■ 書籍情報

これからはじめる在宅勤務制度   【これからはじめる在宅勤務制度】(#2879)

  毎熊典子
  価格: ¥2,700 (税込)
  中央経済社(2018/7/11)

 本書は、平成30年2月22日に公表された新しいガイドラインを踏まえ、「在宅勤務制度を導入するに当たり検討すべき事項や、導入の手順、労務管理体制や社内規定の整備、さらに在宅勤務制度を実効性あるものとして運用するうえで留意すべきポイントについて、在宅勤務制度導入済み企業の事例を紹介しながら、できるだけわかりやすくまとめ」たものです。
 第1章「働き方改革としての在宅勤務の導入」では、テレワークの様々な形態について、主な要素として「就業形態」と「就業場所」により分類することができるとして、就業形態としては「雇用型」と「自営型」に分けられ、就業場所としては「在宅型」「モバイル型」「サテライト型」の3つに分けられるとしています。
 第2章「在宅勤務の導入手順」では、「在宅勤務を導入するにあたっては、まず、『なぜ在宅勤務を導入するのか』、導入目的を明確にすることが大切」だとしています。
 そして、「導入初期の段階においては、実施効果を検証しやすいように、実施対象者の範囲を限定することが一般的」だとした上で、「在宅勤務導入済み企業では、月2、3回あるいは週1、2回程度とする随時型在宅勤務が主に実施されて」いると述べています。
 第3章「労務管理体制見直しのポイント」では、「在宅勤務の導入については、業務の効率化による労働時間の削減が期待される一方で、従業員の自宅を就労場所とすることでオンとオフの切り替えがあいまいになり、かえって長時間労働を発生させる原因になるのではないかとの懸念」もあり、在宅勤務者が「サボっていると思われたくない」との思いから「必要以上に頑張ってしまい、所定労働時間を超えて働いてしまうこと」も考えられると述べています。
 そして、「在宅勤務では、業務の遂行と私生活上の行為が場所的・時間的に混在することから、事前にルールを決めて業務遂行性と業務起因性を判断できるようにしておくことが大切」だと述べています。
 第4章「ICT環境の整備をセキュリティ対策」では、「自宅で仕事をする際の社内システムへのアクセス方法」として、
(1)仮想デスクトップ方式
(2)クラウドアプリ利用形式
(3)リモートデスクトップ方式
(4)会社の端末持ち帰り方式
の4点を挙げています。
 第5章「在宅勤務のための規程整備」では、「就業規則に在宅勤務に関する規程がなく、従業員との個別の合意もなければ、会社は、従業員に在宅勤務を行わせることはできません」と述べています。
 そして、「私物の情報通信機器を会社の許可を得ずに業務に利用することを『シャドーIT』といい」、「従業員が隠れて行うBYODを黙認することは、企業自らシャドーITを助長しているようものもであり、非常に危険な状態である」と述べています。
 第6章「働き方改革は制度を作って終わりではない」では、「在宅勤務に否定的な考えをもつ管理職層が在宅勤務の導入・運用の壁になることは、めずらしいことではありません。導入済み企業の中には、こうした管理職層による抵抗を回避する目的で、在宅勤務を導入する際に、まず管理職層を対象にしたトライアルを実施し、管理職層が自らの体験を通して、在宅勤務のメリット・デメリットを理解できるよう工夫していろこともあります」と述べています。
 そして、「在宅勤務できる仕事は少ない」という声について、「実際には、製造、小売、金融、損保など、多岐にわたる業種において在宅勤務が導入されています。仕事のやり方を変えずに、仕事をする場所だけ自宅に変えようとすると、在宅勤務でできる仕事は自ずと限られてしまいます」として、「在宅勤務を希望者全員が利用できる制度とするため」には、「仕事のやり方自体を見直し、在宅勤務を行いやすいシステム環境を整備することが必要に」なると述べています。
 また、「在宅勤務で効率的に仕事をすることができる人は、自己管理力の高い人」だとして、「在宅勤務に向かないと会社が判断した従業員については、在宅勤務の許可を取り消し、通常勤務に復帰させるべきである」と述べています。
 本書は、在宅勤務に実際に取り組みたいと考えている企業にとっての参考となる一冊です。


■ 個人的な視点から

 「在宅勤務」と聞くと、どうしてもフルタイムで在宅勤務をして上司や同僚とも顔を合わせない、というイメージが先行してしまうのですが、例えば一人で残業しているときには上司も同僚もいない中で一定の決められた作業を進めているわけで、同じことを勤務時間内の自宅で行うことを可能にすればいいということなので、ある意味で「持ち帰り残業の制度化」みたいなものと思えばハードルも下がるのではないでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

・在宅勤務を難しく考えてしまう人。