FFは、これで良いんだ





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PS3とXbox360のRPG。開発はスクウェア・エニックス。

傑作。大傑作である。
事前情報の段階からこれは相当期待できそうだとは思っていたが、まさかここまでのものを作り上げるとは。
複雑なルール、高い難易度、厳しい制限、不明瞭なアプローチ。ユーザーを突き放した作り故にハードルは高いが、ルールという制約があるからこそ高いゲーム性を実現することに成功し、ゲームのユーザービリティ化が推し進められている今の時代では極めて珍しい、ゲームシステムの純然たる面白さがダイレクトに感じ取れる至高の一作である。
今作をもって、一生FFに付いてゆくと決意を新たにした。

ライトニングリターンズは、一つのコンセプトの元に全ての要素が集結している。
時間制限。限定的な回復手段。複雑なタイムスケジュール。どこから進めても良い自由度。経験値の廃止。高い難易度。
これらのシステムと仕様には全て明確な意図があり、それぞれが有機的に絡み合って一つのコンセプトに繋がっている。
ではそのコンセプトとは何か。それは、自由度と時間制限がある中で、如何にプレイヤーに考えさせながらプレイさせるか、という一点だ。

一つ一つの要素を詳しく見ていく。まず、このゲームの最大の特徴である時間の存在。施設の営業時間が決められていたり、ある時間帯にしかNPCが現れなかったり、と、常に時間が流れていることで様々な影響を与えているが、最も大きいのは世界の寿命が尽きるとゲームオーバーになってしまうということだろう。
ゲームの目的は世界の寿命を伸ばして13日目を迎えることであり、寿命を伸ばすにはメイン・サブクエストのクリアーが必要となる。クエスト自体は良くあるお使いの連続で作業じみているが、時間制限の存在により緊張感が生まれている。同時に、クエストは時間帯によって左右されることも多いため、
「今は◯時でこのクエストのフラグが立っているからこれを終わらそう。◯時までこのクエストは始まらないからその間にこれをやっておこう」と言った感じで、如何に効率良く消化していくかという奥深さがある。
それを加速させているのがどこから進めても良い自由度とシームレスに繋がったフィールド。残された時間をどのように使い、どう過ごしていくかは完全にプレイヤーの自由。このゲームの自由度とは、ただプレイヤーの好きなように遊んでくれという意味合いのものではない。どうすればクリアーに到達できるかという一点に向かってユーザーが最初から全てのアプローチを試せるということだ。道筋は無限にあるが、プロセスをどう作っていくかはプレイヤー次第。
つまり、プレイヤーの工夫・やり方次第で、このゲームはどうとでも動いてくれるのだ。逆に、全く頭を働かせようとしないプレイヤーに対しては容赦なく切り捨てにかかっている。
と、ここまで書いていると時間に追われてひたすら忙しいだけのゲームに思われるかも知れないが、時間を止めるクロノシスタスを上手く使えば案外ゆとりはある。上手く時間を捻り出して、どこで時間を潰そうかなと余裕たっぷりに行動する、このメリハリもモチベーションを維持させてくれる大事な要素となっている。

