エリザベス日記。ネタバレ注意




抽選会場へ。手提げのバスケットに溢れんばかりの野球ボールを入れた少女の前に行列が出来ていた。周りを見渡すと多くの人が野球ボールを握っている。

「今年もいよいよね」

「いやー、この一年長かったよ」

市民はそわそわとし、抽選会の開催を今か今かと待ち構えているが、それよりもブッカーは目の前の立てかけ看板に目が釘付けとなっていた。

「この印がある者は偽りの羊飼いだ」

その立てかけの看板には、手の甲にADと刻まれた悪魔の手が描かれていた。
ブッカーはチラリと自分の右手の甲を見る。そこには、ADの刻印がはっきりと刻まれていた。

「お兄さん、ボールはどう?もちろんお金はいらないわ」

少女がバスケットを差し出したので、中のボールを引き抜く。ボールには番号が記されている。ナンバーは77番。
ラッキーナンバーね、と少女は言ってくれたが、この数字は確か・・・

「さぁー、お待たせしました。1912年コロンビア抽選大会の始まりです!今年の一等商品はこちらです!」

山高帽を被った紳士風な男の合図と共に壇上の赤い幕が開くと、目に入ったのは、スーツ姿の白人男性とウェンデングドレスを着た黒人女性のカップルだった。華やかな結婚式衣装をしているのにも関わらず、彼らは何故か縄で縛り付けられている。

「さぁ、では抽選大会を始めましょう!」

男は箱から一枚のカードを抜き取り、叫ぶ。

「番号は77番!77番です!このラッキーナンバーを見事引かれた方は誰ですか?」

この先何が待ってるか予感したブッカーは黙っていると、空気を読めないボールガールが「あの人よ!」と言ってしまう。余計なことを。

「おめでとうございます!そこの紳士!さぁ、あなたには、この夫婦にボールを投げ付ける権利を与えましょう!」

いらねー。マジでいらねーよその権利。オプーナを買う権利並にいらねーわ。
心ない観衆は投げろ投げろの大合唱。壇上の夫婦は震えており、フィアンセだけでも助けてくれと男は叫んでいる。
あの夫婦はどうやらボールをぶつけられる快感に浸るためにあそこに立っているわけではなさそうだ。ならば、取るべき選択は一つしかない。

ブッカーが右手にボールを握って振りかぶると、気配を察した警官に腕を掴まれる。手の甲のADがはっきりと見られてしまった。
山高帽の紳士が顔を寄せてくる。

「ふん、お前が偽りの羊飼いだったか。一体、何をするつもりだった?」

お前の顔にボールをぶつけてやるつもりだったんだよ、バーカ。
左からも警官が現れる。彼の手にはフック状の刃が付いた武器が握られており、刃はかざ車のように勢い良く回転している。
フックの刃が迫ったところで、ブッカーは持っていたボールをふわりと浮かせ、それに目を奪われた右側の警官に肘打ち。怯んだところ顔を掴んでブッカーが受けるはずだったフックの刃に思いっ切り押しやった結果、彼の顔は無惨なものになった。
その反動で左側の警官は生命線であったフックを手離してしまい、宙に浮いたそれをブッカーが見事キャッチ。次から次へと現れる警官をフックで殴りながら進んで行く。更に道中でマシンガンもゲットし、ブッカーは殺戮のファンタジスタとなる。清楚だったコロンビアの街は、あっという間に警官の屍で埋め付くされた。

門を抜けた先は炎に包まれていた。原因は巨大なアンドロイドであるハンディマンによるもので、奴隷商人から解放された彼は自由を満喫するように暴れ回っている。
が、その自由な時間はブッカーの登場によりあえなく終わりを告げる。数分後、ハンディマンはただの消しカスとなった。

ハンディマンと最後の数分を共にした超能力、デビルズ・キッスをブッカーのものとする。これで今日からブッカーも放火魔に。

「目撃情報によると、偽りの羊飼いは、身長145cmで、黒人で、片目が失われています。もし見かけられましたら、近くの警備の者にお伝え下さい」

ブッカーの容姿と一ミクロンも合致していない奇跡の注意報が街中に鳴り響く。奴らの差別主義な思考は、相当根が深いらしい。
コロンビア政府が全力でミスリードしてくれているが、もはやゆっくり観光出来る状態ではない。エリザベスを探そう。さっきから何処に居ても目に入るほど目立つ巨大な女神像、モニュメントアイランドが怪しいよな。

ゴンドラ駅へ到着。ここにはモニュメントアイランド行きの飛行船があるのだが、ブッカーが鬼神の如く暴れ回った結果、船を運転する者がいなくなってしまった。
代わりに運行手段として与えられたのがコロンビア中に張り巡らされているスカイレールで、そこに、先ほどから危ない異名が付いてしまいそうな勢いで警官を撲殺しまくっているスカイフックを引っ掛けて、ジェットコースターのように滑っていく。

