「良書とは何か」ということはよくわかりませんが
人生の中で、長い時間にわたって寄り添ってくれる本はあります。
岩波の新書や文庫の、林家辰三郎の「歌舞伎以前」や「枕草子」は、今も愛読書です。
半世紀以上、読んでいることになります。
その割に、内容を熟知しておらず、気分的な「読書子」ではあります。
インド音楽に出会い楽器そのを演奏しながらも、いつも日本やアジア全体の文化史など、自分が生きてきた暮らしの中に息づいている文化の土壌、根っ子をさらに知りたいと思っています。
そうした視点をもつことで、自分の根っ子にある文化的な大切なことを観ることができる。
また「外国の華やかな文化」への憧れというのも大事ではあるけれど、それだけのことだと、音楽の中にある大切なことを見失ってしまいそうで。
ラビンドラナート・タゴール「少年時代」
タゴール自身の幼年〜青年時代の回想録のような作品です。
ベンガル語がわからないのにタゴールソングを聴き慣れてきて、タゴールの詩のリズム感や抑揚、韻などが何だか面白いように感じてきたこの頃。
そんなタゴール自身の子供時代の想い出を中心に、子供に戻ったような瑞々しい文体で書かれています。
そして、その文体の中にあるリズム感が心地よいです。
土地に根差した土着的な調べや物語。
タゴール少年が眼を輝かせて、わくわくしていきたこと。
小鳥のさえずりのように語られます。
本編だけではなく「解説」がとても充実しています。
タゴール家の歴史やタゴールの祖父、両親、兄弟などが丁寧に説明されています。
こちらだけでも一読の価値があります。
久々の良書に出会えました。
美しい装丁です。出版社. めこん ・ 発売日. 2022/10/16
タンブーラの修理で「駒」を買い届けていただいた大西正幸さんの訳です。