2011年06月20日

ふぅー、忘れた頃の更新。自分の備忘の為にもこういうのはさっさとやらないとダメなんだけど、本業やら個別案件やらで元気がない(^^;。でそうこうしてるうちにマーケット結構厳しくなりましたねえ。。アメリカの失速振りと中国の引き締め→ハードランディングは懸念なんだけど今のところは夏場あたりまでが中国は引き締めのピークでそこからは徐々に緩むのではというのが北京に近いところで情報取ってる人たちの見方ではないかと思う。

さてとそれはともかくスワプションの話、なんとか終わらせとこうね(^^)。前回はスワプションのボラティリティー構造を表現するのにオプションの満期t(たとえばオプション満期半年ならt=0.5になる)、t年後にスタートするフォワードスワップの長さT(たとえば5年物とか)、そしてそのATM(at-the-money-forward)水準からの行使金利の乖離Kj(ATMF金利水準からみて90%水準とか120%水準とか)の三つが必要で、仮想的にはvolatilityの構造は4次元空間に3次元のcubeとしてσ(t,T,Kj)という形で表現されることをみた。Kjの水準に応じて市場価格から逆算されるボラティリティー(市場価格に含意されているという意味のインプライド・ボラティリティーimplied volatilityという言葉が使われる)はATMFの場合の水準とは異なっており、大体のケースにおいてOTMのほうがボラティリティーは高いということが観察される。これは株などでも同じだ。これをskewness(歪み)とよんでるわけだけど、理論上の話ではなくて市場価格から逆算するとこうならざるを得ないというだけの話。

まあ抽象的な話してても仕方ないので実際の市場でのquoteを見てイメージ掴むことにしよう。ソースはいづれもBloomberg。これがどのくらいの精度なのかは正直よくわかんないけど、real dealing priceからそんなにはずれてないとおもう。

jpy swaption atmf rate and vol最初の絵は、円スワプションのATMF行使水準のボラティリティー一覧(の一部)
at-the-moneyなのでさきほどのσ(t,T,Kj)=σ(t,T,at-the-money-forward水準)というわけ。たとえば満期6カ月、期間5年スワップに対するATMF水準のボラティリティー、すなわちσ(0.5,5,100%)はこの表をみるとATMF金利水準が0.6169%で、年率換算σ=53%なのだとわかる。なんでもいいんだけどσ(1,7,100%金利水準=0.9681%)=45%とかいうふうに見るわけ。ちなみにここでのボラティリティーは金利の変動過程が対数正規分布に従っているブラックモデル型の過程を置いた場合のボラティリティー。

jpy swaption otm(100bps) vola and rate次はさっきのATMFから100bps(つまり1%ね)だけ行使金利水準を高めにしてOTMのオプションになった場合のボラティリティー一覧表。さきほどからの表記に従えば、たとえばσ(0.5,5,ATMF+100bps)=58.78%で上記のATMFのときのボラティリティー水準(53%)よりも高くなってるのがわかるよね。このように行使金利水準によって市場の価格に含意されたボラティリティー水準は実際に変わってくる。これをskew(スキュー)と呼びことはさっき説明した。一方どちらの表をみてもらってもわかるんだけど、同じ6カ月満期のオプションでもそれが3年スワップ金利に対するものか5年物に対するのか7年ものなのかなどでボラティリティーが同一でないのを見てもらえるとおもう。

swaption atmf vol surface 3d graphさて変数が三つあるのでどうしても静的な図を描くと3次元に2次元平面しか描けないんだけど、行使金利はATMF水準でオプションの満期が1カ月から10年の間、オプションの対象となるスワップ金利が1年物から10年物までのボラティリティー水準を描いたのが左掲図。結構2次元平面が波打ってるでしょ。これがvolatility surfaceと呼ばれる。って書いたら3次元上のsurface graph表示されないな(泣)。理由は不明だけどうまくキャプチャーできないな。。右手のskewはみてもらえるとおもう。まあ仕様がない、みなさん想像力を働かせてっていっても難しいからMathematicaのPlot3Dでここで描かれてるような波打つ平面が描かれてるとおもってね。

jpy swaption atmf vol normal因みにBloombergでは金利の変動過程が正規(ノーマル)分布(つまりゼロクーポン債券価格の変動過程が対数正規分布になってるって仮定を措いてるってこと)の場合も示せるのでここに掲げておく。当然確率分布の形状がちがうので、おなじ市場価格に対するインプライドボラティリティーの水準はブラック型(金利が対数正規分布)のそれとは異なる。参考までにノーマルの場合のボラティリティー表もここにあげておく。一番目の表と同じもの(市場価格)を表現しているボラティリティー。金利がゼロに近づいてくると、二つのモデルの間でデルタなどの指標に相当差が出てくる可能性があることはこの前の回に述べた。

ま、変数が多いのでなかなか市場全体の構造を上手に(市場で取引されている価格に斉合的に)リスク管理モデルに落とし込むのはなんか大変そうだなーというのがすこしは感じてもらえるだろうか(^^;