次に、このゲームには経験値やレベルといったものが存在しない。その理由は恐らく、戦闘をしている間は時間が流れないので、一方的に戦闘を繰り返してレベルを上げ、クリアーを楽にするという手段を封じるためだろう。能力値はクエストをクリアーすることでアップする。
レベル上げはクリアーが難しいと感じたユーザーに対するRPGならではの救済策のようなものだが、まさかそれすら締め出してくるとは。ライトニングリターンズのコンセプトの徹底ぶりは異常である。
では、戦闘する必要はないのかと言うとこれが違う。何故ならGPポイントを回復する効果的な手段が唯一戦闘しかないからだ。
GPとは、ワープして移動したり、HPを全回復したりという強力な効果を持つ特殊能力であり、GPポイントを消費することで発動できる。特にクロノシスタスは一定の間、時間を止められるという超強力な効果を持っている。
初見ではクロノシスタスとテレポを使わなければクリアーは極めて難しく、如何にその二つを上手く使うかが攻略の鍵を握るわけだが、GPポイントの補給として戦闘の必要性が出てくるわけだ。
では、戦闘を繰り返してGPを貯めて、クロノシスタスを連発していればやっぱりゴリ押しクリアーできるのかと言うと、甘い、甘すぎる。ここで問題になってくるのが回復手段の少なさ。ケアルといった手軽に使える回復魔法は一切存在せず、回復手段は極めて限定的。流石にポーションはあるが、持てるアイテムの数も最大で10個程度と厳しい制限がある。当然今までのように戦闘が終わったらHPが回復するということはない。
GPを貯めたい。でもHPは温存したい。このリスクとリターンの狭間で頭を悩ませられる感覚がもう堪らない。常に考える必要があり、駆け引きを求めてくるゲームバランスは素晴らしいとしか言いようがない。

そして特筆すべきは戦闘システム。FFは毎回戦闘システムに感心させられるが、今作はその中でも随一だ。個人的には最高傑作と言っても差し支えない。
システムは13から大幅に一新されている。今までは、ゲージが溜まりきったらアビリティを入力した分キャラが行動してくれるという形だったが、今作はアビリティを入力した時点でその行動を行ってくれるため、かなりアクション寄りになっている。敵の攻撃タイミングでガードすれば効果の高いジャストガードが発動したり、特定の場面で攻撃を加えれば高い威力が見込めたりと、アクションならではの要素が満載。
一方で、アビリティには全てゲージ消費が定められ、アクティブゲージがある分までしかコマンド入力できないというRPG的な行動制限がある。
アクションとRPG、とにかくこの絡み合いが絶妙すぎる。敵の動きを見て直感的に反応するアクション的な楽しさと、ゲージ管理をしてどのタイミングでどのコマンドを入力していくか適切に判断していくRPG的な戦術の楽しさ、両方が存分に楽しめる。
それに加えて、バックステップを含む攻撃で間合いを取ったり、フィニッシュ攻撃のタイミングだったり、ガードによる硬直キャンセル、部位破壊など、様々なテクニックがあり、めちゃくちゃ奥が深い。もう本当に楽しい。
回復手段が少ないゲームの仕様により、工夫しながら戦闘しなくてはという意識が働くのもこのゲームのシステムを活かすのに一役買っているし、ガードが強力であるため上手く工夫すれば簡単に敵を完封できるこのゲームの戦闘システムは、回復手段の少なさを理不尽と感じさせない。
システムとして秀でているだけでなく、ゲームの仕様とも完璧までにマッチしている点に驚きを禁じ得ない。スクエニのシステム面の練り込みは本当に凄い。ブラボー。

13シリーズのネックであったストーリーも完結編である今作は悪くなかった。
整合性を保つために無理矢理設定をこしらえている感は強いし、キャラクターの心情や葛藤をこれまた陳腐な設定で比喩して分かりにくいかつチープな感じに見えてしまうのは相変わらずの欠点だが、今まで責任を一身に背負って心を殻に閉ざしていたライトニングが、最後の最後に、自分の純粋な混じり気のない本当の想いを曝け出すという展開は良かった。その想いが、今までのライトニングの姿からは想像できない、情けなくて弱いものであったのが、余計に心を打ってくる。
最後の大団円もそれなりに綺麗にまとまってるし、スクエニお得意のズバ抜けたプリレンダムービーのかいあって盛り上がる。

欠点はインターフェースが微妙なこと。特にスタイルのカスタマイズ回りはかなり煩雑。メニューを一々開かないとGPを発動できないのも面倒。
あと、もうちょいメインクエストにボリュームが欲しかった。時間が余りまくってサブクエストしかやることがなかった。

