●高馬と安馬、どっちがいいのか?
とりあえずこの病気を治し、収支を改善するために私がやったのは、口数をそろえることでした。口数が違うとポートフォリオが上手く組めないので、社台の1/40を基準にし、キャロットでは10口、ユニオンでも1/40か1/50になるように揃えました。その最大の狙いは、この過程を通じて等閑で安易な検討での出資を自ら戒めるためでした。
最終的には社台(+GI)以外を全て退会(情報を均質化して処理可能にするため)し、馬の総数を厳選して今に至ります。おかげで年間出走数が30近くに減り、馬が走らない週末が常態化しています。その代わりに収支は大幅に改善され、「欲しい欲しい病」は寛解しています。
ですが、趣味として十分に楽しめているはというと、もっと楽しんでる方を見て羨ましく思う次第です。今回の新入会は、こうした極めて困難でアンビバレンツな課題への挑戦です。
口数均一化とクラブ整理の次に、収支を念頭にしたビジネスモデルを作るため、高馬と安馬のどちらが良いのかを検討しました。それが10年くらい前なのですが、それを社台の新入会にあわせてデータ更新してみました 私は一口馬主DBの有料会員に入っていないので検討の為のデータが手元に無いのですが、散財ぜろの一口馬主奮闘記2さんのブログに面白いデータがありましたので、それを加工させていただいて分析しました。
これも、野球のローボールヒッターや悪球打ちの様に、得意なコースは人によって違います。私はストライクゾーン(特にど真ん中)以外を打つのは苦手なので、自己分析を含んでこういう結論を出してますが、人の楽しみ方を否定するものでは毛頭ありません。
●安馬のほうが馬代金回収率は高い

ゼロさんが、サンデーの現3歳以上の5世代データを出してらっしゃったので、それを使うことにします。そこでは、馬代金別の平均獲得賞金が紹介されています。そして馬代金との比較での回収率を見ると、「安馬のほうが回収率が高い」というデータを一口馬主DBは語ってます。(5000万円台はサンプルが少なくてイレギュラーになってるので無視しました:本来はこれはデータ処理の研究倫理的にはミスコンダクトですが、これは学術研究じゃないので・・・)
獲得が予想される賞金は、馬代金が高いほうが多いです。しかし、2000万円以上になると、期待値が大して変わらなくなります。なので馬代金を高くしても、その増加分の賞金を獲得できないため、収支は悪化していきます。以上に基づきこの統計は、2000万円台の馬に出資するのが収支を良くすると教えてくれます。
これは3年分だけ、しかもサンデーだけのデータなので、有る意味不完全です。それでも、大物が多いとされるサンデーですら、6000万円以上の高馬の回収率が1000万円台の馬に劣るというのは驚きだと思います。そしてこの統計に基づくなら、1000万円台や2000万円台の馬に分散出資したほうが、総体としての収支が良くなると思えます。6000万円以上の高馬は回収率は悪いです。
●この分析の欠点
皆さんも初見でわかったでしょうが、この結論には致命的な欠陥があります。それは、世界最高峰を誇る日本の高い預託料を無視してることです。厩舎にはいれば、滞在競馬になれば月100万円を超えるときもあります。おまけに社台Gの育成施設は凄い高いので、休養中ですらかなりの費用が発生します。資金に余裕があり、「ランニングコストは無視できる」という方は別ですが、全体として収支を考える場合には馬代金と維持費を合算して考える必要があります。

そのために、以前にブログを書いた時に調べたデータを基にしました。これは、たまたま2012年産の社台Gのクラブ募集馬200頭について、定年まで走りぬく率を調べたものです。これに、未勝利引退率を絡めれば、預託料について次の3つのグループが出来ます。(勿論早期引退等の例外はありますが)
ひとつは「未勝利引退」、3才の10月までに引退しますので、預託料は2才1月からの22か月分です。クラブ会費や保険料等の負担もあるので、月の預託料は61万円で計算しています。
二つめが「中途引退」で、未勝利は勝つものの条件級で頭打ちになったり、故障したりで途中で引退するケースです。ここの在籍月数を本来は正確に調べるべきなんでしょうが、データが無いのでざっと44ヶ月で計算しました。4才10月までの預託料分になりますが、あまり厳密な根拠はありません。最初のグループと最後のグループとの割合で、切り良く設定しました。
三つ目が「完走」グループ。牝馬なら6歳3月、牡馬は更にその先まで競走生活を全うしたグループです。牝馬だと預託料は最大で54ヶ月分ですが、牡馬は更に長く走る馬もいるので66ヶ月で計算してあります。これもデータに基づく厳密な設定ではありません。
