2017年2月8日(水)13:00〜20170208斎藤先生 @入間市産業文化センター

入間市立図書館主催の児童文学講演会「子どもの成長と絵本」(講師:斎藤惇夫さん)に参加してきました。

20170208斎藤さんこちらの講演会は、以前所沢で講演会を聞かれたボランティア団体の方々の熱い要望があって実現したようです。(2013年所沢市立図書館狭山ヶ丘分館での講演会→こちら

内容は斎藤惇夫さんらしいぶれないお話で、最初から最後まで頷きっぱなしでした。

開口一番、「三代、読み継がれたものを絵本と呼びます」、つまり時代の変化に左右されない普遍的な子どもの姿が描かれた絵本で50年以上残ってきた本こそ、子どもに手渡す本であることを、会場のみなさんに確認されました。

またユング心理学者河合隼雄さん(斎藤さんとは小樽絵本児童文学研究センターの講師陣として親しくされていた)の著書『子どもの宇宙』(岩波新書 1987)の言葉を引いて、「子どもの中にある宇宙」を広げてくれる物語として、まずは昔話の持っている力についてお話されました。
子どもの宇宙 (岩波新書)
河合 隼雄
岩波書店
1987-09-21



特に、ノルウェーを旅された時の、フィヨルドを巡るバスツアーの運転手さんが『三びきのやぎのがらがらどん』を語ってくれたというエピソードは、特に印象的でした。ノルウェーでは、毎晩のように昔話を、繰り返し繰り返し祖父や父親が子どもたちに語って聞かせ、聞いて育った子どもたちの血肉となっており、成長して人に語られるようになってやっと一人前、結婚して父親になれる資格が出来たと感じるのだそうです。
ノルウェー語がわからなくても、3つの繰り返しの言葉や、やぎの大きさに合わせて橋が鳴る音が大きくなっていくなど、昔話がす〜っと心に入ってきたそうです。

こうした昔話をはじめとするお話を、10歳までは語ってあげる、読んであげることが大切であり、脳生理学的にも「耳から聴く読書」は、その後の読書生活にも、心の成長にも重要な影響を及ぼすこともわかっています。(この辺りは私の絵本講座での中心テーマでもあります)

その源泉は、母が子に歌ってあげる子守歌にあること、また詩(ことばのリズムの美しいもの)にあることを強調されました。この辺りは瀬田貞二さんの絵本論、児童文学論と重なっていきます。長く瀬田貞二さんたちとお仕事をされた斎藤さんの、これが核になっているんだなと感じました。

石井桃子さん、瀬田貞二さんが戦後確立された子どもの本の考え方の水脈を、編集者として大御所お二人と仕事をされてきた斎藤さんが受け継ぎ、今はこうして私たちに伝えていてくださる。この水脈は枯れさせてはいけないと強く、強く思いました。

ここ数年、子どもの本の世界では、子どもの心理をまったく無視した商業主義的な絵本が、上手いマーケティングによって、かつて考えられないほどの爆発的な売れ方をしていて、長く読み継がれてきた本がその陰で駆逐されかねない状況になっています。

そして、子どもの本に関心を持った素人たちが、きちんと子どもの本の歴史や、読み手である子どもたちの心理について学ばないまま、単に「ウケる」「泣ける」という大人の目線で、そうしたまやかしの絵本を持ち上げることに危機感を抱いています。とても薄っぺらな、わかりやすい感動では、子どもの心の宇宙を広げていくことはできない。斎藤さんのお話を伺って、そのことを改めて感じました。

頑固だといわれようとも、私もぶれずに、このことをきちんと伝えていきたいと思いました。