例えば外へ戻すのに本来なら冷却水には漏れないはずなのに、ピンホールかなんかあいて、そこから少しずつ漏れて出てしまう。だから、液体も一部は出てます。ただ、原子炉の中で水漏れがあったりして、それをプラスティックの手袋をして雑巾を絞ったとか、そういうのはドラム缶に納められるわけですから、そのまま外には出ませんが、例えば関西電力のような加圧水型でピンホールがあると、一次冷却水と二次冷却水が混ざってしまう。一次冷却水の水が一部二次冷却水に出てってしまえば、当然それはそのまま外に出ていきます。液体の一部は出ます。だけど、気体廃棄物は環境中に廃棄すると、はじめからそうだったんです。
 だから、ヨウ素を吸着するフィルターは当時は使われていませんでした。私たちが実験をはじめた頃は。そして、そのムラサキツユクサの実験結果が出て、ようやく活性炭フィルターがつけられるようになりました。活性炭フィルターがつけられる前は、希ガス、不活性気体といって、クリプトンとかキセノンという元素の放射能を持った核種で、それは不活性気体ですから何も捕まらない。化学反応をまったくしませんから。なぜ原発が石炭も石油も燃やせないのに煙突があるのか、その希ガスというのを、できるだけ高いところに出して、人が住んでるところにあんまり降りてこないようにする。そのクリプトンとかキセノンという希ガスが圧倒的大部分で、当時ムラサキツユクサの実験を原発周辺でやってたころの希ガスと放射性ヨウ素の放出比は、1万対1の比率でした。不活性気体1万に対して、放射性ヨウ素は1しか出てない。
 だけど先程のワシントンで見た、やっと公開された当日に見つけた資料からいけば、仮に気体の中に出されるのが、不活性気体が1万で、放射性ヨウ素が1だとしても、不活性気体は体の中に入ってきても何も反応しませんから、化学反応しませんから、体の中の濃度と空気中の濃度は同じはずです。だから1万のまま留まります。ところが、放射性ヨウ素は1万に対して1しか出てなくても、これは200万から1000万倍まで濃縮されたら、放出量が1万分の1だからそこまでしかいかないんですけど、200から1000倍になってるわけです。
そうでしょ。濃縮で200万から1000万倍になりますから、1万に比べたら1万の200倍から1000倍にもなるわけです。

生物体内での大逆転

 だから、植物体の中で全く逆転して、原発の周りの空気中では、空間線量というんですけど、放射線量を測ってますけど、それに寄与してるのは、ヨウ素は1万分の1しかないんです。今は活性炭フィルターがついてますから10万分の1です。それしかないけど生物の体の中では、植物でそれを濃縮する。動物は直接・間接的に植物を食べますから、体内で、我々の場合は甲状腺に溜めるわけです。
 ただし例外がありまして、妊娠中の女性の場合は、優先的に胎盤を通じて胎児に送ります。それから授乳中のお母さんの場合は、優先的に乳腺に送ってお乳に入って子どもに行くようになってます。妊娠も授乳もしてない時は自分の甲状腺に集めます。とにかく、そういうことで動物の体の中でも大逆転する。なぜかといったら、エネルギーの素は、全部もとを正せば植物から摂ってるわけだから、植物が濃縮してたら、あとは、例えば家畜を食べても、家畜が食べてる物は草ですから同じことになってしまうんですね。

 だから、「しきい値説」の否定に続いて、そういうことが20年近く公開されていなかった報告を見て判明した。そして人工放射性核種のうち、特にその元素にはもともと放射性核種が全くなかったものに作られた人工放射性核種が生物をあざむくと。セシウムもそうだし、ストロンチウムもそうです。そういうことが判明した。そして3番目に、エネルギーが小さいほど生物効果が高くなるというのを、まず散乱放射線で、コンプトン効果の結果としてガンマ線からできる散乱放射線で見つけて、次は、わざわざ違うエネルギーの中性子の実験を繰り返し行って、中性子もエネルギーが小さいほど、散乱放射線以上にエネルギーが小さくなるに連れて飛躍的に生物効果が大きくなるということを見つけた。

 その飛躍的に大きくなることは、JCOで被曝された人についても非常に大きな問題なんです。それを政府筋は、何とかはじめに言ってたよりも、もっと放射線の推定線量は少なかったみたいに言い方を変えたりする。そんなことは「しきい値説」にもとづくような、これ以下ではガンは発生しないなんて、どこの世界でも、もはや通用しないようなことを言い出して、何とかだまそうとしてる。そういうことは訴状の中で徹底的に暴いていかなければならないと思ってます。