それぞれの在籍月数に61万円をかけ、更にそれぞれのグループの出現率をかける事で一頭あたりの平均預託料が求められます。すると、約2072万円というデータが出ました。なので、馬代金とは別にこの費用が発生します。これは高馬も安馬も均等で、頭数が増えるとそれに比例して増加する費用になります。これを考慮に入れて、募集金額別回収率を再度、みてみます。
(4000万円以下の価格帯は200万円単位で価格がついてますが、ここではカテゴリー化の為に一律に1000万円単位で切り上げています。なので、ここでの精査が勿論必要ですが、今回は時間が無いのでオミットしました。6000万以上についても本来は平均価格を求める出来でしょうが、データが無いので平ざっと8000万円で計算しました)
●募集価格別回収率

すると、ここで逆転現象が起きます。馬代金比で回収率が優秀だった1000万円台ですが、それでは高い維持費を支弁できず、かなり回収率が悪化します。これはマイナスサムゲームですので、頭数を増やせば増やすほど、収支は悪くなっていきます。(ここでは6-8着分の出生奨励金と各種手当てが入って無いので、この数字よりは少し改善されます(追記))
一方、馬代金回収率では数字の悪かった6000万円以上の価格帯は、維持費を考慮に入れた実質的な総体としての収支では、もっとも優れた数字を出します。(それでもマイナスですが・・・)
マイナスサムゲームで収支をプラスにするには、GI級の大幅プラスの馬(確率異常)を引くしかありません。しかし、機会を増やす(頭数を増やす)と大数の法則での「回収率」に収斂して行っちゃいますから逆効果です。
そして、どの価格帯がGI級を多く出すかといえば、答えは明らかだと思います。
●実質収支を改善するには
よって、確率的に結論は明白です。収支を良くする最善手は、このゲームに参加しないこと。そしてもし参加するなら、ゆらぎ発生率の一番高い高馬に出資し、当たりが出たらヒットandアウェーで速やかに離脱することが次善手です。即ち、高馬を買って頭数を少なくすることが、収支的には最善になるわけです。
ただ、これは人によって可処分所得も違うので、実施できるかは人によって違います。有名な「マーチンゲールの法則」も、当たりが来るまでどれまで絶えられるかに左右されます。その意味では、「高馬を買い続ける」という手段を無理なく実現できる「クラブ選択」が重要だと思います。
更には、そもそも「これは趣味なので収支を考える必要があるのか?」という問いも、人によって違う訳です。人と比較したり、競争するために一口をやるわけでは無いですから。ただ、この趣味を「長く」「安定」して続けれる資源には個人差が大きく、その「分」を超えてでも「長く」「安定」してやろうとすると、こうした収支に気を配らねばになっちゃいますね。
また、ここでは6000万円以上を高馬といってましたが、ここ数年の社台の価格高騰でこれはもう違います。今では、3000万以下=「低価格帯」、それ以上6000万まで=「中価格帯」、「高価格帯」は今では8000万円以上位の感覚が妥当でしょう。なので、高価格帯で一発を狙う路線も難しい昨今です。
●初年度を迎えるに当たって
以前にも書いたことがありますが、この趣味を安定して長期に亘って楽しむには、己を厳しく戒め、せっかく寛解している「欲しい欲しい病」を再発させないことが肝要だと思います。馬が出ない寂しさに耐え、毎年出資を諦めてでも、高価格帯を選んだほうが期待値は高く、私の経験では収支を改善します。(先にも書いたように、これは人によって得意コースが違うので、自分が向いていて、無理なく出来る予算で行えばいいです)。そのためには、「馬が出ないで寂しい」という煩悩にどう打ち勝つか、「己自身との戦い」が肝要です。アリストテレスがThe hardest victory is over selfといっているように、これは本当に難しいことです。
今回、個人会員として入会することで、安易に頭数を増やすリスクが高まりました。予算制約がある中で、無理に2頭、3頭取ろうとすると、低価格帯(私の最も苦手のコース)に手を出して凡退し、打率を下げることとなるでしょう。そのためにも、このデータを常に頭に置いて自己を厳しく戒め、一頭入魂のつもりで行こうと思います。
とりあえずこの病気を治し、収支を改善するために私がやったのは、口数をそろえることでした。口数が違うとポートフォリオが上手く組めないので、社台の1/40を基準にし、キャロットでは10口、ユニオンでも1/40か1/50になるように揃えました。その最大の狙いは、この過程を通じて等閑で安易な検討での出資を自ら戒めるためでした。
最終的には社台(+GI)以外を全て退会(情報を均質化して処理可能にするため)し、馬の総数を厳選して今に至ります。おかげで年間出走数が30近くに減り、馬が走らない週末が常態化しています。その代わりに収支は大幅に改善され、「欲しい欲しい病」は寛解しています。
