2007年05月17日

リーガの行方

リーガの行方


〈第34節終了時点(残り4試合)〉

首位、勝点66、レアル・マドリ
2位、勝点66、バルセロナ
3位、勝点64、セビリア
4位、勝点62、バレンシア

5位、勝点55、サラゴサ
6位、勝点54、アトレティコ


15位、勝点36、ベティス
16位、勝点36、レバンテ
17位、勝点34、ビルバオ

18位、勝点30、ソシエダ
19位、勝点30、セルタ
20位、勝点24、ジムナスティック


●とうとう、レアル・マドリが首位に立ってしまいました。
 史上最悪とまで酷評されていたはずのマドリですが、
 恥知らずに勝利を奪い取ることにかけては、
 バルサの遥かに上を行く偉大なクラブ(皮肉でもなんでもない)です。
●支離滅裂な選手獲得を繰り返してきたため、
 戦力バランスも秩序も感じられません。
 黄金時代の老いた功労者
  (ラウル、ロベルト・カルロス、グティ、サルガド、エルゲラ、
   老いていないけれど、カシジャス)
 暗黒時代の原因となった好選手(けっしてクラックではない)
  (ベッカム)
 暗黒時代に加わったが、将来性溢れる逸材
  (セルヒオ・ラモス、ロビーニョ、シシーニョ、カッサーノ)
 今季とりあえず勝つための即戦力助っ人
  (ファン・ニステルロイ、レジェス、エメルソン、ディアラ、
   カンナバロ)
 1月に加わった、期待の新星
  (イグアイン、ガゴ、マルセロ)
●しかし、いわゆる違いを見せられる選手がやたらに有り余っており、
  (ファン・ニステルロイ、ラウル、ロビーニョ、グティ、レジェス、
   イグアイン、シシーニョ、そして才能だけなら、カッサーノ)
 しかも、ニステルとラウル以外は、怪我したり干されたりしていたので、
 皆、休養十分絶好調です。

●なお、話は逸れますが、
 今季のニステルとラウルには最高の評価を与えるべきです。
 今季のマドリは、ほとんどの試合でろくに機能せず、決定機を多く創れず、
 そんな中、最前線で孤立しながら、ゴール量産している、ニステル。
  (ニステルと得点王を争っている、セビリアのカヌーテは、
   逆に全く評価できません。
   自ら局面を打開できるテクニックなど持ち合わせておらず、
   決定力に関しても、セビリア攻撃陣が作り出す決定機の多さからすれば、
   大したことありません)
 ラウルは、近年の不調を脱し、軽快な動きを見せています。
 多くの試合で適正外の右サイドで起用され、
 グティと共にボールを運ぶ役割と右サイドの守備の役割に忙殺され、
 本来の持ち味を発揮できる場所にはなかなか足を運べませんが、
 それでも高い貢献度を示しています。
 ラウルのゴール数自体は少なくならざるを得ませんが、
 それでもクラシコやバレンシア戦やマドリ・ダービーやバイエルン戦など、
 大事な試合ではゴールを決めています。
 もし開幕時から、前線でニステルとラウルを組ませていたら、
 マドリは勝点とゴールの数を遥かに多く挙げていたはずです。
●また、ベッカム様についても一言。
 ベッカムをあくまで凄い特別な選手だと言い張りたい方々は、
 「彼がアメリカ行きを決めたから干された」
 ということにしておきたいようです。
 実際には序盤戦、彼が右サイドで使われても全く役に立たないため、
  (彼は元々、主役を張れる選手ではなく、
   闘志と運動量で地味に貢献するタイプ。
   カペッロは、単独で突破できる能力を要求している。)
 明白に適正外のレジェスやラウルが起用されるようになったのですがね。
 バレンシア戦(第31節)の途中からベッカム様が右サイドで起用されたのも、
 ラウルのFWへの異動に加えて、イグアインの欠場などが重なったからです。

