川島むーのお茶祭り日記より
http://d.hatena.ne.jp/ochamatsuri/20170117



センチメンタル じゃあに~ 川島むー




1948年、戦後復興期に
北陸を襲った大地の揺れを知る人は、少ない
その日 (1948年6月28日)
ある家では、長男が帰ってこなかった
死者・行方不明者3769名の一人
終戦で拾った命、わずか3年
もしも長男が戻っていたら
次男が家を継ぐことは無かったろう
その妻が雪深い地で暮らす事も無かったろう
その息子はどこで生まれどんな風に育ったろう

それは、私の夫となった人の家族の物語

ある日、舅に似た老人がふいに訪(おとな)う、それは夢物語

忘れない

1月17日と言う日
あの朝を

忘れない
 遠く地の底から、何者かがせり上がり迫ってくる気配
 地鳴り、地響き
カタカタと言う音
ずん!
 突き上げられ
 揺すられ、揺すぶられ
 動けない
 壁が柱が本棚が、きしむ、音
 暗闇の中、「止まって止まって」、心の中で叫び続けた

忘れない
 役立たずの私の備え
 転がって、手が届かなかった懐中電灯
忘れない
 冷静だった父母の身の処し方
忘れない
 公衆電話に並んだ近所の人たち
 震えていたのは寒さの所為だけじゃない
忘れない
 母の故郷、東灘
 無事だった、伯父一家の家
 倒壊したお隣さん
 焼け野原の商店街
 いとこと遊んだ公園に並ぶ、仮設住宅
忘れない
 妹が通う大学の街
 「999の駅みたいで格好ええやろ」
 建築科で学ぶ妹のお気に入りだった駅舎
忘れない
 「2月は、南京町の春節祭行こな」
 実行できなかったデートプラン
忘れない
 やっと電話が通じたお調子者のあいつの、震える声
 「今行ったる!」口走っとったら
 焼けぼっくいになっとったかな?
忘れない
 非常勤勤務先の高校
 私を囲み喋り続けた生徒達
 包帯を示しながら、それでも笑いを交える
 あっぱれ関西人のやんちゃくれ
 みんなで笑うたなぁ、
・・・徹マンしとったって、呑気な3年生やなぁ・・・
忘れない
 枕元で砕けたガラス細工
 神戸元町のガラス屋さん
 出かけるたびに買うとった
忘れない
 風景が、
  壊れると言うこと

あの日、何かが少し違っていたら

いとこが寝る場所を変えていなかったら
 倒れていた箪笥
時間が出勤時だったら
 通り一面のガラス片
図面書きの仕事中だったら
 作業机に落下していた図面引き出し
 ・・・直撃ですがな
恋人の伊丹出張が続いていたら
 ひしゃげた駅舎
妹が大学に行ってる時間だったら
 友達の下宿に遊びに行っていたら

身近に死んだ人がおらんかったんは
ほんの偶然
慰霊碑に刻まれた名前に涙しとったのは私かもしれん
刻まれたんが私やったかもしれん

知っている
 あの日をきっかけに人生をかえた人を
 しまっていた夢に光を当て
 我から厳しい道に踏み出した人を
私?
問われれば、私もやっぱり、この日があるから
時に決意が鈍り、甘え、だらしない日々が続いても
嫌でも毎年やって来る、この日
突きつける
ちゃんとやっとるか?悔いは無いか?
一年でたった一日
心の中であの日を、あれからの日々を、辿る
センチメンタル・ジャーニー

年がら年中センチメンタル、じゃあないの
たった一日、大切に、もの思い過ごす日
進むために振り返り、足元を見つめ大地を見つめ、立つ
立ち位置を確かめる

この日、私はゆるんだタガを締めなおす

そうして明日がやってくる

人々が、それでも新たな日を迎え
前に向かって進みだした日々に
私も顔を上げて

センチメンタルな気分に、じゃあね!




