ポロリのハローグッドバイ

関西を中心とした出会い体験記です。 風俗や出会い系、クラブなどの色んな女の子たちとの美しい出会いと別れについて深く追求していきます。 殆どは多くの人が体験するあるあるネタだと思います。

限りなく村上春樹に近いメンズエステ 第6部 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」編

 エレベーターはきわめて緩慢な速度で上昇をつづけていた。

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 2023年6月上旬、大阪ミナミの「桜川」駅付近のマンションのエレベーターに私は乗っていた。メンズエステを利用するためだ。店の名前は「ミセス美オーラ」。ホームページを見ると、この店は「20代から40代までの大人ミセスが癒しを提供する」という漠然としたコンセプトを簡潔に掲げていた。詳細は実際に体感することでしか分かり得ない。

 駅を降りて電話をかけると、紳士的な口調の男性店員が出た。こちらの好みの聞き取りや、このあとの段取りや駅からマンションまでの道のりや料金体系の説明に関して男は誠実に穴のない対応をした。私は清楚系で小柄でマッサージの上手いセラピストが理想であると伝えた。出勤情報を見る限り、その時点で4人の女がスタンバイしているようだった。男が私の希望に最も近い女性をあてがってくれることを期待した。すると男は案内する女の子の名前を明らかにする代わりに、指名料1000円が追加されるとサラリと説明する。彼が非常にうまい話の運び方をするため、私はその料金の上乗せを何の抵抗もなく受け入れた。結局90分13000円プラス1000円で利用料金は14000円になるようだ。手の指の数を数えるよりも簡単だと言わんばかりに、男は理知的な話し方で明確な料金説明をした。電話応対を繰り返しているうちに自然に身についたものなのか、それとも彼の本質がそうなのか、それはわからないが、洗練された上品さが男の声から感じられた。いずれにせよその結果、私は巡りあった女から誰にも理解されない無益なマッサージを享受するのだ。
 電話を切ると即座にショートメールでマンションの住所が送られてきた。他のメンズエステ店と同じ受付の流れなのにも関わらず、ものすごくシステマティックに計算された抜かりのないスムーズな対応だった。そう感じさせる受付の男性店員はただものではないと私は思った。しかし受付の対応の質とサービスを行う女の子の質は必ずしも比例しないことを私はこれまでの経験上、知っていた。
 アイフォンを操作してGoogleマップで方角を確認し、指定されたマンションに向かいながら店員が言ったセラピストのプロフィール画面を閲覧した。何十人もいる在籍女性の中で、その女だけが写真が掲載されていなくてツイッターアカウントもなかった。おそらく入店して間もないと思われる。その時点で少し不安がよぎったが、店員の割り当てを信じるしかない。
 などと考えているうちに指定されたマンションに到着した。フロントで店に電話をかけると、先程の男性店員が部屋番号を私に告げた。礼を言ってその番号をオートロックに入力し、解錠してもらった。中に入るとすぐにエレベーターの入口が見えた。

 そのようにして私はエレベーターに乗った。狭いエレベーターは緩慢な速度で上昇した。まるで人生の何かを示唆しているようだった。しかし人生のどういった要素の暗喩であるのかうまく考えつくことができないまま、6階に到着する。
 廊下に出る。目的の部屋のインターフォンを押す。ドアがゆっくりと開く。
 現れたのは黒髪で猫っ毛のぽっちゃりした20代後半の女だった。「新しい学校のリーダーズ」のツインテールの女の子に目鼻立ちが似ていた。「清楚」よりも「地味」の方が適切な気もしたが、清楚と言われても捉える人の寛容さ次第ではギリギリ嘘ではないと思う。限りなく地味に近い清楚、あるいは限りなく清楚に近い地味で票が割れる外見だった。
 女は私の顔をしばらく確認するように眺めてから、私に向ってこっくりと頷く。なんか言えよ、と思いながら私は可能な限りなごやかに「お邪魔しまーす」と言いながら玄関で靴を脱ぐ。
 女は太っていた。「太っていた」というより「少し太っていた」と言った方がより正確な表現だ。見るものの主観に左右されるかもしれないが、私はそう感じた。
 私は彼女のうしろを歩きながら、彼女の首や腕や足を眺めた。夜の間にそれなりの量の雪が降ったみたいに、女の肉体には満遍なくふっくらとした肉が付着していた。人間の太り方には人間の死に方と同じくらい数多くのタイプがある。この女の場合は対面する相手に残念な印象を与える太り方だった。ずんぐりとしたそのスタイルは私の好みに合っていなかった。ただ、私はそれほど多くのメンズエステの女に対して好感を抱くわけではない。どちらかといえばあまり抱かない方だと思う。だから女が太っていることはこの場合、直接的には関係のないことなのかもしれない。私はその地味で太った女のうしろについて廊下を歩きながら、だいたいそんな印象を抱いていた。彼女はブルーのノースリーブニットに白いタイトミニスカートという格好だった。ミニスカートの下にはTバックの下着が女の肉付きのいいお尻に強く食い込んでいるのが透けて見えた。

