2011年05月02日

Zoomchakaさんに振っていただいたこともあり、もうほとんど死んで世の中からいなくなったと思われてる頃の更新です(笑)。
タイトルは大昔に今は亡きwDoblogで書いた変動利付国債で大勢死人がでた時の解説記事から取りました。
なのでPart IIです。

最近はTwitterで遊んでてちっともBlogを書く気がおきないんだが(ま、もともと日常の中味が薄いんで書くことないんだけどねw)、たまたま最近の三菱UFJモルガンスタンレー証券ホールディングス(なげーナ、もうちょっとなんとかならんのか。というわけで以下三菱とかMUMSSとかテキトーに略す)がスワプションで大損こいたという話が出て、Twitterにその話題を振った手前、その顛末に絡めていくつかおもいつくところを書いておこうとおもう。

この事件については既にttoriさん(@ttori5112)がTori Box のマーケット事件簿で親会社のMUFJ(8306)の有報をもとに解説記事を書かれているが、銀行本体の巨大な金利デリバに紛れて、本当はどれがMUMSSのポジションなのかはっきりはわからない。残念ながら100%子会社であるMUMSSは四半期開示を要求されていないようで、2010年4−9月の半期報告書しかまだあがっていない(→ここにあるので参照されたし)。なのでポジションの変化などについては次の半期報告を待つしかないんだけど、もうポジション解消しちゃってると予想されるので3月末のものみても多分わかんないんだよね。既にしかし2011年3月期の半期報告書(2010年9月末)には今回の事件になったようなことは一切書いておらず、経営陣や監査法人に発覚したのが今年に入ってからであったというのはあながち嘘でないのだろう。ただ、モルスタはMMパートナーシップという持ち株会社を通じてMUMSSの株を共同保有しているわけだから、昨年5月の合併前の資産査定の段階でモルスタ側でこれに気付いてないとは直感的にはちょっと考えにくいよね(実際に2011年4月22日付の毎日新聞のこの記事ではモルスタ側から合弁発足時の資産査定時に何か言われていた(でも「一定の枠内ですべきだ」ってどういう意味?日本語になってないんっすけど(苦笑))ことが暗示されている)。

一方でそうした資産査定や会社のValuationをするのは、ちょっと高級な算数は苦手なあんぽんたんインベストメントバンカー(笑)や実際の市場で取引したことのない会計士なわけで、実際のスワプションマーケットのことがわかってるわけないから、モデルがポピュラーなものであったり、市場価格をもちいてプライシングされてると三菱側のミドルから言われれば、モルスタのミドルが仮にチェックしたとしても、ああデータベンダーは確かにxxを使ってるなー、モデルも標準的ブラックモデルだし問題ないですねーというふうに話が流れた可能性が大。

因みにMUMSSの昨年9月末半期報告書でトレーディング勘定(8ページ)に表れている資産と負債側に表れた数字を示しておく。なおこの有報によればトレーディング勘定にでてるのはMTMの数字ということであるから、実際の名目元本はこれよりもはるかに大きいだろうということは容易に想像がつく。値洗いの数値は以下の通り(数値はいづれも百万円単位。+は資産側のMTM、−は負債側のMTMの数値を示す)。

平成21年9月30日期
オプション +723,300  vs -775,243 (net -51,943)
スワップ     +4,270,069 vs -3,923,310 (net +347,659)

平成22年9月30日期
オプション +1,034,497  vs -1,139,439 (net -104,492)
スワップ     +6,062,837 vs -5,689,692 (net +373,145)

さて、これだけからわかることは多くはないが、まずオプションもスワップも一昨年9月から昨年9月までの1年間で結構売りも買いも増えていることが推測できる。今回の巨額損失の下地は準備されていたわけだ。

ちなみに、オプションもスワップも何を資産側に載せ、何を負債側に載せた等の情報が一切ないので以下は類推でしかないが、他の債券や株と一緒にこのオフバランス取引を時価評価価値として出ているので、オプションについては資産側に買い持ち(ロング)、負債側に売り持ち(ショート)を載せたのであり、スワップについては債券と同じように債券価格が上昇するとき(つまり金利が低下するとき)に儲かるポジション(つまりレシーブポジション)を資産側に、逆に金利低下でやられる(上昇で儲かる)ポジション(つまりペイポジション)を負債側に持ってきているのではないかとおもう(この辺バンクや証券アナリストのひとの教えを請う)。*

