エピソードイグニスも



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昔ならシングルプレイのゲームはクリアーしてはい終わり、あとはせいぜいやり込みがあるくらいだったが、今ではネットが使えるようになってアップデートや追加コンテンツでバージョンアップしていくのが定番になっている。
その度に、だったら最初から入れとけよという突っ込みが入るわけだが、当然ゲームというのは発売日という大原則の期限があるわけで、取捨選択が迫られる。製作者が100パーセント満足したものを作れるなんてことはまずあり得ない。これは納期だけが要因ではないだろうけど。
ともかく、ネット環境の発達により、作り手は自分の作品の完成度を高められるし、ユーザーは長く楽しめるし、商品の寿命が伸びるからビジネスとしても固くなる。まさに良いことづくめ。良い時代になったね。
で、FF15はそんなシステムを最大限利用している。発売から1年以上になるが未だに大きなアップデートをしているし、DLCも続々配信。オンラインマルチにまで対応した。
スクエニによると来年以降もこの流れは続くらしい。何しろFF15は足りないどころだらけだったので、改築の余地はいくらでもある。

と、言うわけで、俺もFF15については書き足りない事がたくさんあるので(特にストーリー面)そこに触れつつ、最近配信されたエピソードイグニスのプレイ日記を書いていく。
ネタバレを全く気にせず書いていくので注意してね。

FF15はノクティスという王子様が主人公で、当然、彼の視点で物語が描かれるのだけど(この主人公視点というのをFF15はかなり徹底している)エピソードイグニスというタイトル通り、このコンテンツは王子の側近であるイグニスというキャラの視点から話が進みます。

ある日の光景。イグニスは王様に王とは何たるかを聞かされる。
王の隣には、不安げな顔のノクティスが。まだ小さい。昔の回想ってやつね。
王からこの子をよろしく頼むと言われたイグニスは、彼に手を差し伸べる。ノクティスは少し目を泳がせたあと、微笑みながらその手を握った。

イグニスが目を覚ますと、目の前には壊れた街の風景が広がっていた。
そんなことよりもとりあえず、ノクティスが無事か心配で気が気ではないイグニス。相変わらず彼の頭は王子のことでイッパイなのだろう。
FF15の最大の特徴は、とにかくパーティーの皆が(イグニス、グラディオ、プロンプトの3人)、主人公ノクティスのことを好きで好きで仕方ないことにある。
まず、ゲームスタートの段階で既に主人公と他の3人に深い歴史が存在する。途中で一時参戦するキャラもいるが、基本的に最初から最後までこの4人で旅をすることになる。
これは何気に珍しいスタイルで、大抵の場合、主人公が旅の途中で出会ったキャラが仲間になって、徐々に増えていくと言う流れになるのが定番だ。始めたばかりのユーザーはキャラの過去のことなんか知るわけもないので、なるべく主人公は何も持ってない方が入り込みやすい。
なのにFF15はもういきなり主人公と濃い関係を持つ仲間が3人もいる。アニメで彼らの歴史は一応語られているし、俺も見てたから馴染めたけど、見ていない人からすると置いてきぼり感は凄いだろう。
しかし、定番のやり方をしているRPGは主人公と仲間の結びつきに必然を感じないのも事実。目的が一緒だとか、あんたの事が気に入ったとか適当なことを言って一緒についてくるだけで、要は作為的に仲間にさせられている感じがある。仲間というよりは寄せ集めに近い。
そもそも物語というのは作為的なものだから別にそれでも問題はないけど、FF15は仲間という部分に非常に重点を置いたゲームであり、ここに関しては徹底的に力を入れていた。
だからまず、仲間が主人公の側にいる強い理由を与えている。幼少の頃から王子と付き合いを共にしてきた王家を支える臣下。プロンプトを除けば、主人公を守るために生まれてきたと言っても過言ではない。
もちろん設定だけじゃなく、ちゃんとゲーム上でも仲間の結びつきを強く表現している。個性と躍動感を感じ、まるで生きているように動く仲間のAI。大量に用意された会話のバリエーション。チームワークを感じる戦闘。仲間との旅を色濃く表現するキャンプの要素。異様に作り込まれた釣りや料理。旅路を振り返る写真システム。4人を共に運んでくれる車の存在。
何より、男4人で固められたパーティーに強烈な作り手の意志を感じる。潤いが足りないだとか、ホモだBLだとか散々言われている部分だが、異性がいないからこそ、掛け値のない結び付きが演出できている。仲間というものを強く特別だと感じさせてくれる。これはFF15をFF15たらしめる非常に重要な要素だ。
FF15は色々と足りないし、FF13で浴びた批判に怯えているゲームだが、仲間との旅という部分に関しては完璧に芯が通っており、そして作り手のこれが自分たちの表現したいモノだという熱意を感じる。
相変わらずFFは一方的だし、自己中心的だが、それでこそFFってもんだ。ゲームの魅力は、作り手の熱から生まれるんだからこれで良い。

