2020年07月31日

 永沢真平氏が私に対して提起した著作者人格権等侵害行為差止等請求事件の第1回口頭弁論期日(2020年7月22日)において、私は被告本人として要旨以下のような口頭陳述を行いました。

裁判長並びに陪席裁判官、

 この裁判の開始にあたり、被告である私に口頭陳述の機会を与えていただき、感謝いたします。

 私は約40年間刑事弁護士として活動してきました。刑事弁護というのは犯罪者として訴追を受けた個人の依頼を受けて、その生命・自由・財産を擁護する活動をするのを生業とする職業です。刑事弁護士は、個人の権利を守るために政府と対立するのです。個人のために政府と対立するわれわれのような存在があることは、自由で民主的な国家の統治にとっても最も必要かつ基本的なしくみです。ですから、憲法はわが国に存在する全ての個人に、資格のある刑事弁護人による効果的な弁護を受ける権利を保障しています。この権利は文明国にとっての最低基準ということができます。

 ことがらの性質上、われわれ刑事弁護士は、警察官や検察官、そしてときには裁判官とも対立しなければならないことがあります。そして、われわれに対して政府や世論が攻撃的に振る舞うということがときにあります。刑事弁護の歴史をひもとくと、政府や社会が刑事弁護人を犯罪者と同一視して「共犯者」の一人であるかのように批判をするというようなことが繰り返されて来ました。

 歴史上最も悲惨な例は、フランス革命のときにルイ16世の弁護人となったマルゼルブ卿の場合です。彼はもともと司法官で、ルイ15世、16世の時代に国務大臣などの要職を歴任した人です。根っからの自由主義者でルソーやデイドロ、ヴォルテールら啓蒙思想家と親交があり、彼らの著作の出版に尽力した人です。彼は自由を擁護する姿勢を生涯貫きました。ルイ15世の時にもまた16世の時にも国務大臣に任命されはしましたが、何度も王権と対立して辞職しています。

 マルゼルブは、ルイ16世が逮捕されて革命政府の下でその裁判が行われようとするとき、誰も弁護する人がいない国王の要請に応じて、彼の弁護人となりました。国王は有罪を宣告されてギロチンで処刑されました。そして、その後ジャコバン政権の下でルイ16世の王妃マリ・アントワネットも処刑されましたが、それと共にマルゼルブも処刑されてしまいました。裁判すら受けずに、マルゼルブ本人だけではなくて彼の娘、娘婿、そして孫も処刑されています。

 これほど極端ではありませんが、私もこれまでの刑事弁護の仕事の過程で政府や世間から攻撃されたことが何度かあります。1995年春に地下鉄サリン事件が起こったとき、私は、この国に黙秘権を根付かせるための弁護活動を推進する弁護士の団体「ミランダの会」という団体の代表をしていました。ミランダの会のメンバーがオウム真理教の幹部の弁護人となり、取調べに対して弁護人の立ち会いを求め、それが容れられないために取調べを拒否することを助言しました。そのことが報道されると、私の事務所の電話がひっきりなしに鳴るようになりました。私に対して身体的攻撃を加える旨の脅迫状や私を誹謗中傷する手紙がたくさん来ました。全国紙の社説が私どもの弁護活動を国民の安全をないがしろにするものだと言って批判しました。検察庁の幹部はわれわれの弁護活動を「捜査妨害であり、違法である」と記者会見で発表しました。

 2001年には本庄保険金殺人事件という事件の裁判の過程で私が検察官側の証拠物の同一性立証が不十分であることを示すために検察官が証拠請求した証拠物と極めて似た物を作ってそれを利用して反対尋問を行ったところ、検察官が証拠の捏造だと言って私に対して懲戒請求をしてきました。

 こうした攻撃によって私が怪我をしたり命を失うなどということはありませんでした。しかし、世の中がふっ騰している時には、刑事弁護士は攻撃される可能性があるということを私は身をもって体験しました。これは決してわが国だけの現象でありません。政府や世論は、ときに刑事弁護士に対して「なんであんな奴らの弁護をするんだ」と言って攻撃をするのです。個人の生命自由財産を擁護する、そのために個人に代わって政府と戦うという仕事に対する世の中の理解は決して十分ではありません。

 永沢真平氏の私に対する懲戒請求も、こうした刑事弁護士に対する攻撃の一環であると私は理解しています。私の依頼人であったカルロス・ゴーン氏は昨年末に、保釈条件に違反してこの国を密出国してレバノンに逃亡してしまいました。彼の行為が犯罪であり刑事司法の適正な運営を危うくするものであることは確かです。しかし、彼を極悪人のように言い募り、日本国民全体の敵であると言うのは、違うと私は考えます。昨年の春から年末まで私は彼と身近に接していました。彼が保釈条件を一生懸命守ろうとしていたことは間違いありません。しかし裁判所は彼が奥さんと会うことをなかなか認めようとしませんでした。公判前整理手続が検察官側の要求によって次々と空転し、いつになったら裁判が始まるかわからない、いつまで日本に幽閉され続けるのか分からないという状況でした。自分は公正な裁判を受けられるのだろうか。彼は何度も私に尋ねました。こうした事情を知っている私として、その事情を世間に公表することは、この国の刑事司法を正当に評価するために、また私の依頼人であるカルロス・ゴーン氏に対する評価を正当なものにするためには必要なことだと私は考えました。そこでその経緯をブログに書きました。

 永沢真平さんは私に対して懲戒請求をしてきました。私の発言は、犯罪を容認するものであり、弁護士としての品位を辱める行為だと言いました。それだけではなく、懲戒請求書をマスメディアに提示して彼の言い分に沿った報道をさせました。私は永沢氏の懲戒請求はこの国の刑事弁護全体に対する不当な攻撃であると考えます。私自身がこれに対してきちんとした反論、防御をすることは、私自身の職業生活のためにも必要なことでしょうが、それだけではなく刑事弁護全体のために、日本の刑事司法の健全な発展のためにも必要なことだと私は考えます。

 刑事弁護士を犯罪者と同視するような世間の攻撃は、これまでの歴史において繰り返されたことです。これ対して弁護士は正当な反論をすべきです。自己防衛をするべきです。そうした攻撃に対して手をこまねいて何の反論も反撃もしない、何の防御もしないということは宜しくありません。それは結局のところ刑事弁護を萎縮させることにつながります。この国の刑事司法に対する信頼性を損なうことになります。すべての個人が最善の弁護活動を受ける権利を保障されなければならない;そのための職業倫理のあり方についてわれわれは市民に語り続ける必要があります。刑事弁護に対する正しい理解というものがなければ司法の権威は地に落ちてしまいます。

 ですから私は、私に対する不当な攻撃に対して正当な反論をしようと考えました。そのために最も正しい方法として、永沢真平氏の懲戒請求書の全文を明らかにした上でその主張に対する私の反論の全文を世間に公表しました。このことは正しい行いだと私は思います。この国の刑事司法を守るために必要な行動だったと考えます。

 本件の文脈において、私と永沢氏とは対等の関係にあります。私も彼も法は平等に扱わなければなりません。彼が市民であるのと同時に私も市民です。私は権力者ではありません。私の権利と彼の権利との間に差異があっていいはずはありません。永沢氏が私の実名を公表してメディアに晒した上で私を懲戒請求することができるのと同じように、私の反論においても私は彼の実名を掲げる権利があります。それはまさに表現の自由であり私の職業上の信用と権利を守るために必要なことです。

 私の両親は共働きでした。夏休みになると私はまるまる1ヶ月間母の実家に預けられました。夏休みはとても楽しい日々でした。私はよく祖父の自転車に乗せられて彼が耕していたスイカ畑とかとうもろこし畑に連れて行かれました。祖父からはいろいろな遊びを教えてもらいましたが、何度か叱られたことがあります。今でも印象に残ってるのは私がいじめられて近所の友達やその家族の悪口などを言った時に祖父から言われた言葉です。

