820日(土) 茅野市の今井書店主催の茅野/絵本・児童文学研究講座2016「私たちもかぶをうえまし20160820今井書店2た」に参加してきました。

 

2013年から参加してきた「蓼科絵本セミナー」は昨年第10回の区切りを迎え、今年から名称も改められてリ・スタート。

 

今年は、次女の幼稚園時代のママ友で、シンガポール転勤前の文庫スタッフで、帰国後彼女の活動「おはなしラッコ」でご一緒させていただいた月夜さん(HN)と参加しました。今井書店では、横浜から信州へ家族旅行中だったY子さんや、千葉在住で茅野のイベントでは常連の保育士ごま先生、糸魚川からAさん、仙台からはSさん、千葉からはKさん、そして当日朝急遽参加を決めたという代官山蔦屋書店のYさん、横浜在住の動物写真家のさとうあきらさんと、遠来の客と、やはり次女の幼稚園時代のママ友で今は世田谷区内の幼稚園の園長をしているGさんは蓼科の別荘滞在中ということで駆けつけてくださって・・・地元の方々(保育士さんが図書館司書の方々)と合わせてたくさんの参加者でした。

ここからは、講演を聞きながら書いたメモから・・・

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14:00〜 第一部は「かがく絵本のたのしみ」 講師は福音館書店月刊誌編集部長。

 

編集部長の幼少期の体験

2歳〜4歳の間、親の転勤でニューヨークへ。やっと日本語を話すようになったところへ、いきなり英語漬けの日々。なんとか英語でコミュニケーションができるようになった4歳で帰国し、いきなり幼稚園へ。同じ顔をしているのに言葉が通じない。カルチャーショックを和らげ、日本語を獲得するのに役立ったのが絵本だった。 

 

 

アメリカの幼稚園で読んでもらった絵本を日本語で読んでもらうという経験が言葉の獲得に役立った。

 

そんな子ども時代に読んでもらって今でも印象に残っている思い出の1冊が赤羽末吉画の『スーホの白い馬』。この絵本に大人になって再会し、絵本の力を感じた。



 

福音館書店では、「たくさんのふしぎ」の編集を16年。

 

科学絵本とはなにか?科学絵本って面白い。自分が生きている、その自分を取り巻く世界を知るためのきっかけ。

科学絵本というと、妙にハードルが高いと感じる大人も多い。お勉強のための、知識を得るための絵本だと勘違いしている。いや、子どものための科学絵本は楽しくなくては。生きているってことは、こんなに素晴らしいと感じられるような絵本であってほしい。

そんな中で一番すごいなと思ったのが五味太郎さんの『みんなうんち』。あの単純化された絵本で生物の条件って何なのかを語り尽くしている。つまりは自己増殖能力・代謝能力を持っていることが生物の条件。「みんな食べ物を食べるから、うんちをするんだね」という簡単なメッセージの中に、科学的な真実がきちんと詰まっている。



 

また、科学絵本ではなく物語絵本として出版されている『しずくのぼうけん』なども、かこさとしさんの『かわ』と同じく、水の循環を子どもたちが理解しやすく伝えている作品。



 


(かこさとしさんの名作『かわ』が9月に絵巻絵本になるというので、一足お先に紹介してくださいました。全長7mの絵巻になって、川の源流から海までたどれます。


物語絵本は、読んでもらった子どもが物語の中に入り込みむことによって心をはぐくむが、科学絵本は心の外側、自分の周りのモノの見方、感じ方をはぐくむ絵本だと位置づけられる。

 

そういう視点を持てると、この世界への感じ方が変わってくる。自分の住んでいる世界を知りたいという知的欲求、自分はなぜここに存在するのだろう、自分を取り巻く世界とは何だろう?大人は物事の道理を学習してしまって、身の回りのことを新鮮に感じることができない。いろいろなことが当たり前だと思っている。「何だろう?」「何故だろう?」と感じることが大切。人と人との出会いも60億分の1×60億分の1の確率で出会っている。それを当たり前と片付けずに知ろうとすることが科学する心。

心に沸き起こる感情を客観的に分析してみる、客観的な足場、つまりは宇宙・自然の法則を客観的な視座に据えることが科学する心。

 

その上科学絵本は、実際の生活の中で実体験できるというところが、肝要。

『かいちゅうでんとう』などは、すぐに体験できる。遊びの中で追体験することで、自分の生きる力として体得していく。

 

福音館書店「かがくのとも」を振り返ってみると、第1作目が『しっぽのはたらき』(川田健/文 薮内正幸/絵 1972)。


 

その絵を担当した薮内正幸さんの『どうぶつのおやこ』は出版されて50年になる ぬいぐるみの親子ではなく、生きている動物の親子の姿を子どもに伝えたいからこそ、薮内正幸氏の真実の絵が生きてくる。




 

福音館書店の「かがくのとも」は作者からの持ち込みは殆どなく、8割は編集者が「こんなテーマで作れば面白いだろう」とテーマを決めることから始まる。そこから作者を探し始める。専門分野の方に声をかけ、まずは第一稿を2か月から半年で書いてもらう。専門知識だけではなく、子どもたちへのメッセージがどのように込められているかが重要なので、かなりバッサリと書き直しをしてもらう。またそのイメージに合う画家を探し、作者の方々と取材に何度か出かける。絵を描くにしても、資料写真を見て描くのではなく、自分の目で見て感動することが大切で、その上で描いてもらう。動物や昆虫を編集部で飼うこともある。年に1回しかない産卵など、タイミングがずれた場合は次の年まで、取材が持ち越しになることもあり、月刊「かがくのとも」1冊を作るのに、最短でも3年ほど、長い物では7年かけているということ。