終点に警備兵がいる。が、祈りに夢中で誰もブッカーの殺人オーラに気付く様子がない。銃を捨てて一心不乱に祈り続けている。
彼らは人の迷惑を省みず建物の入り口で祈りを捧げており、邪魔なので撃ち殺していく。反撃を覚悟したが、全く動じずに祈りを捧げている。建物内で流れた映像を見て、彼らが誰に心を尽くしていたのか分かった。

「金、酒、薬、次は少女か、探偵ブッカーよ」

コロンビアのリーダーであり、預言者であり、エリザベスを幽閉している男でもあり、そして、信者が最後のその時まで祈りを捧げ続けていた人物、カムストックの姿がそこにはあった。

建物を抜けると、ようやくブッカーでも運転可能な飛行船を発見。操縦席には先客がいたが、大人しそうなシスターだったので特に気にもせず彼女に背を向けてコクピットのレバーを引く。
しかし、背後で呪いの言葉が聞こえたので後ろを振り返り、シスターが手に持っていた燭台を手離したのを目撃した時には、もっと気にしておけば良かったと思うのであった。
悔やんでいる暇もなく、飛行船は炎に包まれてしまう。急いで飛び降り、どうか落下するまでにスカイレールがありますようにと祈っていたら本当に丁度良いところにレールがあり、見事フックに引っ掛け滑っていく。そしたらまた丁度良いことに終点がモニュメントアイランド。
神に魅入られているとしか思えないブッカーはそのまま飛ぶ鳥を落とす勢いで爆進。モニュメントアイランドという名の石像の中へ潜入する。

石像の中は、研究施設だった。エリザベスと思わしき少女の写真や記録がそこら中に溢れている。
二階に上がるとますます人体実験施設の色は強くなり、少女の部屋は窓ガラスやモニターで完全に監視されていた。
彼女のドレスルームのある階へ。例によって部屋の前にあるレバーを引くと、壁の8割を占めている窓のシャッターが降り、エリザベスのプライバシーの権利は踏みにじられる。
しかし、全くそんな事には動じず、エリザベスはドレスルームで踊っていた。窓ガラスの前でポーズまで取っている。どうやら向こうからはこちらの様子が見えてないようだ。しかし、こちらからはエリザベスの際どい姿勢が丸見えである。
エリザベスが割と可愛い事が分かったので、改めて助けに行く。彼女との初めての対面は、床が崩れてエリザベスの部屋にブッカーが落下してしまったところ、彼女に不審者扱いされてしまい殺傷ステータスを充分満たした分厚さの本を投げ付けられるという、中々愉快なものだった。
あるカップルに貰った鍵を彼女に手渡し、その鍵で分厚い鋼鉄の扉が開くと、エリザベスの様子は変わる。

「あなた、私をここから連れ出してくれるつもりなのね」

外から汽笛のような鳥の鳴き声ような音が聞こえてきた。コロンビアに旅立つ直前の灯台で聞いた音だ。

「彼が来るわ。彼は私を見張ってるの」

彼とは、バカデカい鳥のことだった。バカでかすぎて衝突した振動でモニュメントアイランドが崩れ始める。急いで脱出する事に。
道中、自分の囚われていた部屋がプライバシーの欠片もない作りである事に気付いたエリザベスは、狼狽する。

「私は一体誰で、何なの!?何で私はここに居て、どこにも行けなくて、初めてあった余所者があなたなの!?」

石像が崩壊しかけている今、その質問に答えているだけの暇はない。
何とか外に出ると凄まじい突風と共に鳥が現れ、その反響でエリザベスが空中へ吹き飛ばされるが、ブッカーは身を投げて彼女の身体を掴み抱きかかえ、そのまま張り巡らされたスカイレールにフックを引っ掛け何とか窮地を脱出。
したかと思いきや、巨像の瓦礫がヒットしてレールは途中で寸弾。そのまま二人は落下していく。
都合が良いことに落下した先は水の中。空中都市で海なんてどうやって維持してるのか気になって仕方ないが、その前にブッカーとエリザベスの身が危ない。危ないのは二人だけではなく、鳥まで水中でもがいていた。泳げないのにエリザベスを追ってここまで来たのか。彼のエリザベスを想う気持ちは本物なのだろう。
ブッカーの意識はそのまま遠のき・・・

また、ブッカーは酒を飲んでいる。ドアを叩く音はいつまでも続く。

「ミスターデュイット!ミスターデュイット!このドアを開けろ!娘を連れ戻せば借金は帳消しだ!」

ブッカーはフラフラとした足取りでドアまで近付く。

「アンナ・・・アンナ・・・」

ブッカーはそう呟きながら、ドアを開けた。
今日はここまで。