何だか大分話が逸れたが、要するに仲間はみんなノクティスの事が大好きで、特にイグニスは度を超えている感じがある。料理を作ったり、勉強を手伝ったりと、日常的に付き合いがあったから、まるで母親のような感情があるのだろう。こう書くとなんか気持ち悪いな。でも仕方ない。そういうキャラなんだから。
ひたすらノクトノクトと叫んで(ノクティスの愛称。3人はこう呼んでいる。これも仲の良さを表現していて良いね)崩壊した街の中を探し回っている。

ちなみに、このエピソードは本編の第9章、オルティシエが舞台になっている。婚約中のお姫様、ルナフレーナがいるこのオルティシエにノクティス一行はようやく辿り着いたが、帝国の魔の手が迫っているのでした、ということで現在都市は帝国軍がボコボコに破壊中。
いや、実際壊しているのは姫が召喚した召喚獣の方か。
時系列的に、ちょうどルナフレーナがノクティスを守るためにタイタンを召喚したあたりっぽいね。王子と姫は政略結婚ではあるが、幼い頃から交流があり、ルーナと愛称で呼んだり、離れ離れになった後も文通で(スマホがある世界観なのに何故か手紙)やり取りしてたりして、お互いゾッコンだった雰囲気がある。
オルティシエにようやく着いたあと、ノクトはルーナが演説しているところに偶々通りがかり、彼女の成長した姿と神凪としての決意を見て涙を流す。
しかし結局、これが見納めとなってしまう。このあとスグに彼女は死んでしまうから。姫に会いに行くというのがゲームスタート時の目標で、中盤になってようやく目的地に着いたかと思ったら、再会する直前で目の前で殺される。これは割と衝撃的だった。ノクト不憫すぎる。
腹を刺されて瀕死状態のルナフレーナが、最後の力を振り絞り、倒れたノクトに歴代王の力を与えるシーンは印象的だったな。FF15の名シーンの一つだ。

で、また大分話が逸れたが、イグニスは絶賛崩壊中のオルティシエでノクトを探している。
しかし、そんな彼に帝国軍が立ちはだかる。バトル。
既にプロンプトとグラディオのエピソードは配信済みで、それぞれ銃撃主体の軽やかなバトル、大剣主体の重みのあるバトル、と個性があったが、イグニスの操作感覚はノクティスに近いな。状況に合わせてアクションを切り替えながら戦う感じ。
雷の力は敵に急接近、冷気の力は複数の敵を巻き込める、炎の力はタイマン用、って感じか。それぞれ使い道はあるけど、正直氷が便利すぎてこれ一辺倒でも問題ねーなー。アホみたいに敵が多いし、耐久力のある二足歩行型はタイマンに持ち込まなくてもR2ボタンで一撃で倒せる。
なんか敵の攻撃全然かわせねーと思ったが、そうだった、FF15はボタン長押しすればMPが続く限り無限回避が出来るんだった。初歩的なことを忘れてた。敵の攻撃のターンと自分の攻撃のターンをちゃんと見極める。これが大事なんだよな。

さてさて、探せど探せどノクトは見つからない。イグニスの不安は高まる一方だが、電話中のグラディオにその様子が伝わり、頭を冷やせと言われてしまう。
流石はグラディオの兄貴。本編にて、姫をなくして気力が失せたノクティスを叱責した列車内のシーンが強烈で、その印象と彼の外見からヒステリックゴリラ、略してヒスゴリラとネット上では言われている彼だが、俺は嫌いじゃないよグラディオ。俺的には、あそこはグラディオがおかしい事を言っているとは思わなかったしね。
そうこうしている間にレイブスと出会う。ルナフレーナのお兄ちゃん。彼は帝国の人間だが、ノクトを探す=妹を探すとなるので共闘することに。こいつ映画で思いっきり妹に拒絶されてたけどな。

