8月の終わりに…

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7月の終わりにも一緒に安曇野ちひろ美術館へ行った大学の後輩でもありJBBYで一緒に活動をしている松井紀美子さんにお誘いいただいて、板橋区立美術館へ「ボローニャ絵本原画展」を見に行ってきました。




公共交通機関を使うのが怖いので・・・車で一緒にいける!というのがありがたい。今回も松井さんがJBBY会報誌の取材のお仕事だったので、板橋区立美術館学芸員の松岡さんのお話を一緒に聞かせていただきました。



「ボローニャ絵本原画展」とは、児童書専門の見本市であるイタリア・ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアが開催している絵本原画のコンクール入選作品の展覧会。


2020年1月半ばに選考が行われるのですが、今年はその直後にイタリアでも新型コロナウィルス感染によるロックダウンが行われ、3月30日から開催されるはずだったボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは、5月に延期になり、その5月開催も中止になりました。


展示を待つばかりだった原画たちは、ボローニャでは陽の目をみずにいたのですが、このように例年よりも遅れて日本での公開がされたということに、心から敬意を表します。



119937910_3348516738563906_5186581557697396965_oコロナ禍の中での展覧会、今年は特に「触って「視る」ボローニャ展」として、ボローニャ展入選作品の中から5作品が木製パネルの触察図を制作して展示、その他イタリア全国視覚障がい者教育機関連盟から出版されている「触る絵本」からの選りすぐりの18冊も展示されるという目玉企画があるのですが・・・急遽触れない展示になっています。


(ただし、視覚障がい者向けには、電話で予約をすれば別室で触る絵本を体験できるという特別対応をしてくださるそうです。)


準備を進めていたのに急遽、変更するというのはいかに大変だったか!



お話を伺っていて、その苦労が伝わってきました。それでも、さまざまな工夫を凝らしての展示になっていて、展示もとても見ごたえがあるものでした。



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今回、なによりも素敵なのが入場券や案内パンフレット。イラストレーター、オオノ・マユミさんの作品です。







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チケットは、展示を見ている人物像が切り抜きになっていて、半分に折って立てることで、立体的なオブジェクトになるのです。





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館内には可愛らしいマスクのイラストや、ソーシャルディスタンス(和製英語ですね・・・フィジカルディスタンスのほうがいいですよね)を取りましょう、手を洗いましょう!といったメッセージのあるカラフルなイラストがたくさん。


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それもすべてオオノ・マユミさんの作品です




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新しい生活習慣・・・ということが、言われていますが、こんな風にポップに表現されていると、つい暗くなりがちな気持ちも前に向けますね♪





図録の「ILLUSTRATORS ANNUAL 2020」の中の、ボローニャ国際絵本原画展2020審査レポートは読みごたえがありました。2020年の応募者2,574名分のイラストレーションの中から、75〜80名まで絞っていく作業。フランス、日本、イギリス、イタリアから集まった審査員5名が、お互いの立場や価値観を超え、また時には議論をしながら選考していく過程を会場の動画で見ました。図録には、その時にどんなところを評価していったのかという想いが、おひとりおひとりが選んだ作品とともに書いてありました。


5人の方はそれぞれ業界の最前線に立つ出版社から2名、世界的に有名なイラストレーターが1名、子ども向け雑誌の編集者が1名、児童書の分野の学術的権威の方が1名と、それぞれ打つ選考基準が違う中、一致していたのは「美しさは重要な側面ではあるものの、単に美しいイメージを求めるのではなく、つくり手の世界観がまとめ上げられていて、確固たるスタイルがあり、生命のエネルギーが感じられ、同時に、物語として、深く、強烈なパワーを兼ね備えているもの。応募時に提出された5枚のイラストレーションの中にとどまらず、その外側にもさらなる発展性を感じさせるような作品」ということだそうです。(図録p21)



インタビューの際にも、アジアの作家の作品に素晴らしいものが増えていること、社会的なテーマを持っているものがいくつか選ばれていることが特徴として挙げられていました。

例えば香港のKIN CHOI LAMの作品「未来を夢見て」は2014年に香港で行われた雨傘運動(民主的な選挙を求める抗議運動)がテーマになっていて、観る者に大きな問いをかけてきます。またドイツのPHOOLAN MATZAKの作品「ホームレス」はまさに格差社会を描き出しています。


日本から審査員になったブロンズ新社代表の若月眞知子さんは「子どもたちも日常に、世界で起こっている、戦争や飢餓や貧困、喪失、環境問題、人権差別を、テレビやスマートフォンで目撃しています。グローバル経済と、自国主義への急カーブの時代に、これらの社会的なテーマを、どれだけ子どもたちに理解できるよう明快に表現できるか。人生でいやおうなく直面する社会問題にも、希望をもって乗り越えていく勇気を、絵本の中でも表現していきたいものですね。絵本作家にとっても編集者にとっても、試されるテーマだと思います。」(図録p70)と述べていらっしゃいます。


子どもの本だから、といって「甘い」「やさしい」「かわいい」そんなテーマばかりではなく、子どもたちに「生きる」ことの本質を伝えるような力のある作品も手渡したいという、メッセージを感じる展示でした。

8月22日に始まったこの展示、今週末9月27日(日)で終了です。まだ行っていない方はぜひ!