 私がとおされたのはがらんとした6畳ぐらいの部屋だった。簡素なソファにテーブル、横長の鏡にマット。余分なものは何ひとつとしてない。女は私にソファに座るように言う。どういうわけか彼女はド緊張していて、接客の台本を読むので精一杯といった感じだった。聞くと、今日が初出勤で、私が初めての客なのだという。やれやれ、と私は思った。
 ソファに座る。女はテーブルの上の問診票と誓約書に記入するように言う。かたわらに置いてあったペンを手に取り、問診票の必要事項にチェックを入れようとした瞬間、女は利用料金の提出を私に求めた。要領の悪い人間なら軽くパニックを起こしそうな、嫌がらせみたいなタイミングの悪さだった。やれやれ、と思いながら私はペンを置き、鞄から財布を取り出し、90分コースの14000円を女に支払う。そして再び問診票と誓約書の記入に戻る。適当に必要事項を埋める。
「書けました〜」と私は朗らかな口調を意識して言う。
「ありがとうございます」と女はわざとらしい猫撫で声で言いながら紙を受け取る。

「シャワーの準備をして参ります」と女は言う。
「あ、はい」と私は言う。
 女が洗面所の奥に消える。15秒ぐらいシャワーの流れる音が聞こえてくる。そして部屋に戻ってくる。
「できました」と女は言う。
「あ、はい」と私は言いながらソファから立ち上がる。
 バスルームに案内される。
「紙パンツの着用をお願いします」と女は言ってその場を立ち去る。
 女はフィリップ・K・ディックの小説に出てくるアンドロイドみたいに機械的な語り口だった。完全にメンズエステ客に向けての作られた人格での対応だった。中途半端に愛想のいい声色だから余計に不気味だった。こちらからちょっとしたジョークを挟む余地が全くなかったので、単純な返事をせざるをえなかった。

 シャワーを浴び、タオルで体を拭いて紙パンツを履いて洗面所を出ると、部屋の明かりは間接照明だけになっていた。
「うつ伏せになって下さい」
 私が部屋に一歩足を踏み入れた瞬間に女はマットを指差して言った。やはりイラっとする間の悪い発言の仕方だった。ディストピアにおける完全管理社会のシステムに支配されたような雰囲気が演出されていた。しかし今さら「頼むからそのイケてない喋り方を改善してくれないか」と女に文句を言ったところで改善されるわけがない。受付の店員の対応の水準をどこかで期待してしまっていた私が愚かだっただけのことだ。期待をするから失望が生じるのだ。

 うつ伏せからマッサージが始まる。無論、マッサージが始まる前から女のマッサージの腕にはあまり期待していなかった。
「力加減など、おっしゃってくださいね」と女は言う。
「強めがいいです」と私は間髪入れずに反応する。
 女は足もとから順番にタオル越しに指圧を施す。予想に反して女はマッサージがうまかった。それは女自身の能力というよりは、きめ細やかに作成されたマニュアルに沿って忠実に動いた結果、ある程度の効果的なマッサージが達成されているといった感じだった。
 そこそこの心地よさを感じながら程よいテンポでオイルマッサージが進んでいく。下半身をオーセンティックなストロークで終えた後に上半身に移行する。全身がムラなく膨らんだ女の肉体が私の腰元にのしかかる。特に圧迫される感じはしなかった。
 上半身のマッサージが体感的にかなり早く完了した。それでも凝っていた首と肩が割としっかりとほぐれた感覚があった。ここまではエロ要素が限りなく排除された、ザ・マッサージだった。次は「カエル足」あるいは「四つん這い」か、はたまた早くも仰向けか、と思っていたら女はうつ伏せの体勢を変換することなく、再び下半身のオイルマッサージを初めからやり直し始めた。全く同じ手法の再現に唖然としたが、特に不服を申し立てることはしなかった。
 そのまま同じ手順で上半身に移行し、それが終了するとようやく女は私に仰向けになるように言う。言われた通りに体勢を変換する。女の姿が視界に入ったが、殴りたくなりそうだったので女の顔を直視しないようにした。足もとから順に上へと普通のオイルマッサージが施されていく。私の股間周辺に女の手は決して接近しなかった。まるでそこから強力な反発力が発生しているかのように。その手がたどるルートは絶対的な諦念を私にもたらした。
 まだ時間はかなり残っている。その時点で私は身体的にも精神的にも退屈を持て余していた。なので過去に体験した猥褻な体験を思い出してみようという気分になった。
 その時、思い浮かんだエピソードがこれだ。

 →ポロリの終りとハードボイルド・エロメンランド

 過去の性行為の思い出に思考を委ねていたら、ちょっと勃起した。
 女はそんな私の紙パンツのムックリとした膨らみにはお構いなしに、マニュアルに忠実だと思われる施術を進行させていく。仰向けにおいても、下半身→上半身ときて、再び全く同じ手順を一からやり直した。
 女に促されて上体を起こす。女は私の背後から首と肩と背中をほぐしていく。もしかしたら本来のメンズエステとはそもそもこういうものなのかもしれない、と思わせる徹底的に普通のマッサージだ。私が認識していたメンズエステにあって然るべき「魂を揺さぶる奇跡的な何かが起きるかもしれない空気」が皆無だった。その時点で、女と私との間に決定的な断絶が存在していることに気づいた。