ですが、趣味として十分に楽しめているはというと、もっと楽しんでる方を見て羨ましく思う次第です。今回の新入会は、こうした極めて困難でアンビバレンツな課題への挑戦です。
口数均一化とクラブ整理の次に、収支を念頭にしたビジネスモデルを作るため、高馬と安馬のどちらが良いのかを検討しました。それが10年くらい前なのですが、それを社台の新入会にあわせてデータ更新してみました 私は一口馬主DBの有料会員に入っていないので検討の為のデータが手元に無いのですが、散財ぜろの一口馬主奮闘記2さんのブログに面白いデータがありましたので、それを加工させていただいて分析しました。
これも、野球のローボールヒッターや悪球打ちの様に、得意なコースは人によって違います。私はストライクゾーン(特にど真ん中)以外を打つのは苦手なので、自己分析を含んでこういう結論を出してますが、人の楽しみ方を否定するものでは毛頭ありません。
●安馬のほうが馬代金回収率は高い

ゼロさんが、サンデーの現3歳以上の5世代データを出してらっしゃったので、それを使うことにします。そこでは、馬代金別の平均獲得賞金が紹介されています。そして馬代金との比較での回収率を見ると、「安馬のほうが回収率が高い」というデータを一口馬主DBは語ってます。(5000万円台はサンプルが少なくてイレギュラーになってるので無視しました:本来はこれはデータ処理の研究倫理的にはミスコンダクトですが、これは学術研究じゃないので・・・)
獲得が予想される賞金は、馬代金が高いほうが多いです。しかし、2000万円以上になると、期待値が大して変わらなくなります。なので馬代金を高くしても、その増加分の賞金を獲得できないため、収支は悪化していきます。以上に基づきこの統計は、2000万円台の馬に出資するのが収支を良くすると教えてくれます。
これは3年分だけ、しかもサンデーだけのデータなので、有る意味不完全です。それでも、大物が多いとされるサンデーですら、6000万円以上の高馬の回収率が1000万円台の馬に劣るというのは驚きだと思います。そしてこの統計に基づくなら、1000万円台や2000万円台の馬に分散出資したほうが、総体としての収支が良くなると思えます。6000万円以上の高馬は回収率は悪いです。
●この分析の欠点
皆さんも初見でわかったでしょうが、この結論には致命的な欠陥があります。それは、世界最高峰を誇る日本の高い預託料を無視してることです。厩舎にはいれば、滞在競馬になれば月100万円を超えるときもあります。おまけに社台Gの育成施設は凄い高いので、休養中ですらかなりの費用が発生します。資金に余裕があり、「ランニングコストは無視できる」という方は別ですが、全体として収支を考える場合には馬代金と維持費を合算して考える必要があります。

そのために、以前にブログを書いた時に調べたデータを基にしました。これは、たまたま2012年産の社台Gのクラブ募集馬200頭について、定年まで走りぬく率を調べたものです。これに、未勝利引退率を絡めれば、預託料について次の3つのグループが出来ます。(勿論早期引退等の例外はありますが)
ひとつは「未勝利引退」、3才の10月までに引退しますので、預託料は2才1月からの22か月分です。クラブ会費や保険料等の負担もあるので、月の預託料は61万円で計算しています。
二つめが「中途引退」で、未勝利は勝つものの条件級で頭打ちになったり、故障したりで途中で引退するケースです。ここの在籍月数を本来は正確に調べるべきなんでしょうが、データが無いのでざっと44ヶ月で計算しました。4才10月までの預託料分になりますが、あまり厳密な根拠はありません。最初のグループと最後のグループとの割合で、切り良く設定しました。
三つ目が「完走」グループ。牝馬なら6歳3月、牡馬は更にその先まで競走生活を全うしたグループです。牝馬だと預託料は最大で54ヶ月分ですが、牡馬は更に長く走る馬もいるので66ヶ月で計算してあります。これもデータに基づく厳密な設定ではありません。
それぞれの在籍月数に61万円をかけ、更にそれぞれのグループの出現率をかける事で一頭あたりの平均預託料が求められます。すると、約2072万円というデータが出ました。なので、馬代金とは別にこの費用が発生します。これは高馬も安馬も均等で、頭数が増えるとそれに比例して増加する費用になります。これを考慮に入れて、募集金額別回収率を再度、みてみます。
(4000万円以下の価格帯は200万円単位で価格がついてますが、ここではカテゴリー化の為に一律に1000万円単位で切り上げています。なので、ここでの精査が勿論必要ですが、今回は時間が無いのでオミットしました。6000万以上についても本来は平均価格を求める出来でしょうが、データが無いので平ざっと8000万円で計算しました)