*knakajimaさんからコメント欄にB/Sにはオプションの買い持ちだろうと売り持ちだろうと、あるいはスワップのペイだろうとレシーブだろうと、単にMTMしてプラスになってるものの合計が資産側に、MTMしてマイナスになったものの合計が負債側にあるんじゃないの、だからポジションがロングなのかショートなのかと関係ないのではというご指摘をいただいた。その通りだとおもいます。ここに訂正して記します。ご指摘に感謝!
ただグロスの名目元本が大きく膨らんだんじゃね?という下記の推測に変わりはありません。「両側の」MTMが大幅に増えるにはグロスが大きく増えないとそうならないからです。詳しくはコメント欄のやりとりを参照され度。

dv01情報がないんで断言はできないが、おそらくネットではレシーブのポジション(金利が低下すると儲かるポジション)がスワップでは積まれてるってことなんだろうね。これ以外に実際の債券とかでスワップのヘッジをしているとおもわれるのでオプションとスワップだけ見て、おお、スゲー勝ってんじゃんとか思わないように(笑)。有報みればわかるが債券部門のトータルの勝ちは21年4−9月が56,378百万円→22年4−9月期79,104百万円とあるので、22年4−9月では2000億円近くのヘッジ損が他で出ているはずである。しかしここで気付くべきはグロスの名目元本(買い持ちと売り持ちの合計)は結構とんでもない数字なんじゃね?っということ。だってオプションの評価だけで片側1兆円超えてる(22年9月期のオプションの売りMTM)って結構すごいよね。

オプションはネットでのショートがMTMで500億円以上増えているのでトータルではショートヴェガ、ネガティブガンマ(コンヴェクシティ)のポジションになっているだろうと推測される。スワップも増えてるんだろうなーってわかる。こういうのって満期(maturity)毎のバケット(bucket)情報があるともう少し何やってるかわかるんだけど、ヘタに開示すると巨額でお互いのポジションが推測出来ちゃうから敢えてわかんないようにぼやーっと出してるのかもしれないね。

日経の記事によると、経営陣がヤバいことに気付いたのは今年1月、下旬に秋草前社長がポジション解消を指示したとあるので解消の影響が出たのは1月下旬から2月あたりのはずだろうね。「再発防止に向け、取引の内容やリスクを複数の部門で相互に監視する体制を整備したと強調」とあるからこの辺に問題が存在したのかなとおもう。

朝日新聞のこの記事をみても、純損失になってるのは2011年(平成23年)1−3月期で、その前の3Qは平穏なPLになってる(記事中のグラフを参照)ので日経の記事と平仄はあっている。「保有高が大きすぎることがわかっていなかった」とかコメントしてるから、まさかトレーディング勘定に表れているオフバランス取引のMTM分だけ見てて、実際のnotional amountチェックしてなかったのか?まあそれは日本の会社だとありえるよね、別に社長がマーケット部門から出てくるとは限らないから。でもトレーディング(商品)部門の担当常務とか専務は何の報告受けてたんだってか、なんの報告させてたんだ(^^;???

しかし日経本紙に確かに出ていた840億円損失とかスワップションの名目元本が120兆円だったとかググっても出て来ないんだが、どういうことなんだろうねぇ。。。

というわけで、とりあえずマーケットで報道されたことを辿って見たけど、では幾つかのコメントから垣間見えるその問題とはなんだったのか。あくまで推測でしかないけれど次回以降検討してみよう。

とはいえスワップションてなんじゃいなという人もいるとおもうので、次回は少しその辺のおさらいと市場で観察できるものをいくつか見る予定(ほんまかいなww)。

最後に断っておくと別に筆者は今現在このマーケットを直接トレードしてるわけではないので、あくまで間接的なもの言いしかできないし、次回以降、いやそりゃ情報古くね、今はちがうんじゃねってところがあれば是非コメントしてもらえると嬉しい。

