とある大学職員のぼやき

入職7年目の大学職員です。 頭の中の整理のためにブログを書いてみようと思います。

大学が果たすべき役割や仕事は増えてきています。もとより教育と研究が大学の主であり、増えてきている仕事は教育と研究から派生する事項でありますので、社会に対して実行するのは教員が主ではあります。もちろん、教員の動きが活発化すればサポートする職員の動きも自ずと活発になり、関わったり把握しておかないといけない事項も自ずと増えてきています。本書は大学の業務が肥大化する中で、新任の教職員が大学という枠組みを勉強する、いわゆる初学者向けの本として位置づけられており、昔のことから最新のことまで必要なことが網羅されているものです。本書を踏まえ日々の業務を実行していけば、単に業務に忙殺されるのではなく、半歩先を行く職員として俯瞰しながら仕事に当たることができるであろうと期待できます。

 

さて、最後に購入した平成26年度版と見比べてみるとページ数においては110頁から122頁へボリューム増となっています。若手であっても知っておかなければいけないことが増えていることがよくわかります。例えば、財務については財務比率も参考として掲載されていますし、トレンドとしては大学ランキングや有期労働契約法についても紹介されています。トレンドだけではなく、学校教育制度の歴史として以前は私立大学の歴史的背景であったものから、大学の起源までも記載されるようになり、より昔のことから最新のことまで幅広く知れる内容となっていることに驚きました。多忙な業務と調整しつつ、巻末に記載されている編集委員会の大学職員の方々がご尽力されたものだと察します。

 

ボリューム増となっている一方で、個人的に参考としていた「知っているようで、知らない文書の常識」の内容の一部が削除されているのが気になりました。以前は本当にこの掲載内容でよいのかと疑問視していた割印については、残っていただけでなく改訂されていたためほっとしたのですが、文書の訂正については内容が削除されていたのが驚きでした。決裁の電子化やそもそも訂正印を使用せずに文書そのものを差し替えることの方が多くなっているためだと推測されますが、まだまだ紙文化は残っていますし、何十年の前の書類などは電子化する方がコストがかかるため敢えて電子化しないなどの対応を取っているところもあるかと思います。紙で残っていたものをもとに発行等をする際に文書訂正の知識は問われることと思います。大学教職員に事務職は当然含まれることと思いますので、PCやスマートフォンが主流の若手にとって、紙での対応方法は、基本事項として押さえておくべき事項だと思っています。多くの分野において電子化が進んできている現在ではありますが、以前は紙であったものが電子化していることを考慮すると、移行期である現代は電子と紙の両方での取り扱いを理解しておかないといけないと思います。

 

改めて読んで、年度初めということもあり仕事に臨む姿勢に新鮮な気持ちをもたらしてくれました。毎年改訂されて出版されているので、来年度はさぼらずにこの時期に購入しようと思います。

 

 418日の文部科学省新着情報メール配信サービスに将来構想部会の配付資料がアップロードされていました。

 

・将来構想部会(第9期~)(第15回) 配付資料

http://mailmaga.mext.go.jp/c/abiqaesppQba64bG

 

毎回興味深く拝見しているのですが、今回の資料で特に気になったのは「【資料1-2】 平成303 26 日 中央教育審議会大学分科会将来構想部会制度・教育改革ワーキンググループ(第12 回)での主なご意見」の次の内容です。

 

   日本学術会議の参照基準が策定されたが、ほとんど使用されていない。これをどのように生かしていくかは、教学マネジメントがどのように生きていくかという点からも非常に重要な課題。

 

私も初耳であり、どのようなものか疑問に思ったため日本学術会議のホームページを参照したところ、以下が該当したのでご紹介します。

 

・日本学術会議 大学教育の分野別質保証委員会

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/daigakuhosyo/daigakuhosyo.html

 

