リーガの行方
〈第34節終了時点(残り4試合)〉
首位、勝点66、レアル・マドリ
2位、勝点66、バルセロナ
3位、勝点64、セビリア
4位、勝点62、バレンシア
5位、勝点55、サラゴサ
6位、勝点54、アトレティコ
…
…
15位、勝点36、ベティス
16位、勝点36、レバンテ
17位、勝点34、ビルバオ
18位、勝点30、ソシエダ
19位、勝点30、セルタ
20位、勝点24、ジムナスティック
●とうとう、レアル・マドリが首位に立ってしまいました。
史上最悪とまで酷評されていたはずのマドリですが、
恥知らずに勝利を奪い取ることにかけては、
バルサの遥かに上を行く偉大なクラブ(皮肉でもなんでもない)です。
●支離滅裂な選手獲得を繰り返してきたため、
戦力バランスも秩序も感じられません。
黄金時代の老いた功労者
(ラウル、ロベルト・カルロス、グティ、サルガド、エルゲラ、
老いていないけれど、カシジャス)
暗黒時代の原因となった好選手(けっしてクラックではない)
(ベッカム)
暗黒時代に加わったが、将来性溢れる逸材
(セルヒオ・ラモス、ロビーニョ、シシーニョ、カッサーノ)
今季とりあえず勝つための即戦力助っ人
(ファン・ニステルロイ、レジェス、エメルソン、ディアラ、
カンナバロ)
1月に加わった、期待の新星
(イグアイン、ガゴ、マルセロ)
●しかし、いわゆる違いを見せられる選手がやたらに有り余っており、
(ファン・ニステルロイ、ラウル、ロビーニョ、グティ、レジェス、
イグアイン、シシーニョ、そして才能だけなら、カッサーノ)
しかも、ニステルとラウル以外は、怪我したり干されたりしていたので、
皆、休養十分絶好調です。
●なお、話は逸れますが、
今季のニステルとラウルには最高の評価を与えるべきです。
今季のマドリは、ほとんどの試合でろくに機能せず、決定機を多く創れず、
そんな中、最前線で孤立しながら、ゴール量産している、ニステル。
(ニステルと得点王を争っている、セビリアのカヌーテは、
逆に全く評価できません。
自ら局面を打開できるテクニックなど持ち合わせておらず、
決定力に関しても、セビリア攻撃陣が作り出す決定機の多さからすれば、
大したことありません)
ラウルは、近年の不調を脱し、軽快な動きを見せています。
多くの試合で適正外の右サイドで起用され、
グティと共にボールを運ぶ役割と右サイドの守備の役割に忙殺され、
本来の持ち味を発揮できる場所にはなかなか足を運べませんが、
それでも高い貢献度を示しています。
ラウルのゴール数自体は少なくならざるを得ませんが、
それでもクラシコやバレンシア戦やマドリ・ダービーやバイエルン戦など、
大事な試合ではゴールを決めています。
もし開幕時から、前線でニステルとラウルを組ませていたら、
マドリは勝点とゴールの数を遥かに多く挙げていたはずです。
●また、ベッカム様についても一言。
ベッカムをあくまで凄い特別な選手だと言い張りたい方々は、
「彼がアメリカ行きを決めたから干された」
ということにしておきたいようです。
実際には序盤戦、彼が右サイドで使われても全く役に立たないため、
(彼は元々、主役を張れる選手ではなく、
闘志と運動量で地味に貢献するタイプ。
カペッロは、単独で突破できる能力を要求している。)
明白に適正外のレジェスやラウルが起用されるようになったのですがね。
バレンシア戦(第31節)の途中からベッカム様が右サイドで起用されたのも、
ラウルのFWへの異動に加えて、イグアインの欠場などが重なったからです。
●カペッロ監督の選手起用も開幕時から全く一貫性を欠いていましたが、
この人も、何はともあれ勝つということにかけては、当代随一の人物です。
ジムナスティック戦(第27節)もセルタ戦(第28節)も、
劣勢の試合展開にもかかわらず、いつのまにか何故か勝っていました。
●また、彼は己の過ちを改めることができる人物ではあります。
オサスナ戦(第29節)からようやくラウルをFWの位置で使い始め、
イグアインを右サイドに回し、また、ロビーニョを先発で使い始めたら、