それで実は世の中でなにが起こっていたかというと、時々流行り病のように盛り上がるんだけど日本の財政破綻はいよいよだ、こんな借金抱えて日本が保つはずはない、これは長期に保険を買ってヘッジすべきだって話が湧きあがるわけ。サブプライム危機以降この1~2年がそうだったんだけど、アメリカでもKyle Bass(サブプライムショートで大もうけしたと言われている一人)とか著名HFマネージャーが日本はもう終わりですファンドとか作って投資家募集したりして、日本のヘタれぶりをみてそりゃそうだとおもってJGBのオプションや日本のCDSを買う人が格段に増えた。JGBや円金利のオプションを買うとき、当然日本崩壊シナリオに賭けてるわけだからオプションを買う側は今のギリシャやポルトガルみたいに金利が上昇してどうにもならなくなったようなときに儲かればいい。いわばイベントに賭けているのでATM近辺ではなく行使金利4%とかもっと高い金利に上昇したときに儲かるように、というよりむしろ保険感覚で買ってる連中もいるのでOTMのところの需要がかなり出たんだよね。つまりHFを含む投資家はぺイヤーズスワプション(たとえば今から2年後に、5年ものスワップのストライク金利3%を支払う権利)を大量に買った。推測するにMUMSSを含む金融機関のディーラーはOTMのぺイヤーズスワプションを大量に売らされたわけだ。MUMSSの損失を考えるに、これをどのくらいアウトライトで抱えたか、社内のモデルがこのOTMボラティリティー構造をどのくらいきちんと評価しヘッジできていたのかがひとつの大きな焦点にはなるだろうね。しかしBloombergをちょいちょいとたたけば数字が拾えるのにそれを全く考慮してなかったというのは俄かに信じられないけどね。。。

余談だが実はぺイヤーズの歪んだ需給は日本だけではない。アメリカも今は大分後退したけど当時インフレ懸念とやはり財政膨張懸念のヘッジとしてOTMのぺイヤーズスワプション買いニーズがあって、買い需要があれば当然値段は高くなるのでOTMのインプライドボラティリティーは高止まりした。アメリカの場合はもうひとつ面白い需給があって当時FRBが1兆ドルのGSE発行のモーゲージ債を買ってる最中だったんだよね。モーゲージの詳しい話してると話が終わらなくなるのでここではしないが、relevantなポイントで言えばモーゲージ債というのは金利オプションの売りを内蔵してる商品なわけ。で、普通の投資家やHFなどのrelative value取引をしてた連中はモーゲージ債に内蔵されたオプションヴァリューと、スワプション市場やキャップ市場のボラティリティーを見ながらスワプションを買う(売りのカバー)という一定の裁定関係が働いてたんだよね。実際アメリカの長期の金利オプション市場なんてモーゲージ市場の需給を見ずしてはプライシングできない。ところがバーナンキ先生率いるFRBは当然アービトラージの為に買っているのではないのでヘッジしなかった。とするとどうなるでしょうか(^^)?ハイ、答えは簡単、1兆ドルに及ぶ債券でヘッジがされなくなっちゃった、つまり1兆ドル分の債券について、ヘッジの為にオプション買ってたひとがいなくなった状態になった。ディーラーはヤバいとおもって我先に売った。PIMCOとかもモーゲージ買う(オプションの売りが内蔵されている)より米国債+ATMスワプションの売りの方が相対的にオイシーんじゃねとおもってATMスワプション売る行動にでたので、ATM近辺のボラティリティーは下がり続ける一方、OTMのほうはアメリカ破滅シナリオ組とインフレ懸念組の買いでボラティリティーは上昇してしまい、この需給を上手にトレードした人もいたが、ヘッジで股裂きにあい、大量に血を流した人も多かったわけw。

うーむ、また話が横にそれてますな。もうちょいで終わりなんだけど、今日各の疲れたし(^^;最終回では日本でどうだったという話を簡単に書きます(はやくしような、自分!)。 (まだ要領悪く続く)

positivegammapositivegamma at 02:43│コメント(2)金利戦略 | 日本

この記事へのコメント

1. Posted by 金融屋に対抗   2011年08月23日 11:24
3 たかが糞まみれの欲得市場に小難しい言葉を並べて、自己顕示、自己満足するだけではな。
日本のカス金融や白痴投資家どもは、ただ悲観論一色のあいもかわらず、空気に支配されているよ。
内需は一部明るさが見えてきているのにだ。本当に
幼稚園児のようなネットを含めた日本の情報環境に
やきもきしている。こういう空気に支配されている
だけの、最悪最低の日本人のワンパターン一色の論調とは対極的な大局感を少し期待していたが、それも無理かな。
2. Posted by 金融屋に対抗   2012年09月01日 08:24
久しぶりにのいぞいたが、更新は停止か?
金融という猛毒腐敗に精神が犯され、自己愛の人格が重なって更新もできなくなったのかい?

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