「本日はこれで終わりになります」
 終了してからも女はマニュアルに忠実と思われる案内の仕方で、私をシャワーに案内する。
「ごゆっくりどうぞ」と言って女は洗面所を去る。
 私は虚無的な気分で紙パンツを脱いでゴミ箱に投げ捨て、シャワーを浴び、体を拭いて服を着る。
 部屋に戻る。テーブルの上に紙コップに入ったお茶が用意されていたのでいただく。
「力加減はいかがでしたか」と女は言う。
「よかったです」
 肺炎をこじらせて死にかけた犬のため息のような声で私は女の顔を見ずに言う。一体どこの世界に「程よい力加減」を求めてメンズエステを利用する男がいるというのだろう。
「よかった」と女は機械的に言う。
「ここに墓を建てたくなるほど気持ちよかったです」と私は嫌味混じりでくだらない冗談を言った。
 女はとくに反応しなかった。客がそう言ってきた場合の反応の仕方を事前に店側が教えていなかったからだと思う。

 90分コースだったが、入室して75分ぐらいで女に見送られて部屋を退出した。世界の終りみたいなメンズエステ体験だった。どうせならハードボイルドでワンダーランドなアクシデントが起きて欲しかった。奇妙な電話が唐突にかかってきたり、ガスの点検をしに来た男に頭骨を盗まれそうになったり、見たこともないほどの巨大な男に1Kの部屋を徹底的に破壊しつくされたり。しかし現実はこんなものだ。世界の終りみたいだ。






















TO BE CONTINUED.





















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限りなく村上春樹に近いメンズエステ 第5部 「街とその不確かな壁」編

 きみがぼくにそのメンズエステを教えてくれた。

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 2023年4月、週末の午前11時。ぼくは地下鉄の改札を出て、人混みに紛れて歩きながらメンズエステ店に電話をかける。店の名前は「アネラグ」。30代のお姉さんタイプのセラピストが主に在籍する店のようだ。ホームページを見ると、「オイルドバドバ系」というメンズエステのトレンドを体現しているとその店は謳っている。
 数回のコール音のあと、女性店員が電話に出る。ぼくはこのあと利用できるか尋ねる。受付の女性はやや慇懃な対応で、90分15000円コースをこのあと11時半から取り付けてくれる。「泉の広場」から徒歩5分ほどのマンションに行き、建物の前で再度店に電話をすればいいようだ。
 電話を切るとすぐにマンションの所在地がショートメールで送られてくる。その位置を確認しているうちにぼくは泉の広場に到着する。階段を上り、地上に出て、ホテル街を抜けて目的地へと向かう。春の空はまっさらに晴れ上がり、ひとつだけ浮かんだ白い雲は、滑らかな魚の形をしている。恥ずかしくなるほど爽やかな天気は歓楽街エリアに全く似合わなくて、まるで高い壁に囲まれた街の内側から眺めているような気分になる。

 マンションに到着する。これという特徴のないコンクリートの新しい建物だ。ぼくは再び店に電話をかける。先ほどの女性店員に部屋番号を告げられる。オートロックを開錠してもらい、エレベーターに乗って6階で降りる。
 インターフォンを押すとドアが開き、きみが現れる。「YOASOBIのイクラ」と「ハラミちゃん」を合わせたような感じの顔立ちだ。ぼくは37歳で、きみは38歳だった。
 きみはとても美しいセラピストだ。少なくともぼくの目にはそう映る。どちらかといえば丸顔で、鼻が少し高くて、目は常に笑っているように細められている。一般的な顔立ちの基準からすれば、顔の輪郭と鼻と目の均衡がとれていないということになるかもしれないが、ぼくは何故かその不揃いなところに心を惹かれる。そして淡いピンク色の唇はふっくらとしていて、常に口角が艶かしく上がっている。とてつもなく淫靡な秘密をいくつか奥に隠し持つみたいに。
 きみは胸の谷間をかなり強調したラベンダー色のミニワンピースを着ている。裾から伸びるきみの白い太ももは陶器みたいにつるりとした質感でありながら、思わず触れたくなるほどムチムチしている。

