武雄図書館の訪問には、多くの方が興味を持ってくださいました。その中には否定ありきの意見もあれば、手放しで歓迎する人とさまざまです。
私が今回訪問して一番印象に残った言葉は、案内してくださった市の職員の方の言葉。それは「スピーディーな決断」
樋渡市長は、まだ何も詳細を詰めないままCCCに図書館を委託すると5月にメディア発表。翌年4月1日には蔦屋書店が指定管理者として受託開始することは決まっている。そこから逆算して、いつまでに何をすべきか、詳細を詰めていったということです。5月4日メディア発表をした翌月には定例市議会で図書館歴史資料館設置条例の一部改正をして指定管理者制度の導入、7月18日の臨時市議会でCCCを指定管理者に指定。8月31日にはCCCと協定書締結、9月定例市議会では改修、空間創出、システム変更、ICタグ貼付等の予算計上、11月15日から2月末まで改修工事をして、4月1日にはオープンという、スピーディーさは今までの行政にはできなかったことでしょう。

方法論に対して異論はあるでしょうが、私たち市民は日ごろから行政の動きの悪さ、遅さに不満を持っていました。ちっとも決まらない、根回しばかりしていて、実際に動かない・・・なのに公務員としての待遇は保障されている・・・って。そういうことに捉われない樋渡市長の手法は、風当たりは強いでしょうが、納税者としては頼もしいと思います。そして納めた税金が公正に使われるというのなら納得ができます。

その一方で、私自身は現在図書館を受託する会社で司書を育てる仕事をしています。図書館としてどうなのかっていう視点で武雄図書館を見てみたいと思いました。

もし本当に樋渡市長が市民の目線を大事にされる方であるならば、今の武雄図書館もよりよい形に走りながら修正されることと思います。もし疑問に思うことがあれば、建設的な形で提言すれば、きっと「よりよい図書館を目指して」意見を取り入れてくださるのではと思っています。

そんなわけで、報告2は気が付いたことを、再度整理してまとめてみました。

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見学した日 :2013年5月12日(日)
見学した時間:10:00〜12:00

武雄市図書館の外観・内装等
・武雄温泉駅からタクシーに乗って5分。国道34号線から入った道路沿いにあり、場所は判り易い。
・駅から向かうと右手に茶色の格子状柱に白抜きで「武雄市図書館」と書かれた表示板が目立つ。
・石積みのゆるやかにカーブした図書館の外観は、背後の御船山の緑に映えて美しい。
・内部に入ると、手前に広がる蔦谷書店の物販スペース(マガジンストリート)の書籍と、吹き抜け、 2階の天井まである高い書架に圧倒される。

武雄市図書館の素晴しい所
 
・20万冊の知に出会える→
閉架書庫にあったものを、すべて見えるように配架。 高書架に陳列することで、今まで閉架書庫で眠っていた蔵書を市民に解放。 あんな本もあったんだ、と古い蔵書を見て読みかえしたくなる人も出てくる。
 (23年末の蔵書数188,321冊 そのうち82,633冊が閉架書庫にあった。)
 
・雑誌販売の導入→   
直営館時代は106タイトルの雑誌を提供。蔦谷書店の物販部分としてマガジンストリートに600タイトルが並ぶ。これらは自由に閲覧できる。また購入もできる。
 注)逐次刊行物として保存はしてないような言い方だったが、確認しそびれている。案内してくださった方の話では、逐次刊行物として保存するよりも、雑誌は最新情報を伝えることが大切という言い方をされていた。
 
・電子端末を活用した検索サービス→
館内にある検索機はすべてiPadを使用している。比較的画面が小さく、またいろいろ触っているうちに無意識に画面をタップして別の画面に行くこと等、慣れていないと動作難しいのでは?という質問に、高齢者を含む市民向けの電子端末操作の講習を市内各地の公民館で開催している。情報端末機器に対するリテラシー教育は浸透していると案内の方。
市内公立小中学校生徒には電子端末を配布すると発表したばかり。若い世代は、無理なく使いこなせるとのこと。その他には、壁等にいっさいの掲示物がなく、電子掲示板に館内の利用案内イベントの告知が表示されるようになっていてすっきりとした印象。