●カペッロ監督の選手起用も開幕時から全く一貫性を欠いていましたが、
 この人も、何はともあれ勝つということにかけては、当代随一の人物です。
 ジムナスティック戦(第27節)もセルタ戦(第28節)も、
 劣勢の試合展開にもかかわらず、いつのまにか何故か勝っていました。
●また、彼は己の過ちを改めることができる人物ではあります。
 オサスナ戦(第29節)からようやくラウルをFWの位置で使い始め、
 イグアインを右サイドに回し、また、ロビーニョを先発で使い始めたら、
 それだけでマドリの内容はかなり良くなりました。
●そして、有り余るタレントを物量作戦で次々と投入すれば、さすがに強い。
 特に、バレンシアやセビリアとの直接対決(第31節、第33節)では、
 ちょうどその時期、バレンシアもセビリアも、
 怪我人続出と過密日程による疲弊の極限に達していました。
 彼らは試合の後半に入ると失速し、選手交代の駒も持たず、
 そこでマドリの物量作戦は猛威を発揮しました。
●カペッロの勘は冴えてくると止まりません。
 セビリア戦では、グティの投入とシシーニョの配置転換が見事に的中しました。
 続くエスパニョール戦(第34節)では、
 Casaにもかかわらず、そして敵が主力のほとんどを外したにもかかわらず、
  (エスパニョールは、
   タムードもデラペーニャもルイス・ガルシアもジャルケもリエラも外していた)
 1−3で前半終了、本拠地の観客から大罵声を浴びます。
 が、後半開始から、グティとシシーニョを引っ込め、レジェスとエルゲラを投入、
 するとたちまち、ラウルとレジェスのゴールで同点とし、
 後半44分には、いつも決定力不足のイグアインの決勝ゴールで、
 あまりにできすぎた劇的な大逆転勝利を収めてしまいました。
 

●バルサについては、マンネリと評するしかありません。
●イニエスタ以外のほぼ全選手が昨季に比べて低調です。
 ライカールトの馬鹿げた采配による自滅は数知れません。
 政治的思惑から、サビオラを冷遇し、凡庸なグジョンセンを取って来た、
 フロント陣の責任も見過ごせません。
●なお、イニエスタは、一昨季や昨季も、決定的役割を果たしていましたが、
 不当に過小評価されていました。
 しかし、今季、バルサで最も活躍した選手がイニエスタであることは、
 もはや誰も否定できません。
●バルサの失態は、リーガにとどまりません。
 ヘタフェ相手の国王杯準決勝では、第一戦(Casa)を5−2勝利し、
 決勝進出は疑いないと思われておりました。
 決勝戦がマドリの本拠地ベルナベウで行われることから、
 マドリ側が「我々の庭でバルサが優勝したら、それは挑発だ」
 とわめき散らしていました。
  (だったら、決勝戦開催地に立候補するなよ!)
 ところが、マドリの心配は杞憂に終わります。
 恐るべきヘタフェが第二戦、バルサを圧倒し続け、
 4−0で粉砕してしまいました。
●第34節、バルサはこの後遺症を引きずり、
 しかも前日(土曜日)のマドリ劇勝に重圧を感じながら、
 Casaでベティス戦に臨み、早々に先制しますが、
 なんとなくいつのまにか停滞に陥り(今季恒例のパターン)、
 挙句、試合終了間際には同点ゴールを許してしまいました。
 この結果、とうとう、それもよりによって、
 レアル・マドリに首位の座を譲り渡してしまいました。
●バルサは、次節、天敵アトレティコとFueraで戦います。
 これにもし敗れれば、無冠どころか、
 セビリアやバレンシアにも抜かれて、
 今季を4位で終えるかもしれません。



