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2007年06月18日

「双生児」クリストファー・プリースト 古川嘉通/訳

原題は「The Separation」
separationを調べてみると、以下の通り。
1 a 分離,独立,離脱 b 別離,離別.
2 a 分離点[線,個所]. b 割れ目,裂け目.
3 間隔,距離.
4 [具体的には ] 【法】 (夫婦の)別居.
5 《米》 除隊,解雇,放校 〔from〕.
6 【宇宙】 (多段ロケットの)切り離し.

原題の方が「双生児」よりもしっくりします。
分かれたものは、兄弟の距離(物理的、心理的)だったり、歴史だったり、時間だったり、世界だったり。
二人のJ.L.ソウヤーの回顧録と日記の重なる部分とそうでない部分。
読んでいる途中も、読み終えても、くらくらしました。
「解説」に助けられて、なんとか全体像がぼんやりと見えてきた感じ。
チャーチルやルドルフ・ヘスといった歴史上人物のことを知っていれば、もっと楽しめたんだろうなと思いました。
本当の歴史をちゃんと分かっていないものだから、もう一つの歴史を見せられても、ピンとこない哀しさよ…。(^^;)

双生児 ★★★★_
(2007.6.18 読了)続きを読む

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2006年12月13日

「死の島」福永武彦

福永武彦の最長編の小説。二十数年振りの再読です。漠然とした物語の雰囲気は覚えていましたが、内容のほとんどは忘れてしまっていたので、初読のようなドキドキ感も味わえました。

劇中劇ならぬ小説中小説「カロンの艀」の初出が昭和28年。そして本編は昭和41年から46年まで断続的に文芸誌に連載され、46年9月に単行本として出版されました。
40年ぐらい前に書かれた小説であること、また舞台となったのが昭和28年ということもあり(物語では東京から広島まで汽車で16時間かかります)、登場人物の会話や考え方など古めかしく思える箇所もありますが、今なお読み応えのある物語でした。

物語の縦軸は小説家を志す青年:相馬鼎の24時間。そこに相馬の回想と彼が書いている3つの小説「トゥオネラの白鳥」「恋人たちの冬」「カロンの艀」、或る男の独白、萌木素子の「内部」がランダムに挿入されます。
「内部」は現在の素子の思考とともに、原爆投下直後に彼女が見た広島の町の光景がカタカナで記されています。これが圧巻。カタカナ表記であるが故に、他の部分よりもひと文字ずつ意味をとらえながら読むことになり、そこに描かれる風景や彼女の無力感が胸に迫ってきます。
ラストの「朝」には少々はぐらかされた気分になりますが、その後に続く「内部」によって、それすら些細なことに思えてきます。

暗い海と空の間に浮かぶ黒い島。鉄錆色の街。白く覆い尽くす雪。白い太陽。荒漠とした世界が広がります。

「福永武彦全集 第十巻 死の島(上)」
内容(「BOOK」データベースより)
展覧会場で眼を釘づけにされた作品の前に佇んだ青年は、作者の女流画家を尋ねる。暗い翳をたたえた被爆者の彼女は、あどけない年下の女性と共に住んでいる。彼は、或る日、広島の病院から、2人が心中したという報せをうける…。孤独と愛と死と芸術を凝視しつづけた福永作品の全貌。

「福永武彦全集 第十一巻 死の島(下)」 ★★★★_
内容(「BOOK」データベースより)
2人の女性の心中の報せをうけて、東京から広島へ向う青年の脳裡に、目覚めてからの1日の時の経過と、彼女等に遭遇した300日前からの回想が複雑に交錯する。真実の愛を求めて彷徨する魂の行方を重層的に描出する長編小説。