●募集価格別回収率

すると、ここで逆転現象が起きます。馬代金比で回収率が優秀だった1000万円台ですが、それでは高い維持費を支弁できず、かなり回収率が悪化します。これはマイナスサムゲームですので、頭数を増やせば増やすほど、収支は悪くなっていきます。(ここでは6-8着分の出生奨励金と各種手当てが入って無いので、この数字よりは少し改善されます(追記))
一方、馬代金回収率では数字の悪かった6000万円以上の価格帯は、維持費を考慮に入れた実質的な総体としての収支では、もっとも優れた数字を出します。(それでもマイナスですが・・・)
マイナスサムゲームで収支をプラスにするには、GI級の大幅プラスの馬(確率異常)を引くしかありません。しかし、機会を増やす(頭数を増やす)と大数の法則での「回収率」に収斂して行っちゃいますから逆効果です。
そして、どの価格帯がGI級を多く出すかといえば、答えは明らかだと思います。
●実質収支を改善するには
よって、確率的に結論は明白です。収支を良くする最善手は、このゲームに参加しないこと。そしてもし参加するなら、ゆらぎ発生率の一番高い高馬に出資し、当たりが出たらヒットandアウェーで速やかに離脱することが次善手です。即ち、高馬を買って頭数を少なくすることが、収支的には最善になるわけです。
ただ、これは人によって可処分所得も違うので、実施できるかは人によって違います。有名な「マーチンゲールの法則」も、当たりが来るまでどれまで絶えられるかに左右されます。その意味では、「高馬を買い続ける」という手段を無理なく実現できる「クラブ選択」が重要だと思います。
更には、そもそも「これは趣味なので収支を考える必要があるのか?」という問いも、人によって違う訳です。人と比較したり、競争するために一口をやるわけでは無いですから。ただ、この趣味を「長く」「安定」して続けれる資源には個人差が大きく、その「分」を超えてでも「長く」「安定」してやろうとすると、こうした収支に気を配らねばになっちゃいますね。
また、ここでは6000万円以上を高馬といってましたが、ここ数年の社台の価格高騰でこれはもう違います。今では、3000万以下=「低価格帯」、それ以上6000万まで=「中価格帯」、「高価格帯」は今では8000万円以上位の感覚が妥当でしょう。なので、高価格帯で一発を狙う路線も難しい昨今です。
●初年度を迎えるに当たって
以前にも書いたことがありますが、この趣味を安定して長期に亘って楽しむには、己を厳しく戒め、せっかく寛解している「欲しい欲しい病」を再発させないことが肝要だと思います。馬が出ない寂しさに耐え、毎年出資を諦めてでも、高価格帯を選んだほうが期待値は高く、私の経験では収支を改善します。(先にも書いたように、これは人によって得意コースが違うので、自分が向いていて、無理なく出来る予算で行えばいいです)。そのためには、「馬が出ないで寂しい」という煩悩にどう打ち勝つか、「己自身との戦い」が肝要です。アリストテレスがThe hardest victory is over selfといっているように、これは本当に難しいことです。
今回、個人会員として入会することで、安易に頭数を増やすリスクが高まりました。予算制約がある中で、無理に2頭、3頭取ろうとすると、低価格帯(私の最も苦手のコース)に手を出して凡退し、打率を下げることとなるでしょう。そのためにも、このデータを常に頭に置いて自己を厳しく戒め、一頭入魂のつもりで行こうと思います。
コメント
コメント一覧 (2)
今回の話題も参考になりました。
私はシルクの会員ですが、会費はサンデーと同じ価格です。
この時点で、500口のクラブは経費的には、物凄く不利です。
故に私は一頭に複数口を出資し、頭数は絞っております。
リスクは高くなりますが、サンデーなどを経験した結果が今の出資方法です。
社台•サンデーでは、昔は保証制度があり、未勝利や未出走は次回以降の出資馬に利用できました。この制度には、かなり助けて頂きました。
今は出資者のリスクが大きく、厳しくなりました。
長文をお読みいただき、ありがとうございます。
お互い、同じ結論に至ったようですね!
クラブ会費はバカにならないので、私は1/40に揃えましたし、最終的にはクラブリストラをしました。ただこれも「収支よりも馬の出る楽しみ」という方には全く別の結論が出るでしょうね。人それぞれです。
因みに金融庁勧告で、社台サンデーも補償はなくなりました。
昔は社台の補償は厚かった(マイネルほどじゃないですが)ので、助かりました!
あっちのブログに書いたように、特に高馬は。
(OW用はまだ補償ありますが、高馬にはいけないのであまり意味無いです)
馬代金は高騰し、補償はなくなり、ダイナース決済のポイントもなくなり・・・
嫌な時代になりましたね