●レアル・マドリとバルサの失態、バレンシアの不運により、
 CLの舞台ではスペイン勢が全滅しましたが、
 リーガの信じ難いレベルの高さを示す例はたくさんあります。
●UEFA杯で昨季優勝した、セビリアは、
 もし今季CLに出場していても上位に進出していたはずです。
 今季は3大会の掛け持ちしながら、全てに勝ち残り、
 まずUEFA杯では優勝しました。
●UEFA杯では4強のうち、セビリアの他、
 エスパニョールやオサスナも勝ち残りました。
 どちらもリーガでは中堅以下の成績であり、陣容です。
●国王杯で、バルサの他、バレンシアも粉砕してきた、ヘタフェ。
 カップ戦の一発勝負ですから、
 守備を固めて運頼みの末勝つ例ならどこの国でもあるでしょう。
 でも、バルサやバレンシア相手に試合を支配して大量点を奪う、
 そんな芸当は、マンUやチェルシーやアーセナルでもできやしません。
●リーガの特徴は、下位の低予算クラブが無名ながらも優れた選手を持ち、
 それゆえ、ハマると上位相手でも堂々と戦えることです。


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ブンデス第33節

ブンデス第33節


〈第32節までのあらすじ〉

●ともに足踏みで、バイエルンの再浮上を許してしまった、
 シャルケとブレーメン。
 しかし、第28節〜第30節では両者とも3連勝し、勝点差2のまま相譲らない。
●そして、3位シュツットガルトも両者の背後から忍び寄っていた。
 チーム躍進の立役者である、FWマリオ・ゴメス(第22節までに13ゴール)が、
 第25節ヴォルフスブルク戦で負傷し、戦線離脱すると、
 翌第26節シャルケ戦では敗れ、一度は後退した、シュツットガルト。
 しかし、第27節アーヘン戦では3人のFWのゴールで勝利すると、
 再び連勝街道を走り始めた。

●第31節、もっとも優勝に近いはずの首位シャルケは、
 11位ボーフム(降格圏まで勝点差3)と敵地で戦う。
 前半8分に幸先良く先制するが、33分に同点とされると、
 41分には驚異の野人ゲカスに逆転ゴールを決められ、まさかの敗戦。
●2位ブレーメンにとっては首位奪回の好機であったが、
 こちらもこけてしまう。
 15位ビーレフェルト(降格圏まで勝点差ゼロ)相手に敵地で、
 2度リードされながら2度同点としたが(後半14分と29分)、
 後半34分、アイクラーに決勝ゴールを許してしまった。
●2強の失態を尻目に、3位シュツットガルトは、
 敵地で最下位ボルシア(残留圏まで勝点差8)の必死の抵抗を排し、
 0−1勝利、連勝を5に伸ばし、ついにブレーメンから2位の座を奪った。
 
●続く第32節では波乱無く、シャルケはニュルンベルクに苦戦しながらも勝利、
 シュツットガルトやブレーメンも取りこぼさなかった。

●バイエルンは、CL一回戦でマドリを撃破すると、
 「レアル・マドリード・ドーピング」
 (イマイの造語。バイエルンは宿敵マドリと対戦すると闘魂注入される)
 の余勢で第27節には首位シャルケとの直接対決に完勝し、
 いったんは優勝戦線に踏みとどまった。
●しかし、この巻き返しは長続きしなかった。
 偉大な天敵であるミランを相手に、CL準々決勝第一戦では、
 ゲルマン魂を炸裂させ、敵地にもかかわらず2−2引分に持ち込んだが、
 第二戦は、圧倒的に有利な状況(「0−0」でもOK)で本拠地で戦うも、
 美しく完璧なミランに格の違いを見せつけられ、0−2敗戦。
 すると、その後のバイエルンは、残された国内リーグの舞台でも、
 糸が切れたようにズルズル脱落していった。
●第30節、3位シュツットガルトとの生き残りを賭けた直接対決では、
 敵地であっけなく2−0敗戦を喫すると、
 その後の2試合(第31節、第32節)にも勝てず、
 来季CL出場権獲得すら不可能となり、最悪の一年を終えた。