「隆よ、影に廻って人の悪口を言うもんではない。悪口を言うならば堂々と本人の前で言うんだ」。

 この祖父の教えはとても重要なことだと私は思います。この教えを守らなければ人間の社会は成り立たないと考えています。影に回って人の悪口を言ってはいけないというのは人間として最低限のモラルであると同時に、すべての社会人が自分の言動に責任を持つための基盤だと思います。自分だけ匿名の仮面を被ったまま他人の悪口を言い募るというようなことを許す社会は間違っていると思います。

 マルゼルブ卿は『出版自由論』という本を書いています。その中で彼はこう言いました−−「諸見解の公的討論は真理を開く確実な道であり、おそらくその唯一の道である。かくして、政府は、なんらの留保もなしにすべての人に討論を許すこと、すなわち『出版の自由』と呼ばれているものを樹立すること以外にとるべき方策はない」 *。民衆がバスティーユ牢獄を襲撃する1年前のことです。

ありがとうございました。

[注]
*木崎喜代治『マルゼルブ――フランス18世紀の一貴族の肖像』(岩波書店1986)より。

plltakano at 11:29コメント(1)刑事弁護全般 

2020年04月28日

 東京謄写センターからの回答を踏まえて、4月22日付で東京地検あてに以下の申入れを行いました。

申 入 書

 
 私は、東京都内の法律事務所に所属して刑事弁護を担う弁護士有志を代表して、次の通り申し入れます。


1 「東京謄写センター」が次の方法を取るために必要な方策を速やかに講じる。
 ⑴ 謄写申請については、窓口だけではなく、電話や郵送、ファックス、Eメールで受け付ける。
 ⑵ 謄写費用の支払いについて、銀行振り込みや電子納付による支払いを受け 付ける。
 ⑶ 上記支払い(入金)を確認後、申請者の希望に応じて、郵送により謄写記録を交付する。
2 紙媒体だけではなく、電子データによる謄写を可能にするシステムを構築する。

(理由)
1 これまでの経緯―東京謄写センターに対する申入れ
 本年4月7日、安倍晋三内閣総理大臣は東京を初めとする7都府県に対し緊急事態宣言を発令し、7都府県の知事は住民に対し不要不急の外出や移動を控えることを要請しました。この要請にしたがって、弁護士会や多くの法律事務所は、職員の在宅勤務体制を実現しています。職員や関係者のウイルス感染を防ぎ、その生命と健康を守るためには、すべての事業者がこうした努力をすべきです。

 そこで、私たち弁護士有志は、2020年4月11日、貴庁内で、検察官開示証拠及び確定記録等の謄写事業を行っている「東京謄写センター」に対し次の措置を速やかに講じるよう申し入れました(参考に、申入書を添付します)。

 ⑴ 謄写申請については、窓口だけではなく、電話や郵送、ファックス、Eメールで受け付ける。
 ⑵ 謄写費用の支払いについて、銀行振り込みや電子納付による支払いを受け 付ける。
 ⑶ 上記支払い(入金)を確認後、申請者の希望に応じて、郵送により謄写記録を交付する。
 ⑷ 紙媒体だけではなく、電子データによる謄写を可能にするシステムの構築を検討する。

 これに対し、東京謄写センター代表新井文男氏から、要旨、口頭で次の回答がありました。

 ⑴ 申入事項1(電話、FAX、メール等による謄写申請)について、当センターは東京地検・東京高検からの委託に基づいて謄写業務を請け負っているに過ぎない。庁舎内窓口での受付以外の方法で謄写申請を受け付けるかどうかは検察庁の判断なので、そちらに申し入れてほしい。
 ⑵ 申入事項2(費用の銀行振込等)及び同3(郵送による謄写物の交付)については、現在の人員では対応不可能である。現在職員は代表を含め7人しかいない。そのうち5名は謄写作業に専従している。非常事態宣言後も連日7人がフル稼働している。弁護士やその職員の皆さんのご負担を極力軽減したいと考えて、東京23区以外の事務所からの要請がある場合は、現金書留による支払いと郵送による謄写物の送付を行うようにした。また、立川支部の弁護士のために、当センターの職員が謄写物を立川まで運ぶサービスも開始した。しかし、現在の陣容ではこれ以上のサービスは残念ながら不可能である。サービス向上のために謄写料金を改定することも検討すべきと思うが、謄写料金の値上げについては検察庁の了解が得られない。また、値上げについて弁護士さんらの了解が簡単に得られるとも思えない。
 ⑶ 申入事項4(電子データによる謄写物の交付)についても、原本が電子データでないものについて、紙媒体以外の方法での謄写を行うことは検察庁から禁じられているので、当センターとして対応することはできない。

 回答によれば、東京謄写センターとしても、弁護士や事務所職員、さらには東京謄写センターの負担を軽減するために、郵便などを利用して業務を効率化、円滑化したいと考えているものの、彼らは貴庁から業務委託を受けているに過ぎず、自分たちの判断では何もできないことが分かりました。

2 現在の運用によって生じる新型コロナウイルス感染の危険
 現在、貴庁及び東京謄写センターは、東京都23区に事務所を構える弁護士らからの郵送による謄写申請・受取を受け付けていません。そのため、私たち弁護士が依頼人のためにその職務を行うためには、貴庁の庁舎に出向き、貴庁の窓口等で検察官開示証拠等の謄写を申請し、謄写が終わった後、再度東京謄写センターの窓口に赴いて費用を支払い、その上で、謄写した記録を受け取らなければなりません。そのために、公共交通機関を乗り継ぎ、貴庁の窓口等に出向き、費用を支払い、記録を持ち帰らなければなりません。そのたびに私たちは外出を余儀なくされ、感染の危険を負わされています。また、貴庁及び東京謄写センターの職員は、謄写申請や受け取りのたびに、多数人と窓口で対応しなければなりません。同センターの職員らもまた、感染の危険にさらされています。
 
3 各申入事項について
 そこで、先に述べた通り、貴庁が、謄写申請については、窓口だけではなく、電話や郵送、ファックス、Eメールで受け付けるとともに、東京謄写センターが、謄写費用の支払いについて、銀行振り込みや電子納付による支払いを受け付け、さらに、上記支払い(入金)を確認後、申請者の希望に応じて、郵送により謄写記録を交付する方法が可能になるよう、貴庁において速やかに方策を講じられるよう求めます(申入事項1)。
 申入事項2(電子データによる謄写物の交付)は、東京謄写センターの業務の効率化、大幅な負担の軽減につながるのみならず、迅速な証拠開示と公判準備にも資するものです。ご承知の通り、稲田伸夫検事総長は、証拠書類そのものをデータにすることにより、検察官の業務を効率化するのみならず、証拠開示が簡略化され、謄写や閲覧の負担を大きく減らすことができると述べておられます(稲田伸夫「検察とこれからの時代」(研修第859号2頁(2020年1月)3-4頁)。

4 今後の協議について
 新型コロナウイルス感染症の拡大は衰えるどころか、世界中で感染者、死者数が増加する一方であり、いまだ収束の兆しがありません。人命を守るため、そして医療体制の崩壊を防ぐために、国民一人一人が、外出をできるだけ控え、人との接触を避けようと懸命に知恵を絞り、多大な犠牲を払いながら努力しているところです。
 法曹もまた、共に知恵を絞り、これまでの実務を柔軟に変えていくことが求められています。申入れ事項について、前向きに検討いただくよう、お願いいたします。本件について、協議の機会を設けていただきたく、貴庁において謄写業務を担当している方より私宛にご連絡いただくよう、合わせてお願い申し上げます。
 