下へスクロールしていくと25分野の参照基準が掲載されています。試しに所属部署の分野を参照したところ、その分野の定義や特性、学修方法や評価に対する考え方などが記載されており、その分野の教学系に対する基礎的な考え方を把握できる構造となっています。学生時代に学習していた分野と異なる分野の学部等に配属されている方にとっては、その特性を一早く理解できるのではないかと思いました。また、学修方法の考え方も記載されているため、教学系部署としては参照基準を軸に自分のところのカリキュラムを検証してみるのもよいかもしれません。ちなみに個人的に行ってみたところ、基礎的な部分はかなり真面目に行えていた反面、国際性を身に付けるような点については不足している点が見受けられました。基礎を固められるということは教育をする側からすれば良いのかもしれませんが、学習者からの視点に立てば時代の最先端を行く魅力あるものを受講しているとは思えていないカリキュラム設計なのかもしれません。もちろん、最先端のものばかり教えても背景となる基礎知識をしっかり学べていなければ深い学びにつながらないことは確かなので、教育をする側からすれば悩ましい問題であることは事実ですし、会議や立ち話で教員側も重々認識していることは知っております。

 

さて、日本学術会議においては大学教育の分野別質保証委員会が提示する参照基準の他にも「日本の展望―学術からの提言2010」も公表しています。こちらはやや研究面よりかと思いますが、興味深く読めたので併せてご紹介します。

 

・日本の展望―学術からの提言2010

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/tenbou/teigen.html

411日の文部科学省の新着情報メールマガジンに「平成31年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更予定一覧」と「平成303月末申請の大学の学部等の設置等認可の諮問について」があったため早速見てみました。

 

平成31年度からの私立大学等の収容定員の増加に係る学則変更予定一覧

平成303月末申請の大学の学部等の設置等認可の諮問について

 

収容定員増の特例を利用する大学、近年急速に規模を拡大している大学、久しぶりに動きを見せる大学など各大学の動向が伺えます。

医療系分野の拡大傾向は相変わらずですが、最近は農学系分野の拡大も顕著となっています。他大学のHPを見ると、設置構想を掲げているところも他に数か所見受けられます。

 

定員管理の厳格化や大都市の収容定員増の制限、合格者数絞り込みの影響もあり、歩留まりが若干の改善傾向にあるから入学者の獲得をこれまでよりも行いやすいのかもしれません。ただ、昔あった臨時定員増は今後一切ないでしょうし、定員を超過した数は確保することによる反動を考えると、投資に見合った収入を確保できないことが予想されます。この点、どう考えているのか、動きを見せる大学の特徴を少しずつ分析していきたいと思います。

 328日に2017(平成29)年度「大学評価」等の結果が公表され、結果は大学基準協会のホームページで見ることができるようになっています。認証評価の業務にもかなり限られた範囲ではありますが関わったことがある他、教学系に携わる者として日常業務に最低限の漏れがないかを外からの視点を知れる一助となるため、携わった以降は他大学の評価結果も確認するようになってきました。上記のとおり、今回公表されたので自分なりにさっそくチェックしてみました。

 

 努力課題や改善勧告で多く見られたのが大学院関係でした。特に定員管理、研究指導計画の作成、学位論文審査基準の明文化、三方針記述の精粗が多く見受けられました。評価方法については、大学基準協会のホームページ「ホーム> 評価事業 > 大学評価 > 平成29年度までの大学評価」で参照ができます。良い機会であったため、公表されている評価基準や大学評価ハンドブックを見てみると、どの評価項目がどの法令に対応しているかまで詳しく掲載されており、「法令等→学則等→部署内の規程→実際の作業」の関係性もわかるようになっています。また、どの場合は努力課題、どの場合だと改善勧告の基準となるかも明示されており、仕事において自分が行おうとすることの根拠となる他、人を動かす原動力ともなり得ると思いました。競合する他大学の現状を知れる大きな手掛かりともなる評価結果は精度の高い情報源ともなりますから、こちらを踏まえた上で関係者に説明することにより所属部署の業務改善にも説得力が増すことになると思います。

 

 ところで、評価を読み進む中で大学間で共通する指摘を見つけていくにつれ、『「文系学部廃止」の衝撃』で取り上げられた内容を思い出しました。書籍では「国立大学には国が金を出しているのだから、国の役に立つべき」という主張に対し、「国の税金はそもそも国民に由来するもので、税金への義務ということならば国民への説明責任になること。つまり国立大学は、それぞれどのような方針に基づいて学生を選抜し、教育し、社会に送り出しているのかを国民に対して説明する責任を負っている――これが、そもそもの税金の拠出者である国民に対して国立大学が負っている義務になる」と反論しています。続いて私立大学においても授業料収入等に対しての学生や保護者への説明責任の例を述べています。このことからも大学・大学院には当該大学が行う教育研究の説明責任が求められていることが分かります。大学院については課程制大学院の趣旨が繰り返し話題になることからも推測できるように、求められていることが日本の大学院の一部の実態とは異なることも理解できますが、三方針や審査基準、研究指導計画の作成など指摘された提言は学生や保護者だけでなくその大学がどういう大学なのかを社会へ説明するという大学の根幹をなす部分の説明責任にあたる部分でありますので、基準協会が策定している基準に則り基本的なことを当然のごとく指摘したのだなと思ったところです。