●つい2、3年前までは中盤に有り余る人材を擁し、
 サリハミジッチやフリングスやシュバインシュタイガーやハーグリーブスを、
  (サリハミジッチ以外の3人が2006W杯で見せた活躍は記憶に新しい)
 サイドバックで使い回ししていた、バイエルン。
 しかし、フリングスをあっさりと手放し、
 今季開幕前には、バラックのみならずゼ・ロベルトも契約更新せず放出し、
 冬にはまだ若いダイスラーの現役引退もあって、層は薄くなってしまった。
 シュバインシュタイガーとサニョルの怪我は、
 ミラン相手の第二戦のみならずその後の試合でも、致命的な痛手となった。
●そして、今季終了後、長年の功労者2人も去る。
 ショルは現役引退、サリハミジッチはユベントスへ去る。
 金持ちケチケチ路線で行き詰まった、バイエルンは大改造を迫られよう。

●残留争いでは、ハンブルクやドルトムントがさすがに地力の差を見せ、
 最悪の事態を免れた。 

●前半戦を最下位で終えた、マインツ。
 17試合でたった1勝、勝点11。
 得失点差でマイナス19という数字は圧倒的な戦力不足を物語っていた。
 11得点はもちろん、リーグ最低である。ちなみにブレーメンが47得点。
●しかし、1月にブレーメンから、モハメド・ジダンとアンドレアセンを獲得すると、
 ジダンの驚異的なゴールラッシュで猛烈に巻き返す。
●ジダンは昨季、やはりマインツにレンタルされ、
 マインツの攻撃的サッカーを牽引していたが、
 今季前半戦、本籍地ブレーメンでは出番をほとんど貰えず、ゴールはゼロ。
 しかし、マインツへ加入するや、第32節までに13ゴールも量産した。
●マインツ自体も、後半戦最初の6試合で5勝1分と一気に16勝点も稼ぎ、
 残留圏に浮上してくる。
 この6試合で11得点挙げている。
●もっとも、マインツの絶対的戦力不足はやはりいかんともし難く、
 第26節〜第29節では、その間にジダンが3ゴール挙げても、マインツは4連敗、
 降格圏に逆戻りしてしまった。


〈第32節終了時点〉

首位、勝点65(得失点差+22)、シャルケ
2位、勝点64(得失点差+22)、シュツットガルト
3位、勝点63(得失点差+40)、ブレーメン

4位、勝点54(得失点差+9)、バイエルン
5位、勝点45(得失点差+10)、ニュルンベルク


14位、勝点37(得失点差−12)、フランクフルト
15位、勝点36(得失点差−6)、ヴォルフスブルク

16位、勝点33(得失点差−20)、アーヘン
17位、勝点31(得失点差−23)、マインツ
18位、勝点26(得失点差−16)、ボルシア


〈第33節〉

●2試合を残して、地力で優勝を決められる位置に立つ、シャルケは、
 ドルトムントとのルール・ダービーに臨む。
 6連勝中のシュツットガルトは、同じルール地方で、ボーフムと戦う。
●3位ブレーメンが本拠地でフランクフルトと戦うのに対し、
 敵地で戦う、シャルケとシュツットガルトの苦戦は容易に予想された。
 ドルトムントは強力な戦力を有する上に、
 失意に満ちた今季の憂さを晴らすべく、死に物狂いに抵抗する。
 ボーフムは、8試合連続ゴールで得点王争い独走中の野人ゲカスを擁し、
 3連勝中と波に乗っている。
●同時刻開催で、まずは敵地で戦う、シャルケに朗報が届く。
 シュツットガルトが前半4分、ブレーメンも13分に先制を許したのだ。
 もしこのままで、シャルケが勝利すれば、シャルケの優勝が決まるのだ。
●しかしながら、ドルトムントは闘志満々、
 何が何でもシャルケに恥をかかせようと敵を削りまくり、試合を支配する。
 そして、前半44分、スイス代表FWフライがついに先制ゴールを叩き込む。
●1−0で前半終了したが、この時点ではまだシャルケが首位を保っていた。
 ブレーメンは34分にハントのゴールで同点とし、1−1で前半終了。
 シュツットガルトは、24分に一度は同点としたものの、42分に失点し、
 2−1で前半終了していた。