以上


【付記】
 東京地検は、2020年6月8日付で、在京三弁護士会あてに「郵送またはファクシミリによる申請を受付ける」という回答をしました。
 メールなどによる謄写申請、謄写物の郵送、電子データによる開示などについては、特に応答はありません。検討状況についても不明です。(2020年6月9日)


plltakano at 20:18コメント(1)証拠開示刑事弁護の実務 

2020年04月17日

 私ども在京弁護士の申入について、昨日(2020年4月16日)、東京謄写センター代表新井文男氏から口頭で回答がありました。その要旨は次のとおりです。

1)申入事項1(電話、FAX、メール等による謄写申請)について、当センターは東京地検・東京高検からの委託に基づいて謄写業務を請け負っているに過ぎない。庁舎内窓口での受付以外の方法で謄写申請を受け付けるかどうかは検察庁の判断なので、そちらに申し入れてほしい。

2)申入事項2(費用の銀行振込等)及び同3(郵送による謄写物の交付)については、現在の人員では対応不可能である。現在職員は代表を含め7人しかいない。そのうち5名は謄写作業に専従している。非常事態宣言後も連日7人がフル稼働している。弁護士やその職員の皆さんのご負担を極力軽減したいと考えて、東京23区以外の事務所からの要請がある場合は、現金書留による支払いと郵送による謄写物の送付を行うようにした。また、立川支部の弁護士のために、当センターの職員が謄写物を立川まで運ぶサービスも開始した。しかし、現在の陣容ではこれ以上のサービスは残念ながら不可能である。サービス向上のために謄写料金を改定することも検討すべきと思うが、謄写料金の値上げについては検察庁の了解が得られない。また、値上げについて弁護士さんらの了解が簡単に得られるとも思えない。

3)申入事項4(電子データによる謄写物の交付)についても、原本が電子データでないものについて、紙媒体以外の方法での謄写を行うことは検察庁から禁じられているので、当センターとして対応することはできない。



plltakano at 11:12コメント(3)証拠開示刑事弁護の実務 

2020年04月11日

 私を含む在京の弁護士60名は、本日、東京地検謄写センター宛に下記の申入書を送りました。
 東京地検謄写センターは東京地検がわれわれ弁護士に開示する証拠の謄写業務を独占的に行っている団体です。これまで同センターは郵便、FAX、メールなどによる謄写申請を受け付けず、法律事務所の職員は、直接東京地検内の受付窓口まで赴き、申請を行い、謄写が完了すると、やはり窓口まで行って現金で代金を支払って謄写物の交付を受けるということを強いられてきました。政府が非常事態宣言を発した後もこの事情に変化はありません。
 私どもは職員の健康と生命を守るために同センターに一刻も早い改善を求めるためにこの申入を行いました。また、これまで検察庁は電子データによる証拠開示を否定してきましたが、この点についても早急に実現されなければならないと考えております。

申 入 書


 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の世界的な大流行(パンデミック)に伴い、私たち弁護士有志は、弁護士や法律事務所職員並びにすべての法曹関係者の命と健康を守るため、また、これ以上の感染拡大を防ぎ国民全体の社会生活の一刻も早い正常化を願って、貴団体に対し次の措置を速やかに講じるよう申し入れます。



1 謄写申請については、窓口だけではなく、電話や郵送、ファックス、Eメールで受け付ける。
2 謄写費用の支払いについて、銀行振り込みや電子納付による支払いを受け 付ける。
3 上記支払い(入金)を確認後、申請者の希望に応じて、郵送により謄写記録を交付する。
4 紙媒体だけではなく、電子データによる謄写を可能にするシステムの構築を検討する。

(理由)
 本年4月7日、安倍晋三内閣総理大臣は東京を初めとする7都府県に対し緊急事態宣言を発令し、7都府県の知事は住民に対し不要不急の外出や移動を控えることを要請しました。この要請にしたがって、弁護士会や多くの法律事務所は、職員の在宅勤務体制を実現しています。職員や関係者のウイルス感染を防ぎ、その生命と健康を守るためには、すべての事業者がこうした努力をすべきです。

 貴団体は、検察官開示証拠及び確定記録等の謄写事業を独占的に行っています。私ども弁護士が依頼人のためにその職務を行うためには、貴団体に裁判記録等の謄写業務を委託せざるを得ません。私どもの職員が検察庁で記録を謄写するためには、貴団体の窓口等で検察官開示証拠等の謄写を申請し、謄写が終わった後、再度窓口に赴いて費用を支払い、その上で、謄写した記録を受け取らなければなりません。そのために、公共交通機関を乗り継ぎ、貴団体の窓口等に出向き、費用を支払い、記録を持ち帰らなければなりません。そのたびに私たちは外出を余儀なくされ、感染の危険を負わされています。また、貴団体の職員の皆様も、感染の危険と常に隣り合わせです。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は衰えるどころか、世界中で感染者、死者数が増加する一方であり、いまだ収束の兆しがありません。人命を守るため、そして医療体制の崩壊を防ぐために、国民一人一人が、外出をできるだけ控え、人との接触を避けようと懸命に知恵を絞り、多大な犠牲を払いながら努力しているところです。

 上記の措置は、いずれもすぐに対応できるものです。速やかに対応されるよう、本書面をもって申し入れます。
以上


(別紙)
申入人一覧
赤木竜太郎(東京) 井桁大介(第二東京)石橋有悟(第一東京)石村信雄(第二東京)植木亮(第二東京)上野仁平(第二東京)鵜飼裕未(東京)大薗昌平(第二東京)大谷恭子(東京)岡田浩志(東京)川崎公司(東京)河崎健一郎(東京)河津博史(第二東京)久保有希子(第二東京)小泉恒平(東京)児玉晃一(東京)小林英晃(東京)小松圭介(第二東京)坂根真也(東京)坂本一誠(東京)酒田芳人(東京)佐々木美智(宮崎)佐々木良太(函館)四宮啓(東京)下村大気( 東京)須友里(東京)高野傑(第二東京)高野隆(第二東京)盒興喇А陛豕)盒興仝磧並萋鹽豕)竹内明美(東京)橘真理夫(第一東京)田中翔(東京)趙誠峰(第二東京)寺岡俊(東京)寺林智栄(東京)徳永裕文(東京)戸塚史也(東京)贄田健二郎(東京)西野優花(東京)布川佳正(東京)藤原大吾(東京)船戸暖(東京)古橋将(東京)前田領(東京)牧田史(東京)前原潤(東京)松坂拓也(第二東京)馬淵未来(東京)水橋孝徳(第二東京)三宅千晶(第二東京)宮野絢子(東京)宮村啓太(第二東京)諸橋仁智(東京)山口祥太(第二東京)山田恵太(東京)山本彰宏(東京)山本衛(東京)吉田京子(第二東京)和田恵(東京)
以上60名

【付記】
この申し入れに対して2020年4月16日に回答がありました。(2020年4月17日)

plltakano at 16:42コメント(3)証拠開示刑事弁護の実務 

2020年02月04日

 永沢真平氏による懲戒請求に対して私が第二東京弁護士会綱紀委員会に提出した弁明書の内容は次のとおりです。

機…┣請求の趣旨に対する答弁

 本件懲戒請求には理由がなく、懲戒すべき事由がないことは明らかであるから、懲戒不相当の決議をされたい。

供…┣請求の理由に対する答弁

1 弁護人は被告人を管理監督する者ではない
 請求人永沢真平氏はカルロス・ゴーン氏の弁護人である私が「被告人を管理監督する立場にい[る]」といい(「懲戒の理由」1頁)、この義務に違反したという(同2頁)。しかし、弁護人には保釈中であれ身柄拘束中であれ、依頼人である被告人の行動を「管理監督」する義務などないし、そうしたことを行う権限もない。

 弁護士は依頼人の親でもなく教師でもない。依頼人の善行を保証する身元引受人でもない。弁護士には依頼人を「管理監督」する権限も義務もないのである。弁護士がプロフェッショナルとして負うべき第一の職責は「依頼者の権利及び正当な利益を実現する」ことである(弁護士職務基本規程21条)。そして、この任務を遂行するために「依頼者の意思を尊重し」なければならないのである(同規程22条1項)。