ライトニングリターンズのゲームデザインは凄まじい。それはシステムの洗練具合を言っているのではない。ゲーム性のためにユーザーを突き放した勇気が凄い。
今作のゲームデザインのミソは言ってしまえば、縛りをかけてユーザーの逃げ場をなくし、考えざるを得ないという環境を作り出しているところにある。相変わらずスタッフのエゴが強いゲーム内容に、FFはやはりこうでなくては!と快哉を叫んでしまった。

FFの原点とは何か。
FFは毎回賛否両論が激しい。「こんなのFFじゃない」「全然FFらしさがない」「昔のFFの方が良かった」という意見は新作が出る度に多く見られる。
その度に、じゃあFFらしさとは何なのかと考えてしまう。クリスタルが存在すればFFなのか。RPGの楽しさがあればFFなのか。天野絵ならばFFなのか。システムが凝っていればFFなのか。映像が綺麗ならばFFなのか。
恐らくその全てが人によっては正解で、そういう多様性さえもFFらしさなのだろうが、俺は、FF2の熟練度システムとワードメモリーシステムにFFの原点が詰まっていると思う。
オーソドックスな作りで成功した初代FFに、全く意味の分からない珍妙なシステムを付け足して出来上がったFF2は、システムが有機的に働いているとはとても言い難い作品だったが、とにかく新しいことをやろうという気概だけは溢れんばかりに伝わってきて、これがFFのルーツであると俺は思う。
今でもその根底は全くブレていない。「RPGとはこういうものだから」「こうすれば売れるから」「シリーズものだから」そういう固定概念というか、常識というか、形に囚われずに、とにかく新しいことをやろうとして、全力でそれを突き詰める、FFの一途な姿勢。
中でも、続編でありながら前作の余韻を台無しにする斜め上の展開を連発したFF10-2と、オブリビオンの影響でRPGに大事なのは自由度だ!という偏見じみた風潮が強い中で、もののみごとにRPGのお約束を切り捨てて見せたFF13の空気の読めなさには流石に驚かされた。全くユーザーに媚びることなく、自分たちの自己中心的な熱量を押し付けてくるこの面の皮の厚さ。
しかし、その独善的なチャレンジスピリッツこそがFFらしさであり、FFの最大の魅力である、と俺は断言したい。そしてライトニングリターンズは、その期待に真っ正面から応えてくれた。

シームレスに繋がったフィールド、どこから進めても良い自由度、散りばめられた膨大なサブクエスト。本作は近年好まれやすいRPGの要素をふんだんに含んでいる。そのままの形で出していれば、RPGが存分に楽しめるFFとしてRPGユーザーから賞賛をもって迎えられたことだろう。
だが、FFは安易な答えに留まらなかった。ただの劣化スカイリムになる道を選ばなかった。
面倒くさい縛りを取り込み、難易度を異様に高くしたことで、賛否両論は避けられなくなった。自由度は確かにあるが、本質的にはスタッフの思い描いたゲームビジョンの通りに遊ばせることを強要する、極めてエゴの強いゲームだ。
しかしそれにより、今作のゲーム性は何と輝きを放っていることか。ゴリ押しは通用しない。常に考えなければならない。道筋は何も用意されていない。複雑なルールと厳しい縛りの狭間で試行錯誤しながら自分でクリアーまでのプロセスを組み立てていくこの感覚。ゲームで久しく味わえなかった感動だ。

万人受けを捨ててでも、自分達が求めるゲーム性、オリジナリティを追求していく。
プレイヤーの需要を満たしておきながら、そこに余計な要素を付け足してプレイヤーを突き放すFFの空気の読めなさは相変わらずだ。だが、それ故に今作のFFはこんなにも魅力に溢れている。FF13-2には本気でガッカリさせられただけに、いつものFFが帰ってきて本当に嬉しい。
確かにFFはスタッフの自己満足が強いシリーズだ。でも、FFはそれで良いんだ。