備忘の為の次回以降のキーワード(ただしそんな基礎知識はググって勝手に調べてとなる可能性も十分あり):スワップとスワップションとは、(ググり対象となる可能性[ぺイヤーズとレシーバーズ、イールドカーブの形状と金利オプションのプットコールパリティ])、株のボラティリティーサーフィスと金利のボラティリティー・キューブと実際に市場クォート、あるいは4次元の超キューブってかそれだけ組み合わせのパラメータがあるってことで、これは多分今回のミドルの評価問題につながったとおもう云々。以下はちょっとヲタ向け(コメント欄でマーケットで実際にこの問題に関わってる皆さんのコメントやりとりできたらうれしい):ボラティリティースキュー、カリブレーションとSABRモデルなどの確率ボラモデルの話(結構実装されているとおもう)、odd periodの流動性とプライシング、スワップカーブ自身の問題−ベーシススワップ、two curves one price (Bianchetti et alのダブルカーブ)問題、実際はtwo curvesどころか6−7curves問題(^^;、銀行とHedge Fundではこの問題はどっちのほうがよりシャレにならない問題なのか。うーむ全部書いてたら多分終わんないので適当に端折って今回のことに関係あることだけ、ヒマを見ながらチャラっと続編を書く予定。

ふぅー、Zoomchakaさん、昔はまあまあ書いてたんですがBlog書くのって結構大変だったんですねえ(^^;。







positivegammapositivegamma at 00:06│コメント(10)金利戦略 | 日本

この記事へのコメント

1. Posted by yari   2011年05月02日 04:44
5 Welcome back!

今回のシリーズは債券・デリバ村のマニアックな話になりそうですね。タームストラクチャーの補正やって25 Deltaとかのボラティリティのスキューが●ポイントだから、Iterationやってインプライドボラティリティ調整してって説明しても、普通の人は熟睡です、ハイ。

今回の件でKidder PeabodyのStrips債の事件を思い出しました。まぁ、そんなに似てはないですけど、リスク管理について考えさせられるケースでしたので。

続編楽しみにしてますね。
2. Posted by positivegamma   2011年05月02日 13:24
はは、頑張りますです(^^)。
リスク管理部門が開発してたシステムのインプットとかそういう問題もあるんかなとおもってるんですよね。金利系のHFはこの話勿論知ってるんですけど、2008年以来長いところでのプレーをしてる連中は少ない印象です。ま、それは次回以降で。
3. Posted by とおりすがり   2011年05月02日 15:40
他社ですが結構「近い」場所にいるので噂になっていること、及び損失の一部については知ってるつもり。ただ、発表された数字は事前にオプション村で噂されていたものよりずっと大きかったという気がしますが…。
4. Posted by positivegamma   2011年05月04日 06:03
とおりすがりさん、
コメントありがとうございます。
差し支えない範囲でどんな話になっていたのか教えていただけませんか。twitterアカウントをもっていらっしゃればフォローしていただいてDMでのやり取りでも結構です。
僕が聞いた噂だとnotionalはもっと大きかったんですよ。。。でも金利商品ですからnotionalが何を意味してるのかよくわかんないですよね(^^;。10yr equivalentなのかとか何もわかんない。

BBGベースでのATMFストライクのボラティリティーの変化を少し見てみたのですが、僕が聞いてた超長期の変化はそうでも無くて(勿論長いのでvegaは多気ですが)、5年未満の満期のオプションのボラのほうが跳ねてるんですよね。。。

超長期のvolatility cubeを逆手にとってMTM上儲かるバタフライみたいなポジション結構積んでたのかなという話をベースにこれから続きを書こうとおもってたんですが、そういう話じゃないですかねえ?
ヴェガだけだと少し大きすぎる気がするので、やはりディレクションを取ってたのか、OTMをやたらショートしてネガティブ・ガンマでデルタがぐわーっと出てきたのか。。。

また気軽にコメントいただければ嬉しいです。
5. Posted by zoomchaka   2011年05月06日 06:46
うわーっありがとうございます。連休にかまけてRSSリーダをほったらかしておりました。

