オルガンのパイプ

2006年04月28日

フルー管の調律(4)

コーン閉コーンチューニングと呼んでいます。
前回お話ししたリングによる調律は、温度の変化などにすばやく対応できて、簡単に短時間に行う事ができますが、長期的に見れば、リングが振動やその重みで下がってきて狂う事もあると言う欠点を持っています。

コーンチューニングはパイプの先を、工具を使ってラッパの様に広げたり、逆につぼめたりして音高を調律します。

コーンこれがその工具、チューニングコーンです。パイプの太さに合わせてたくさんのサイズのものがあります。
写真の下の側、円錐形になっている方を下にして、パイプの先を包む様にとんとん叩いていくと、柔らかい鉛のパイプは、少しづつすぼまって上の写真の様になります。音低は低くなっていきます。

気温の変化以外には調律が狂う事はないので、長い間調律作業者の仕事が残ります。

オルガンはとても寿命の長い楽器です。中世から現在まで、鍵盤楽器ではモノコード、クラヴィコード、チェンバロからピアノが発明され、また、ピアノも進化、音域や鍵盤数もどんどん増加します。もちろん、同様に他のオーケストラ楽器の発達しました。
その長い間には各地、各時代で音楽に合わせてピッチや調律法が変化していきましたが、歴史的な古いオルガンたちはこれらの変遷をじっと見続けてきました。この様なほぼ普遍的なパイプのおかげで、現代の研究者はいにしえの時代の音楽をのぞき見ることができるわけです。


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2006年04月24日

フルー管の調律(3)

木管スリット木管パイプの内、16フィート以上の長いパイプの開管で多く使われている方法で、考え方としては金管のロールと同じです。

これは横浜のルーシーのペダル、プレスタント32フィートのパイプです。

長めに切ってあるパイプに最初から切り込みを入れてあります。そこにシャッターの様に切り込みの深さを調整するドアーがついているわけです。ドアーはねじで固定されています。
ねじを少し緩めてドアーを動かして調律した後、又、ねじを締めて固定します。もちろん、低音の周波数はとても低く、また、木管パイプは温度や湿度の変化で調律が狂うことはあまり無いので、ほとんどこれを触る事はありません。

調律スライドと呼んでいます。

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2006年04月18日

神戸のオルガンの整音変更

少しご無沙汰になってしまいましたが、神戸のオルガンの進捗状況です。

2月のはじめに建て終わった終わってから約2ヶ月半が経ちました。慎重に礼拝堂の音響にあわせて調律をしながら音色を作っていきます。以前もお話ししましたが、これはフィスク社のこだわりです。「工房で整音したパイプを組み立てて調律して終わり」なんて事は絶対しません。

今回の神戸のオルガンの場合も、少しずつ整音が進んでいくにつれて、若干の礼拝堂の大きさや音響特性に合わない所がでてきました。オルガニストからの意見や要望を良く聞き、又、建物の音響設計の方にもご協力いただいてディスカッションを重ねました。

0418簡単に言うと建物の音響特性の理由で、ある音域、テノールだけが少し響き過ぎ、ムーディーに鳴りすぎる様です。1ヶ月前からフルーヴォイサーのスティーヴ・コワリション氏が来日がこれに対応しています。8フィートを少しシャープな音色にするためにパイプの寸法を変更しました。

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2006年04月16日

フルー管の調律(2)

調律ロールこれは調律ロールと呼ばれています。

金管の開管パイプの後ろを帯状に切り欠いて、コンビーフの缶詰を開ける時の様に、くるくると回してながら巻き取り管体を短くしています。小さいパイプでも良く使われる方法ですが、からくりが表から見えない為、デザインが重視される前面パイプには特に効果的です。

オルガンの前面に立っている前面パイプは、たいていデザイン重視で足を長くしてみたり、胴体も実際の長さよりも長く作ったりしていますが、調律ロールはこのデザインを全く変える事なく後ろで調律することができます。

前回のリングによる方式と今回のロール方式の相違点は、前者がパイプを正規の長さよりも短く切って調整するのに対して、ロール式は長めに作って調律する点です。

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2006年04月11日

フルー管の調律(1)

オルガンのパイプは発音方式でフルー管とリード管の二種類に分けられますが、これからしばらくの間、フルー管の調律のお話です。

フルー管とは皆さんがご存知の縦笛(リコーダー)と同じ歌口を持つ笛のことです。吹き込まれた息が歌口の狭い隙間から平たい空気の壁になって押し出されてきます。それが歌口上部の上唇にぶつかって笛の内側に巻き込む空気の渦ができ、これが笛全体で振動をおこして音が鳴る仕組みです。

