意外と王道だった



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PSVITAのテキストアドベンチャーゲーム。開発はグルーブボックスジャパン。

非モテの主人公があらゆる手を使ってリア充の秘密を暴き爆発させるゲーム。
と、だけ言うと斬新に聞こえるが、やってることは逆転裁判だった。捜査パートでは聞き込みやSNSを活用して炎上ネタを集め、討論パートでそのネタを使って相手の矛盾を付いていくという構成からして似ているが、特に討論パートはテキストの流し方と言い、煽って発言を引き出すやり方と言い、矛盾の突き付け方と言い、清々しいまでに逆転裁判そのままだった。
一方で、大きな違いもある。逆転裁判は証拠の数が多い上に間違えるとペナルティがあり、割と難易度が高かったが、このゲームは取っ掛かりとなる発言は赤文字で表記されるからどの言葉に対して煽ったり嚙みつけば良いか分かりやすいし、場面によって炎上ネタも選定されるからあまり悩まされないし、極め付けにミスしてもすぐ回復できるから考えるのが面倒くさくなったら総当たり戦法で何とかなる。
何故こうなっているかと言うと、かなり強引な理論展開で相手に炎上ネタを叩きつける事ができるから。揚げ足取り、印象操作、飛躍と何でもありで、とりあえず言ったもん勝ちな感じが実にネットの煽り合いっぽくて世界観とマッチしている。ロジカルに考えるだけ馬鹿馬鹿しい討論なので、難易度を思いっきり下げているのだろう。
故にゲームとしての面白味はあまりないが、このゲームのメインはストーリーと世界観でなのであまり気にならない。

舞台はツイッターのフォロワー数が身分の優劣を決める社会。リア充・非リア充が明確に区別され、ENJバトルと呼ばれる煽り合いで日夜フォロワーの奪い合いが起きていた。
という設定で、現実のネット社会をディストピア化して見せているのが面白い。身近なものだけにすんなりと入り込みやすく、そりゃねーよと笑う事ができるが、あながち非現実的な話でもなく、ネットというオブラートで包まれてはいるが現にその社会でもカーストみたいなものは存在するし、現実とデジタル世界の境界が曖昧になっている昨今、この世界観は中々風刺が効いている。
ストーリー自体はかなり王道。ネットで自分を取り繕っていたリア充が、現実を突きつけられ、本当の自分を見つめ直す、というまぁ良くあるテーマではあるが、ネット社会の側面からそこに切り込んでいくというのはユニークだし、実際ネットはもう一つの自分を生み出せる場でもあるのでこの題材を語る上で相性が良い。
ふんぞり返っているリア充の真実の姿を明らかにしていくのが面白いだけでなく、同時にそれは現実の自分には足りないものをネットで補って取り繕おうとする似非リア充の内面も掘り下げており、ドラマ性がある。現実とネットの社会を上手くクロスさせ、この設定だからこそ語れる、自分を問う物語に仕上がっていた。
しかしシナリオを書いてる人の主張は包み隠される事なくかなり強く現れているので全体的に説教臭い。まぁでもこの内向的な感じもネット社会っぽくて良いかな。それに、押し付けがましいというのは言いかえれば熱量であり、リアリティだ。
特に終盤からは、ひたすらに自分自分自分と、自分に正直に生きる事の大切さを熱量たっぷりに語っており、鬱陶しくもあると同時に迫力があった。

メッセージ性が強い作品な分、物語の筋としての面白さは弱いが、そこはネットスラングなどを多用したノリの軽さでカバー。普通ならネットスラングとか使われると冷めるけど、世界観が世界観なだけにむしろ粋だね。
最後のオチも見事。あれほど美しい「先生の次回作にご期待下さい」は見た事がない。このゲームだからこそ映える、最高の演出だった。
しかし現実問題としてこのゲームは全く売れておらず、どうやら次回作は期待できそうにない。