10月10日(月)(体育の日) 16:00〜17:00 @ピンポイントギャラリー20161010長野ヒデ子さん6

絵本作家の長野ヒデ子さんから、南青山のピンポイントギャラリーでの個展のご案内をうけ、行ってきました。

16:00からは長野ヒデ子さんの名作『おかあさんがおかあさんになった日』の英訳をしたアーサー・ビナードさんとのギャラリートークと行われるというので、その時間に合わせて訪れると・・・会場はもういっぱいの人でした。

会場には、絵本作家の岩崎京子さんや和歌山静子さんもいらしてました。


ギャラリートークでは、アーサー・ビナードさんがこの絵本を英訳する上で苦労したことなどをお話してくださいました。

まずは、産婦の入院についてアメリカと日本での扱いの違いについて。
アメリカでは、陣痛が始まって生まれそうになってはじめて産科に入院するのだそう。この絵本では、予定日が過ぎてしまった初産の妊婦さんが、陣痛が始まる前に入院しています。
アメリカではきっとそこは理解できないだろう・・・それをどのように訳出するか、日本のスタイルなんだということが伝えられるか、迷ったそうです。

また、夫が妊婦を病院に連れて行った後に、いったん仕事に行ってしまうところも、アメリカ人にしたら「信じられない!」と感じたのだとか・・・もちろん、絵本の中でいよいよお産が始まるという知らせを受けて、会社からあわてて駆けつけるのですが^^

そして一番アーサーさんが苦労をしたのが、赤ちゃんがお腹の中から出てきて最初に上げる産声の表現。

日本語では「おぎゃー おぎゃー おぎゃー」と表現されていて、これは産声を表現することば。他の時に泣いているのを表現はしない・・・しかし、英語には「産声」限定の表現はなく、「Waaaa! Waaaa!   Waaaa!」としか、訳せなかったそうです。

20161010長野ヒデ子さん会場に現役の助産師さんがいらしていたのですが、日本独特の「お ぎゃー」の「お」は、産道から出た瞬間、それまでの臍帯経由の呼吸から、肺呼吸に切り替わる瞬間の最初に息が吸い込まれる瞬間の「おっ」という音で、そして初めて「ぎゃあ〜」と泣き声が出る・・・人の誕生の一番危険な瞬間なんだそうで、そこで息を吸い込めないと、うまく呼吸が行えない。しかし、一度肺に空気が入って産声があがると、肺呼吸は寿命が尽きるまでは止まらない。その長い人生の、まさに最初の吸気を、産声として表現することばがある日本に対して、アーサーさんは「すごい!」と感じたそうです。

会場には長野ヒデ子さんの絵本のファンで、中国からわざわざこの会に参加するために来ていたかたもいらっしゃいましたが、彼女も中国語にも「産声」にしか使わないという泣き声の表現はないと断言。会場のほかの言語が出来る方々も、日本独特だと一様におっしゃっていました。

普段、何気なくつかっていた産声を表す「おぎゃー」ということばに、人として一番最初の大切な呼吸であるという意味合いが込められていることを改めて知って、感動しました。

この日は、アーサー・ビナードさんが現在制作中の広島原爆の夜に、その阿鼻叫喚の中で生まれた新しい生命について書かれた栗原貞子さんの詩「生ましめんかな」の紙芝居を披露してくださいました。

『The Day I Became Your Mom』を読んでもらったあとだけに、「生ましめんかな」は心にどーんと響きました。どんなひどい状況の時でも、新しい生命は生まれ出ようとする。それを誰にも止めることはできない。その生まれ出てきた生命を、どのように守り、どのように育むか・・・それは大人たちの責任なのです。

二度と、そんな過酷な中で新しい生命を取り上げるようなことがあってはならない・・・そんな決意を国民の総意としなければと感じた夜でした。


20161010長野ヒデ子さん4ピンポイントギャラリーには『おかあさんがおかあさんになった日』の原画だけでなく、10月に発売されたばかりの『七五三だよ 一・二・三』の原画も展示されていました。

長野さんの描く家族は、子どもの成長をみんなで祝おうとする雰囲気があって、とても温かいなぁと思いました。 


20161010長野ヒデ子さん520161010長野ヒデ子さん2
この日は特別に、長野ヒデ子さん、アーサー・ビナードさんを囲んでの懇親会がありました。約20名が参加して楽しいひと時を過ごしました。(←は参加者みんなでの記念撮影。→は長野ヒデ子さんとアーサー・ビナードさんのツーショット。解析度を落して縮小しています)

アーサー・ビナードさんに我が家の4人目は、家族みんなで迎えようと自宅出産したこと、次男のへその緒は長男が切ったことなどを話したら、それは素晴らしいと、感動してくださいました。

20161010長野ヒデ子さん3
長野さんとアーサー・ビナードさん、お二人にサインしていただけたこともうれしかったです。

この絵本は、それぞれアメリカ人と結婚して、子育てにいそしんでいる二人の姪っ子のためにも購入しました。(彼女たちは、ずっと海外で育っていて、英語が母語になっています)