 ぼくは靴を脱ぎ、きみの案内で部屋の中に入る。
 奥に深い長方形の部屋だ。キッチン付きの廊下を抜けるとリビングエリアがあり、清潔な白いソファに簡素なガラスのテーブルが。そして壁一面に煌びやかな夜景の映像がプロジェクターによって大きく映し出されている。室内には小粋な洋楽がひかえめな音量で流れている。奥には寝室スペースがあり、マッサージ用のマットが敷かれているのが見える。
 ソファに座り、お茶を頂き、ちょっとした雑談を交わす。落ち着いた声色で愛想よく話すきみが標準語のイントネーションであることにぼくはすぐに気づく。それとなく指摘すると、きみは去年の末に関東から大阪に引っ越してきたのだと言う。その口ぶりからきみの「生活」がわずかににじみ出ていて、エッチだなとなぜかぼくは思う。
 利用料金の15000円を支払う。そのあとにお決まりの「誓約書」に署名する。きみは笑顔を絶やさずに雑談を交えながら常に和やかな応対を心がける。
 シャワーを浴びることに。バスルームに案内される。
「紙パンツ履くやつですね!」と朗らかにぼくは言う。噂には聞いている、というニュアンスで。例によってメンズエステに行くことに慣れていない設定のノリだ。きみは笑顔でうなずく。
 ぼくはシャワーを浴びて、バスタオルで体を拭く。洗面所に備え付けられたマウスウォッシュを使い、Tバックの紙パンツを履き、その上からバスタオルを腰に巻きつけて部屋にもどる。

 奥の寝室ゾーンできみはスタンバイしている。そちらへと向かう。
 壁にはメンズエステ特有の横長の鏡が立てかけられている。きみはぼくに鏡に向かってあぐらをかいて座るように言う。ぼくは言われた通りにする。バスタオルをきみに預けて、鏡を見ると、薄暗い部屋の中、紙パンツだけを身につけたぼくが映っている。見方によっては修行僧みたいだ。あるいは、今からきみのサポートで夢読みが始まるのかもしれない。
 鏡越しにきみのラベンダー色のワンピースがぼくに近づくのが見える。きみは後ろからそっとぼくをハグする。慈しみに満ちた非現実的な抱擁だ。そのようにしてオイルマッサージが始まる。
 これまでのぼくのメンズエステの経験上、マットにうつ伏せから開始するパターンがほとんどだった。初手からこの密着度の高い挑発的な体勢はとても珍しいとぼくは感じる。
 きみはぼくの肩や背中を指圧し、後ろから腕を回してデコルテや太ももをほぐしていく。その触れ方できみがマッサージに関してプロフェッショナルな領域の技術を持ち合わせていることがぼくには分かる。それもあってか、きみが背後にいると、なんだか不思議な気持ちになる。まるで数千本の目に見えない糸が、きみの身体とぼくの心を細かく結び合わせているみたいだ。落ち着きとともにほのかな興奮がもたらされる。みるみるうちにぼくの股間は膨らんでいく。

 その体勢のまま、オイルが塗られていく。その間も雑談は続く。きみはぼくの耳元に限りなく近い位置で喋る。かなりドキドキするシチュエーションなのにもかかわらず、二人の間で交わされる雑談は初対面の男女にありがちな当たり障りのない探り探りな内容で、そのギャップがたまらない。
 話題はいま放送されているドラマの話になる。そして好きな俳優を尋ねあう。ぼくは高畑充希が好きだと言うと、きみは坂口健太郎が好きだと言う。関連するテレビや映画の話題を経て、互いの仕事の話になる。ぼくはどこにでもある中規模の会社の中間管理職をしていると言い、きみは転居に伴い現在求職中であると言う。女性向けのマッサージ店か適当な事務職のどちらかで探しているようだ。
 きみは口から出かかった言葉を一度棚の奥にしまい、0.5秒後にその言葉を引き出すような喋り方をする。その喋り方はきみの生まれつき備わっている思いやりから来ているのだとぼくは想像する。