この件に関連するやそうでないかは定かではありませんが、@takahato さんが以下のようなことをぶつぶつと呟いておられましたので、ご覧になったかもしれませんが、ご参考までにリンクを残しておきます。ひとくちにMTMと言いましても、OTCが絡むと、まあいろいろなんですね。僕のような個人投資家には縁遠いところですが。。。

たかはとさんのつぶやきを勝手にまとめた(by @trinityNYC)
http://togetter.com/li/127037

ただ、仰るとおりこれだとロスがでかすぎる気がします。

じゃあ何なんだというわけですが、こういう企業文化の会社で(そんなによく知るわけではありませんがw)、激しくデルタをを膨らませるなんてことがあり得るんでしょうか。朝日新聞の記事には「保有高が大きすぎることが分かっていなかった」とありますので、パラメータだけはきれいにお化粧されたポジションだったんじゃないかと思っています。とするとやっぱ枚数ですか。

次回以降のキーワード、僕のような個別株の延長でやってるような市井のOP愛好家には正直さっぱり付いていけない世界ですw ぼちぼち勉強していきたいと思ってハルの本など読んでおりますが、しんどいです。頑張ります。
6. Posted by ttori   2011年05月06日 20:19
おお、続き期待しております。
債券オプはかなりマニアックでなかなか理解できないので、、、。
正直トレーディングベースでは有報でMUFJ銀行のデータも出てたのですが、バンキングとかOTCが絡むとよくわかりません。個人的に全体としてベガショート(期間構造とかでロングショートをしていたでしょうけど)を踏まれたのかなあ、くらいしかわかりません。確かに10YSWAPとかが跳ねたのは12月で、そのあたりでスワップションの損失の話題になていたにもかかわらず3Qではその影響があまり出てないような、、。となるとやっぱりミドルなどのMTMがおかしかった可能性が高いのかなあ、と。
7. Posted by knakajima   2011年05月08日 11:36
バランスシートの流動資産・流動負債に「デリバティブ取引」として記載されている金額は、いわゆるデリバティブ債権とデリバティブ債務ではないでしょうか。

これはそれぞれカウンターパーティーに対するMTMの勝ち分(評価益)・負け分(評価損)なので、オプション・スワップともに、ポジションのロング・ショートとは直接関係ないかと思います。
8. Posted by positivegamma   2011年05月08日 16:39
knakajimaさん、コメントありがとうございます。
たしかにご指摘はおっしゃるとおりだとおもいます。本文で訂正しておきます。

ただそれで本文の推測(notional amountは結構トンでもないことになっていってるんじゃねえのw)に変化がでることはありません。

この数字の変化からわかることは、カウンターパーティーに対する勝ちのMTMも負けのMTMも結構増えているということですよね。ネットのMTMは数百億円しか増えていないときに、グロスMTMは片側数千億円(オプション)から数兆円(スワップ)増えています。そこから推測できるのは、もともとトレーディングした相手方とのポジションを解消しないで、リスク自体は減らし(たように見せ)つつグロスをあげて他のカウンターパーティーと取引したか、他のストライクやマチュリティの取引をしたかのいづれかです。シリーズの(3)ではこのへんのguessについても言及するつもりです。

また気軽にコメントしてください(^^)!
9. Posted by knakajima   2011年05月09日 02:14
了解しました!ありがとうございます。

コメント送った後で半期報告書を見て気づいたのですが、商品毎の契約額・時価・評価損益(ロング・ショート別)については、平成22年9月末(報告書58〜60ページ)と同年3月末(同63〜65ページ)に記載がありますね。
まだちゃんと調べられていませんが、ここを見ればいろいろ分かるかもしれません。

因みに金利スワップションのNotional Amountについては、仰る通り2010年度上半期で2割程度(それぞれ10兆円前後)はグロスで積みあがっていたようですね。

平成22年9月末
売建 68兆8250億円
買建 47兆5323億円

平成22年3月末
売建 57兆 653億円
買建 39兆5821億円

続編期待しております!
10. Posted by スタービーチ   2011年06月29日 13:07
スタービーチよりも出会えると評判の今最もアツいサイトがオープン!業界トップクラスの会員数と独自の検索サービスで即日会える!

コメントする

名前
 
  絵文字