 

 2018(平成30)年度より認証評価は第3期を迎えます。こちらは大学基準協会ホームページの公表資料より見ることができますが、内部質保証とアウトカムを入れた評価についてチェックされることになります。わかっていることではありますが、自分自身においても自学が提供する教育研究の付加価値の正当性がわかる仕組みを整えていかないといけないと思いました。何も目新しいことをゼロから整えるわけではありませんが、今あるものをちょっとこちらで改善するだけで教員・学生がまじめに取り組んでいる成果を示せるような仕組みを学部・大学院で考えていこうと思います。ちょうど新年度になりましたので、会議等で話題提供をしながら少しずつ取り組んでいこうと思います。

 標記の本を読了しました。著者は文科省の将来構想部会で興味深い資料を提示されていたことに加え、前著の『大学とは何か』を既に読んでいたこともあり、本書も読んでみたいと以前から思っていたため、今回読んでみました。

本書の中で特筆すべき点は「第二章 文系は役に立つ」でしょう。この章で目的遂行型の有用性(主に理系)と価値創造型の有用性(主に文系)を取り上げ、「役に立つ」ことの2つの次元を説明しています。目的遂行型については、工学を例として、そもそも到達すべき目的は所与であり、その目的の達成に「役に立つ」成果を上げることとして説明されています。一方、価値創造型については、友人や教師がもたらしてくれたインスピレーションにより問題が解決の方向に向かうことを例として、目的自体を創造すること、役に立つと社会が考える価値軸そのものを再考したり、新たに創造したりすることと説明されています。この二つの違いについては、SONYのウォークマンとAppleiPad/iPhoneの違いを取り上げながらも説明されています。

本書で述べられている内容を自分の職場や周囲の環境に置き換えながら読み進んでいくと、地方創生や地方大学の生き残りについては価値創造型である文系の知こそ重要さを増してきているように思えます。出張や旅行であちこちを回っていると、どの地域でも一次産品の質は素晴らしいですし、観光資源にも恵まれていると感じます。ある意味、目的遂行型の知の利用は十分になされてきていると感じます。一方で魅力のある資源に対して価値創造型の知が目的創造型の知と比較して活用できていないのではと感じます。「物はいいのだけど何だかパッとしない」、「あとちょっとなんだよね」と地方の人や外出先で愚痴ったりするのはまさしく価値創造型の知を十分に取り込めていないからなのではないかとも思えてきます。

この点、地方にある私立大学は非常に伸びしろがあると考えます。私自身調べ切れてはいませんが著者によると地方私立大学の大半は文系であるそうなので、大学の存在意義がより発揮できるのではないかと考えます。最近流行の地方創生・地方創生事業からすると、文系の知はマーケティングなどの商学系の知に目が行きがちですが、何も特定の分野に限られた話ではないと思います。「モノ消費からコト消費」がトレンドにあることからも類推できるように、歴史学や人類学の知はその地域独自の風習に合わせれば十分に活用できるものもありますし、現に○○ツーリズムなるものも拡大しています。テレビ番組においても文化や自然、人とのつながりを色んな切り口から取材した番組は確かな人気があります。時代環境が変わり個人の価値観も変わってきたことは確かですが、何より進学率が上昇してきていることはそれだけ高等教育で得た知を還流する/できる層が増えてきていることを意味しているのではないかと思います。

本書を読んで、まだまだ文系の知も役に立つし、文系の知こそ今後役に立つ余地があること、発揮如何により地方私大の再生も社会から認められる要素があるということを感じました。加えて、文系出身者である私も文系の知を職場でも生かせるよう人との議論なり読書なりを通じて磨いていかないと改めて実感する良い機会となりました。

↑このページのトップヘ