 きみに促されてうつ伏せになる。きみは足元から順に上へと手際よく効果的にオイルマッサージを進めていく。
 意図していなかったが、Tバックの形状の紙パンツからぼくのチンコが半分ほどはみ出ている。当然、きみもそれに気づいているはずだ。しかしきみはチンコを所定の位置に戻さず、太ももから足の付け根にかけてマッサージをする際、そこに手が当たることを全くいとわない。むしろ意識的にタッチするようなストロークが施される。道端にうずくまる子猫を可愛がるように。
 きみとの雑談は続く。二人とも「一人でいる時間が好きだ」という話になる。一人の時間をどのようにして過ごすのか、質問し合う。
 きみはネットフリックスで映画を観てダラダラしているうちに時間が過ぎていく、といったことを話す。それに対してぼくはひたすら本を読む、と言う。
「どんな本、読むんですか?」ときみは言う。
「主に小説、読みます」とぼくは言う。
「誰の?」
「村上春樹が好きです」
「あー、村上春樹」
「読んだことありますか?」
「元カレがすごく好きで。その影響で一冊だけ買って読みました。かなり昔だけど。面白かった記憶はあるけど、結局ほかの作品を読むことはなかったです」
「その村上春樹の新刊が今月、めっちゃ久しぶりに出たんですよ。発売日に買って、今読んでます」
「そうなんですね。面白い?どんな話なんですか?」
「あの、まだ半分ぐらいまでしか読んでないので決定的なことは言えないんですけど、まあ相当面白いです。村上春樹を読んだことない人にとっては、ちょっと不思議で洒落た恋愛小説みたいな感じで楽しく読めると思います。で、村上春樹の色んな作品を読んできた人にとってはさらに楽しめる作品になっているんですよね。どういうことかっていうと、まあ色んな要素があるんですけど、村上春樹の小説って時期によって『人称』が変化するんですよ。デビュー作からしばらくは一人称の『僕』が色んな出来事に巻き込まれていくみたいなスタイルの話が基本なんですけど、『海辺のカフカ』っていう作品から三人称で書かれるパートが出てくるんですよ。で、しばらく完全に三人称で書かれた小説が何個か続くんです。『彼』とか『彼女』とか登場人物名が主語になるやつ。それはそれで全然しっくりくるんで良いんですけど、前作の『騎士団長殺し』っていう作品で急に『私』っていう一人称に回帰するんですよ。往年の読者にとってはそれってかなり大きなことで、その、人称の使われ方によってやっぱり物語の入り方みたいなのがけっこう変わっていったりするんです。ほんで今回6年ぶりに新作が発売になりましたと。前作と同じ一人称なのか、それとも三人称なのか。ワクワクしながら1ページ目を開いたんですよ。そしたら1行目、なんて書いてあったと思います?『きみがぼくにその街を教えてくれた。』って書いてあったんです。うおおぉぉまさかの二人称キター!!!みたいな。ひっくり返りそうになりましたよマジで。もちろんずっと二人称で進むわけではなくて、かなり変則的な人称の使い方がされてるんです。そこがまずテクニカルな部分としてめっちゃ鮮烈でした。それで、読み進めていくと、過去の作品の要素を踏襲したエピソードがてんこ盛りなんですよ。『ノルウェイの森』っぽい男女の儚い恋愛要素もあれば、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』っぽい物語構造が見えてきたり、『海辺のカフカ』を彷彿とさせる図書館が出てきたり、『ねじまき鳥クロニクル』とか『多崎つくる』みたいな失われたものを探し求める的な要素が通底していたり。そういったものを統合した集大成的な作品であるとともに、村上春樹の文学世界の現在地を強烈に提示している、ものすごい読み応えのある作品なのは間違いないです。てゆうかこの作品自体がどうこうっていうより、その作家の本を系統立てて読んでいくことの面白さを改めて教えてくれるよねっていうのがこの本を読んでいる途中の率直な感想です」
「読んでみます。じゃあ四つん這いになってもらっていいですか?」と、きみがぼくに体勢変換のタイミングを教えてくれた。

 言われた通りにぼくは四つん這いになる。ここに至るまで、きみは体勢や触れ方を小刻みに変えていき、マッサージが単調にならないような配慮を怠らなかった。そしてどのアプローチにおいてもきみの手はぼくの敏感な部分を必ずかすめる。そのおかげで、すでにチンコはそれなりに大きくなっている。きみはその勃起がより強固になるような際どい部分をエロティックに触れる。それでいながらマッサージとして成立するしっかりとした揉み方もところどころに挿入する。それは四つん這いにおいても同様だった。
 そして仰向けになる。きみの顔が視界の中に入る。年齢よりもずっと若々しくてハリのある、顔面レベルが非常に高いきみを数十分ぶりに直接見て、素直に胸が高鳴る。
 きみは仰向けになったぼくの太ももや鼠蹊部をオイルマッサージしていく。股間へのタッチの頻度がさらに増していく。紙パンツの上からそれに触れるきみの手つきはしかし射精を目的にした触れ方ではない。そこにそれが存在していることをただ単純に確かめるだけといった感じの触れ方だ。
 そして意味ありげな沈黙が流れる時間も少しずつ増えていく。二人とも黙ってしまうそのあいだも、きみの手はずっと喋り続けている。ぼくはプレイが佳境にきていることを肌で感じる。
 再びきみはポジションを変更する。ぼくの隣に体を横たえ、添い寝するようにマッサージをする。きみの大きな白い乳房がぼくの目の前にあった。その露出している部分にぼくは指先で触れる。そのままの流れで内側に侵攻し、乳首まで指を届かせようとすると、きみはやんわりとその動きを拒絶する。なのでぼくはすぐに引き下がり、乳房の上部ときみのムチムチとした太ももを撫でて過ごす。

 そうこうしているうちに体感的にタイムアップが近づいていることにぼくは気づく。すでに全身に一通りオイルが行き届いた状態になっている。
 すると、きみはひそやかな声で言う。
「ポロリさん、すごく紳士的で…。他のお客さんとかは『抜いてよ』とか言ってくるけど、そういうのもなくて、すごくいい人なんだなって思いました」
 そこで一旦きみは口をつぐむ。締めくくりと考えられる言葉に対してぼくはお礼の言葉を述べようと息を吸う。
 すると、きみは言葉をつなぐ。
「だから、本当に内緒なんですけど、特別なマッサージ、していいですか?」
 ファンタジーのスイッチが入った瞬間がまさにその時だった。スイッチの音が鳴る瞬間、ぼくはこの世界から承認されたような心地を覚える。それはどこまでも自然な成り行きだった。きみはそこで特別なマッサージをしなければならなかった。その特別なマッサージをすることは、きっときみの心持ちに何よりすんなり馴染んだおこないなのだろう。ぼくはその展開にとくに驚きもせず、不思議にも思わず、そのとおりごく自然に受け入れた。そういう心の流れにただ従っただけだ。きみは遠慮がちにぼくの特別な部分に触れ、確実な刺激を与える。こうして特別なマッサージを受けていると、自分が美しい詩の数行になったような気がする。
 そして、適切なタイミングで特別なマッサージは終了した。ぼくは心からお礼の言葉を述べる。

