平成28年度学校基本調査(速報値)によると、大学数は777校(国立86校、公立91校、私立600校)で、私立大学は全体の77.2%を占めており、学生数は全体で2,873,066人(男子1,625,727人、女子1,247,339人)、私立大学は2,112,323人で、73.5%を占めています。短期大学においては、全体数は341校(公立17校、私立324校)で、私立の割合は95.0%を占めており、学生数においては全体で128,461人(男子14,484人、女子113,977人)、私立短期大学は121,711人で、94.7%を占めています。私学は公教育の中心を担っていると捉えてよいと言えます。



教育の中心である私立ではありますが、経営は厳しい状況に置かれています。私立大学等の振興に関する検討会議での資料を参照すると、平成26年度に帰属収支差額がマイナスであった学校数は、大学においては592校中219校(37.0%)、短期大学においては333校中187校(56.2%)でした。大学においては平成23年度の42.2%、短期大学においては平成20年度の60.2%から数値上は多少改善していると雖も、この間には短期大学から4年制大学への移行があったことを考えると、一時的な改善であると考えていいかもしれません。また、入学定員充足率については、未充足の私立大学数が250校・43.2%、短期大学数が191校・61.0%となっているのも厳しい経営状況を考えるにあたり着目すべき点の一つです。



これまでの業務においては事務室内での勤務が大半を占めていたことから、他大学について意識するようなことは余りありませんでしたが、進学相談会などへ出るようになった現在では本当にいろんな大学があるんだなと実感するようになりました。上記の数字を準用していろんな大学を眺めてみると、参加している学校のうち赤字や未充足の大学が一定数あることを推測するとぞっとすることがあります。



さて、今回は芝浦工業大学の事例が取り上げられている表題の『私学の再生経営』を読みました。当該大学は、志願者数が右肩上がりに伸びている他、スーパーグローバル大学創成支援事業に採択されるなど活発な動きを見せている大学です。恥ずかしながら本書を読む前までは当該大学がこれまでにどのような歴史を歩んでいたかはよく存じておりませんでした。1971年には12億円の帰属収入に対し5億円の赤字など、かなり厳しい状況に置かれていたようです。



再生に向けての施策は、システム工学部や大学院開設による収入増の改善と教職員の高齢化対策や定年問題などの人事制度改革が行われたようで、まさに「入るを量りて出ずるを為す」だと感じました。各施策の詳細についてはここでは述べませんが、多くのことを実行するに当たり様々な議論等があり紆余曲折のこともあったかと思いますが、結果としては原理原則どおりにいったものと感じます。こちらについては、執行部やバックアップする教職員の不断の努力があったものと察します。



本書はこれからの私学経営を担っていく教職員にとって絶好のケーススタディとなるものであると言えます。初めに記したように、多くの私学が経営に苦しむ現在において、良い模範事例となると言えるでしょう。話は若干それてしまいますが、筆者は再生したと言えるまで30年近くの年月が必要であったと述べています。志願者数や学生数が右肩上がりの良き時代に再生に乗り出してこのような長い年月がかかった点を踏まえると、これから再生に乗り出そうというのであれば、外部環境を考慮しながら考えると同水準以上の長期的スパンをもって経営を考えなくてはいけない気がします。これからの時代において果たして外部環境が長期的再生を許してくれるかどうか、これについては改めて考える必要があります。