面白いが、ハードルは高い





“主人公、岡部倫太郎は秋葉原でヘンテコな発明サークルを主催する大学生。サークルの最新作である電話レンジは、過去にメールを送れる機能を備えていた。だが、その発明は人類の禁忌に触れるものだった”

PSPとXbox360で出てるテキスト型アドベンチャーゲーム。開発はニトロプラスと5pb。

開発の5pbとニトロプラスはアダルトメーカーとして有名であり、故にギャルゲーが苦手な俺としては何となく嫌な予感がしたが、数年前にXbox360で発売されたオリジナル版の評判がすこぶる良いし、テキストアドベンチャー自体は好きなジャンルなのでとりあえず買ってきた。

舞台となるのはオタクの聖地、秋葉原。それだけに登場人物は強烈な個性を発している。
主人公は、狂気のマッドサイエンティストを自称している鳳凰院凶魔。いや、ふざけて言ってるんじゃないんです。彼がそう言ってるんです、はい。
このことから察することが出来ると思うが、彼は重度の厨二病である。機関とかいう見えない敵と常に戦っており、突然右腕が疼くし、思い出したようにクククと笑う。
彼の右腕であるスーパーハッカーは、見た目が完全にピザデブで、喋り方と言い、会話の9割にネットスラングを挟んでくるキモオタだし、他にも、ネラー+ツンデレの天才少女、ふわふわした喋り方で能天気な幼馴染、健気な男の娘、普段はロクに口も利けないメール魔、猫耳ニャンニャン娘などなど、
とにかくあからさまに狙ったようなキャラのオンパレードで、人によっては嫌悪感を催すかも知れない。俺も幼馴染の喋り方とニャンニャン娘に関してはちょっとイラっときた。
が、誰かれ構わず厨二病全開の節で絡む主人公は最高に良いキャラをしている。一方的に厨二な台詞を吐き続ける主人公と、それに様々な反応を示す相手の珍妙な掛け合いが面白いだけでなく、彼と話しているだけで相手の隠された一面が解かれていき、魅力が掘り下げられていくのだから凄い。単なるキャッチーな設定として終わらせていないのは素晴らしい。

このゲーム、はっきり言って序盤は退屈だ。ここで色々伏線やら張っているのはわかるのだが、何も事件が起きなければ、明確な目的意識もなく、タイムトラベルに関する難しい解説ばかり。主人公のノリのおかげで何とか読み進められたが、かなり苦痛だった。
このタイムトラベルに関する理論については、とんでも理論でありながら、それなりに納得出来る内容ではあるし、実際にあり得そうって思わせる感じにはなっている。
ただ、その理論の要となっているアトラクタフィールドに関してはご都合主義がありありで、決められた運命は変えられないとしながらも、それが全ての事象に当てはめられるわけでもないのはちょっと都合が良いかなと思う。

で、15時間くらいシナリオを進めると、ある事件をキッカケにようやく盛り上がりを見せ始める。
タイムリープを繰り返して、前半に溜めに溜めた伏線がどんどん紐解かれていく。綺麗に伏線が回収されていくのでどんどん読み進めたくなるし、どのルートもしっかりと話が練られており、生々しいほどシリアスに描かれているので引き込まれてしまう。
マルチエンディング式はあまり好きではないが、これだけ各ルートが作り込まれているなら文句はない。それにタイムトラベルを題材にしたゲームなので、ifの結末が存在しても違和感なく受け入れることが出来る。

マルチエンディングのルート分岐に関わってくる重要な要素がフォーントリガーと呼ばれるシステム。
このゲームは携帯電話を操作する事が出来る。メールや電話が来た時、それに受け答えるか無視するか、どのように返信するかを選択する事が可能で、この選択によってエンディングやシナリオが変わってくる。
携帯電話で選択させるというのは面白いが、実際のところよくある選択肢の延長なので、さして特筆するような事でもない。むしろ周回プレイをする際に、文章をスキップ中でも電話の操作をいちいち求められるので面倒くさい。
トゥルーエンドの発生条件は非常に難しく、というか攻略サイトを見ないとまず分からないような条件で、上の面倒な要素と相まってフラグを回収するのが非常にダルい。
俺の場合、トゥルーエンドを見る為にわざわざ最初から始めて、攻略サイトを確認しながら条件を潰す作業を行っていたのだが、その攻略サイトが間違った情報を載せていたせいでさぁ大変。
分岐地点でフラグが発生せず、ようやくその誤りに気付くも時既に遅し。セーブは全く取っておらず、色々弄ったことでチャプターの最初からスタート出来るクイックロードのデータも全て消えてしまい、また一からやり直す羽目になった。
あまりの悲惨っぷりに、俺はアトラクタフィールドによってトゥルーエンドを見る事が出来ないよう運命付けられたのかとも思ったが、別にそんなことはなく、ちゃんとやり直したら普通に見れた。実にこの間6時間。それでもそれだけの苦労をした甲斐はあった。トゥルーエンドの存在が、このゲームの価値を数段高めている。

シナリオは良いが、入り込みにくい面があるのも事実。先にも言ったように、ツンデレ娘、ニャンニャン娘、男の娘、能天気娘達の発言や性格があまりにあざと過ぎて辟易としてくるからだ。
エロいシーンは少なめだが、結局ノリはギャルゲーなので、どうしてもそれがストーリーに入り込むことを邪魔してくる。
だが、登場人物の設定は決してミスマッチというわけではなく、むしろ上手く溶け込んでいる。それに終盤の見せ方が上手いので結局最後は感情移入出来てしまったから、この形で正解なのだろう。

次にこれは明確な欠点だが、テンポが非常に悪い。音声の同期が遅く、会話が流れるまで3秒ほど待たされることがある。このモッサリテンポのせいでかなりイライラした。
あと、絵の枚数が少ないのとサウンドがしょぼいのが気になる。明らかにセリフの雰囲気とキャラの立ち絵が合ってない場面が多々あるし、銃声のしょっぱい響きには拍子抜けしてしまった。インターフェースも雑。

シナリオは中々良く出来ているが、トゥルーエンドの条件と言い、ある意味で受け付けがたい雰囲気と言い、楽しむ為のハードルは高い。
そして絶賛されてるほど面白かったかと言うと、正直そこまででもなかった。
だが、ギャルゲーだからと言って敬遠するのは勿体無いゲームであることは間違いない。