多くの人に読んで欲しい本なのに、絶版なのが残念。復刊されないかな。続きを読む

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2006年06月27日

「ルート350」古川日出男

短編集。
「お前のことは忘れていないよバッハ」…現実のレプリカ。あたしは中学三年生でバッハというハムスターを飼っていた。
「カノン」…1983年、東京湾に生まれる王国。そこで出会うa boyとa girl。
「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」…僕は幽体離脱している15歳の男子高校生。体は病院のICU。意識は教室、そしてクラスメイトのエロ王とガーリーとお猿の部屋へ。
「飲み物はいるかい」…僕がその旅をしたのは6年前。離婚休暇。目的地を定めず、電車に乗った。
「物語卵」…「僕たち」が語る。ワカケホンセイインコの音楽を、鏡戦争を、Gを…。
「一九九一年、埋め立て地がお台場になる前」…おれたちは1991年2月の最後の日、東京湾の埋め立て地で夜を過ごしていた。ユカさんの予知夢。
「メロウ」…僕たちは小学六年生。6泊の夏期講習キャンプ。狙撃された先生。
「ルート350」…海の上に走る国道350号線。僕とフミはフェリーで佐渡に渡った。

ルート350 ★★★☆続きを読む

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2006年06月11日

「ベルカ、吠えないのか?」古川日出男

 二十世紀は二つの大戦が行われた戦争の世紀。同時に軍用犬の世紀でもあった。
 1943年、アリューシャン列島のキスカ島に、日本軍に置き去りにされた四頭の犬がいた。海軍の軍用犬だった北海道犬の北、陸軍に属していたジャーマン・シェパードの正勇と勝、そして米軍捕虜の犬だったエクスプロージョン。
 四頭の血脈とともに、「イヌ」の視点で半世紀の戦争を描く。

ベルカ、吠えないのか? ★★★★
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2000年12月15日

「川の深さは」福井晴敏 

 警備員:桃山剛は3年前に警察を辞め、離婚。地下鉄爆破事件を起こした神泉教の教祖の初公判を終えたその日、彼は派遣勤務先の「アリランス亀戸」で、怪我を負った少年:保と、美しい少女:葵と出会う。
 実質的なデビュー作はこちらで、「亡国のイージス」の原点…という言い方もされているようです。人物像がほとんど同じというか…。(ストーリーは全く別のものですが。)イージスを読んでいなかったら、もうちょっと楽しめたのかも知れません。
川の深さは
福井 晴敏
講談社 2003-08


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2000年05月10日

「てのひらの闇」藤原伊織

 堀江雅之:タイケイ飲料宣伝部制作担当課長。リストラに伴う早期希望退職勧奨をうけ、2週間後に退職をひかえていた彼は、会長の石崎博久に呼びだされ、一本のビデオ映像をCMに使えないかと相談を受ける。その夜、石崎は自宅で自殺する。堀江が石崎から聞いた最後のささやくような声「感謝する」。
 主人公の堀江をはじめとして、部下の大原真理、「ブルーノ」のナミ・マイク姉弟、旧知の坂崎など、登場人物が魅力的です。でも、ヤクザが出てくる話って、私、あまり好きじゃないんだよね。
てのひらの闇
藤原 伊織
文芸春秋 2002-11


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1999年07月04日

「清潔はビョーキだ」藤田紘一郎

 回虫の減少と花粉症などのアレルギー性疾患の増加とは相関関係がある?! 日本人はバイ菌に弱くなった?! 「超清潔志向」日本人への警鐘。
 O-157の集団中毒で、重症になった子どもの多くは神経質で「超清潔志向」に育てられたそうな。それが本当なら我が家はもし感染しても重症化はしないな。
清潔はビョーキだ
藤田 紘一郎
朝日新聞社 2001-01


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1999年01月03日

「亡国のイージス」福井晴敏

 海上自衛隊ミサイル護衛艦(イージス艦)<いそかぜ>を舞台として、艦長:宮津弘隆、先任伍長:仙石恒史、少年の面影を残す一等海士:如月行の三人を軸に繰り広げられる駆け引き、人と人との絆。
 自衛隊・防衛庁・スパイ--- 私には苦手な分野だし、かなりのボリューム。ちゃんと最後まで読めるかこころもとない気持ちで、読み始めました。軍事用語(っていうのかな?)につまづきながらも、登場人物の魅力に引っ張られる形で何とかページを進めていくうちに、半ばあたりで急展開。その後ははらはらドキドキうるうるで、一気にいきました。「このミステリーがすごい1998」にランキングされていたので、図書館で借りたのですが、さすが「このミス」3位です。堪能しました。このはらはらドキドキうるうるは、映画向き。
亡国のイージス 上  講談社文庫 ふ 59-2 亡国のイージス 講談社文庫
福井 晴敏
講談社 2002-07


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