■ 書籍情報

オタクはすでに死んでいる   【オタクはすでに死んでいる】(#1724)

  岡田 斗司夫
  価格: ¥714 (税込)
  新潮社(2008/4/15)

 本書は、「オタクと昭和の死」について語ったものです。著者は、オタクが成立する条件である「高度消費社会」と「勤勉な国民性」という「昭和後期型、言い換えると第二次大戦以降の日本という国」が失われたと述べています。
 第1章「『オタク』がわからなくなってきた」では、著者が思うオタクが、「何かを『好き』という気持ちを抑えきれずに人に伝えてしまう人」であるのに対し、著者が出会った若者は、「自分が楽しいのが大事」であるように感じたと述べ、オタクが「本当に終わっているのでは」と真剣に思うようになったと述べています。
 第2章「『萌え』はそんなに重要か」では、著者が「萌え」を「あまりわかんない」とする理由として、「そもそもそれが、オタクであることと本質的にはあまり関係がないと思っている」と述べた上で、著者のオタク観は、「他ジャンルのオタク知識・見識など、詳しくなくて当たり前。それでも世間から見れば、お互い立派なオタク」というものだったと述べています。
 そして、「オタクは死んだ」という本書の結論は、「従来のオタクが共有していた共通意識」が「喪失された」ということだと述べています。
 第3章「オタクとは何者だったのか」では、今の世間のオタクの定義として、
(1)オタク=秋葉原にいる人
(2)オタク=社会性がない人
(3)オタク=萌える人
の3点を挙げています。
 第4章「おたくとオタクの変遷」では、著者が1996年に『オタク学入門』という本を書いたときに持っていたオタク像は、「何が好きかというのは表面の第一層にすぎないその底の層に、全員共通している何かがある」として、「自分の好きなものは自分で決める」という「強烈な意志と知性の表れ」があったと述べています。
 また、オタクを世代別に分類し、
(1)第一世代のオタク=なんとなく育ちがいい
(2)第二世代のオタク=オタク論が大好き
(3)第三世代のオタク=生まれたときからオタク商品に囲まれていた
の3つの世代の特徴を挙げています。
 第5章「萌えの起源」でえは、「1980年代あたりから、日本は美少女好き、もしくは女の子が好きになっていった」ため、「水着姿の少女が表紙を飾っている雑誌を、人前で一所懸命見ていてもあまり恥ずかしいと思わなくなっていった。すごくヘンな国に、日本がなっていった」ことを指摘しています。
 第6章「SFは死んだ」では、SFファンには、「ダメと言いながらも、でも全部押さえておかなきゃダメだよなという、それがSFファンとして正しい、SFファンとしてふさわしいよなぁという、自意識というか、プライドもしくは義務感みたいなもの」があ ったと述べています。
 そして、SFが「死んだ」とする理由として、「『私はSFファンだ』というときの連帯感というか、誇らしさみたいなもの」がなくなったことを挙げています。
 第7章「貴族主義とエリート主義」では、SFファンであることは、「千冊読まなきゃダメだ」、「自分で翻訳してでも未訳の本を読め」といった、「かなり求道的なもの」であり、「何か道を極めて、それで一人前になるためにはものすごく修行しなければいけない、修行とか精進するのが当たり前だった」とのべています。
 また、著者は、「オタクとは貴族である」と思っていたと述べ、「貴族だから一般庶民と感覚が違って当然。いいとか悪いとか、劣っているとか優れているとかいう問題じゃない、違うんだから仕方がない」というオタク貴族主義の考え方を表明しています。
 そして、「共通文化というものを失ってしまった、もしくは相互理解という幻想を失ってしまった以上、オタクはもういなくなってしまった」と述べています。
 第8章「オタクの死、そして転生」では、オタク文化とは、「大人になっても子供時代の趣味をやめない」ということであり、オタク文化が成立するためには、
・日本の大人は子供っぽいので、オタクになる
・日本の子供文化は大人っぽいので、卒業する必要がない
という2つの要素が両立していることが必要だと述べています。
 そして、日本でオタクが発生した条件として、
・日本では子供に「お小遣い=趣味の自己決定権」を与える。
・同時に日本では、大人向けの「思想や表現の過激性」を備えた子供文化が増えた。
の2点を挙げています。
 本書は、日本のオタクが死んだ理由を突き詰めた一冊です。


■ 個人的な視点から

 著者は「オタキング」と呼ばれてオタクの代表みたいに言われていますが、そのオタキングが「オタクは死んだ」とかくインパクトはそれなりにあるかと
 でも昔ながらのオタクは今や再び人目のつかない日陰の土地に追いやられているだけで、今もしぶとく生き残っているのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・オタクは萌え~!のひとだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 岡田 斗司夫 『オタク学入門』


■ 百夜百音

プレミアム・ベスト 狩人【プレミアム・ベスト 狩人】 狩人 オリジナル盤発売: 2009

 これを聞くと8時ちょうどのあずさ2号に乗りたくなってしまうが、見当たらないという曲。どうしても「春マーダー(殺人)祭」と聞こえてしまって仕方ありません。