●後半に入っても、シャルケは試合の主導権を握れない。
 逆にドルトムントが、後半44分、スモラレクのゴールで止めを刺した。
 ブレーメンも、後半途中、選手交代を2度行うが、
 24分に失点すると、そのまま敗れてしまった。
●シュツットガルトは、後半10分、2選手同時の交代で逆転を期す。
 2ヶ月ぶりに復帰した、マリオ・ゴメスを投入した。
●すると、ゴメスがその6分後、貴重な同点ゴールを頭で決める。
 さらに27分、カカウが逆転ゴールを叩き込み、2−3とする。
●終盤、ボーフムの猛攻に対しては、
 シュツットガルトは、GKヒルデブラントを中心に堅守で耐えしのいだ。
 連勝を7まで伸ばし、最終節を残してとうとう首位に立った。
 そして、ブレーメンの優勝の可能性が消滅した。


●残留争いでは、
 アーヘンがヴォルフスブルクとの直接対決に最後の望みを賭け、
 新人GKをデビューさせて臨み、2点先行したが、
 最後の10分間で2失点し、引分に持ち込まれ、
 数字上はなお可能性を残すものの、事実上、降格が決定した。
●マインツは、
 ジダンの活躍(ゴールのほか、残る2得点でも決定的役割)で、
 ボルシア相手にに完勝を収めたが、
 ヴォルフスブルクが勝点1を上積みしたため、
 事実上、降格が決定した。


ドルトムント 2−0 シャルケ
ボーフム 2−3 シュツットガルト
ブレーメン 1−2 フランクフルト

アーヘン 2−2 ヴォルフスブルク
マインツ 3−0 ボルシア


〈第33節終了時点〉

首位、勝点67(得失点差+23)、シュツットガルト
2位、勝点65(得失点差+20)、シャルケ

3位、勝点63(得失点差+34)、ブレーメン

4位、勝点57(得失点差+12)、バイエルン
5位、勝点48(得失点差+4)、レバークーゼン


15位、勝点37(得失点差−6)、ヴォルフスブルク

16位、勝点34(得失点差−20)、アーヘン
17位、勝点34(得失点差−20)、マインツ
18位、勝点26(得失点差−19)、ボルシア


〈最終節〉

シャルケvsビーレフェルト
シュツットガルトvsコットブス


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バレンシア派の言い訳(一ヶ月前のチェルシー戦について)

バレンシア派の言い訳(一ヶ月前のチェルシー戦について)


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イマイは、今季のバレンシアを、リーガとCLの両方で優勝候補に挙げておりました。
その根拠は、厚い選手層と過去の実績です。


〈開幕前の構想〉

4−4−2システム、あるいは、4−2−3−1システム

GK、カニサレス (ビュテル)
右DF、ミゲル (クーロ・トーレス)
中DF、アジャラ (ダビド・ナバロ)
中DF、アルビオル (マルチェナ)
左DF、モレッティ (デル・オルノ)
守MF、アルベルダ
守MF、バラハ (エドゥ)
右MF、ホアキン (アングロ)
左MF、ビセンテ (ガビラン)(レゲイロ)
FW、モリエンテス (シルバ)
FW、ビジャ (タバーノ)
 
