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男女共同参画会議:男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会(第2回)

 政府の男女共同参画会議から「傍聴していただくことが可能です」という連絡を拝受し、11月14日、永田町の内閣府や外務省などが林立する中に位置する合同庁舎に赴いてみた。警察のブルーの警備用大型車が並ぶ大通りを渡り建物の入り口に近づくと、警備員に行き先を告げる前に「男女共同参画会議ですね」とすぐに胸に下げる「IDカード」を渡され、指示にしたがい建物の中に入った。受付で参加者リストのチェックを受け、目的の場所以外に立ち寄らないこと、などの注意書きを渡される。館内を歩いている人たちが、みな役人のように見える。意外と女性も多いが、殆どが事務系の地味なオフィスガールの雰囲気だ。だれもが建物内を忙しそうに往き来していた。

 会場に入ると、そこは天井が高く広々としていて、真ん中に四角く配置されたテーブルが小さく見えるほど大きな会議場だった。私が指定された傍聴席は、会場の後部に机が横並びに延々と配置された三列のうちの真ん中の列だった。そのほぼ中央の席に座った。両サイドに男性がいたが、女性傍聴者の姿は見られず、傍聴者の数自体も僅かのようであった。その時はよく分からなかったが、5,6台はいただろうか、カメラや傍聴席の一列目に席を占め、パソコンを開けてスタンバイしていた若い男女の一群は、マスコミ関連の人たちだった。会議が開始するやいなや、傍聴席一列目で待機していた彼女たち、彼らは一斉にパソコンのキーを叩き始めたが、その速度といったら、聞こえてくる筈はなかったのだが、後列の席にまでキーを打つ音が届くかと思われるほど、凄まじい勢いであった。マイクの扱いのせいか司会者がよく聞き取れない小さな声でもぞもぞと開会の辞を述べると、カメラがあちこちで回り始め、会議は始まった。

A)議題:乳児用液体ミルクプロジェクト
 第一の議題は、若い母親たちが子育ての簡便化と災害時の緊急対策用として、政府に認可を切望している「乳児用液体ミルク」に関するものであった。海外では広く普及して久しいというのに、日本ではなかなか開発が進んでいない本プロジェクトを何とか推進して欲しいという、働く母親たちにとっての切実な訴えだった。欧米諸国では「乳児用液体ミルク」は一般化しており、ひと瓶が100円程度で売られているとのことだった(賞味期限は半年ほどとのこと)。赤ん坊には平均して一日に7−8回の授乳が必要だが、粉ミルク授乳の場合は、そのたびに粉の量を正確に秤り、この粉を正確な量のお湯で溶かした後に人肌の温度にまで冷ますという、神経を研ぎ澄まさねばならない手間が必要となる。共稼ぎ夫婦の間では夜中にどちらが粉ミルクを作るかで大げんかになるとのこと、それに、外出のときに液体ミルクがあったら、手間暇かかる重たいお湯や一連の粉ミルク作り用の道具類を持ち歩く必要がなくなりどんなに助かることか。とりわけ日常生活で1分1秒に追われて現代社会で働く母親や父親にとっては、悲願の液体ミルクとも言えそうだ。毎回使用するというのではなく、粉ミルク作りの辛く面倒な作業を軽減し大切な時間を節約してくれる液体ミルクは、親たちにとって子育ての辛さを心理的に楽にしてくれる鎮痛剤のようなものなのかもしれない。今では、母親たちの署名運動が積極的に展開され、かなりの成果を挙げているとのことであった。さすが、マスコミも注目するはずである。
 しかし、この母親たちの懇願に対する企業側の代表者の回答は(恐らく政府あるいは厚生省も同回答なのか、この辺りは極めて不明瞭であったが)、ミルクの色の変化、鮮度や賞味期限の問題があるなどの理由を掲げ、これらをクリアーするのにはあと数年かかるという冷たいものであった。
 「企業はこの要請を消極的に捉えるのではなく、世界から尊敬されている安全安心の日本の物作りの経験を活かし、中国やアジア諸国向けに輸出するといったビジネスメリットの観点から積極的に取り組んではどうか」といった若い女性コメンテーターの見解や、年配女性の恐らく大学教員の「実現の暁には、貧困層の親たちにも買える価格設定を要望する」といった指摘が印象に残った。

 第一の議案の「乳児用液体ミルクプロジェクト」が終了すると、文字通りまさに蜘蛛の子を散らすようにマスコミ陣は一斉に退去してゆき、参加者は半分以下に減ったであろうか、広々とした会場は急に寒々とした雰囲気に変わった。実際、暖房が効かないのか室温が下がってきたので、ショールを取り出して肩にかけ、次の発表に備えた。
 
B)専門員による提言
 本会議の第二部門は、専門員による提言と称されるもので、三名の担当者からの発表があった。

I ) 男性の家事・育児参加推進のために

1. まずは、男性の家事、育児の参加推進のために立ち上げられた「イクボス」および「ファザーリング・ジャパン」の活動が簡単に紹介された。

.ぅボスの普及
・「イクボス」の定義と10箇条を作成、イクボス」および「ファザーリング・ジャパン」の両者で年間200回以上の講演を全国で実施中とのこと。
・「イクボス企業同盟」には、110社以上の大企業、数百社の中小企業が加盟。
・20の県知事と東京都知事がイクボス宣言(小池都知事は、この10月に宣言)。
・市町村長レベルを含めると全国で100名の行政トップがイクボス宣言済みである。