 刑事事件の訴追を受けている被疑者・被告人の弁護を依頼された弁護士(弁護人)の最大の任務は、依頼人である被疑者・被告人に保障された防御権を「擁護するため、最善の弁護活動」をすることである(同規程115条)。そのために、弁護人は被告人の「身体拘束からの解放」のための努力をする義務を負っているのである(同規程47条)。こうした職責は日本国憲法が保障する基本的人権の実現にとって不可欠の活動である。わが国の憲法はすべての個人に対して、行動の自由を保障し「正当な理由」がなければ抑留拘禁されない権利を保障している(34条)。この権利を実質的に保障するために、憲法は資格のある弁護人の援助を受ける権利をすべての個人に保障しているのである(34条、37条3項)。弁護人が、依頼人のために、身体拘束の正当性がないことを主張し立証して、裁判官に依頼人を解放するように説得する活動をすることを十分に保障されていなければ、こうした憲法の保障は形骸化するであろう。

 刑事弁護人に被告人の行動を監視する義務を課し、被告人の違法行為に対する責任を負わせるとすれば、被告人の権利擁護、自由確保のための活動は著しく萎縮してしまうであろう。依頼人の自由を確保すればするほど弁護士は依頼人の生活に対する干渉、介入、監督の責任を負担することになる。むしろ、被告人に自由を与えず、拘禁状態を継続させておいたほうが、弁護人は安心して弁護士業務を行うことができることになる。これは、依頼人と弁護士とを利益相反状態におくことに他ならない。刑事被告人は、自らの自由確保のために法律専門家の援助を十分に受けることができず、一人、強大な国家権力と対峙することになる。それは正しく警察国家、全体主義国家への道にほかならない。

 わが国が自由で民主的な国家であるためには、刑事弁護人を「被告人を管理監督する立場」におくようなことを決してしてはならないのである。

2 「弁護人が被告人を逃走させないこと」という保釈条件は存在しない
 永沢氏は「保釈の条件は対象弁護士***が被告人を逃走させないこと」であったと述べている(懲戒請求の理由、1頁)。しかし、そのような条件は存在しない。カルロス・ゴーン氏の保釈条件は2019年3月5日付及び同年4月25日付保釈許可決定(乙1、2)のとおりである。弁護人が行うべきこととして求められているのは、

1)ゴーン宅に設置された監視カメラに保存された画像データを1ヶ月に1回裁判所に提出すること
2)ゴーン氏の携帯電話の通話履歴明細書及びインターネット・ログを1ヶ月に1回裁判所に提出すること
3)ゴーン氏が第三者と面会した記録を1ヶ月に1回裁判所に提出すること

である。私をはじめゴーン氏の弁護人はこの条件を厳格に遵守した。一度もこの条件に違反したことはない。

 なお、私はゴーン氏から、彼が法律上携行を義務付けられたパスポート以外のパスポート3通を預かり、厳重に保管していた。その管理を怠ったこと(懲戒請求の理由、1頁)などまったくない。

3 ブログの記載は不適切なものではない
 永沢氏は、2020年1月4日に投稿した私のブログを引用して、その内容は「違法行為を肯定する発言」「違法行為を助長する行為」であって「不適切」であるという(同前)。通常の日本語の理解力がある人がこのブログ記事を読めば、これが違法行為を肯定してもいないし、助長もしてもいないし、不適切でもないことは十分に良く理解できるはずである。

 このブログのなかで私は、ゴーン氏が密出国した事実を知って衝撃を受けたこと、その動機としてわが国の非人道的と言われても反論できない「人質司法」の現実や極限的にまで停滞し、迅速な裁判を受ける被告人の権利を著しく侵害している訴訟進行の現実があるのではないかという意見を述べた。そして、ゴーン氏が感じた絶望には共感できる部分があると告白した。こうした私の発言には十分な事実上の根拠がある。そして、これらのどこにも違法行為を肯定したり、助長したりする要素はない。
以上



plltakano at 22:20コメント(53)弁護士倫理保釈 

2020年01月20日

This is a paper I wrote for Asian Law and Society Association's Annual Meeting held in Osaka on December 14, 2019.

Hostage Justice System in Japan: How it works, and Why?
Takashi Takano, a member of Carlos Ghosn’s Defense Team
December 14, 2019
Osaka



I have been working as a criminal defense attorney for more than 35 years in Japan and am now defending Mr. Carlos Ghosn, who was detained and interrogated for 130 days before released on bail under a variety of harsh conditions including complete prohibition of contact with his wife. I would like to describe the reality of Japan’s pretrial detention system.

Timeline of Mr. Ghosn’s Case
Timeline of Mr. Ghosn’s case focusing on major events concerning his confinement is as follows:

On November 19, Mr. Ghosn was arrested by prosecutors of Tokyo District Prosecutors’ Office Special Investigation Division with arrest warrant issued by a Judge of Tokyo District Court for violation of Financial Instruments and Exchange Act (“FIEA”), i.e., under-reporting his unpaid compensation from FY2010 through FY2014 along with another Nissan representative director Mr. Greg Kelly.

Two days later, a Tokyo D.Ct. Judge, accepting prosecutor’s request, ordered to detain Mr. Ghosn and Mr. Kelly until November 30, because, the judge said, there were reasonable grounds to believe (1) that the suspects may hamper evidences, and (2) that the suspect may flee; the judge also ordered them not to communicate with persons except their legal counsels and embassy personnel until prosecutor’s filing of indictment.

On November 30, a Tokyo D.Ct. judge granted prosecutor’s request for extension of the detention another 10 days (until December 10), stating as reasons for extension such as “analysis of evidences is incomplete”, “many related persons”, “interrogations of related persons are incomplete”, and “interrogations of the suspect as well as accomplice are incomplete”.

On the last day of this extended detention period, Toko D.P.P.O. indicted both Mr. Ghosn and Mr. Kelly for under-reporting Mr. Ghosn’s unpaid compensation FY2011-FY2014. At the same time, Mr. Ghosn and Mr. Kelly were re-arrested for under-reporting Mr. Ghosn’s unpaid compensation for FY2015-FY2017 by warrant issued by Tokyo D.Ct. judge.

The next day, December 11, a Tokyo D.Ct. Judge, accepting prosecutor’s request, ordered to detain Mr. Ghosn and Mr. Kelly until December 20, stating its reasons: (1) that the suspects may hamper evidences, and (2) that the suspects may flee; the judge also ordered them not to communicate with persons except his legal counsels and embassy personnel until prosecutor’s filing of indictment.

On the final day of the original ten-day detention, December 20, a Tokyo D.Ct. judge denied prosecutor’s request for extension of detention; and Three-judge panel of Tokyo D.Ct. rejected prosecutor’s appeal from that decision.

On December 21, Mr. Ghosn was re-arrested for the third time for violation of Company Law (aggravated breach of trust) by warrant issued by a Tokyo D.Ct. judge.

On December 23, a Tokyo D.Ct. Judge, accepting prosecutor’s request, ordered to detain Mr. Ghosn until January 1, 2019, stating the same reasons, i.e., probability of tampering evidence and flight; the judge also ordered communication ban until prosecutor’s filing of indictment.

On December 31, a Tokyo D.Ct. judge granted prosecutor’s request for extension of detention for another 10 days until January 11, stating as reasons “cases are complicated”, “interrogations of related persons are incomplete”, “review of tangible evidences are incomplete” and “interrogation of the suspect is incomplete”.

On January 8, 2019, Mr. Ghosn appeared in public for the first time since his arrest at Reason-of-Detention Hearing (Koryu Riyu Kaiji) at Tokyo D.Ct.; he stated his innocence for all the charges. His defense counsel filed a motion to revoke detention order. This motion was denied by a Tokyo D.Ct. Judge.

On January 11, Tokyo D.P.P.O. indicted Mr. Ghosn and Mr. Kelly for violation of FIEA FY2015-FY2017; Tokyo D.P.P.O. also indicted Mr. Ghosn for the breach of trust charge. At the same time, Tokyo D.P.P.O. requested a order of communication ban after indictment, which a Tokyo D.Ct. judge denied; Tokyo D.P.P.O. appealed from this denial; Tokyo D.Ct. judges turned down this appeal.