☆全ての位置に複数の選手を揃えている。
☆しかも、複数の位置をこなせる選手が何人もいるため、
  アルビオルは、中DFの他に、守MF。
  マルチェナも、中DFの他に、守MF。
  エドゥは、守MFの他に、左MF。
  シルバは、FW、攻MFの他に、右MF、左MF。
  アングロは、右MFの他に、FW、右DF。
 ある程度の数の怪我人が出ても埋められるはずであった。
☆なお、ホルヘ・ロペスとウーゴ・ビアナは開幕時から構想外同然。

 
〈2003−04との比較〉

ラファエル・ベニテス監督時代の3季(2001−02〜03−04)、
バレンシアは、リーガを2度、UEFA杯を1度制している。
特に、2003ー04には、ターンオーバーを採り、特定の選手に依存せず、
リーガとUEFA杯の両方を制覇している。
 (ちなみに、01−02UEFA杯と02−03CLは、いずれも8強で敗退しているが、
  どちらもクーペル・インテル相手に内容で圧倒しながら、
  インテルGKトルドの神がかり的スーパーセーブに敗れている。)

2003−04当時の主力選手が多数、現在もバレンシアに残っている。
 カニサレス
 クーロ・トーレス
 アジャラ
 マルチェナ
 アルベルダ
 バラハ
 ビセンテ
 アングロ
 ダビド・ナバロやホルヘ・ロペスも当時、貴重な控え選手として貢献していた。
以上の面々は、少なくとも年齢で判断する限り、衰えたとは思われなかった。

しかも、今季のバレンシアは、
ワールドクラスの3人(ビジャ、モリエンテス、ホアキン)を擁しており、
2003−04当時に比べて攻撃陣の破壊力も増している。
マルチェナは全く衰えていないが、アルビオルはその彼から定位置を奪った。
ミゲル、モレッティ、デル・オルノはいわゆる代表クラスの実力者。
ガビランとシルバは、昨季、レンタル先のヘタフェとセルタで大活躍しており、
十分計算できる新戦力。
タバーノは、昨季、弱小エンポリに所属しながら、
個人技で無理矢理19ゴールも挙げてしまう、凄い奴。
アイマールはサラゴサに去ってしまったが、
彼は傑出した才能を有するクラックであるにもかかわらず、
2003−04当時も咋季も、単なる駒として扱われており、大きな損失ともいえない。

加えて、現監督キケ・フローレスは、昨季の途中から、
2003−04と似たスタイルで戦い、成果を出しつつあった。

以上から判断すると、
今季のバレンシアは、2003−04以上の成果を挙げるのではないか!


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そんなイマイの目算は、あまりに多すぎる怪我人によって狂いました。
レゲイロとガビランは、最初からずうっと怪我で不在。
エドゥも開幕直後は活躍したが、すぐに今季絶望の怪我により、そのまま不在。
アルベルダの戦線離脱も重なった。
バラハとビセンテも頻繁に怪我を繰り返し、半分も働かず。
左DFのモレッティとデル・オルノは、同時に長期間の戦線離脱。

また、タバーノは、フロントと監督の対立の犠牲者となり、
ほとんど無視され、冬にはローマへレンタル放出された。
アジャラは、契約のこじれから、一時期、干された。

これだけ多くの選手が使えなくなると、
残された選手はろくに休めず、疲労蓄積、さらには怪我という悪循環に陥ります。
多くの選手がしばしば出場不能となったり、怪我を押しての強行出場となります。


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ようやく本題。バレンシアがCL準々決勝でチェルシーごときになぜ敗れたか。

多くのメディアは、
「金満=スター軍団=攻撃のチェルシー」vs「中堅=地味な顔ぶれ=守備のバレンシア」
という陳腐かつ安易な構図をえがいていました。
私から見れば、守備力を基盤とする手堅い、似たタイプ同士の対戦であります。
チェルシーは、金満ではあるけれど、使える良い選手を割高で購入しているだけであり、
しかもその良い選手はほとんど、
攻撃よりも守備、テクニックやひらめきよりフィジカルに偏っています。
特に、引いた敵を相手に崩したり、狭い地域を突破したり、エリア内を攻略したり、
そういう意味でのテクニックやひらめきを持つ選手、
要するに違いを生み出せる選手といえば、
チェルシーにはロッベンしかいない(シェフチェンコは機能していない)のに対し、
バレンシアには、ビジャやシルバやホアキンやビセンテがいます。