・365日、朝9時〜夜9時まで開館→
武雄市は農業従事者や商店・公務員・教員などの他は車で市外へ働きにでかけている。そうした納税の中心になっている働き手が、これまでは図書館を利用したくてもできなかった。
 夜遅くまで空いていることで、納税者に図書館を利用してもらえるようになったと担当者の説明。日中は、家庭婦人や母親と子どもたちの利用でにぎわい、夕方以降は仕事帰りの人でにぎわっている。市民の交流の場となっているとのこと。
 
・「代官山蔦谷書店」のノウハウを活用した品揃え→
武雄市に行く前に代官山蔦谷書店の見学もした。たしかに代官山の品揃えはコーナーごとにいるコンシェルジュの方々の専門知識とこだわりにより、とても魅力的な棚になっている。今回、蔵書を増やすにあたり、代官山のコンシェルジュのアドバイスを取り入れている。
ただ一見して、それまで武雄市の図書館が持っていた蔵書が多く、こだわりの選書の部分というのは、あまり見えてこなかった。
1階に3つほどある箱型の書架ブースは「料理」や「旅」など特色がありここは面白いものを発見できそうであった。
 
・映画・音楽の充実→  
図書館入ってすぐ右手の円形の建物部分(蘭学館だった場所)が、すべて映像・音楽のレンタルコーナーになっている。4万5千タイトルの映画と3万タイトルの音楽の貸出は、有料レンタルとなっている。ポータブルプレイヤーの貸出があり、館内ではそれを使って視聴できる。    
 
・カフェ・ダイニングの導入→
公立図書館では初めてのスターバックスコーヒー。図書館に入ってすぐ左にあり、また外に面して座る部分はカフェコーナーとなっている。外から見ても、図書館のテラスというよりは、スタバのテラスという雰囲気になっている。
平日昼間は家庭婦人や高齢者がカフェで談笑している一方で、夕方から夜間にかけては仕事帰りの人がくつろいでいる様子が見えるとの事。 25年4月のスタバの売り上げは、渋谷店、代官山店、六本木店に次いで全国第4位。5位がみなとみらい店。
 
・Tカード、Tポイントの導入→
新規にカードを作る人の9割以上が「Tカード」機能付きの図書利用カードを選択している。個人情報の取り扱いに関しては、普通の図書館カードと同様に貸出記録等は返却とともに消去されているし、貸出の情報は蔦谷書店に提供されることもない。またポイントも自動貸出機を使った時のみ、1日1回のみ3ポイントつく。

・その他→ 従来のやり方とは違っていたので、たしかに反対意見なども多いが、基本的に市民の要望に合わせた図書館作りを考えている。全国から関心をもって貰うことで、市民の関心もあがったと思っている。また図書館の利用も促進されており、 人の交流は確実に増えている。
イベントはCCCが企画している。直営では呼べなかった講師陣を招待でき、市民の学習の機会が豊富になっている。
蔦谷書店の特色であるマガジンストリートや、スタバではBGMが流されている。これはカフェやマガジンストリートでの談笑等の声を音楽で気にならなくさせているとのこと。
 一方で、以前閉架書庫だった場所は、文学・歴史・郷土資料・技術教育・アート等の書架と閲覧席が設けてあり、こちらは壁で仕切られていることにより、マガジンストリートのざわめきは聞こえてこない工夫がされている。
また2階は、吹き抜けにそった廊下に面して社会学・ビジネス書の書架が並び、その前に1階を見下ろす形でキャレル席がずらっと並んでいる。その奥には仕切られた学習室があり、そこにはレファレンスブック、語学・学習参考書等が置いてあった。ここでは多くの学生が学習道具を持ちこんで勉強をしていた。
                      
図書館としての疑問点
 
・高い書架
圧倒される書架ではあるが、実際地震等が起きた時、ほんとうに大丈夫なのだろうか。 高書架には落下防止のバーがついているが、大きな揺れの時にどれだけ耐えられるか疑問が残る。(現在、高書架すべてが本で埋まっているわけではなく、ダミーが置かれている)
 