 シャワーを浴び、服を着て部屋に戻る。きみが用意してくれたお茶を一杯飲む。ソファで雑談を交わしているうちにお別れの時間が来る。
 玄関に移動する。
「キスしていいですか?」とぼくは言う。
「ほっぺならいいですよ」ときみは言う。
 言われた通り、ぼくはきみの頬にソフトなキスをする。
「また来ていい?」とぼくは言う。
「もちろん。名前、〇〇なので、よろしくお願いします」
「分かりました。ゴールデンウィークまでに必ず来ます」
 そう言いながら笑顔でサヨナラをする。
 その約束が守られることはなかった。

 次の日にはきみの実体は完全になくなっている。それはまるで初めから存在していなかったかのようだ。そんな世界をぼくは生きる。しかし思い出がきみを回収していく。残るのは、画面の中の文章だけだ。


























TO BE CONTINUED.





















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限りなく村上春樹に近いメンズエステ 第4部 「1Q84」編

 午後7時、またポロリが始まる、ハッピーエンドは望めないまま。(怒られるぞ)

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 2023年2月上旬の夜。ポロリは梅田の兎我野町のホテルのロビーで番号が呼ばれるのを待っていた。一見するとビジネスホテルのようで、実際はラブホテルとして利用されるタイプのホテルだった。メンズエステを利用しようと電話をかけたら、このホテルに行くように指示されたのだ。店の名前は「バニーズオオサカ」。バニーガールのコスチュームの女によってオイルマッサージを受けられる店であるらしい。
 この兎我野町エリアはどういうわけかいわゆるマンションタイプのメンズエステ店が激減し、ホテルにセラピストを派遣するデリヘルみたいな流れの店が主流になってきているようだった。その影響か、女の子はスタンバイできているものの、提携しているホテルが満室で空きを待たなければならない状況であると「バニーズオオサカ」の中年の受付の店員は電話でポロリに告げた。店側も、最近システムを変更せざるを得なくなったために案内がスムーズにいかなくて戸惑っている様子だった。
 というわけで、ポロリが指定されたホテルで受付の女性に「バ、バ、バニーズオオサカの紹介で…」と小声で伝えると、番号札を渡されて15分ほど待つように言われた。

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 手持ち無沙汰になって中途半端に撮影された現場の風景。
 待つ。
 なぜか、ポロリよりあとにホテルに入って来た男女(明らかにカップルではなく、おそらく風俗嬢と利用客だ)が何組も受付をパスして、彼の目の前にあるエレベーターに吸い込まれていった。どのようなシステムに基づいてそうなっているのか分からなかったが、文句を言っても事態は変わらないと思われた。世の中にはコントロールできる事柄よりもコントロールできない事柄の方がはるかに多い。だからポロリは考え事をして待つことした。

 ポロリが考えるのは村上春樹の新作についてだった。2ヶ月後に彼の長編が発売する。約6年ぶりのことだ。その時点ではタイトルはまだ明らかにされずに、発売日が4月13日で価格は2970円、ボリュームは原稿用紙1200枚、刊行と同日に電子書籍も配信される、というニュースだけが新潮社からインターネットを通して読者に知らされていた。とにかく、その本を読むのを楽しみに日々の生活を頑張ることができそうだ。
 そして自らのブログで取り組もうとしている「限りなく村上春樹に近いメンズエステ」の構成をどのようにするか、色々と考えた。今日ポロリがこうしてメンズエステを利用しに梅田まで来ているのは、肉体が疲労しているからでも、癒しを求めているからでも、バニーガールのコスチュームが好きだからでもない。「限りなく村上春樹に近いメンズエステ」の挑戦のためだ。村上春樹の小説の世界観を、メンズエステの体験談とリンクさせたくなる人が、世間にいったいどれくらいいるだろう。おそらく「ほとんどいない」と「まったくいない」の中間くらいではあるまいか。しかし彼にとってそれは純粋な衝動に素直に従った、どこまでも自然な行為だった。そうでなければ彼がメンズエステを利用する意義や理由は、どこの惑星のどこを探しても一ミクロンもない。

 あれこれ思案するのに飽きると、ポロリは鞄からアイフォンを取り出し、画面を確認する。時刻は待ち始めてから10分ほど経過していた。そして、10歳年上の人妻のガールフレンドからラインが来ていた。今度のデートの打ち合わせの内容のメッセージに対して必要事項を返信する。
 そうしているうちに、受付の女性に番号を呼ばれた。ポロリは立ち上がり、カウンターに行くと、部屋番号を伝えられる。料金は前払い制で、カウンターの横にある機械で支払いをすればいいと彼女は言う。言われた通りに機械に入金すると、カード型のルームキーが出てきた。ホテル代は3700円だった。
 エレベーターを乗り降りし、入室する。

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 中途半端に撮影された現場の風景。けっこう綺麗な部屋だ。
 撮影を終えるとポロリは店に電話をかける。先ほどの中年の男性店員に部屋番号とホテル代を伝える。すぐにセラピストが到着するとのことだった。
 電話を終え、トイレに行ったり身だしなみを整えて過ごす。
 5分後。コンコン、とノックの音が部屋に響き渡る。ゆっくりとドアを開ける。
 青豆が立っていた。

 青豆?