それだけでマドリの内容はかなり良くなりました。
●そして、有り余るタレントを物量作戦で次々と投入すれば、さすがに強い。
特に、バレンシアやセビリアとの直接対決(第31節、第33節)では、
ちょうどその時期、バレンシアもセビリアも、
怪我人続出と過密日程による疲弊の極限に達していました。
彼らは試合の後半に入ると失速し、選手交代の駒も持たず、
そこでマドリの物量作戦は猛威を発揮しました。
●カペッロの勘は冴えてくると止まりません。
セビリア戦では、グティの投入とシシーニョの配置転換が見事に的中しました。
続くエスパニョール戦(第34節)では、
Casaにもかかわらず、そして敵が主力のほとんどを外したにもかかわらず、
(エスパニョールは、
タムードもデラペーニャもルイス・ガルシアもジャルケもリエラも外していた)
1−3で前半終了、本拠地の観客から大罵声を浴びます。
が、後半開始から、グティとシシーニョを引っ込め、レジェスとエルゲラを投入、
するとたちまち、ラウルとレジェスのゴールで同点とし、
後半44分には、いつも決定力不足のイグアインの決勝ゴールで、
あまりにできすぎた劇的な大逆転勝利を収めてしまいました。
●バルサについては、マンネリと評するしかありません。
●イニエスタ以外のほぼ全選手が昨季に比べて低調です。
ライカールトの馬鹿げた采配による自滅は数知れません。
政治的思惑から、サビオラを冷遇し、凡庸なグジョンセンを取って来た、
フロント陣の責任も見過ごせません。
●なお、イニエスタは、一昨季や昨季も、決定的役割を果たしていましたが、
不当に過小評価されていました。
しかし、今季、バルサで最も活躍した選手がイニエスタであることは、
もはや誰も否定できません。
●バルサの失態は、リーガにとどまりません。
ヘタフェ相手の国王杯準決勝では、第一戦(Casa)を5−2勝利し、
決勝進出は疑いないと思われておりました。
決勝戦がマドリの本拠地ベルナベウで行われることから、
マドリ側が「我々の庭でバルサが優勝したら、それは挑発だ」
とわめき散らしていました。
(だったら、決勝戦開催地に立候補するなよ!)
ところが、マドリの心配は杞憂に終わります。
恐るべきヘタフェが第二戦、バルサを圧倒し続け、
4−0で粉砕してしまいました。
●第34節、バルサはこの後遺症を引きずり、
しかも前日(土曜日)のマドリ劇勝に重圧を感じながら、
Casaでベティス戦に臨み、早々に先制しますが、
なんとなくいつのまにか停滞に陥り(今季恒例のパターン)、
挙句、試合終了間際には同点ゴールを許してしまいました。
この結果、とうとう、それもよりによって、
レアル・マドリに首位の座を譲り渡してしまいました。
●バルサは、次節、天敵アトレティコとFueraで戦います。
これにもし敗れれば、無冠どころか、
セビリアやバレンシアにも抜かれて、
今季を4位で終えるかもしれません。
●レアル・マドリとバルサの失態、バレンシアの不運により、
CLの舞台ではスペイン勢が全滅しましたが、
リーガの信じ難いレベルの高さを示す例はたくさんあります。
●UEFA杯で昨季優勝した、セビリアは、
もし今季CLに出場していても上位に進出していたはずです。
今季は3大会の掛け持ちしながら、全てに勝ち残り、
まずUEFA杯では優勝しました。
●UEFA杯では4強のうち、セビリアの他、
エスパニョールやオサスナも勝ち残りました。
どちらもリーガでは中堅以下の成績であり、陣容です。
●国王杯で、バルサの他、バレンシアも粉砕してきた、ヘタフェ。
カップ戦の一発勝負ですから、
守備を固めて運頼みの末勝つ例ならどこの国でもあるでしょう。
でも、バルサやバレンシア相手に試合を支配して大量点を奪う、
そんな芸当は、マンUやチェルシーやアーセナルでもできやしません。
●リーガの特徴は、下位の低予算クラブが無名ながらも優れた選手を持ち、
それゆえ、ハマると上位相手でも堂々と戦えることです。
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