「ノクティスは真の王には程遠い。このままでは星は闇に覆い尽くされる」と、レイブス。
「ノクトは、まだ王としての自覚は足りないが、それでも自分の運命から逃げ出すような人間ではない」と、イグニス。

自分の運命、ね。まだイグニスは知らないけど、ノクトは自分が死ぬために旅をしているんだよな。
真の王となり、自分の命を捧げることで闇に覆われた世界に光を取り戻す。それが彼の運命。言わば殉教者。イグニスたちが導いているのは、ノクトが死ぬための道。物語はノクトが死ぬために動いている。
何のために生まれてきたのか。自分にしかできないことは何か。人間の普遍的な葛藤だが、ノクトの場合、それは自分が死ぬことなんだから救われない。他に道はない。奇跡が起きることもない。本当に主人公が死んで物語は終わる。
ノクトが終着点に着く前、仲間との最後のキャンプで、「やっぱ辛えわ」と、ぽろっと弱音を吐くが、そりゃそうだろう。母国は滅んで、父親は死んで、最愛の人は再会する前に目と鼻の先で殺されて、自分は死ぬために旅をする。こんなに不憫な人生はない。FF15のストーリーはショボイが、それでも、ノクティスの本音と仲間との絆が確認できるあそこのシーンは感動したよ。
スタッフロールの後、ノクティスとルナフレーナはあの世で結婚式を挙げ幸せに暮らしましたとさ、と、中学生が考えたような付け焼き刃のハッピーエンド風味な終わらせ方をするが、そうでもしないと余りにも可哀想な主人公なんだよな。

話が逸れてばっかりだが、イグニス達はノクトがいる祭壇にたどり着く。
そこにはルナフレーナに仕える犬が倒れていて、詳しく覚えてないけどこいつは不思議な力を持っているようでイグニスにノクトの未来を見せる。具体的に言うと、ノクトが自分を犠牲にする場面。へー、ここ暗示しちゃうんだ。
奥の方で寄り添うように倒れているノクトとルナフレーナ。姫は既に事切れていた。彼女の死を見て激情するレイブス。いや、ちょっと、やめて。ノクトに八つ当たりしないで。仕方ないから戦うことに。
うーん、結構強いなー。まあでもボスはこれくらい強くないとね。ゲームプレイが流れ作業でしかないならゲームという媒体でストーリーをやる意味ないから。プレイヤーの熱がストーリーに繋がるから熱くなれる。これがゲームストーリーの良いところだ。
ともかく、レイブスを倒す。急にしおらしくなって頭が冷えるお兄ちゃん。妹を抱えるが光の粒子となり消えてしまう。どういう原理だこれ。これも神凪の力ってやつなのか?

イグニス!と駆けつけてくるグラディオ。一人?プロンプトは?と聞くイグニスを無視して、傷心のレイブスにいきなり斬りかかる。あれ、こいつこんなキャラだっけ?マジでヒスゴリラじゃん。
しかし慌てず受け止めるレイブス。そしてアーデン!と一言。グラディオは次の瞬間、アーデンに姿を変えた。この展開、どこかで見たな。
FF15はあまりにも制作に余裕が無かったからだろうが、ほとんど敵を描写していない。敵国の皇帝とかいきなり化け物になってる有様。そんな中で、唯一敵として存在感があるのがこのアーデン。
実は彼はルシス王家の人間で、要するにノクトと同じ性を持つ。正当な王族であり、人間をシガイに変異させる寄生虫の治療を行える只一人の人間でもあった。しかし治療を行い続けた結果、自分自身のシガイ化が進み、クリスタルから拒絶され、王家からも迫害。そのあと不死になった彼は2000年もの間、ルシス王家への復讐心を燃やし続けた。
彼の目的は、真の王となったルシスの人間と戦って勝利すること。うーん、すんごい回りくどい。別に王家をあっさり滅ぼせばよくね?それじゃつまらないって?まあ不死だから時間はあるもんな。
結果的にこいつのせいで星は闇に包まれ、ノクティスは真の王として覚醒せざるを得なくなり、死ぬ羽目になる。こいつが全ての元凶である。