On January 15, a judge of Tokyo D.Ct. denied the Mr. Ghosn’s bail request, stating as reasons (1) that there was reasonable ground to believe that the defendant may hamper evidences, and (2) that defendant’s residence was unclear. Defense counsels appealed from the denial of bail; three-judge panel at Tokyo D.Ct. affirmed the original decision.

On January 18, defense counsels filed the second request for bail; Judge denied the bail, stating there was reasonable ground to believe that the defendant may hamper evidences.

Early in February, Mr. Ghosn removed previous defense counsels and hired new ones including me.

On February 28, new defense team filed a petition for bail, offering 10 items of conditions such as setting surveillance camera at entrance of his residence, defendant’s stay at one of his defense counsels’ office from 9:00 am till 5:00 pm on weekdays, reporting all phone-calls and visitors to the court, prohibitions of contact with related persons, etc.

On March 5, a Tokyo D.Ct. judge granted our bail request on the conditions that includes the ones defense team offered, plus posting 1 billion yen in cash; Tokyo D.P.P.O. appealed from the bail decision; three-judge panel of the court denied prosecutor’s appeal.

On March 6, Mr. Ghosn was released after 106 days confinement at Tokyo Detention Center.

On April 4, Mr. Ghosn was re-arrested for the fourth time for violation of the Company Law (aggravated breach of trust) by warrant issued by a Tokyo D.Ct. judge. A judge next day ordered to detain him until April 15, because there was probability of tampering evidence and flight; the judge also issued a communication ban; Defense counsels appealed from the detention order as well as communication ban; three-judge panel turned down the appeal.

On April 12, a Tokyo D.Ct. judge granted 10-day extension of detention until April 22, stating “necessary to analyze tangible evidences”, “need to examine witnesses through international investigation cooperation”, etc; Defense filed an appeal; but Tokyo D.Ct. turned down the appeal.

On April 22, Tokyo D.P.P.O. indicted Mr. Ghosn for BOT charge; Defense filed a petition for bail, offering similar conditions previously made; a Tokyo D.Ct. judge granted bail on conditions similar to the previous bail conditions plus prohibition of contact with defendant’s wife, because, the judge said, she is one of the related persons with the charge. Tokyo D.P.P.O. appealed from the bail decision; Tokyo D.Ct. rejected the appeal.

On April 25, Mr. Ghosn was released from Tokyo Detention Center, after posting 500 million yen.

On May 9, defense team filed an appeal from the bail condition that prohibits defendant’s contact with his wife as a violation of International Covenant for Civil and Political Rights; Tokyo D.Ct. turned down the appeal; The Supreme Court also turned down the special appeal.

During these detention periods—from November 19, 2018 through January 11, 2019 and from April 4, 2019 through April 22, 2019―Mr. Ghosn was being interrogated by prosecutors everyday, even during weekends and National holidays. Even when Mr. Ghosn and his defense counsel expressed opposition to the interrogation, he was forcibly taken to the interrogation room at Tokyo Detention Center. The timing of interrogations were not fixed and was completely up to prosecutors’ intention: prosecutor would start interrogation whenever he wants and stop when he wants to stop; as for the duration, shortest was less than two hours, while sometimes it was over ten hours. His lawyers were not allowed inside interrogation room.

Pretrial sessions started in May. After 7 months or six sessions at Tokyo D.Ct., we still do not know when the discovery of prosecutor’s evidences---the first phase of pretrial---finishes, nor when the trial begins. Nobody can tell when the trial court announces the verdict, nor how long Mr. Ghosn shall stay in Japan without contacting his wife.

Hostage Justice: How it works
It works backwards: Punishment first, then Trial, and finally Crime.

Mr. Ghosn’s situation is a typical of those who are indicted for criminal charge and do not admit it. Or, you may say he is better situated than ordinary defendants who contest their charges, since most of them are denied bail and shall stay in police jail or detention center until their trial conclude. Having overcome the incredibly bad odds (98% against them)1 and won acquittal, they may have already lost their job, heath and/or family.

The Japanese criminal justice system works just like the world of White Queen in Lewis Carrol’s “Through the Looking-Glass, and What Alice Found There”, Chapter 5:

"That's the effect of living backwards," the Queen said kindly, " it always makes one a little giddy at first.”
" Living backwards!” Alice repeated in great astonishment. " I never heard of such a thing! I'm sure mine only works one way," Alice remarked. "I can't remember things before they happen."
"It's a poor sort of memory that only works backwards," the Queen remarked.
“What sort of things do you remember best?” Alice ventured to ask.
“Oh, things that happened the week after next," the Queen replied in a careless tone, “ For instance, now, there's the King's Messenger. He's in prison now, being punished: and the trial doesn't even begin till next Wednesday; and of course the crime comes last of all."
“Suppose he never commits the crime?” said Alice.
"That would be all the better, wouldn't it?" the Queen said .2


In Ghosn’s case, he was detained for 130 days. Having been bailed-out, he has been and is even living under severe restrictions upon his freedom: his activities are electrically monitored; almost all communications are censored; he cannot meet, talk with, or touch his wife; he still doesn’t know when his trial begins; and prosecutors who indicted him are still searching for evidences for his guilt.
Kings messenger

You must surrender your fortune or precious rights in exchange for freedom
Once you are arrested, you are taken in front of a judge within 72 hours. This “initial appearance” is not for bail decision, but for detention order: prosecutor request a judge for ten-day detention order because you may (1) “destroy or conceal evidence” and/or (2) “flee” (Code of Criminal Procedure Art. 60 (2)(3)); the judge almost always (94% )3 grant this request, even though you are a CEO of a big global company or being firmly settled in local community with significant assets. A couple of days before this ten-day detention period ends, prosecutor files a request of ten-day extension, stating “unavoidable circumstances exist” (C.Crim.Proc. Art. 208(2)), and Judge almost always 4 accept this argument, citing circumstances such as “interrogation of suspect is not completed”, “laboratory test results are not provided yet”, “case is complicated”, etc.. So it is fair to say that once you are arrested you are most likely detained for 23 days in prison.

During these 23 days you are under interrogation almost every day, even on holidays, for significant amount of time; you are under pressure to confess to a crime whether or not you actually committed it.
Bail system is non-existent during these 23 days; you may request for bail only after the prosecutor indicts you. And your chance to get bail is not well. If you have not confessed or at least admitted significant part of the alleged crime, your bail request would likely be denied. You must waive your right to remain silent and must speak about charge and confess in order to get out of jail. If you remain silent or deny the charge, you would most likely have to stay in jail, and lose your job or even your family. I will discuss the statistics on bail later.

You have to waive your right to be presumed innocence and admit the charge at trial. If you contest the charge at trial, your detention would be prolonged further, even until the conclusion of the trial, whether or not you did commit the offence you are charged with. You must file a document titled “Defendant’s Intended Allegation (Yotei Shuchou Kisaisho) that explains in detail why you shall not be guilty for the indicted crime. Otherwise, your bail request would be denied, because in this situation judge tends to think “there still exists a possibility of tampering evidence, since the Defendant’s allegation is unclear at the moment”. So, you cannot remain silent about your defense case, if you want to be free before trial begins.

You have to waive your right to confront with and cross-examine the witnesses against you, and must agree with the court to admit written statement of prosecutor’s witnesses such as self-claim victims, eye witnesses, accomplice, etc. in order to get early release on bail. If you contest the admissibility of these hearsay evidences, you are deemed to have a motivation for tampering evidence.

Japanese prosecutors routinely utilize this system so that they can achieve extremely high conviction rate; prosecutors get conviction in 98.1% of all the contested cases 5 .

Hostage Justice System: Why It Can Be in 21st Century Japan

Because Judges like it
Trial judges prefer the defendants be kept in jail until trial begins, because while detained:

1) they tend to waive their right to remain silent and admit their charges, that will make the case easy to dispose,
2) even in contested cases, defendant tend to cooperate to narrow the issues,
3) they also tend to waive their evidential rights and let written statements be admitted, and
4) they will proffer fewer defense evidences.

