●ワイルドカードとしてのOW用とその資格緩和

高実績の達成と維持には、ファストパスがありました、OW用です。2000万程度の当時としての中価格の堅実そうな馬を毎年買えば、それだけで200×4で800万の実績になります。クラブと併せれば、2000万近くの実績が比較的無理無く(走らないだろうなぁと思う馬への出資≒「お布施」をせずに)到達可能でした。そしてOW資格を持つ会員も少なかったですから。
 しかし、⇒以前に書いたようにOW資格要件が緩和され、資産や収入の相互補完が可能になりました。その結果、上記のような無理せずとも2000万近くの実績を持つ会員が増加します。それに伴い、必要実績も天上知らずに高騰していきます。勿論、以前でもグルヴェイグやリヤンドファミユみたいに2000万近い実績を要し、会員の殆どがJRA馬主という馬もいましたが、本当に特別な馬でした。しかし最近では、OW資格要件緩和もあって、1700万でも落ちちゃうような馬が毎年出現するようになりました。

 

●採算ラインを超えた価格高騰

しかし、この以前までの流れは昨年辺りから急に大きく変わりました。それは偏に募集価格高騰によります。善哉さん時代の募集価格は、回収可能な範囲内でした。サッカーボーイやダイナカールが1000万未満で売られていた時代は別にしても、ダイナガリバーとかマイオンリースターなどの例外を除けば牡馬の4000万円はかなりの高馬でした。2400万円の募集馬からも多くのGI馬が誕生しており、2400万円が「中の上」、3000万円から上が「上」って感覚でした。
 21世紀初頭から三兄弟時代の色が強まり、市場原理が入ってきます。それでもサンデーサイレンス活躍馬のジュニュイン、ステイゴールド、ダンスインザダーク、バブルガムフェローなどでも4000万がmaxでした。その後、SS牡馬が高騰しても牝馬は基本的に3000万円台(ファビラスキャットなどの例外でも4000万)に収まっていました。サンデーサイレンスに対する絶大の信頼があったので、会員もある意味納得してSS産駒に出資してました。
 なので以前に比べて高く感じても、価格回収可能性は高かったです。だからこそ、実績を積むには頭数を増やさざるをえず、なかなか大変(一頭当たりの単価が馬鹿高くなかったので)だった訳です。それでも実績700-800万あれば高実績で、1000万以上なら安全圏でした。

その後、SSに併せて上昇した募集価格は、SS亡き後も下がりませんでした。ピーコック・ワイズマンの「転移効果」みたいです。SS死後もタキオン、ダンスインザダークに平気で5000万円以上の値段が付くようになり、そこからキャプテントゥーレなどが出ることで価格が固定されます。そしてディープインパクトが登場し、更なる高騰を生みました。今年⇒の記事で書いたように、成績的にはまだサンデーに及ばないのに関らず、種付け料はサンデーを超える4000万。それを受けて、クラブ募集価格も上昇しました。これに好況による市場価格上昇(特にセレクトセールの影響大)を受け、クラブ募集価格が高騰しても「セレクトと比してリーズナブル」という異常な状況が生まれました。

ただ、これは需給関係に伴う価格高騰で、回収可能性を置き去りにしたものです。その結果、収支を気にする一般会員にはそっぽを向かれ(近年の高馬不振もその背景にあり)ます。高くなりすぎて1億円を突破(FUJIさんの書かれていたように、会員はここにかなりの心理障壁があります)したディープインパクト牡馬は、二位でも取れるように成りました。牧場側も「二位でとってもらうための価格」と開き直って価格付けしますが、セレクトを見るに個人馬主からの突き上げもあるでしょうからこの価格も仕方ないところがあります。しかし、これが「実績」に大きな地盤変動を生み出しました。

 

OW資格が無くても高実績の実現・維持が容易に

以上のディープインパクト牡馬の価格高騰と不人気化を受けて、従来と比して高実績維持が劇的に容易化しました。従来は一位でディープインパクト産駒を取り、二位以下で残された馬から選択せねばならなかったものを、一位でコストパフォーマンスに優れた馬(ディープインパクト牝馬もこの範疇)を選び、二位,三位でディープインパクト牡馬を採るというのが可能になりました。
 こうなると、OW資格無しでも容易に高実績を得られ、それを維持できます。その結果、先のOW資格緩和とあいまって高実績会員の数の劇的増加に繋がりました。近年のNF堀厩舎牡馬(ex ヘリファルテ、ブレステイキング、バイキングラップ)などに代表される要超高実績馬が毎年誕生する背景は、この辺りにあると思います。
 以前は700-800万あれば十分だった実績も、個別の馬匹価格の高騰と高額馬の人気薄によって1000万超の実績達成・維持が容易となり、その結果としてここの競争が激化、それが今の全体的実績のトレンドでしょう。(典型が今年のシーズアタイガー)

