308回目はヤシカFRの登場です。

まさにこのカメラがコンタックスRTSの中に入ってたんだそうで、その証拠に同じワインダーが付いてしまったり(第234回目参照)、ファインダー内の表示のレイアウトなんかもそっくりです。このカメラのころは廉価機はヤシカ、高級機はコンタックスのブランドで売っていたので、レンズもFRならヤシカレンズとかヤシノン、RTSならツアイスレンズを付けて売られていました。同じマウントを採用していますが、逆のセットでも売られていたという話は聞いたことがありません。「カメラもレンズも中身は同じだよ」とまでは云いませんが、このFRRTSもヤシカレンズもツアイスレンズも皆Made in Japanの製品であり、長野県岡谷市の同じ工場で同じ人間が同じ道具を使って同じ材料や部品から作っていたのは間違いないと思います。

このヤシカFRはメーター内蔵のマニュアル露出機にして、シャッタースピードも最速が1/1000秒という、いたってプリミティブなスペック。このことからも分かるように、FRシリーズの最下位機です。それがなぜ超高級機であるコンタックスRTSに化けたのかと云うと、こうするのがいちばんもうけが大きかったからだと思います。それでも同じシリーズの絞り優先AE&マニュアル露出機のFRならシャッタースピードを1/2000秒にするだけで、そのままRTSのボディのなかに収めればよかったのですから、コスト的にはこちらの方が有利だったのではないかと思います。ところでこのFRのデザイン。さすがにポルシェデザインのRTSには及びませんが、カネがかかっていない割には優秀。少なくともボロ負けというほどではなく、ニコンF3くらいのクォリティはあるデザインだと思います。

ところでカール・ツアイス財団って、日本のメーカーと業務提携するにあたり、はじめは旭光学に話をもってったんだそうです。けっこういいところまで話が進んだみたいで、KマウントがY/Cマウントにちょこっと似ているのはこのときの名残り、なんていう話も聞いたことがあります。ところが土壇場になって旭光学が「肝心のペンタックスが売れなくなっちまうのとちゃうか?」と不安に思って、提携を断ってしまったんだそうです。でももしかしたら「CARL ZEISS」というロゴの使用料があまりに法外で「金は出すけど口は出さない」京セラの稲盛さんのような後ろ盾がいなかった旭光学としては、断るしかなかったのかもしれません。リコーも少しくらいは助(すけ)てやりゃあ、サンキュッパ(XR500)用に「XRプラナー50mm/F2」なんてのを付けられたのに…もったいないことをしたもんだと思います。たしかにコンタックスとペンタックスでは名前こそ似てますが、カメラもレンズも値段が倍以上違うんですから、カネがなくてペンタックスしか買えないような人が、コンタックスなんか買うわけがありません。同じ工場で同じ人間が同じ道具を使って同じ材料や部品から同じようなカメラやレンズを作っているのに、ペンタックスの方なら半値以下なんですから「まともな神経と財布の持ち主」ならペンタックス一択のはず。外から見ただけじゃ中身が何かなんて素人(=客)には分かりゃしないんですから、RTSと似たようなスペックのペンタックスME Superでも入れときゃいいわけです。レンズにしたって、安売りのカラーネガフィルムで撮ったサービスサイズの写真を見て、SMCT*のコーティングの差を即座に言い当てられる人なんかいるわけがありませんしね。ようするにアサヒコンタックスRTSなんか、売れたって売れなくたって「看板」になりさえすればそれでよかったんだと思うんです。

しかしそうは云ってもヤシカのコンタックスRTSは、その恐るべき値段にも関わらずそれなりに売れたようで、今でもネットオークションでよく見かけます。人気はあまりないようで、ponkotsutousanRTS800円ちょっとで手に入れることができました(その後いろいろやって、結局3200円くらい使ってしまった…)。一方レンズの方、つまり富岡プラナーなんかはなかなか値段が下がらない。「Carl Zeiss TessarT*」というロゴが付いてるくらいのことで、スリムTみたいな普通のコンパクトカメラが、バカみたいな値段で取引されているので、カール・ツアイスの神通力というのはponkotsutousanが思っている以上にあるのかもしれません。しかし、スリムTは実際に買って持ってたので知ってるんですが、カタログには「このレンズはカールツアイス財団のライセンスを受けて、京セラオプテックが作ってます」と記載されてても「ちゃんとショット社のガラスを使ってますよ!」なんてどこにも書かれていなかったので、たぶんHOYAとかオハラのガラスを使っていたのだと思います。

カナダやポルトガルで作られたライカや、中身がミノルタや富士フイルムのコンパクトライカにいちゃもんをつけるような人も結構いるので、ヤシカ(や京セラ)が作るコンタックスや富岡プラナーについてもディスるようなやからがけっこういるんじゃねえのか? と思ってたんですが、意外とそういう人は少ないようです。しかし「コンタックス(ツアイス・イコン)ならドレスデンかシュツットガルト」「ツアイスレンズならイエナかオーバーコッヘン」「ライカならヴェッツラーかゾルムス」でなければならないし、大井町でないところで作られたニコンとか、足立区梅島じゃないところで作られたペトリなんか「産地偽装」をしていると云われても仕方がないと思います。ほかにも「ライカ」とか「ローライ」とか「ツアイス・イコン」とか「フォクトレンデル」といった、昔のドイツの名門ブランドのロゴをまとった日本製のカメラは枚挙にいとまがなく、ブランドに弱い日本人のメンタリティがよく表れていると思います…とかなんとか言いながら、中国やタイ、マレーシアやベトナムあたりで作られてても、CONTAXとかLEICAというロゴがプリントされていたら、それこそ「ニセモノ」や「はりぼて」であってもほしいponkotsutousanです。

ところでponkotsutousanは、小西六のファンということもあって「なんとかノン」と名の付いているレンズが好きで、ヘキサノンはもちろんヤシノンやトミノン、ゼンザノンやクセノン、コムラノンやリケノン、コシノンやチノン、ローライノンやアベノン(もうおしまいか? いやヤマノンがあった!)みたいなのが好きなんです。もちろん富士写真フイルムや富士フイルムのカメラなら、そこに付いているのは「フジノン」のはずですが、昔あったフジカGE(およびGER)というカメラに限ってはフジノンではないほうがよかったと思っています。もちろん「フジナー」なんかじゃありません。皆さんもご存じのとおりフジカGEの宣伝をしていたのが、ほかでもないザ・ドリフターズだったので、このレンズに限っては「ビバノン」と名付けるべきでした。当時のドリフ(そして加トちゃん)はそのくらい図抜けた国民的アイドルだったので、ビバノンレンズにしていたら少なく見積もっても、フジノンレンズを搭載した場合の100倍は余計に売れたと思います。

というわけで、ばばんばばんばんばん、はあビバノンノ、ばばんばばんばんばん、また来週!
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