All these factors will make judge’s case load be manageable. Contrary to this, if defendants are freed on bail, they would likely to contest the charge enthusiastically and enjoy their procedural rights to the fullest extent, which are the basis for a fair trial; all these factors will make judge’s life hard and complicated especially in a system in which judges must work in multiple functions, i.e., interpreter of law, gate keeper of evidences, finder of facts, and author of judgment that shall explain in detail the reasons of their verdicts.

Because the Law is Somehow Ambiguous

“Duty to be interrogated”
Japanese Constitution of 1947 adopted basic human rights, and provides, among many other procedural rights, guaranteed the right to remain silent or right against self-incrimination. The Article 38 section 1 says, “ No person shall be compelled to testify against himself”; and section 2 of the same article “Confession made under compulsion, torture or threat, or after prolonged arrest or detention shall not be admitted in evidence.”

On the other hand, Code of Criminal Procedure adopted by the Diet in 1949 has an ambiguity about interrogations of suspects by police officers and public prosecutors. the Article 198 section (1) provides:

A public prosecutor, public prosecutor's assistant officer or judicial police official may ask any suspect to appear in their offices and interrogate said person when it is necessary for the investigation of a crime; provided however, that the suspect may, except in cases where said person is under arrest or under detention, refuse to appear or after said person has appeared, may withdraw at any time. (emphasis added)


Based on this exception to the proviso that guarantees suspect’s right to refuse interrogation, Japanese police officers and prosecutors claim that suspects under arrest or detention shall have a duty to stay in interrogation room for officers’ questioning. The Ground Bench of Japanese Supreme Court, i.e., 15 Justices, in l999 unanimously said that “the interpretation that the suspect in custody has a duty to be present for interrogation and to stay for interrogation does not necessarily mean that the suspect is deprived of the right against self-incrimination.” 6 This decision apparently implied that obliging suspect to endure interrogation without his or her counsel present is not a violation of right to remain silent guaranteed by Japanese Constitution Article 38 (1).

Therefore, if you are under arrest or detention, upon police officer’s or prosecutor’s request, you have to leave your cell in jail house, be hand-cuffed and waist-roped, be taken to their interrogation room, stay there as long as the officer wants, and answer their questions, without your lawyer present. If you refuse to leave your cell, the officer may use “tangible power” to take you to their interrogation room 7. There were several suspects, having refused to leave their cell, were carried on stretcher to officer’s interrogation room.

Even if you are not under arrest or detention, you are not free from interrogation. According to the proviso to the Article 198 of Criminal Procedure Code which I cited above, you have a right to refuse interrogation and to leave interrogation room at your own will. However, if you exercise these rights, officer may request your arrest warrant, saying that there are reasonable grounds that you may tamper evidence or flee. And it is quite possibly that judge grant the request and issue an arrest warrant. One of my client who was a suspect for simple assault charge of hitting his wife refused to report to police station because the police denied our request for lawyer’s presence inside the interrogation room. Then afterward, a judge issued an arrest warrant as well as detention order 8 .

Even without any warrant, once you step inside the interrogation room, it is almost impossible for you to escape from their questioning. When you stand up and try to get out, police officer may stand in front of you or grab your hand in order to “persuade” you to stay inside the interrogation room. Japanese Supreme Court said this, in its 1976 decision, as exercising “tangible power not amount to compulsory process” that may be used without warrant 9.

Even though Japanese Constitution (art.38(2)) as well as Code of Criminal Procedure (art. 319(1)) deny the admissibility of involuntarily made confessions, it is extremely rare that trial court judges does not admit confessions. For example, one Supreme Court precedence in 1989 held in a robbery-murder case that the confession obtained after a continuous interrogation from 11:30 p.m. until 9:25 pm the next day is admissible, there being no doubt that this confession was voluntarily made, the justices said, since the defendant voluntarily reported to the police station and asked officers to interrogate himself in the beginning and he had never asked to stop the interrogation through out the interrogation process 10.

The Constitution of Japan provides that “at all times the accused shall have the assistance of competent counsel” (Cnst. Art. 37 (3)). This guarantee of basic human right is also very ambiguous. Criminal Procedure Code Article 39 section 3 provides “A public prosecutor, public prosecutor's assistant officer or judicial police official may, when it is necessary for investigation, designate the date, place and time of the interview [with his counsel]”. Fifteen Justices of the Supreme Court of Japan unanimously held this provision constitutional 11.

Thus, prosecutors and police officers may interrogate detained or non-detained suspects as long as they want, even when suspects clearly request stopping it. In Mr. Ghosn’s case, prosecutors continued interrogation of him every day during his detention period including weekend, national holidays, and Christmas day without his counsel present, ignoring his counsel’s written request to stop such interrogations.

“Probable Cause of Tampering Evidence”
The Criminal Procedure Code provides that “request for bail must be granted”, but with several exceptions, one of which is when “there is probable cause to suspect that the accused may conceal or destroy evidence” (C.Crim.Proc.§89(4)). Prosecutors almost always cite this section to oppose the accused’s bail in contested cases. Judges accept it in most of the cases and deny bail request, stating seemingly very abstract reasoning such as “based on the defendant’s statement at investigation stage, there are probable cause to suspect that defendant put pressure upon related persons”. In approximately 20% of contested cases, defendants are granted bail at somewhere until the end of trials, mostly after the completion of witness-examination 12. There is eventually no hope, however, that defendant be released right after the indictment.

In Mr. Ghosn’s case his first and second requests of bail were rejected because, judge stated, “in light of the nature and contents of the cases, defendant’s status as well as relationship with persons involved, and nature of statements made by the defendant and the related persons during investigation stage, there exist reasonable ground to suspect that defendant hamper evidences such as putting pressure upon related persons regarding the facts concerning the charged crime or its back ground” 13.

Because Even Defense Lawyers Use This System
Defense attorneys in this country routinely support this system: they file motion to revoke detention order or bail request based on defendant’s admission of guilt or agreement on admission of prosecution evidence, claiming that this kind of submissive attitude of their clients will vacate “probable cause of tampering evidence”. Ironically, this practice has been and is strengthening current practice of “hostage justice”.

Getting Better?
Since Mr. Ghosn was released on bail, even though he is vehemently contesting the charges, Japanese media started saying that bail has become easier than before. This is wrong.

Let’s Look at Statistics
Let’s take a look at statistics. Figure 2 is made from statistics officially published by the Supreme Court of Japan. This shows the ratio of defendants who were released on bail while their cases be pending at trial courts whether or not they contested charges. In early 1970’s 60% of the defendants were released on bail at some time during the cases were pending at district courts. Since then the ratio continued to decrease. In 2003 it plunged at 12.6%. Then started getting up; now it is about 30%, but still it is a half the ratio in 1970’s.

Japanese judiciary has never published a statistics of bail situation in contested cases; nor of timing of bail out, i.e., when the defendants are released on bail. Recently, however, it unofficially rendered Japan Federation of Bar Associations statistics about bail situation in contested cases. Figure 3 is the percentage of bail granted in contested cases pending at district court from 1984 to 2014. And Figure 4 is the ratio of the defendants who were released on bail before their trial began during the same period.

Fig2-4

According to these statistics, until late 1990’s defendants who contested the charge were more likely granted bail than those who admitted their charges. However, this trend became adversely changed, now only 20% of contesting defendants are released on bail sometime after indictment. There is no statistics on how long these defendants must stay in jail before released on bail, while Figure 3 shows only 7% of contesting defendants are released prior to their trial begins. When is the “prior to trial”? Nobody knows; it may be one or two months after indictment or one or more years when lengthy pretrial session reaches its conclusion. It is not uncommon from my experience that contesting defendants be detained more than one year or more.