フルー管これがフルー管。まったく縦笛と同じものが逆さまにしてチェストの上に立ててあります。縦笛と違う所は指で押さえる穴が空いていない事だけですね。
これが笛の音高を決めるヒントです。笛の音高はパイプの長さによって決められます。長いパイプは音が低くなり、短いパイプは高くなります。オルガンのパイプは一音に対して一本の笛が鳴りますが、リコーダーの場合は一本の笛でたくさんの音低を作らなければならないので、指で穴を塞いだり開けたりしながら、管の長さを変えている訳です。

パイプオルガンの調律も全く同じ原理です。管の長さを変えて音高を決めますが、パイプの形状や種類によってそのやり方が少しずつ違います。

調律リングいちばん分かりやすい調律リングによる調律です。正規の長さよりもすこしだけ短めに切ったパイプに、板を丸めて作ったリングをはめています。このリングを上にあげれば、パイプの長さが長くなったのと同じ効果により低い音が出ます。下に下げればその逆です。この方式の最大のメリットは、とても簡単に素早く、パイプにダメージを与えることなく調律を変えられることで、コンサートで使われるポジティフオルガンの金管などに使われて、ステージの温度の変化に細かく対応しながら調律します。

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2006年04月07日

リードの製作(8)

前回お話しした、「調律ワイヤーで音色を決めてから、共鳴管の長さを切って音律を決める」というのは順番が逆に思われるかも知れませんが、通常の調律の時とパイプを製作している時は違います。
いちばん美しい声で発声すると自ずと音程ができるんです。つまり、良いオルガンの良く整音されたリード管は調律を奇麗に揃えれば、音色も揃います。

トランペット
これで一応、リードパイプの完成です。一応と言いますのはフィスク社は必ず納入先の現場で整音する事を頑なに守っているからです。今回の神戸のオルガンは4週間で建てましたが、その後、整音に16週間ととても長い時間をかける予定で製作しています。これはあくまでも納入先の音響にあわせて音色を決めたいからで、工房で作った音色が必ずしも納入先の空間にマッチするとは限らないからです。

冗談でじょきじょき切るなんて書きましたが、もちろん少し長めにしてあります。現場に持っていって「短かった!」なんて、泣きながらツギハギだらけのパイプにするのでは困ります。

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2006年04月03日

リードの製作(7)

リード製作10前回お話したリードのチューニングワイヤーの加減による音程と音色の変化は、完全にリゾネーター(共鳴管)の長さに関係します。
リゾネーターが長い程、音程は低くなり音色はソフトになります。逆に短くなると音程は高くなり音色は明るくなります。

まず始めにチューニングワイヤーで求める音色を作り揃えていきます。全音域、オクターヴ内、あるいはとなり同士の音色を聴きながら、又、リードの反り具合による音色の違いをもう一度直したりしながら揃えます。これで、全鍵盤のリードの音色や発音が揃って、チューニングワイヤーの位置が確定しました。

次にチューニングストップ(調律をするための基準になる笛、通常はプリンシパルの4フィート)を入れてリード管を同時に鳴らしてみます。すると現時点では当然ですが、リード管の音程はとてもずれていることが分かります。つまり、これがリゾネーターの長さを決定する音程のずれと言う事になります。ヴォイサーは、このずれを感覚的に判断してリゾネーターを切って、今度は音程を決めていく訳です。

これが、又、大変です。ただでさえ行ったり来たりのいらいらする作業なのに、切りすぎたら大変!と、ドキドキしながら少しずつ作業していたら忍耐力は限界を超えることになります。ベテランのヴォイサーのマイケルは「どんどん切っちゃえ〜っ」って印も付けず目検討でおかまい無しにじょきじょき切ります。

あまりの忍耐を必要とする職業病なのか、リードヴォイサーはちょっと行っちゃってる人たちです。(ないしょ)

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2006年04月01日

リードの製作(6)

reed voicing
リードの反りを上手に作る事が出来たら、今度はリード管の整音に入ります。もちろん、リード管の整音はさまざまな要因によって成り立つものですから、順序通りにやって終わりと言うことではありません。少しずついろいろな角度から調整していきますので、一つの事にあまり深入りしすぎて客観的な判断力を失うと良い仕事になりません。しっかりとしたイメージと「いい加減」でやめておく判断力の両方が必要です。

反りがうまく出来たと仮定すれば、調律ピンは自ずときれいに発音する場所に定まります。
音を鳴らしながらいちばん上からピンを下へ動かしていくと、最初のうちはひっくり返った裏返った音だったものがだんだん低くなっていき、正規の音程域にいきなり入ります。裏声が表声になるわけです。この表声になってた瞬間のポイントからほんの数ミリがチューニングピンの調整ポイントです。