実際、第一戦の前半45分間では、バレンシアが敵地にもかかわらず、
ビセンテやシルバの作り出す違いにより、多くの決定機を創り、
「0−1」というスコア以上に内容で上回っておりました。
しかし、後半に入り、GKカニサレスが凡ミスでチェルシーに同点ゴールを献上し、
その直後にはビセンテが怪我してしまいました。
こうした敵失や敵の不運のおかげでようやくチェルシーが攻勢に転じました。
とはいえ、チェルシーの攻撃は、カニサレスのお粗末守備を狙った放り込みのみで、
しかも、頼みのドログバはほぼ完璧に抑え込まれていました。
第一戦のチェルシーは本拠地で戦うも、90分間通し、全く可能性を感じさせませんでした。

第二戦にしても前半45分間、じりじりする重苦しい展開ではありましたが、
バレンシアは個人技を絡めた速攻で何度か決定機を創り出しました。
ただし、ここで、たった1点しか奪えなかったことが後で響きます。
チェルシーは、セットプレイだけが頼みでそれ以外には可能性ゼロ。

ところが、後半に入り早々にチェルシーが同点とすると、
突然、バレンシアの選手達は戦意を喪失したかのように全く動けなくなり、
つまらないミスを連発してはボールを失い、ただ自陣に引きこもるしかなくなりました。
バレンシアは怪我人続出により元々駒不足に陥っていた上に、
この試合の最中にもモリエンテスとアルビオルの怪我によって交代枠を浪費してしまい、
状況を変えようにも打つ手は何もありません。
さすがにチェルシーが試合を完全に支配し、猛攻を仕掛けましたが、
その割には創造力の不足から攻めあぐみます。
それでも最後はまたしても敵GKカニサレスのミスに助けられ、
後半ロスタイムにどうにか劇的な逆転ゴールを奪ったのでした。

バレンシアは、チェルシー戦を前にして、怪我人続出により元気な選手も疲弊していました。
加えて、インテル戦での乱闘騒動により、
マルチェナとダビド・ナバロの2人をチェルシー戦の2試合に出場停止で使えません。
そのため、中DFをアジャラとモレッティ、守MFをアルベルダとアルビオルで組ませ、
どうにかやりくりしている状況でした。
そうした状況の結果論として選手層の差で負けたと表現するなら間違いではありませんが、
「スター軍団との選手層の差、バリエーションの差」と言われるとかなり違和感があります。

結論として、最大の敗因は、怪我人続出と疲弊の悪循環でございます。
ただ、仮定の話をするなら、第一戦の前半や第二戦の前半にもう1点を加えていたら、
あるいは、第一戦の後半にカニサレスの凡ミスがなければ、
あるいは、ビセンテの試合中の怪我さえなければ、
バレンシアは間違いなく勝てたと個人的には思っています。


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ちなみに
チェルシーもバレンシア同様、今季を通して怪我人の続出による疲弊に苦しみ、
それでもバレンシア戦は、
体力と根性と執念(強いときのユベントスを彷彿させます)で勝ちました。
しかし、準決勝第二戦の後半には、バレンシアと同じく力尽きた、格好でした。

チェルシーの団結力と気力には敬意を払わざるを得ませんが、
ただ、せっかく大金をつぎ込むなら、本当のスター軍団を作ればいいのに、
とも常々思う、イマイでした。
切り札とされるジョー・コールにしても、
イングランド人にしては凄くうまい攻撃的MFですが、
リーガのレベルで見れば、どこにでもいる、その程度の選手です。


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