 マスクをした黒髪の高身長でスレンダーな20代前半の女だった。ボックスシルエットの防寒性に優れていそうな黒いダウンジャケットに、無骨な黒いスラックスに、ずんぐりとした黒いボストンバッグ。ファッションの要素が限りなく削ぎ落とされた、あくまでも外の寒さを防ぎながら移動しやすくする、機能特化型の格好だと言えた。
 「1Q84」の青豆を実写化したような、隙のない独特の固い雰囲気が女にはあった。女の登場によって部屋の空気の性質がシリアスな方向に大きく変わった。そのくらい存在感のある女だった。先程ロビーで散々見送ってきた風俗嬢と思しき女たちとは全く違うタイプの人間だ。バニーガールの衣装に着替えてメンズエステ客の肉体を揉みに来たというよりは、手製のアイスピックを使って新興宗教の教祖を暗殺しに来たみたいに見えた。もしかすると、女は本当に一人の男をあちら側に送り込みに来たのかもしれない。きわめてありそうにないことだが、まったくないとは断言できない。むしろその方が説得力のある第一印象だった。
 ドアを閉め、背筋はまっすぐ伸びたまま入口付近で直立し、女は簡潔な挨拶をしてすぐにこの店のプレイ内容について丁寧に語りだす。語るというより暗唱する、という感じの口調だった。シャワーを浴びて、マッサージをして、終わったら再びシャワーを浴びる、という簡単な説明をするだけなのにも関わらず、緊張感のある女の話し方には何かしらひっかかるものがあった。すべりの悪い引き出しから言葉をひっぱりだすような感じだ。しかし女は決して間違った引き出しを選択しなかった。ただの一回たりとも。
 女はポロリのいる位置から斜め45度ほどの方角を向いて説明をした。女の視線は遠くの空に架かる虹を眺めているようでもあり、叶わなかった過去の夢に思いを馳せているようでもあり、冷蔵庫に貼られたゴミ出しのカレンダーに目を通しているようでもあり、難解な現代アートを前にして制作者の意図を汲み取ろうとしているようでもあった。女にはどこかはかり知れないところがあった。何を考えているのか、何を感じているのか、眼差しや声音から簡単に読みとることができない。
 女がこの後の流れを一通り説明し終えると、部屋には含みのある小さな沈黙の塊が残った。おかげでポロリはどことなく落ち着かない気持ちになった。

 とりあえず料金を払う。事前に知らされていたように、ホテル代込みで90分20000円だ。女が部屋の入口付近に立ったままなのでポロリも立ち上がり、財布から1万円札を2枚取り出して女に提出する。すると女はボストンバッグからお金の入ったポーチを取り出し、3700円をポロリに手渡す。さっき立て替えたホテル代が返却された形になる。
 支払いを終え、女に促されてシャワーを浴びることに。その間に女はマッサージの準備をするようだ。バスルームに移動する。体を洗浄し、極限まで無駄の削ぎ落とされた恥ずかしいデザインの紙パンツを履いて部屋に戻る。

 バニーガールのコスチュームに着替えた女が待っていた。こんなにもバニーガールのコスチュームの似合わない女の子を見つけだすのも難しいだろうな、というのがポロリが抱いた率直な感想だった。マッサージをするのにどうしてそんな格好にならなければならないんだ?と元も子もないことを言いたくなるほど、悲劇的に女はそのコスチュームが似合っていなかった。かと言ってその安っぽいコスチュームは女そのものをみすぼらしくさせなかった。女はスレンダーでスタイルはかなりいい。肩までの髪はきれいにカットされ、身長は170センチ弱、贅肉はほとんどひとかけらもなく、すべての筋肉が念入りに鍛え上げられていた。ほっそりとした美しい両脚も魅力的だった。言うなれば、女の肉体がバニーガールのコスチュームの魅力をはるかに追い越してしまっていた。いずれにせよ、ポロリはこの格好の女の施術をあるがままに受け入れるのだ。