●今後の「実績」の価値 

そして昨年、ついに「ルビコンの川」を渡ってディープインパクト牝馬の価格が上げられます。従来、回収可能性を考えると比較的上位にあったディープインパクト牝馬。なので人気が有り、ある程度の実績も必要でした。
 しかし今年は、春のクラシックを受けてディープインパクト産駒の活力低下が疑われていました。その状況での更なる値上げ。バブル収束の失敗を見てるようなことになりました。
 結果としてシーズアタイガー人気に代表されるような非ディープインパクト牝馬の人気になりました。スターアイルが新規で取れるくらいに、価格高騰したディープインパクト牝馬は不人気になりました。なので、昨年まで人気だったディープインパクト牝馬を狙うのに、もう高い実績は必要ありません。更に、牝馬ですから人気になっても1500万超の実績が必要となることも無い(牝馬ではグルヴェイグだけ?フローレスマジックとかどうだったんでしょうね)と思われます。
 また近年目立つのが、NFのメリハリ価格。血統や馬体以外にも、人気しそうな馬を価格を通じて需給調整するという、古典的手法をフルに使います。今回のブエナビスタも1億なら大人気でしたでしょうが、GI1つ勝っても赤字という価格の前では需要が抑制され、あまり人気にならないので実績もそれ程は必要ないはずです。今後も、NFは一番馬に人気分散の狙いを込めて凄い値段をつけるでしょうから、人気がバラけて実績もあまり必要なくなると思います。
 厩舎人気にしても、角居厩舎亡き後、今の最大のブランド厩舎は堀厩舎。ここの馬は人気しますが、それも馬と価格次第。「シユーマ」仔は1.2億でも人気しましたし、バイキングクラップも大人気。それでも、母は確かに繁殖としても名牝ですが、外国産や持ち込み以外での成績が酷い今年のジョコンダ(セレクトで2.5億した全兄が一勝、半姉2頭は未勝利)は1.2億で抽選になりませんでした。なので、血統、馬体が全て揃って人気厩舎にならないかぎり、高馬に高実績は不必要っぽいです。
 これに輪をかけるのが、NFの厩舎選択。NFでは最近、天栄や信楽との「連携の良い」所謂リモコン厩舎に活躍馬を預けます。関東では木村哲厩舎、関西では池添学厩舎が一時期話題に成りました。新規開業でブエナビスタ仔を預かるんですから、厩務員の関係とはいえびっくりです。関西の斉藤崇厩舎なんかも、この一環ですね。今後は、この手の「NFの高素材を実績の乏しい厩舎に」というパターンが増えてきます。その典型例が今年のシルヴァースカヤですが、この馬の不人気に代表されるように票が入らないので実績も不要。そうなると、今後も高実績不要のケースが多くなることでしょう。

最近はアーモンドアイの様に実績のある人気厩舎でもNFとの連携が強くなるので、今年のシーズアタイガーのようなケースでは人気しますが、それは牝馬の場合。必要実績もそれ程は高騰しません。これが牡馬の場合は、価格が調整弁になって人気を減らしますので、高実績はほぼ不要になるでしょう。

 

●さいごに
 最後に、果たして高実績は意味があるか?
 私の考えは、2000万クラスの高実績は不要と思います。今年、残念なことに募集中止になったジェンティルドンナ17(父キングカメハメハ)が1億円の募集価格予定でした。これなんかがいると人気したかもしれませんが、それでも石坂先生の定年もあるので、要超高実績にはならなかったと思います。私的にはヴァナヘイム(キングカメハメハ 角居 8000万)の条件で全弟が再度募集されたら飛びつきたく思いますし、大人気になると思います。しかし、今後は価格が高くなりますし角居厩舎も無いので、弟妹はそれほどの人気にはならないでしょう。(現に今年、凄い小さい全妹でも5000万円でしたから人気が抑制されましたし、普通の牡馬なら1~1.2億が基本価格になるハズ)
 一方、6000万レベルの牡馬は激戦になります。今年で言うとフーラブライドとかハートシェイプト。この価格帯が今年、NFにはいませんでした。価格的にはいましたが、その他のレベルは落ちるのに価格だけ高かったです。なので、リーズナブルにこの価格帯のNF牡馬が人気厩舎で募集された時(アメジストヴェイグ  牡 ハービンジャー×グルヴェイグ 角居 5000万みたいな時)は、これを採りに行きたいです。今年のサングレアルがもう少し大きくて人気厩舎なら、大人気する可能性が有りました。この時は実績が必要ですが、それでも1500万くらいあれば大丈夫でしょうから、2000万は不要ですね。
 
 そしてこれが一番大事なことですが、「実績」は「人気馬」を採るには必要です。しかし、「実績」は「活躍馬」を採るには必ずしも必要ではありません。
オルフェーブル」も、私の一番馬の「ハーツクライ」も実績は不要或いは少しでOKでした。「アエロリット」や「メジャーエンブレム」など、実績不要でも活躍馬はたくさんいます。なので、「馬体」等で活躍馬を選べる方には実績は不必要です。(「血統」で選ぶと、わかる人が多いのでどうしても人気しちゃいますが)変に実績があると、逆にそれに縛られて、フリーハンドでの選択が出来なくなることもありますので、とても難しいですね。
 来年からは150万くらいの人気馬を狙っていき、そのためにはその10倍の1500万くらいの実績を維持していこうと思います。