寝転がっているノクトを見つけ、こんな王様情けないよね、とナイフを振り上げるアーデン。え、お前、自分の目的忘れたの?真の王にして戦いたいんじゃなかったのかよ。ただのポーズにしてもイグニスを挑発する意味が分からんし、キャラがブレてるな。
しかし、レイブスの反撃によって何とかその場を切り抜ける。その隙をついて、イグニスはノクトの手から転がった指輪を装備する。光燿の指輪。ノクトを死に導くアイテムその1。代々の王の叡智が蓄積されていて、あまりにも強大な力であるため、王家にしか扱えないが、あろうことか血筋ではないイグニスがそれを装着してしまう。
アーデンも、君にはそれ使えないよねえ、と突っ込むが、ノクティスを救うことしか頭にないイグニスは何が起ころうともその力に縋るしかなかった。
彼の視力を犠牲に指輪は覚醒。スーパーイグニスになる。成る程、だからイグニスは目が見えなくなったのね。これは割と納得できる理由だな。

「それ、使えるの?」と、アーデン。バトル。
指輪の力つえー。王家の宿敵を今ココで潰してノクティスを呪われた運命から解放できるぞこれ。
が、途中で指輪の力がガス切れ。視力程度じゃこれくらいか。アーデンにも逃げられてしまった。

ノクティスを救い出したイグニス。しかし、彼が死ぬ運命は変わらない。
そのことを悟ったイグニスは、目を覚ましたノクトに尋ねる。

「旅はここまでにしないか?」

星なんてどうでも良い。ノクトさえいればそれで良い宣言出ました。
しかし、イグニスのノクトへの思いはこれまでの過程でかなり掘り下げられているだけに、このセリフは迫真性がある。そりゃ何よりもノクトが大切だろう。

「何を言ってるんだよ!今ここで止まったら、みんなは何のために死んでいったんだよ!」

と、言いながら列車の中で指輪をはめる決心がつかずに不貞腐れていたノクトさん。しかもあの段階では確か自分が死ぬ運命だと知らなかったはず。やっぱグラディオの怒りは正しいわ。

場面は変わって10年後。真の王の力を得たノクトが、決戦の場に向かう前、最後のキャンプ。ノクトはイグニスを呼び出す。

「色々あったけど、けっこう楽しかったわ。だから、思い残すことなく使命を果たせる。ルーナと、お前らが守ってくれたおかげで」

「大切なものがあるから俺はここまで来れたんだ。一人で行くんじゃねえよ。お前らの思い出も一緒だ」

「イグニス、ありがとな」

ノクトの姿は視力を失ったイグニスには見えないが、彼の頭には初めて二人が出会った時の光景が浮かんだ。
あの時のようにイグニスは手を差し伸べ、あの時のようにノクトは微笑みながらその手を握る。
イグニスの分厚いサングラスは、彼の涙を隠せなかった。

おしまい。


掛け値無しに良い話だった。FF15は仲間との絆に関してはかなり表現できているので、そこから攻めてくればこういう良いストーリーになるんだよな。プロンプトもグラディオのエピソードも本編に直接関わってこないのでイマイチだったが、これは大満足。

が、ここからが問題になる。クリアー後、アーデンの問いかけに対する選択式が追加され、新たなエンディングを見ることができる。なんと、ノクトが生存するifエンドが。
まあ、納得できないよね。こんなの見せられても。もし、なんて有り得ないんだから。それが存在する時点でストーリーのリアリティはなくなる。
何で生き残れたのかという理由付けが曖昧なのもさることながら、そもそもFF15のストーリーは主人公が死ぬ運命にあるというのが軸の物語であり、まあだから本当に彼は不憫なんだけど、そこをひっくり返したらストーリーの意味がなくなる。
問題の場面。世界は救われる。ノクティスは生きている。イグニスは目が治っている。理想を詰め込みすぎだろと。
多分これはifというか、あまりにもノクティスに執着したイグニスの妄想のような気もする。だって、最後の王座のシーンはノクティスとイグニス以外出てこないからね。グラディオとプロンプトなんてどうでも良い。自分とノクトさえいればそれで良い。そんな声が聞こえてくる。
そもそもこんなメインストーリーを大きく揺らがすエンドを、わざわざ個人のエピソードに持って来るということに違和感がある。そういう点から考えても、イグニス個人の妄想エンドですよーと解釈した方がしっくり来る。妄想は現実で起こり得ないから妄想なので、そっちの方がストーリーを壊さないという意味でも納得できる。
まあFF15の終わり方に関しては、このゲームが好きな人ほど否定的な意見が強かったから、その人たちの溜飲を下げる役割は果たしてくれたかなと思う。これで改めて生存エンドを作るとも思えないし。これくらいの形で抑えてくれるならまだ良いかな。

来年以降もFF15のコンテンツは続く。まだまだ楽しませてくれそうである。
でも、はやくFF16作ってね。