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20160820わたかぶ3それでもすべての絵本が、ハードカバーになるわけではないとのこと。いや、ほんとうに子どもに手渡すということを、真摯に考えての厳しさ…妥協しないところがすごい。編集部長のYさんが現役編集者として最後に手掛けた「かがくのとも」が『ねじ』を読んでくださいました。

この『ねじ』、ハードカバーにならないかなぁ
 

  

 

15:15〜 第二部は「子どもと絵本〜物語絵本の大切さ〜」 講師は元福音館書店専務取締役の田中秀治氏。

 

田中さんは、「かがくのとも」の編集を経て、年少版「こどものとも」や、「こどものとも0.1.2」の編集も長く手掛けてきた方。月刊絵本の意味、異議を熱く語ってくださいました。20160820わたかぶ4

以下は、メモから・・・

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物語絵本と科学絵本は、子どもの本の両輪。科学の積み重ねがあって、ファンタジーの世界も広がる。

そして月刊絵本の意義は、毎月親子で楽しめる絵本であるということ。幼稚園や保育園を通して購入することで、親が選ばない多彩な作品に出会える。しかも安価で…(子どもを連れて図書館へ行くという家庭は、全子育て家庭のうちの何割だろう…図書館の登録率が2,3割という中で…だからこそ、子どもの本にあまり興味のない家庭であっても、園から届けられるということにすごく意味がある)

そして子どもたちが「読んで!」と持ってくる。その時に読んであげてほしいと。時間は後戻りできない。その時に読んであげなければ…

絵本の大切さをまとめると…

1)親子で、あるいは身近な大人と絵本を楽しむことで、親は子どもに愛情を伝えている。絵本を慈しみをこめて話しかけることは、愛情表現。読んでくれている間は、自分に気持ちが向いている、それがわかるのが子どもにとっては大切。

2)子どもたちの成長を育てる。とくに感性や考える力を育てる力を絵本は持っている。生まれてから5,6年の間は、感性や考える力の基礎を作る。それは、ことばであり、ものを見る力であり、楽しみ感じる力。子ども時代にどんなことばを耳にするのか、口にするのか、目にするのか、体験するのか…基礎を作る時期だからそこ、そこで出会うものはとても大事である。その人の底辺を創りあげるものであるから。

耳から聴くことばが、幼児期は特に大切。ことばは気持ちを表現し、相手に伝える。外には出ない内なることばが、豊かであるかどうかが、人としての生き方をも豊かにしていく。6歳までに出会うことばの質が大切。 

考える力の元、知識の羅列ではなく、考える道筋を大切にする…絵本で培われるもののひとつ。

子どもに与えてほしくない絵本

1)子どもだましの絵本 子どもだからこれくらいでいいだろうといういい加減な作りの本(文章も絵も)感性の土台をつくる時期だからこそ、大切に選ぶべき。
石井桃子さんも「子どもだからこそ、一番良いものを与えなければないない」と言っている。その時期には後戻りが出来ない。人生のいちばん最初に出会う絵本だからこそ、最高のものでなければならない。


2)絵と文章のバランスが取れていない絵本 たとえば『どうぶつのおかあさん』が、まるでぬいぐるみのような可愛いデフォルメされた絵であったらどうだろうか。生命の躍動を感じることが出来ない。薮内正幸さんの絵はまさに動物生態学の入り口となる真実の絵である。
その作品が、ファンタジーなのか、リアリティのある物語なのか、そこをきわめて、それに合う画家さんが絵を描く。そのバランスがとても大切。

20160820わたかぶ4たとえば『おおきなかぶ』(A・トルストイ/作 内田莉莎子/訳 佐藤忠良/画)は、彫刻家である佐藤忠良さんの絵だからこそ、おおきなかぶを抜くというリアリティが生きる。これを『ぐりとぐら』(中川李枝子/作 山脇百合子/絵)のような絵で表現したらどうだろう?
逆に『ぐりとぐら』が佐藤忠良さんの絵だったら、あの昔話の世界が伝わっただろうか。
そのように絵本の絵と文章のバランスは、ほんとうに大切。

絵本画家の堀内誠一は、ひとりでそれを描き分けられる天才的な画家であった。




こすずめのぼうけん (こどものとも傑作集)
ルース・エインズワース
福音館書店
1977-04-01


同じ画家なのに、絵本のテーマによって、絵の描き方もタッチも画材も変えて、描き分けている。物語を知って、ふさわしい絵を描く、絵本はそのバランスが大切。


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実は、この2つ前の投稿で(馬鹿も休み休みに言えよ)絵本の良し悪しをそこまではっきり物申してよいのかという疑問をぶつけられて、気持ちが折れそうになっていたのですが、いや、子どもだからやっぱり手渡す絵本は最高の品質のものでなければだめなんだ、子どもを馬鹿にしたり、上から目線でビンタするような(そう豪語していた絵本作家がいた)絵本は、手渡すべきではないし、それが大ヒットして、ましてや図書館にたくさん置かれて、不用意に親がそれを子どもに読むということは、やはりおかしいことなんだと確信を持ちました。


子ども時代は一度しかない。その時間は巻き戻せない。後戻りは出来ない。そしてこの時に獲得することばや感性、それを元に育つ考える力は、人生の土台を作るものだからこそ、妥協はしてはいけないということ。この「わたかぶ」講座で再確認しました。

自分の原点を見つめなおし、足場を固める…そんな講座でした。

この講座を企画してくださった今井書店のしっぽ店長。そしてYさん、田中さん、ほんとうにありがとうございました!