夏の100冊。
本屋さんに、ずらっと文庫本が並んでいるのを見ると心惹かれる。
できることなら各社それぞれ100冊、まとめ買いができたなら
楽しいだろうなあと妄想する。大人買い。あの文庫達を手にしただけで
夏休みっていう気分になれそうに思うからだ。
けれど、結局、1冊も買うことなく夏の100冊コーナーを離れる。
すでに持っているものもあるし。全てが好みだとは思えないし。

学生の頃に感じていた夏休みの気分は、もう、この先、どんな風で
あっても手に入れることができない。どんなに、毎日呑気に暮らして
いたとしても。たとえ、夏の100冊を買ったとしても。
こんな歳になっても、思いっきりピーターパン的であると自覚している
私は、それがとても悔しい。

小学生の頃の、毎朝ラジオ体操にむかう時の清々しさ。
海に連れていってもらう時のわくわく感。花火や盆踊りの夜は、永遠に
終わらなければいいのにと願った。
小学生でなくとも。夏休みの、あのわくわく感は学生の間ずっと続いて
いたように思う。高校生の時は、仲良しの女の子ばかりでハイテンション
になりながら、伊豆に行った。新宿駅で、変なおじさんに驚き(夏だし)
海で騒いだ。夜は、もう思い出せないほど、たわいのない、でも当時は
とても大事だったことをたくさん語り、体育祭で踊るダンスの練習をした。
大学生のお兄さん達と知り合って、その後、夏休みの間だけ、ドライブに
連れて行ってもらったりした時も、わくわくは私の中にずっとあった
ように思うのだ。

本屋さんで夏の100冊を買わずに、私は、自分の本棚から夏の10冊を
選び出す。小さな頃から長いこと続いていたわくわくを、何度も辿るのと
同じように、私は大好きな本を何度でも読み返すのだ。いいなと思っても
すぐに忘れてしまうから読み返すことができるとも言えるけれども。

私の夏の10冊。この夏の気分。たぶん毎年あまり変わらない。
1. 村上龍「69」
2. ロバート・A・ハインライン「夏への扉」
3. 村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
4. スティーブン・キング「スタンド・バイ・ミー」
5. 片岡義男「幸せは白いTシャツ」
6. 平中悠一「ゴー・ゴー・ガールズ」
7. 夏目漱石「坊ちゃん」
8. 銀色夏生「あの空は夏の中」
9. 島田荘司「都市のトパーズ」
10.ディーン・クーンツ「ライトニング」