What about Mr. Ghosn’s Case?
My Client, Mr. Carlos Ghosn, was released on bail after two months of original indictment and after three day of additional indictment before trial begins, even before the pretrial session started. Is this a good sign for humanizing Japanese Justice system?

I don’t think so. As I indicated earlier, Mr. Ghosn lost a lot of freedom and privacy rights in order to get out of jail. He is now under the situation of “house arrest”, or worse, because he even can not live with his wife. This situation is, in a sense, a result of our defense strategy. I invented this strategy some 25 years ago; applied it only four cases including current one. I succeeded in getting my clients out on bail in all these cases where my clients were seriously fighting the charges. In these cases, I was staying with my clients in a hotel or apartment; I employed my clients as a clerk who must stay at my office from 9:00 am till 5:00 pm, etc. I called this strategy “substitute prison (Daiyo Kangoku)” in which I, a defense counsel, must play a role of prison warden.

Mr. Ghosn has already been punished for one year now, and still doesn’t know when his trial begins. And, when will his “crime” come? Well, I would say it will probably never come. I wonder if you can say, like the White Queen, "that would be all the better, wouldn't it?”

Notes:

1 Supreme Court of Japan, Annual Judicial Report: Criminal Case in 2018 (Shiho Tokei Nempo (Keijihen) Heisei 30), Tables 21 and 31: 106 out of 4,846 defendants who contested charges got acquittal verdict.

2 Lewis Carrol, Alice’s Adventures in Wonderland & Through the Looking Glass, and What Alice Found There (Macmillan, 2009), pp193-194.

3 Supreme Court of Japan, supra note 1, Table 15: Judges of Summary Courts and District Courts, in the year of 2018, granted 98,544 out of 104,713 requests for detention.

4 There is no judicial statistics, but the Prosecutorial Statistics in 2018 (Kensatsu Tokei),Table 18-00-44, shows 62,554 out of 62,741 (99.7%) extension requests were granted.

5 Supreme Court of Japan, supra note 1, Tables 21, 39. Out of all criminally charged persons (49,811) disposed by all district courts in the year of 2018, 5,619 defendants contested charges, and 5514 of them were found guilty.

6 Sup. Ct. GB, Decision, Mach 24, 1999 MINSHU53-3-514.

7 Tokyo DCt. Decision, June 22, 1984 KeisaiGeppo16-5/6-504.

8 He was indicted for simple assault and detained for more than 100 days without bail. See, Takashi Takano, The Miranda Experience in Japan, in Malcolm M. Feeley, et. al., ed. The Japanese Adversary System in Context (Palgrave, 2002), 128, 134-136.

9 Sup, Ct. 3rd Petty Bench, Order, March 16, 1976, KEISHU 30-2-187.

10 Sup. Ct. 3rd Petty Bench, Order, July 4, 1989, KEISHU 43-7-581.

11 The Supreme Court Grand Bench, supra note 6.

12 Unpublished statistics released by the Supreme Court of Japan to Japan Federation of Bar Associations on conditions that it be circulated only within the Bar Association.

13 Tokyo Dst.Ct. Criminal Division 8, Order, January 17, 2019 (unpublished).






plltakano at 00:20コメント(6)身体拘束ゴーン事件 

2020年01月11日

ゴーンさんに対する検察官の取調べ時間をまとめてみました。
2018年11月19日から2019年1月11までは、検察官から開示された取調べ状況報告書によります。
2019年4月5日以降はゴーン氏のメモ(日々の取調べ開始時刻や終了時刻を記録してもらった)によります。
なお、取調べ時間はその日の開始から終了までの時間であり、休憩時間も含みます。
ゴーン氏は、70日間、連日週末も休みなしに、サンクスギビングもクリスマスも年末年始も、弁護人の立ち会いもなしに、平均7時間の取調べを受けていたのです。

日付     曜日 開始時刻 終了時刻 取調べ時間
2018/11/19 Mon  17:13  19:29  2:16
2018/11/20 Tue  12:39  20:42  8:03
2018/11/21 Wed  19:18  21:31  2:13
2018/11/22 Thu  13:49  21:32  7:43
2018/11/23 Fri  13:36  19:54  6:18
2018/11/24 Sat  13:46  20:52  7:06
2018/11/25 Sun  13:49  20:55  7:06
2018/11/26 Mon  15:54  21:57  6:03
2018/11/27 Tue  13:39  21:24  7:45
2018/11/28 Wed  15:34  21:46  6:12
2018/11/29 Thu  13:13  20:35  7:22
2018/11/30 Fri  15:30  20:48  5:18
2018/12/1 Sat  13:21  20:13  6:52
2018/12/2 Sun  13:26  19:57  6:31
2018/12/3 Mon  13:15  20:46  7:31
2018/12/4 Tue  15:25  20:17  4:52
2018/12/5 Wed  15:16  21:25  6:09
2018/12/6 Thu  10:20  22:03  11:43
2018/12/7 Fri  13:05  21:48  8:43
2018/12/8 Sat  13:31  20:06  6:35
2018/12/9 Sun  13:20  20:56  7:36
2018/12/10 Mon  14:19  20:28  6:09
2018/12/11 Tue  18:57  20:50  1:53
2018/12/12 Wed  13:31  20:31  7:00
2018/12/13 Thu  13:20  20:25  7:05
2018/12/14 Fri  13:07  20:53  7:46
2018/12/15 Sat  13:24  19:57  6:33
2018/12/16 Sun  13:20  20:31  7:11
2018/12/17 Mon  13:45  20:06  6:21
2018/12/18 Tue  10:16  16:19  6:03
2018/12/19 Wed  13:23  20:57  7:34
2018/12/20 Thu  10:00  22:18  12:18
2018/12/21 Fri  10:15  19:52  9:37
2018/12/22 Sat  13:16  20:07  6:51
2018/12/23 Sun  18:05  20:59  2:54
2018/12/24 Mon  13:15  19:46  6:31
2018/12/25 Tue  13:01  20:55  7:54
2018/12/26 Wed  13:06  20:13  7:07
2018/12/27 Thu  15:47  20:45  4:58
2018/12/28 Fri  13:04  21:59  8:55
2018/12/29 Sat  13:20  21:34  8:14
2018/12/30 Sun  13:20  21:20  8:00
2018/12/31 Mon  13:15  16:13  2:58
2019/1/1   Tue  13:05  20:07  7:02
2019/1/2   Wed  13:26  19:58  6:32
2019/1/3   Thu  13:17  20:48  7:31
2019/1/4   Fri  13:12  21:58  8:46
2019/1/5   Sat  13:20  20:09  6:49
2019/1/6   Sun  13:08  21:13  8:05
2019/1/7   Mon  13:28  20:43  7:15
2019/1/8   Tue  13:42  20:43  7:01
2019/1/9   Wed  10:18  19:04  8:46
2019/1/11  Fri  13:03  13:51  0:48
2019/4/5   Fri  19:20  21:10  1:50
2019/4/6   Sat  13:30  19:30  6:00
2019/4/7   Sun  13:30  21:30  8:00
2019/4/8   Mon  18:30  21:30  3:00
2019/4/9   Tue  13:15  21:15  8:00
2019/4/10  Wed  13:00  21:20  8:20
2019/4/11  Thu  13:10  21:20  8:10
2019/4/12  Fri  14:30  22:00  7:30
2019/4/13  Sat  13:30  21:45  8:15
2019/4/14  Sun  9:50  20:50  11:00
2019/4/15  Mon  13:15  21:45  8:30
2019/4/16  Tue  14:30  20:40  6:10
2019/4/17 Wed  14:00  21:30  7:30
2019/4/18 Thu  13:30  21:30  8:00
2019/4/19 Fri  14:00  20:00  6:00
2019/4/20 Sat  13:30  21:15  7:45
2019/4/21 Sun  10:30  21:00  10:30




plltakano at 16:16コメント(61)ゴーン事件取調べ 

2020年01月07日

報道によると、森雅子法務大臣は、被告人にGPS装置を装着させるなどの行動監視を「議題の一つ」として、保釈制度の見直しを検討しているということである(産経新聞2010年1月6日https://www.sankei.com/affairs/news/200106/afr2001060004-n1.html)。私もこの見直しに賛成である。憲法と国際人権法の要請に見合った保釈制度の改正は、わが国の刑事司法を近代化するために早急に取り組まなければならない喫緊の課題の一つである。改正保釈法は以下の項目を満たすべきである:

1)逮捕された被疑者は、遅滞なく裁判官の面前に引致され、保釈を請求する権利があること

2)「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」という権利保釈除外事由を削除すること

3)権利保釈の除外事由を、保釈保証金やGPSアンクレットの装着などの措置によっては‘亡の防止や、地域社会の安全確保が測れないことが十分に認められる場合に限定すること

4)罪を自白した被疑者・被告人には権利保釈を認めないこと

5)保釈の可否や保釈条件の決定手続は公開の法廷で行わなければならない:検察官は、公開の法廷で、権利保釈の除外事由――GPSモニタリングなどの措置では防止できないほどに高度の、‘亡の蓋然性または地域社会への危険発生の蓋然性――を立証しなければ権利保釈を阻止できないこと


詳しくは私の過去のブログ・ポスト「人質司法の原因と対策」(2019年1月18日)を参照されたい。


plltakano at 10:58コメント(101)保釈未決勾留 

2020年01月04日

私の依頼人カルロス・ゴーン氏は、2019年12月29日、保釈条件を無視して、日本を密出国した。同月30日付けワシントン・ポストによると彼は次の声明を出した:
私はいまレバノンにいる。もう日本の八百長司法制度の人質ではない。そこでは有罪の推定が行われ、差別がまかり通り、そして基本的な人権は否定される。これらは日本が遵守する義務を負っている国際法や条約に基づく義務をあからさまに無視するものである。私は正義から逃れたのではない。私は不正義と政治的迫害から逃れたのである。私はようやくメディアと自由にコミュニケートできるようになった。来週から始めるのを楽しみにしている。

彼が日本の司法制度についてこうした批判を口にしたのは今回が初めてではない。東京拘置所に拘禁されているときから、彼は日本のシステムについて様々な疑問を懐き続けた。彼は日本の司法修習生よりも遥かに法律家的なセンスのある質問をいつもしてきた。

「そんなことで公正な裁判(a fair trial)は期待できるんだろうか?」

彼はなんどもこの同じ質問をした。そのつど私は日本の実務について、自分の経験に基づいて説明した。憲法や法律の条文と現実との乖離についても話した。

「・・・残念ながら、この国では刑事被告人にとって公正な裁判など期待することはできない。裁判官は独立した司法官ではない。官僚組織の一部だ。日本のメディアは検察庁の広報機関に過ぎない。しかし、多くの日本人はそのことに気がついていない。あなたもそうだ。20年間日本の巨大企業の経営者として働いていながら、日本の司法の実態について何も知らなかったでしょ。」

「考えもしなかった。」

「逮捕されたら、すぐに保釈金を積んで釈放されると思っていた?」

「もちろん、そうだ。」

「英米でもヨーロッパでもそれが当たり前だ。20日間も拘束されるなんてテロリストぐらいでしょう。でもこの国は違う。テロリストも盗人も政治家もカリスマ経営者も、みんな逮捕されたら、23日間拘禁されて、毎日5時間も6時間も、ときには夜通しで、弁護人の立ち会いもなしに尋問を受け続ける。罪を自白しなかったら、そのあとも延々と拘禁され続ける。誰もその実態を知らない。みんな日本は人権が保障された文明国だと思い込んでいる。」

「・・・公正な裁判は期待できないな。」

「それは期待できない。しかし、無罪判決の可能性は大いにある。私が扱ったどの事件と比較しても、この事件の有罪の証拠は薄い。検察が無理して訴追したことは明らかだ。われわれは他の弁護士の何倍もの数の無罪判決を獲得している。弘中さんも河津さんも、著名なホワイト・カラー・クライムの裁判で無罪を獲得している。だからわれわれを信頼してほしい。必ず結果を出してみせる。」

私は思っていることを正直に伝えた。彼は納得してくれたように見えた。

しかし、手続きが進むにつれて、彼の疑問や不安は膨らんでいったようだ。一向に進まない証拠開示、証拠の一部を削除したり、開示の方法に細々とした制限を課してくる検察、弁護人に対しては証拠の目的外使用を禁じる一方で、やりたい放題の検察リーク、弁護人の詳細な予定主張を真面目に取り上げないメディア、「公訴棄却申し立て」の審理を後回しにしようとする公判裁判所、いつまでも決まらない公判日程、嫌がらせのようにつきまとい続ける探偵業者などなど。彼は苛立ちの表情を見せながら私に質問してきた。しかし、徐々に質問の頻度は減っていった。

とりわけ、妻キャロルさんとの接触禁止という、国際人権規約に違反することが明白な保釈条件が、どんなに手を尽くしても解除されないことに、彼は絶望を感じていた。

「これは刑罰じゃないか。一体いつになったらノーマルな家族生活を送ることができるんだ。」

この正当な問いに私はきちんと答えることができなかった。「努力する」としか言えなかった。

弁護人の事務所で弁護人立ち会いのうえでわずか1時間Zoomでキャロルさんと会話することすら認めないという裁判官の決定を知らせたとき、彼は力なく「オーケー」というだけだった。怒りの表情すらなかった。

それが12月初旬のことだった。

クリスマス・イブの昼下がり、島田一裁判官が1ヶ月ぶりに認めた妻との1時間のビデオ面会に私は立ち会った。二人はお互いの子どもたち、親兄弟姉妹その他の親族や友人、知人ひとりひとりの近況や思い出話を続けた。話題が尽きない。そろそろ制限時間の1時間が経とうとするとき、彼はノート・パソコンの画面に向かって言った。

「君との関係は、子供や友人では置き換えることはできない。君はかけがえのない存在だ。愛してるよ、Habibi。」

私は、日本の司法制度への絶望をこのときほど強く感じたことはない。ほとんど殺意に近いものを感じた。

「カルロス、とても申し訳ない。本当に日本の制度は恥ずかしい。一刻も早くこの状況を改善するために私は全力を尽くすよ。」

返事はなかった。彼は私の存在などないかのように、次の予定を秘書と確認していた。

その1週間後、大晦日の朝、私はニュースで彼がレバノンに向けて密出国したことを知った。まず激しい怒りの感情がこみ上げた。裏切られたという思いである。しかし、彼がこの国の司法によって扱われてきたことを思い返すと、怒りの感情は別の方向へ向かった。実際のところ、私の中ではまだ何一つ整理できていない。が、一つだけ言えるのは、彼がこの1年あまりの間に見てきた日本の司法とそれを取り巻く環境を考えると、この密出国を「暴挙」「裏切り」「犯罪」と言って全否定することはできないということである。彼と同じことをできる被告人はほとんどいないだろう。しかし、彼と同じ財力、人脈そして行動力がある人が同じ経験をしたなら、同じことをしようとする、少なくともそれを考えるだろうことは想像に難くない。

それは、しかし、言うまでもなく、この国で刑事司法に携わることを生業としている私にとっては、自己否定的な考えである。寂しく残念な結論である。もっと違う結論があるべきである。

確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない。

*これは私の個人的な意見であり、弁護団の意見ではありません。


plltakano at 11:01コメント(831)ゴーン事件刑事裁判 

2019年10月29日

 最高裁判所第2小法廷は、10月23日付で、証拠保全に関するわれわれの特別抗告を棄却する決定をしました。その全文は以下のとおりです。PDF

主文


 本件抗告を棄却する。

理由


 本件抗告の趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない。

 よって、同法434条、426条1項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

      令和元年10月23日
                       最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 草野耕一
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦守
裁判官 岡村和美



plltakano at 22:20コメント(8)ゴーン事件証拠開示 
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高野隆

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