∨_正を目指す
・長時間労働の是正のため、形骸化している36(さぶろく)協定の改訂
 (男性の60%は家事・育児に参加していないー理由:仕事で家に帰れないため)
・署名を実施中(数日間で1万人超)

2. 男性への啓発
.トコ家事推進プロジェクト:「主夫の友」チームがセミナーやマニュアル作成などを企画中
▲蹇璽襯皀妊
・「家事をする男はかっこいい」というイメージ作り
・イベントやフォラムの開催 
2隼ができるようになる=段取りがうまくなる=同時に複数のことが出来るようになる(一般に、男は単純な生き物で同時進行でものごとをこなすことが出来ない)/ 経済感覚が養われる=職場の仕事のスキルアップにつながる
っ棒の進化=自立
イクメン → カジメン(家事をする男性)→ イキメン(地域活動をする男性)→ イクボス(社会を育てる男性)→ ケアメン(介護をする男性)
男性の進化や自立のストーリー化を目指す

3.その他
ヾ覿鳩弍勅圓箚管瑤悗寮儷謀な働きかけ:
・男性部下の仕事能力の向上、女性部下の活躍、生産性の向上、企業収益にプラスになることを理解してもらう
・実際に保育園や学校の子供たちと触れあい、子育ての意義、楽しさ、大変さを理解してもらう
地方創生
・地域のイベント(収穫祭)や地域の伝統料理の伝承と食育→料理をする男性やカジメンの育成
・カジメンの増加=地方創生にもつながる

補追事項:「秘密結社 主夫の友 parents オトコカジ推進プロジェクト」の実践活動:
・都市圏の大学で「オトコカジ」講義を初年度に5回実施(50人〜100人規模)
・自治体および企業主催の「オトコカジ」セミナーを年間5回実施(50人〜100人規模)
・HPの開設:家事スキル向上に役立つ情報や「オトコカジ」の検定・セミナー体験などのレポート発信

感想:イクメン、カジメン、イキメン、イクボス、ケアメンなど、様々な男性に関する面白い新造語に興奮。もっといろいろな話を詳しく聞きたかったが、配付資料も3ページのみと発表の中で最も少なく、発表時間も最小限だった。また、FJなどサッカーのチーム名かと思われるような意味不明のタームもあって質問したいところだったが、傍聴身分なので致し方なく、ひどく残念だった。
 さらに、「主夫の友」プロジェクトチームの画期的な活動が対象としているのは、おもに若手及び熟年層の男性と推測されるが、最も人口の多い高年齢層男性向けのイクメン、カジメン、イキメン、イクボス、ケアメンの称揚を重点化してもよいのではなかろうか。パートナーを失った時に自立できる恰好いい「インデペンデント・オトコイマージュ」(衣食住)「アンチ・アルツのオトコカジ」(食・住ー家事をするオトコはアルツハイマーにならない)「シルバーイケメンのルネッサンス」(衣)よりよい暮らしを創造する「オトコ・エコノ」(環境)といったストーリー化もありかもしれない、それぞれに点数をつけて百点満点とし「オトコ・イデアル」を完成させる、などといった不遜な考えが一瞬、頭をよぎった次第であった。

II) 福井県の地域特性と女性の就労ならびに両性間の家事分担の現状と課題
 発表の第二は、福井県の女性たちの現状に関するものだったが、これが最も丁寧で充実した内容の発表だった。資料は両面印刷の10枚、つまり20ページにもわたっており、全国に先駆けて男女平等が進んでいる「日本のスエーデン」とも呼ばれる福井県らしく、その現状が多様なグラフや図を駆使してわかりやすく説明されていた。
 「男女を問わず全国で正社員がもっとも多い」「共働きがトレンド化している(女性は働いていないと肩身が狭い)」「通勤時間30分は遠い(職住接近)」「繊維が基幹産業で中小企業が多い(社長の数、全国で最多)」「女性が定年まで働き続ける(=福井モデル)」「定住性が高い(他の地域への移動が少ない)」「三世代近居(子育て夫婦は、妻、夫、どちらの両親とも近距離に居住)・離婚率が非常に低い」「子育てや教育に対する公的サポートが大きい(給食費無料、母子包括センターが母子家庭を強力に支援」「介護休暇を取っているのは女性より男性の方が多い」等々、福井県に特化された報告と説明が続き、非常に興味深いものがあった。

III) 地方都市・中小企業・介護の視点で考える
 最後の発表は、山口県の「男性の暮らし方・意識の変革」に関するものだった。
 近畿地方は女性の就業率が低いとのことだったが、日本は西に行くほど男女平等意識が低いと云えるのかもしれない。山口県の場合は、ワークライフ・バランスに関し、企業の姿勢が非常に消極的だという。1000社に対しておこなったサポート調査に対し、「ワークライフ・バランスを取り入れると従業員がいなくなって仕事に支障が出る」「わが社は家族的な経営スタイルを大事にしている」「ワークライフ・バランスは首都圏の余裕のある大企業の制度の話だ」「該当者がいない(育児と仕事の両立を必要とする女性社員がいない)」「おいおい整備してゆく」といった消極的な意見ばかりだという。
 こうした悲観的な現状の中、意識改革推進のために企画プロジェクト「やまぐちイクメン維新」を立ち上げ、受賞の栄誉に浴す企業や個人はまだ極めて少ない状態だが、企業による男性の育児参加の奨励(イクメン応援企業表彰、奨励金を出す)およびイクメン表彰など、地域への啓蒙を目指して鋭意努力しプロジェクト活動を推進しているとのことであった。

2016年11月14日(月)14時〜16時45分
男女共同参画会議:男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会(第2回)
オブザーバーとして参加