・書架整理
4月は想定を超える来館者が押し寄せたため、書架整理をする時間が取れなかったとのこと。また館内整理日もなく、蔵書点検の休館も設けないということ。
書架の見直し、書架整理および展示の取り変え等は、図書館の開いている時間に並行してやるか、早朝・夜間にする以外にないとのこと。
書架整理などには図書館ボランティアを募ることも検討中との事。司書が書架の見直しができない、館内にいるスタッフ数がスペースに比して少ないために返却本の処理も追い付いてない状況は改善されるべきだと感じた。
 
・開架したことによる書物への影響
貴重な資料は別途書架を作っているようだが、高書架部分に閉架書庫にあった本を並べてある。また各書架にはライトがついている。このライトは日焼け防止の特殊ライトなのか質問しそびれているが、書物が傷まないのか心配。
 
・児童書コーナーと、物販コーナーの区別がつきにくい
児童書コーナーに行くためには、マガジンストリートを抜けなければいけない。絵本の書架のすぐ近くに販売用の絵本の平置き台があり、は絵本キャラクターの人形等が置かれている。小さな子どもたちにとっては、貸出用の本なのか、販売用の本なのか、区別がつきにくい。またおはなし会スペースは、壁などがないために、カフェのざわめきが直接伝わり、非常に集中しにくい。
武雄図書館4児童サービスコーナーの高書架は展示スペースだということだか、子どもの目線からは高すぎて、展示にはなってない。子どもは目の高さにあって、手に取れることが大事。
もし本当に児童サービスのことがわかっているのであれば、図書館を入ってすぐ左の蘭学館を児童サービスのスペースにする、あるいは入り口からまっすぐ進んだメディアホールあたりを児童サービスのスペースにしていただろうと思う。(画像は武雄市民の方からいただきました)
 
・児童書の蔵書構成
代官山蔦谷書店の児童書コーナーは選りすぐりのロングセラー中心になっていたが、そのアドバイスもあったのか、そうした本も書架に並んでいたが、その他の本も一緒においてあり、全体としては特色のある蔵書構成とはいえなかった。
また、調べ学習に関する子ども向けのレファレンスブックや知識の本に関しても、ひととおりは揃っていたが、十分とはいえないと感じた。
 
・雑誌が保存されないのか
図書館では雑誌は逐次刊行物として保存される。担当者の説明では、雑誌購入の費用をほかに振り分けることができるということだったが、いくら館内で雑誌を自由に閲覧できるとは言っても、最新号が出たらバックナンバーが読めないのでは図書館としてはどうなのだろうか。
また600タイトルに増えたということで、今までよりも6倍の情報に出会えるというものの、購入しなければその情報はただそこに置いてあるだけのものになる。
案内してくださった方の説明によると雑誌は誰かが借りて行くと、次の人は返却されるまで待たねばならず、情報の新鮮なうちに手に取ることができなかったが、それが解消されたと話していたが、図書館の蔵書としてではなく身銭を切って購入することになるのであれば、サービスの低下にならないのだろうか。
 
映像・音楽資料の無料貸し出しはないのか
公共図書館として映像・音楽資料を保存し、無料で貸し出しをしているが、武雄図書館では、全てが蔦谷書店のレンタルになっており、文化的価値の高い作品であっても、市民は有料で借りることになる。雑誌と同じく有料で借りると言うことは、サービスの低下につながるのではないか。
 
・児童サービス、児童レファレンスサービス、学校支援等
当日の案内はCCCではなく、市側の担当者だったので、これまでと変わりないサービスをするということをCCCにはお願いしてあるという回答であった。
おはなし会に関しては、ボランティアの方々が継続して関わっておられるとのこと。 毎週、ボランティアさんを中心におはなし会をしているということだったが、そこに司書としてどのように関わっているのかというところは見えてこなかった。
4月は想定以上の多忙で、学校支援を含めて、児童サービスの具体的な展開はこれからだとのこと。今後のサービスの展開に注目したいと思う。         

その他、武雄市図書館についてのさまざまな意見等、詳しく知りたい方はこちらへ→wiki「武雄市図書館」  
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