最近大切な人を裏切っていたことを
その人に明かさなければならなくなりました。

自分の言い訳はその人と出会う十年前から同じで
自分のなかでは真実だと信じていることでした。
その人がとにかく言い訳と裏切ったことを
分けてほしいといわれるまで分けれませんでした。

34年かけて積み上げた不信感も10年かけて固めた理由も
自分の行動原理もそして裏切った人の信用も
一日ではもどらないのですが、それでも
明日の自分が生きるために必要なことは最大限しなければ
自分の状況は悪くなるだけで、
この一週間は本当にそれだけで過ぎ去りました。

そのあとで川島むーさんの『センチメンタル、じゃあに~』を読むと
私はこの詩が震災の詩でないことにあらためて気づかされます。

川島むーさん自身と思しきの語り手は
自分の住んでいたところを襲った
阪神・淡路大震災をきっかけに自分を叱咤します。

ちゃんとやっとるか?悔いは無いか?
一年でたった一日
心の中であの日を、あれからの日々を、辿る
センチメンタル・ジャーニー


と書ける理由の一つには
運よく身近な方がなくならなかったからだという人もいるかもしれません。
身近な方がなくなられた方は別の見方があって、私はそれを大切だと思ってます。

1995年1月17日に関西をおそった阪神・淡路大震災では6,434名の方がなくなりました。
当時私は12歳で、東京にいました。神戸の知り合いはいませんでした。

中学受験では時事問題が出てくることがままあるので
事件が起きないといいなと漠然と思っていたのを思い出します。

阪神大震災が起きたとき、関西の小学生はどうだったのだろうとか
心配すらしていなかったことをいま書きながら思い出しました。
灘を受ける受験生のお母さまが子どもの受験について情報を集めたお話をみて
非常に心が痛みました。
http://blogs.yahoo.co.jp/maikokyoko/8407108.html

そんな話で済まないのは重々承知なのですが、それでも
ただわかるのは、自分の行動を変えることは自分しかいないし
それは決してすぐにできることでないけれど
できるようになったときに、自分の未来に進んだときに
ようやくつらいことはすこしずつ離れていくのだと
むーさんの詩は教えてくれるように感じます。

目をつぶると荒野が見える日々が今も私には続いています。
妄想という人がいたら私は否定できます。
いつか自分の心象に花が咲いてほしいと思いつつ
今の自分ではだめだ。未来の自分もだめだと言い聞かせる日が
ふたむかし続きました。

「センチメンタルに、じゃあね!」
と言えるかどうかわからないというのではなく
じゃあね!というために前に進もうと思っています。
きっと、身近な方がなくなった人も、
生きてくれたお子さんや、または友達のことを考えて生きていらっしゃるように。

自分が生きることが生きることのなかった人のためだと偽善者みたいにうそぶける日を信じて

作者について


川島むーさんは大阪で活動されている詩人であり女優です。
詩のボクシングをご覧になったことがある方なら、彼女をご存知かもしれません。
大阪、神奈川の各地の大会で優勝し、朗読詩人としてのライブ活動を展開しています。

2月19日に新宿 芸能花伝舎で開催される
ポエトリースラムジャパン日本大会、これは優勝するとパリで行われる世界大会に出場できるのですが
川島さんは大阪代表として出演されます。よかったら躍動する小さな詩人をご覧ください。

川島むーのお茶祭り日記
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千葉詩亭 第43回 7周年 2017年12月18日(日) 18:00開演

千葉県千葉市でポエトリースラムW杯に出場した大島健夫さんと
隔月第3日曜日に開催してきた朗読会、千葉詩亭、次回で7周年となります。
12月18日(日)17:30開演18:00スタート
場所は千葉駅徒歩10分 Treasure River Book Cafeとなります。
http://treasureriverbook.web.fc2.com/
料金は1ドリンク付き1000円、さらに1000円追加でフードがつきます。

今回はオープンマイク祭りとして開催します。
通常の飛び入りの朗読は5分間ですが
500円追加料金をいただくことで10分の飛び入りが可能となります。
10分パフォーマンスされたい方は予約いただけると嬉しいです。
ぜひお越しください

詩誌『て、わた し』

海外の詩と日本の詩の出会う詩誌『て、わた し』を作りました。
年4回の発行予定です。
今回はとりあげた海外の詩人はジョセフ・ミルズさん。黒人のこども二人をひきとって育てる家族の詩を4篇訳しました。
希望される方は私にTwitterまたはお問合せにてお問い合わせください。
500円となります。

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