 ベッドの上に敷かれた大きなタオルの上にうつ伏せで寝転がり、マッサージ開始となる。
 予想通り、女は初対面の男と円滑なコミュニケーションをとることを苦手としていそうだった。なのでポロリは無理に会話をせず、女の手技を堪能することにした。
 温かいオイルがポロリのふくらはぎにとろりと垂らされ、下半身から順番にオイルマッサージを施される。女は地図の道筋を辿るように、ポロリの筋肉をひとつひとつ確かめてストロークしていった上で、親指を適切なスポットに絶妙な深さでゆっくりと突き刺していった。思慮深く思いやりのある人間にしかできない指の使い方だった。純粋な友愛の意思が、女からポロリへ、女の親指を通して直接送り込まれてくるようだった。言葉では伝えることのできない情報の交流がそこにはあった。
 もちろん、そういった感覚は全て錯覚に過ぎず、女が隠し持ったアイスピックで首筋を刺して一瞬にしてポロリの息の根を止める可能性もある。青豆のように。そして数時間後にホテルの従業員がポロリの死体を発見し、搬送され、心臓発作と診断され、亡骸が家族のもとに届けられ、まだ若いのに惜しい人を亡くした、などと一部の人から嘆かれ、ポロリが2012年からこっそり書き続けてきたこのブログは「シティボーイ風エロメンの緊急事態宣言ルーティン③ー1 2020年8月18日」で更新が途絶えていただろう。
 しかし幸いなことに、そのような事態にはならなかった。女は丁寧すぎるほど丁寧な手つきで左右のふくらはぎと太もも→お尻→腰回りと順を追ってマッサージを施していった。至ってスタンダードなメンズエステの手順だ。
 マッサージが上半身に移行する。背中→肩甲骨→首と、非常にゆっくりとしたテンポで進行していく。女の顔がポロリの後頭部に接近するたび、彼は背後でマッサージをする女の静かな息づかいを感じることができた。ゆっくりとした深い呼吸だった。女の手は彼の敏感な部分には一切タッチすることはなかった。メンズエステならではの「カエル足」と「四つん這い」はなかった。

 女に促されて仰向けになる。バニーガールの女はマスクをしたまま、ポロリを黙って見下ろしていた。相変わらず何を考えているか分からない感じだった。
 仰向けになってからは一気に密着度の増したマッサージに切り替わった。女はポロリを優しくハグするような体勢で覆い被さり、腕を回して彼の肩甲骨をコリコリと揉んだ。巣から落ちた雛鳥を摘み上げるように繊細な触れ方だった。エロ要素よりも癒し要素の勝る、穏やかなひとときだった。その施しからポロリが感じたのは女の心根の優しさだった。他人の痛みを高い解像度をもって理解できて、心の形を月の満ち欠けを眺めるようにとらえることができる、そういう優しさが女のマッサージにはあった。
 しかしそこに至るまでが非常にスローペースだった。そのため、時間切れが近づいていることにポロリは気づいていた。女も終了の雰囲気を少しずつ出してきた。

「まだ、ほぐれていないところ、ありますか?」と女は密着状態でポロリの耳元で囁く。
 唐突に話しかけられたポロリは一瞬言葉に詰まる。
 すると、女は言った。
「それとも、イチャイチャしたりないところ、ありますか?」

 あるー!!!
 と言わんばかりにポロリはムクリと上体を起こし、正面から女を見つめる。女の真っ黒な瞳が何かを映し出すように微かにきらめいた。
 来ないと思っていたイチャイチャタイムが唐突に始まる。不毛地帯に恵みの雨が降り注ぐように。時間的には10分弱ほどだったが、互いの肉体の直接的な交流を通して最終的に二人ともトロトロの状態になり、様々な体液がタオルに滴ることになった。その頃には最初は神秘的な雰囲気を醸し出していた女もフレンドリーな物腰になっていた。
 そうこうしているうちにタイマーが鳴り、終了となる。女は不織布のマスクを最後までつけたままだった。2回目の利用からマスクを外すようにしていると女は言う。

 一緒にシャワーを浴びる。その際に見た、バスルームの光に照らされた女の裸は、本当に青豆のように綺麗に引き締まっていた。殺されなくてよかった。
 部屋に戻り、着替えと片付けを済ませて退出する。

 ホテルの前でお別れの挨拶をする。いつの間にか女はメガネをかけていた。銀色のフレームのオシャレな丸メガネだ。メガネの奥の女の瞳には、さっきまで男女のギリギリの駆け引きを行っていたとは思えないオフ感が漂っていた。バニーガールのセラピストという役割はホテルの部屋に置いてきたと言わんばかりだった。
 女は穏やかな瞳で冬の夜の兎我野町の人工的な光を見ていた。見たことのない風景を遠くから眺めるみたいに。
 数秒間、なんとも言えない間があり、女からの申し出を受ける形でラインを交換する。
「また会いたいです」と女は言う。
「会おうね」とポロリは言う。
 しかし、二度と二人が会うことはなかった。

 女と別れ、ポロリは梅田駅まで歩く。人々のざわめきや、車の音がひとつに入り混じって、都会特有の開放的な音を作り上げていた。凍てつく晩冬のそよ風が通りを密やかに吹き抜けていた。なんの匂いもしない、悲しいくらいに美しい風だった。




















TO BE CONTINUED.



















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プロフィール
【名前】 ポロリ

【居住地】 大阪

【年齢】 30代

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【趣味】 読書、映画、アート、音楽、旅行、エロ全般

【コメント】 ブログをご覧いただきありがとうございます。
男と女のギリギリのドラマが大好きで自らの体験談を記録しています。
他にも音楽や文学や映画、アートなどの話も書いてるので良かったらご覧になって下さい。
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