カッコ良い



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PS4とPSのアドベンチャーゲーム。開発はグラスホッパーマニファクチュア。

主観視点で動いたり、キーとなるコードを打ったり、という能動的な要素はあるが、基本的には物語を追うだけのストーリーゲーム。
事件の表の動きを描いた本筋のパートと、別の主人公がその事件を推察するという形で裏を掘り下げていくパート、一つの事件を二人の視点から見ていく構成になっている。
表のパートで特徴的なのは、ひたすら会話が積み重なって話が展開されること。
具体的に言うと、状況や仕草を地の文で描写したり、人物の意識内の言葉を言語化したり、というのが殆どない。
主人公はドラクエ方式の無口・無思考君で、この手のテキスト主体のゲームではあまり見ないやり方だが、感情を押し付けてこず、捉え方はプレイヤー次第というスタンスを取っているわけだね。
このように言葉を軸にしたストーリーの進め方をしているだけあって、台詞は非常に印象的でカッコ良いものが多い。このゲームの最大の見所は、この台詞回しにあると言っても良い。
いちいちお洒落で、馬鹿馬鹿しくて、核心的。芝居がかっていると言えなくもないが、もともとが劇のような進行なので気にならない。
特にクサビテツゴロウというオッサンはイカした言葉が多く、上っ面でもなく自己陶酔でもなくて、信念を曲げずに生きようとする人間の、己のすべき事に真っ直ぐ向き合ったからこそ出る内なる言葉は、心に響く。
ここら辺のセンスは、流石はノーモアヒーローズやkiller7を作った須田剛一と言ったところ。
そうなんです。知ってる人は知ってると思うけど、このゲーム、須田剛一が作ってるんです。このゲームをやってると、彼の作った作品の世界観は表面的ではなく、しっかり裏打ちされたものがあるというのがよく分かる。カッコ良いのツボを心得ている。
だからこそ、どれも似たり寄ったりな雰囲気のゲームになっちゃうのかなぁ、と思ったりもするが。

話を戻す。一方で、分かりにくい面もある。
急にファンタジーが混じるのにその説明も感想もなく流されるから混乱するし、ストーリー自体も唐突な感じがあって理解が追い付かない。
まぁこの辺りはわざとやっている気もするが。
表パートはあえて詳しく説明せずにプレイヤーに考えさせて、裏パートでしっかり掘り下げ、理解させるという流れが出来ている。
本筋だけで分かりにくいのはモヤモヤするが、その後でポッカリ空いたところをカチッとハメて、そういう事だったのかと氷解する感覚は結構良い感じ。

面倒くさい心理描写や状況説明がないのでストーリーのテンポは良いが、ゲームのテンポは悪い。
時たま主観視点で動かすパートを入れてくるんだけど、これが本当に面倒くさいんだよね。アパートの全室を回って聞き込みしろとか、ホテルの中に逃げた犯人を探せとか。
特にラストチャプターの不快感は異常だった。面倒を超えて、不快。
8個も部屋がある施設を10箇所も周回させられ、一つ残らず資料を探せってやつ。施設の構造は全く同じで作業感が強いし、どの施設に資料が残っているか分からないので一つでも見逃すとまた一から探し直さないといけない。
わざと見逃しやすいようなアクセントまで付けてきて、見事に俺はこの罠にハマってまた一から隅々まで探し回る羽目になった。忌々しい。
意図する事は分かる。一見するとただ面倒な作業でしかないが、プレイヤーに実際に行動させる事で、臨場感を生み、そしてそれはリアリティになる。映画や小説ではできない、ゲームだからこそできる感情移入手段だ。
それは分かる。けど、やり方がマズすぎるだろと。せめてサクサク動いてくれ。動きはモッサリ。操作性は引っかかる。動かしているだけでもストレスが溜まるのに、嫌がらせかのようにしつこく同じ作業を求めてくるから本当にイライラする。

ストーリーも気に入らない点がある。
効率的な社会を構成するために作られた経済主導の新興都市、24区。その裏で暗躍する様々な政党、団体。伝染性の凶悪な犯罪を抑止するために犯罪者の処分を許された凶悪犯罪課。
このような独自に築かれた社会や組織のシステム、その裏で絡み合う複雑な因果、という世界観のオリジナルな部分が、ストーリーを追えども追えども全く伝わって来ないんだよな。
もちろんこれらの設定に意味はあるが、最後にアーカイブで機械的な説明をまとめて押し付けられるだけで、どうでも良い感じが強い。このゲームの舞台であるカントウという世界について全く興味が湧かない。
24区とか、凶悪犯罪課って、結局何だったの。ちょっと陰謀論が混じった東京の警視庁が舞台の物語、と説明されても全く違和感がないんだけど。
シルバー事件という物語の核である『カムイ』という概念は、24区という都市の歪なシステムのもとに生まれた存在であり、だからこそ24区の特殊性をもっと話に絡めて欲しかった。

とにかくユニークなゲームではあった。テキストがメインのゲームだが、ただの紙芝居ではなく、CGやアニメーションや実写まで使って趣向を凝らしているし、ウィンドゥの出し方や絵の見せ方も機械的ではなく工夫されてる。
人を食ったような仕掛けも面白いし、移動させるシステムも面倒ではあるが臨場感を作る役には立ってる。そして何より台詞がカッコ良い。
ストーリーはそこまで際立ったものを感じないが、拘りと意欲を感じる、非常に見所のあるアドベンチャーゲーム。
今PS4で発売されているシルバー2425には、このシルバー事件と、前作からパワーアップした続編のシルバー25区が付いてくるのだから、アドベンチャー好きなら買うべきだよね。
まだクリアーしてないけど、続編のシルバー25区は、シルバー事件のストーリーの問題点を完璧に解消していてかなり面白い。