この数ミリの中でピンが上にあるほどリードの有効振動長は長くなる訳で、音程は低く音色は明るくやかましくなります。逆に下に下げていくほど音程は高くなり音色はソフトになります。

余談ですが、このことはコンサートなどでリード管の調律を行う時にとても大切な事で、調律をする人の腕の見せ所でもあると思います。調律ピンのわずかな加減で音程、音色、発音などを微妙に調整することができますので、時間がなくて発音や音色の不具合を治す事が出来なくても、上手に全体をある程度揃えることができます。もちろん音に対する音楽的、科学的、両面の感性と訓練が必要です。


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2006年03月23日

整音用チェスト

voicingchestヴォイサーの部屋には整音をする為の特別なチェストが用意されています。このチェストは調律の時に基本にするためのプリンシパル4フィートが並んでいる以外は2〜3列分しかありません。音を聴いては抜いて作業台に持っていき整音する。出来たら又戻して音を聴く。この繰り返しですので、なるたけ作業性良くスピーディーに仕事ができる様に、キャスター付きでどこにでも移動できる様になっています。

実際にオルガンが組み立て終わって現地での本整音(最終整音)する時は、ヴォイサーはオルガンの2階や3階部分で仕事をしますので、自分で音を鳴らす事ができません。そこで音を鳴らす為に下のコンソールで鍵盤を押してくれるお手伝いの人が必要なのですが、この整音用チェストには直接鍵盤やストップが付いていますのでヴォイサーは一人で楽に素早く仕事をすることができます。

もちろん、この下にはふいごも付いています。チェスト内の風の量は、同じビルダーのオルガンでも、あるいは同じオルガンの中でも、ヴェルクや規模によってそれぞれ風圧を変えてデザインされています。毎週いろいろなパイプの整音をしなければならないので、この整音用チェストのふいごは簡単に風圧が変えられる様になっています。

実際のオルガンのパイプの配列は、全音で並んでいたり3度で並んでいたり様々ですが、この整音用チェストのパイプの配列は作業性を考えて、向かって左側から順番に半音階で並べられています。

良い整音には正確な調律が絶対条件ですので、チューニングストップが狂ってしまったら大変です。そのためヴォイサーの部屋だけは厳密な空調管理がされています。もちろん、根気と集中力のいる仕事ですから誰でもが自由に出入りする事はしませんので、寒い冬や、暑い夏の日などは特別室ということになりますので、どらは見つからない様にそっと隅っこで休憩します。

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2006年03月20日

リードの製作(5)

リード製作8 全ての部品が出来上がって最終的に組み立てられたところで、いよいよリードに反りをつけて音を出します。
 工房で整音をする為に特別に作られた鍵盤付きチェストに、組み立てたリードパイプを全部並べてから、1本ずつ分解してリードを取り出し反りをつけていきます。ブーツ部を取り出し、分解してリードを抜いて、反りづけをして、又、組み立てて鳴らしてみて音を聴いて、だめなら又分解して、、、とても根気のいる作業です。

 いろいろなやり方がある様ですが、フィスク社では一番確実性があるであろうカービングブロックを使ってしごきます。ブロックはたくさんの種類のカーブ曲線を持ったものがあり、リードの長さや厚み、種類などを考えて適したものを選び使います。カーブのついたブロックの上に、手前に根元、奥側が先端になるようにリードを置き、左手の人差し指で手前の根元部分を軽く押さえます。そして右手に持ったバーニッシャー(キサゲ)や丸い金属棒を使って、上から力をかけながら手前から奥へ向かってしごいていきます。押さえる力のかけかたを、弱く強く弱くと言った様にうまくグラデーションをつけないと奇麗な反りになりませんし、キサゲを出来る限り直角を保たないと左右曲がったカーブになってしまいます。最初はカーブの大きいブロックでしごいたら、次はもう少しきついカーブのもの、といった具合に徐々に美しい反りを作っていきます。

 もちろん、見た目では到底わかりません。目には見えないぐらいの微妙なそり具合やひずみで音色や鳴り方が変わってしまいます。何回も何回も組み立てては音を聞いてみて、カーブをどの様につけるか判断します。とても経験にいる作業ですし、フルー管のようにセオリー通りにいくとは限らないのがリード管の整音です。時には、悩んだ挙げ句「セオリーと真反対の事をやったらすばらしく良い音ができた」なんて事もあります。忍耐の勝負です。

リード製作9 ヴォイシングの作業台に工具が並んでいます。左から、リゾネーターを切る時にけがく(印の為の線を書くという職人用語)工具、1ドル札(リードのよごれを拭き取るのに使います。紙質と表面のざらざら感が具合良いんです)、リードをしごく丸棒、カービングブロック、ヤスリ、キサゲ、パイプを切るはさみです。上の方にかんなと金属磨きも見えます。



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