314回目は海鴎203 Seagullの登場です。

このカメラはネットオークションで入手しました。5台でひと山100(すなわち120円!)の中に入ってて、入札したのはponkotsutousanただ一人でした。そんなところにあったカメラなので、さすがにシャッターは切れないし、距離計も壊れててスプリットイメージもブライトフレームも見えません。レンズの銘盤にもそのスペックがプリントされているだけで、ニッコールとかタクマーみたいなレンズの名前もありません(S-111-2とあってたぶんこれがレンズの名前)。使うつもりもないし、このカメラがあった同じ山の中に、以前からほしかったカメラが混ざっていたから、ついでに手に入っただけなんです。でもほしかったカメラがなんだったのか、そんなに昔の話でもないのにもう忘れてしまいました。最近も一目見るなりほしくなって落札したのに、届く頃にはもう飽きていた…なんていう、自分でも信じがたい買い方をしたことがありました。そういうわけで、近頃あちこちで問題になっている高齢ドライバー事故のことも、他人事に思えなくなってきたponkotsutousan。心神耗弱状態というか初老期認知症というか、もうなにがなんだか…よわったなあまったく。

さて海鴎というと二眼レフタイプが有名ですが、同じ名前でもこのカメラにのようなジャバラのセミ判カメラもありますし、一眼レフカメラもあります。中国製の一眼レフカメラだと「珠江」という、ちょっとミノルタの雰囲気も交じるニコンFのコピー機が有名ですが、一眼レフの海鴎は千代田光学精工からミノルタカメラになった頃の、SR-2とかSR-1のコピーみたいなカメラです。日本でそこそこヒットしたのは二眼レフの海鴎だけですが、すでに日本ではAFカメラが当たり前の時代になっていたので、中国ではまだこんなのを作っているのかと当時は驚いたものでした。その中国が、今では1800万画素の撮像素子をもつ超高性能カメラ搭載のスマホ(Xiaomi Mi MIX Alpha=9月25日付けの号外を参照のこと)を作ってるんですから…すごいですよねえ。しかしこの海鴎が登場したころの中国は、日本からするとまだ貧しかったので、こんな古くさいジャバラのカメラでも、中国の一般庶民にとっては高嶺の花だったんじゃないかと思います。

さてこの海鴎、メッキや貼り皮などの質感がなかなか良くて、デザインにもまとまりがあることから、中国国内ではけっこう人気があったのではないかと思います。連動距離計も搭載されているし、レンズ(75mm/F3.5)も、それなりに立派な写りを提供してくれるのではないかと、期待をもたせる「雰囲気」を持っています。おそらく日本やドイツの同種のカメラをコピーしたんでしょうけど、フィルムが大きい分、まじめに撮ればそこそこ納得のいく写真が撮れるのではないかと思います。でもこれだけキレイなのにジャンクなんですから、耐久性についてはもしかしたらあまり期待してはいけないのかもしれません。

で、このカメラで面白いのが、露出設定のために付けられている「簡易版セノガイド」みたいなダイヤル。下にある写真を見ていただくと分かると思いますが、前から見て軍艦部の右にあります。光線の状態(天候や照明など)と、被写体の置かれているシチュエーションと、フィルム感度を設定すると、ライトバリューの数値が分かるしくみになっています。ライトバリューの数値が分かれば、適切な絞りとシャッタースピードの組み合わせが分かりますから、それでちゃんとした写真が撮れるというわけです。この手のギミックが付いているドイツや日本のカメラは見たことがありませんが、なかなかすぐれたアイデアだと思います。自分もたまにライカfを使うことがあるんですが、もちろんこうしたギミックは付いていないので、撮影状況に応じたシャッタースピードと絞りの組み合わせの一覧表を作って持ち歩いています。そのほうが圧倒的に便利なのは間違いありませんが、海鴎のようなアナログなギミックが付いていれば、それはそれで使うと思います。この海鴎が登場するはるか以前、すでに小西六のパールがセレンによる単独露出計を搭載しているので、メーターにしてくれたほうがいいだろうというのは「理屈」としては分かります。でもこちらのほうが使ってて楽しいと思います。

話は違いますが、このカメラが売られていた頃はまだネットショップやネットオークションはなく、カメラはカメラ屋さんに行って買うものであり、通信販売にしてもカメラ雑誌の広告を見て注文するものでした。もちろん中古カメラは中古カメラ屋さんで買うものであり、ジャンクカメラも「研究用」と書かれた箱に入ってて、中古カメラ屋さんで買うものでした。「カメラは時の氏神(光人社刊/サブタイトルが「新橋カメラ屋の見た昭和写真史」)」という本があって、そこで東京都港区新橋にかつてあったウツキカメラの大将の思い出話が語られているんですが、このなかに「かなり勉強して売ったつもりのカメラが、ほどなく売った値段より高くネットオークションに出品されているのを見て、これはもうダメだと思って閉店を決めた」というような話が出てきます。神奈川県川崎市に住んでいたむかし、ウツキカメラで何台か中古カメラを買った(あと高輪の松坂屋カメラとかでも買った)ことがあったので、なんともせつないお話でした。ponkotsutousanは基本的に「カメラの写真」を撮るのが趣味なので、ジャンク品でも一向にかまわないのですが、ウツキカメラの大将の話を読むと、ジャンクカメラでもちゃんとお店で買わなきゃあかんよなあと思ったものです。でももうジャンク品を扱ってる中古カメラ店も見かけなくなってしまいました。中国に行っても、たぶんもう中古カメラ屋なんかないのでしょうね。中古カメラの流通というのもカメラや写真文化のひとつだったと思うんですが…。
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