞いていても「飯田駅併設ができるなんて思っているひとは誰もいないよ」という声が聞こえてきます。

ともかく、なんとなく田舎の寄り合い的な利害の調整と、大人の事情的な示し合わせで計画が進んで行きそうだなあという印象を私は持っていて、リニア計画の是非とか、駅の場所が決まるまでのプロセスに自分が何か運動して関わろうという気持ちにはなれないというのが正直なところですが、決まった後の街のあり方をどう考えられるのか、いろいろ今から備えておきたいなあとか、考えています。

※「リニア中間駅は飯田市街南郊外が良いな」(地元のひとのブログ記事)
 http://semishigure.air-nifty.com/essay/2011/03/post-48ab.html

※ウィキペディアの関連解説
http://ja.wikipedia.org/wiki/中央新幹線

※JR東海の公式見解
http://company.jr-central.co.jp/company/others/bypass02.html



(11:00)

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1. リニア新幹線中間駅を飯田線飯田駅へ併設するなら  [ 蝉時雨 ]   2011年05月09日 10:00
上郷の鶏足院の北から一旦トンネルにして、テニスプラザあたりで再び地上に出して飯田

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